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NO:4993 1月23日 『トルコ軍のシリア侵攻への世界の声』 [2018年01月22日(Mon)]
 トルコ軍が南東部の安全を、確保するという口実であろうか、シリアの北部に軍を進攻させて、既に3日目になろうとしいている。このことに対して、各国がそれぞれの立場を、明らかにしてきている。
 トルコのシリア侵攻作戦は、何が目的なのであろうか。トルコ軍は既にアフリンを含む、シリア領土内30キロの地域を制圧した、と発表している。この地域はトルコに隣接する地域だが、多分、トルコは戦後もその占領地域を、支配し続けるのであろう。
 トルコのシリア領土への執着は、オスマン帝国の夢を追うことから、起こっているのであろう。勿論、それでは国際的に通用するわけは無く、あくまでも自国の安全確保だ、と言わざるを得まい。
 そうしたトルコの本音を、トルコの周辺諸国は分かっているし、それ以外の国々も分かっていよう。イランはシリアに対して、特別の関心を抱いている国だが、当然、今回のトルコ軍のアフリン作戦に、反対している。
 アメリカも同様に、トルコ軍のシリア侵攻作戦を、早急に止めろ、と叫んでいる。それはトルコ軍のシリア侵攻で、アメリカが創設しつつある国境警備軍が、崩壊するからであろう。国境警備軍はほとんどが、クルド人によって結成されている、アメリカの傭兵軍のようなものだ。
 エジプトもトルコ軍のシリアへの、侵攻について反対しているが、それは、シリアがアラブの国の一つであることに起因し、トルコの意図が領土支配にある、と見ているからであろう。アラブの軍事大国であるエジプトとしては、トルコがアラブの国に侵攻し、支配することは許せまい。それが許されれば、他のアラブの国々にも同じように、トルコは軍を派兵し、支配するようになる、危険性があるからだ。
 ロシアはいまのところ、沈黙を保っているが、それはトルコをアメリカの同盟国から、外すためであろう。しかし、ロシアは決してトルコを、信用しているわけではない。事態が進展し、シリアのアサド体制にとって、危険な状況が出てくれば、ロシアは反トルコに回るであろう。
 現段階では、シリアのクルドが力を付け過ぎて、シリア国内で分離独立に至ることを、トルコが阻止していることが、ロシアをしてトルコの軍事侵攻に、沈黙を守らせているのではないか。これまでシリア政府が、クルドの動きを放置していたのは、対IS(ISIL)からであったろうが、いまではIS(ISIL)問題はほぼ解決しており、シリアにとって次の敵は、クルドということになるからだ。
 これからはもっと本格的に、国際的なトルコ非難が広がって行こうが、必ずしもそれが論理的とは言えまい。イランはシリア軍の要請ということだが、シリアに軍を派兵しているし、アメリカはシリア政府の立場を無視して、シリア国内に国境警備軍 (傭兵軍)を創設し、シリア国内に10箇所以上も、軍事基地を創設しているからだ。そこには何の正統な論理もない、力だけがものを言う、状態があるだけだ。
Posted by 佐々木 良昭 at 10:13 | この記事のURL