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NO・1590トルコのアマセヤという街 [2010年06月24日(Thu)]
 今回トルコ出張のおり、アマセヤという地方都市で公演を依頼された。それは同市の市長が東京訪問の際に、私のトルコ観を話したことがきっかけだった。
 訪問時はアマセヤの祭りで、あちこちでイベントが同時開催されていた。しかし、講演には400人弱の人たちが参加してくれた。私の講演と合わせ同行者が居合道を披露してくれ、もう一人は日本舞踊を演じてくれた。
 このアマセヤ市はオスマン・トルコ帝国時代に、幾多の皇太子が教育を受けたところであり、ケマル・アタチュルクが独立闘争宣言をした街でもある。盆地の中心に岩の山があり、その山肌にはローマ時代の王の墓が幾つか掘られてあった。それを囲むように川が流れるおとぎ話のような街だった。
 ここのサクランボは山形の佐藤錦の原種だ、ということを聞いたことがあるが、癖が無く日本人好みの味だった。それを腹いっぱい食べるという、ぜいたくを味わった。
 来年からは日本にいるトルコ人の友人がそれを輸入し、日本の市場に並ぶことが期待されているが、ぜひ実現してほしいものだ。
 さて、そのアマセヤ市での講演だが、要旨以下のようなものであった。この内容は決して、トルコに対するお世辞ではない、現実なのだ。
あるトルコの財閥が「15年後に我が国は世界のトップ・テンに入っているでしょう。」と語った。それに対し友人が「ではその時日本は?」と尋ねるとトルコ人は「たぶん10番以内には入っていないでしょう。」と答えていた。
「トルコの地政学的重要性」

:ジェラール・アマセヤ市長との出会い
―サムライ的雰囲気は何処から?強さと誇りを感じさせた
:アマセヤの歴史
―スルタン子息の教育の場(シャー・ザーデイ皇太子、アウス・セリムも)
―ケマル・アタチュルクが共和国設立宣言した街
:アマセヤで講演する機会
―名誉なことであると同時に不安でもある、沢山の人格者とインテリが聴衆だからだ
(本題)
:トルコの位置
―ヨーロッパ、アジア、アラブ、アフリカ、ロシアに隣接=世界の中心地
:長い歴史(600年のオスマン帝国の統治とその知恵)
―大英帝国(第一帝国:17,8世紀から20世紀半ば、第二帝国19世紀半ばから20世紀半ば)、
―ロシア帝国(1721-1917年)、
ソビエト連邦(1917−1991年)
―アメリカ建国1776年(1945-2010年)
:トルコ系民族国家は多数
―アラブ、中央アジア、東ヨーロッパ、ロシア
*1936年に日本の学者がトルコ系民族の分布地図を作っている
:トルコの優位性
―地理的条件=陸海輸送と距離的優位性、輸出入が楽
:歴史的経験
―歴史的蓄積が外交内政に及ぼす影響、
:歴史から来る教育重視
―教育熱心、教育普及、教育レベルの高さ
:歴史的誇り
―トルコ人が持つ誇りは自信ある行動を国内外で取らせる
―それは他国の信頼を得る
:人種的近似性(エジプトがそうだった)
―トルコ系諸国に進出しやすい、
―トルコ系諸国との交渉がしやすい、
―トルコ系諸国と理解しあい易い
―トルコ系諸国と協力しやすい、
:言語的優位性
―トルコ系諸国との政治外交交渉がしやすい
―誰でもトルコ系諸国でビジネス展開しやすい、
―教育面での支援もしやすい(外国での教育活動、留学生の受け入れ)
:トルコの変化
―トルコは東向きにシフトした
―歴史の見直し、自信と役割の回復
―周辺諸国との関係改善=イラク・クルド、シリア、ヨルダン、パレスチナ、リビア、エジプト、イラン、東欧諸国、ロシア、ETC
―イスラム諸国との関係強化=穏健スラム思想の拡大、OICの議長国、イスラム教育協力、
:周辺諸国のトルコへの期待拡大
―湾岸諸国:イラン、アメリカ対応で、経済振興
―シリア:安全保障と国内開発
―リビア:国内開発
―エジプト:産業開発
―イラク:安全保障、国土開発、経済開発、国内安定
―ヨルダン:経済開発
―パレスチナ:イスラエルとの和平、経済支援
―東欧:経済開発
―ロシア:21世紀トルコは露土戦争に勝利した(エネルギー協力、地域の安全保障)
―イラン:核問題の仲介
:イランの核開発問題とトルコの役割
―孤立するイラン
―アメリカもいまはイラン攻撃したくない
―イスラエルは攻撃のリスクに不安がある
―アラブ諸国、第三世界諸国の不満を代弁者
―ハラームを正しく理解できるトルコ
:イスラエルの救世主トルコ
―エルドアン首相の厳しいイスラエル批判
―欧米で拡大する反ユダヤ感情
―孤立するイスラエルとユダヤ人
―方向性を見失ったイスラエル
―トルコがここでも仲介者
―トルコに不動産を買い求めるイスラエル国民
:トルコが今進むべき道
―強いリーダーシップ(世界各国は嵐の海に浮かぶ小船と同じ、強いリーダーシップのキャプテンがいなければ沈む)
―国民の団結
―勤勉な学習と労働
―世界に正義を示す
*トルコ国民はいまやトルコが地域、世界のリーダー国であることを自覚するべき
*トルコと日本が協力して両国の間に位置する国々に協力していく必要がある
*トルコの歴史を誇りとし、自国の歴史的役割、明日への希望、栄光の確信を持つ
Posted by 佐々木 良昭 at 15:21 | この記事のURL