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NO4637 7月19日 『イランのザリフ外相,サウジとの戦争望まない』 [2017年07月19日(Wed)]
イランのザリーフ外相は、イランにはサウジアラビアとの間で、戦争を起こす気が無いことを、明確に語った。それは、現在のイランとサウジアラビアとの関係が、極めて微妙な状況にあることから、生まれた懸念の発言であろう。*

サウジアラビアはイランとの緊張のなかで、もし戦争が両国の間に起こるとすれば、それはイラン領土内であり、サウジアラビアの領土内では起こりえない、と語っている。

この一言はイラン側から相当重く、受け止められたようだ。この一言から、イラン側はサウジアラビアには、イランとの間で戦争を始めることも辞さない、という意思表明だ、と受け止めたのだ。

事実、サウジアラビアはイエメンで、サウジアラビア側が支援する政府と、シーア派のホウシ・グループ間で武力衝突が、2015年から続いているのだ。このイエメン戦争はいまだに、いつ終わるかわからない状況にあり、サウジアラビアと対立するホウシ派は、シーア派であることからイランの支援を、受けているとされている。


イランはホウシ派に対して、武器弾薬の支援を始めて久しい。そのことは間違いのないことであろう。イランにしてみれば、ひとつでも多くのアラブの国が、シーア派によって統治されることが、望ましいからだ。

サウジアラビアなどスンニー派のアラブ緒国は、イランが中東地域での覇権を狙っている、と推測している。既に、イラクは多数派のシーア派出身者が、首相職を務めており、イラクの大統領はクルド出身であることから、実質的にはお飾りに過ぎない。

加えて、シリアのアサド体制も、シーア派の一派アラウイ派なのだ。それにシリアの隣国である、レバノンではシーア派のヘズブラが、大きな力を有するに至っている、というのが実情だ。

これに加えて、イエメンがホウシ派によって、支配されるようなことになれば、サウジアラビアなど湾岸諸国はシーア派のイラク、シリア、レバノン、イエメンに包囲されることになるのだ。

そのために、サウジアラビアのムハンマド・サルマン副皇太子は、強硬路線を取り、イエメンでの戦闘を続けざるを得ない、状態にあるのだ。もちろん、その緊張をあおっているのは、アメリカに他ならない。

いま、イラクでもシリアでも、IS(ISIL)が敗色を濃くしているが、両国にはイランから、軍事顧問という名目で、戦闘員が入っている。イラクとシリアの戦闘が終息すれば、イランの義勇兵は大幅に削減され、サウジアラビアの周辺国のひとつである、イエメンのホウシ派支援に、回るものと思われる。

サウジアラビアとイランとの軍事緊張は、両国のカタールへの対応をめぐっても、拡大している。両国はまさに、一触即発の危険な状態にある、と受け止めているのであろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 12:33 | この記事のURL