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『テレボク』復活!〜雄勝町の春祈祷「獅子振り」活動2年目 [2012年12月30日(Sun)]
本年も年も全郷芸では、全国の郷土芸能に関心のある皆様のご協力を賜り、東日本大震災郷土芸能復興支援プロジェクトをはじめ様々な活動に取り組んでまいりました。有難うございました。

さて、今年初のブログは『雄勝町の春祈祷「獅子振り」活動再開!』と題して、宮城県石巻市雄勝町大浜地区にある葉山神社の獅子振り(獅子舞)と春祈祷行事について書きました。
https://blog.canpan.info/jfpaa/daily/201201/21

今年1月4日、全郷芸の「郷土芸能復古支援プロジェクト」の一環で、ネットワークを活かした復活プロジェクトを行いました。
「とにかく獅子頭さえあれば、行事が続けられる」

2011年11月末。
当時盛岡大学教授の橋本裕之先生(現追手門学院大学教授全郷芸会員)から、『雄勝法印神楽の奉納神社でもある雄勝町大浜の葉山神社に「テレボク」なる不思議な伝承を持つ珍しい形の獅子頭があったのだけど流失してしまった。企業メセナのGBFundの申請でどうにかならないか』と連絡があったのでした。

すぐに神社の千葉宮司に連絡を取ると、正月行事の「春祈祷」に欠かせない獅子舞とのこと。

春祈祷は宮城県沿岸部に数多く見られる行事で、葉山神社では法印のもと氏子が集まって、獅子頭を安置し「東方朔(一年の作柄を占う)」の儀式を執り行い、獅子振り(獅子舞)として地区の家々を廻り悪魔祓いをしていました。
一年の始まりに欠かせない春祈祷と獅子振り。

葉山神社も津波で被災し、そこに納められていたテレボクをはじめとした獅子頭や法印神楽の文書類も全部流失しました。

このことを受けて、不思議な形のテレボクを復元しよう!とGBF申請し採択を受け、宮本卯之助商店(東京浅草・全郷芸賛助会員)さんに発注をし、このように見事に復元されたのです。

今年の正月は当然間に合わず、宮本商店からお借りした江戸仕様の獅子頭で春祈祷を行い、住民の方々にも非常に狭苦しい思いをさせたのですが(獅子振りは通常2人以上が胴体の幕に入るけど、江戸は一人が普通)、来年の正月は伸び伸びと獅子が舞えることでしょう。

img_55331_1.jpg
[2012年1月4日の「レンタル獅子」の様子@葉山神社]

tereboku.jpg
[これが復元された不思議な「テレボク」!]宮本卯之助商店岡部様提供写真

それにしてもテレボク、不思議な顔だな。
来年正月4日、どんな姿を見せてくれるのでしょうか。

ogatusisi.jpg
[上段左から大浜地区のテレボク獅子と獅子頭、名振地区、下段左から立浜地区、明神地区。これらが来年春祈祷で動き出します!]宮本卯之助商店岡部様提供写真


本日をもって本年のブログ納めとします。
2013年も、被災地の郷土芸能支援をはじめ、郷土芸能の大切さや魅力を伝えていきたいと思いますのでよろしくお願い申し上げます。
良いお年をお迎えください!

〔問合・情報窓口〕
(社)全日本郷土芸能協会 (担当 小岩)
〒107-0052東京都港区赤坂6-7-14-102
TEL・03-3583-8290  FAX・03-3583-2089
E-mail koiwa@jfpaa.jp URL http://www.jfpaa.jp
被災地の郷土芸能の現在 [2012年03月01日(Thu)]
 3月になりました。
 東日本大震災が発生してからもうすぐ一年が経とうとしています。
 この一年、皆さんどのように過ごしてきましたか。
 そして一年を目の前にどのような思いをお持ちですか。

 震災後、郷土芸能や祭りを取り巻く環境や視線は、被災地のみならず全国的に大きく変わりました。
 それらは地域に無くてはならないものとして、また地域を繋ぐものとして、大いに取り組まれ、大いに取り上げられました。

 これほどまでに多くの集落で、地域で、様々な芸能や祭りが行われていたなんて、こうなるまでは誰も気づきませんでした。
 それでも皆、当たり前のように続けてきたものでした、嫌でも、人がいなくてもやらなければならないものでした。
 
 一方、「地域のもの」だからこそ私たち外部の人間は知る術を無くし、いざこうした事態になって初めて状況把握を試み、愕然としたものです。

 一年が経とうとしている今でも、私たちは状況把握が難しい状態にあります。
 遅々として進まない被災した「無形民俗文化財」の調査、支援。
 私たちの力不足と、そしてあまりにも多いその数、種類。
 
 (社)全日本郷土芸能協会は、関係者・関係団体・教育委員会などと連絡を取り合いながら、被災地の郷土芸能や祭り、行事のリスト化に努めていますが、あまりにも数が多く、定義が難しく、そして「人」が絡んでいるものでなかなか公表できないでいました。

 けれど、皆さんが忘れないように一つ一つクリアにしていかなければなりませんよね。

 前置きが長くなってしまいましたが、現在全郷芸が調査し把握している数だけでも知っておいてもらいたいと思います。不明な点も多く定義が曖昧とはいえ、ショッキングです。

岩手県
沿岸被災地域の芸能・祭り・行事等(権現様を含む):約400
被災(津波で伝承者・用具が何らかの被害にあった):130以上か

宮城県
沿岸被災地域の芸能・祭り・行事等(春祈祷行事を含まない):約300
被災(津波で伝承者・用具が何らかの被害にあった):190以上か

福島県
沿岸被災地域および原発被災地域の芸能・祭り・行事等:約500
被災1(津波で伝承者・用具が何らかの被害にあった):70以上か
被災2(原発によって避難し、地域住民が分散している等、地域として状況が把握できない):約200


[(社)全日本郷土芸能協会調べ*各県民俗芸能緊急調査報告書等を基に、阿部武司氏(東北文化財映像研究所)、久保田裕道氏(儀礼文化学会事務局長)、橋本裕之(盛岡大学教授)、とりら〜ふるさと岩手の芸能とくらし研究会、宮城県文化財保護課、福島県文化財課の協力をいただき、その他新聞記事等を基に監修している・平成24年2月29日現在]

 この数はほぼ集落の数に値するはずです。
 活動再開した所も数多くありますが、福島のように今はどうしようもない状況もあり、これから何年もかけて道を模索していかなければなりません。そんな時に力になれる体制をしっかり作っていきたいと思っています。

東日本大震災による被災郷土芸能(平成23年7月31日現在) [2011年08月02日(Tue)]
早いものでもうすぐお盆です。
昨日も書きましたが、被災地の郷土芸能の多くがお盆を再スタート地点として、活動再開を目指しています。

被災地の郷土芸能の現在の状況(7月31日現在)を、以下の方々が実際に被災地に足を運び、見聞きしてきた情報を参考にしながら、まとめてみました。


【被災地の郷土芸能の調査・支援・協力くださっている方々】

岩手県:
阿部武司氏(東北文化財映像研究所) ブログ:http://okuderazeki.at.webry.info/
飯坂真紀氏(ふるさと岩手の芸能とくらし研究会(とりら)) 「とりら」ブログ:http://torira.exblog.jp/
橋本裕之氏(盛岡大学文学部教授)
畠山務氏(田野畑村・菅窪鹿踊保存会長)

宮城県:
小谷竜介氏(宮城県文化財保護課) URL:http://www.pref.miyagi.jp/bunkazai/
佐沼鹿踊保存会(登米市)

東京都:
歌舞劇団荒馬座 URL:http://www.araumaza.co.jp/
久保田裕道氏(儀礼文化学会事務局長) URL:http://www.girei.jp/

他、現地郷土芸能に携わる皆様、郷土芸能を愛する皆様からの情報を収集しながら、状況把握に努めています。


まだまだ調査中で全容解明まで時間がかかりますが、
この情報が今後、被災地の郷土芸能の復興支援につながっていくことを願います。



【岩手県】

普代村以北、調査中。

●普代村
・鵜鳥神楽(うねどりかぐら):沿岸部を巡行して歩く「廻り神楽」で、神楽宿の多くが被災し、廻り神楽の伝承が困難。活動再開。

●田野畑村
・大宮神楽:ベテラン踊り手一人死亡。道具類は流失を免れた。

その他、祭礼など被害を受け中止。

●岩泉町
・中野七頭舞(ななづまい):道具類流失。すでに活動開始。歌舞劇団荒馬座が現地支援。

●宮古市
・黒森神楽:鵜鳥神楽と同じく「廻り神楽」。震災当日まで巡行していたが被災を免れた。神楽宿被災。活動再開。

その他、被災調査中の祭礼・郷土芸能約10団体あり。

●山田町
・八幡大神楽:津波・火災被害で獅子頭はじめ道具一切消失。活動再開。

・大浦虎舞:虎頭・装束等一式流失。活動再開にむけて準備中。

・境田虎舞:舞手数名死亡。山車流失、太鼓浸水、頭廃棄。

・八木節:山車以外ほとんど流失。活動再開。

その他、被災調査中の祭礼・郷土芸能約10団体あり。

●大槌町
・安渡虎舞:屋台・太鼓などが無事。震災後すぐに他の虎舞団体と道具の貸し借りをしながら活動再開。

・城山虎舞:装束や屋台、太鼓など流失。震災後すぐに他の虎舞団体と道具の貸し借りをしながら活動再開。

・向川原虎舞:装束や屋台、太鼓など流失。震災後すぐに他の虎舞団体と道具の貸し借りをしながら活動再開。

・陸中弁天虎舞:道具倉庫流失。太鼓など残る。震災後すぐに他の虎舞団体と道具の貸し借りをしながら活動再開。

・吉里吉里鹿子踊(きりきりししおどり):道具類浸水したが洗浄。お盆に活動開始予定。

・安渡大神楽:獅子頭など流失。

・城内大神楽:獅子頭など流失。9/23小槌神社祭礼奉納予定。

・中須賀大神楽:獅子頭など流失。

・浪板大神楽:獅子頭・太鼓などほぼ残る。

・松ノ下大神楽:獅子頭・太鼓など流失。

・吉里吉里大神楽:獅子頭など流失。獅子頭を彫る職人行方不明。

その他、被災調査中の祭礼・郷土芸能約数団体あり。

●釜石市
日本財団『伝統文化復興基金』による虎舞連合会や大神楽への山車や太鼓の支援が発表された。

・南部藩壽松院年行司支配大神楽:日本財団から太鼓1対。

・東前太神楽(東前青年会):日本財団から山車1基、太鼓1対。

・尾崎虎舞(尾崎青友会):2名死亡。道具倉庫無事。日本財団から山車1基、太鼓1対。

・只越虎舞(只越青年会):日本財団から山車1基、太鼓1対。

・箱崎虎舞:道具倉庫無事。日本財団から太鼓1対。

・平田虎舞(平田青虎会):衣装・道具など流失。日本財団から山車1基、太鼓1対。

・鵜住居虎舞:衣装・道具一式流失。倉庫内の屋台なども流失。活動再開準備中。歌舞劇団荒馬座が現地支援。

その他、被災調査中の祭礼・郷土芸能約10数団体あり。

●大船渡市
・仰山流(ぎょうざんりゅう)笹崎鹿踊:鹿頭・道具類流失。関西から鹿角が寄贈された。

・永浜鹿踊り:OB2名と踊手2名死亡。頭・道具類、公民館流失。お盆供養に向けて活動再開か。関西から鹿角が寄贈された。

・門中組虎舞:虎舞伝承館は津波被害を受けながら残る。装束は流失。すでに復興公演を開催。

・西舘七福神:装束・道具消失

・平七福神:装束・道具消失

・浦浜念仏剣舞:伝承館が流失し一切をなくす。8/7盆供養、8/16三陸みなと祭りで活動開始。歌舞劇団荒馬座が現地支援。(社)全日本郷土芸能協会会員。

8/16越喜来港で「三陸みなと祭り」が開催予定。
浦浜念仏剣舞、川原鎧剣舞(大船渡)、金津流浦浜獅子躍など郷土芸能が出演予定。

その他、被災調査中の祭礼・郷土芸能約20数団体あり。

●陸前高田市
・けんか七夕:4台の山車が出るけんか七夕まつりは8/7公演を目指して準備中。道具類などの倉庫流失。

・うごく七夕:12組あるが8/7七夕で、それぞれの組で独自開催する。高台の3台無事。長砂(ながすか)組の山車発見。8台は流失、全壊。川原組も活動準備中。川原組は小正月の獅子舞も再開準備中。

その他、被災調査中の祭礼・郷土芸能約10数団体あり。


【宮城県】

●気仙沼市
・浪板虎舞・岩井崎明戸虎舞・松圃虎舞:数名が死亡、行方不明。道具類流失。活動再開(予定)。

・古谷館打ばやし・小々汐打ばやしなど宮城県沿岸にはたくさんの「打ばやし」あり:数名が死亡、行方不明。道具類流失。再開の見込みたたず。

その他、被災調査中の祭礼・郷土芸能約20数団体あり。

●南三陸町
・行山流水戸辺鹿子躍(ぎょうざんりゅうみとべししおどり):二名死亡。子ども用の装束発見。大人のものは流失。活動再開。

・波伝谷(はでんや)獅子舞:壊滅状態。

その他、被災調査中の祭礼・郷土芸能約20数団体あり。
ほとんどが、道具流失などの被害を受け休止中。

●石巻市
・雄勝法印神楽:会長行方不明、ほとんど流失。すでに活動開始。

・渡波獅子風流(16組):一名死亡、用具全て流失。復興に向けて活動中。

・田代島獅子舞:用具全て流失。復興に向けて活動中。

・名振のおめつき・県指定:用具全て流失。10数名死亡。

その他、被災調査中の祭礼・郷土芸能約数十団体あり。

●女川町
被災調査中の祭礼・郷土芸能約20数団体あり。

●東松島市
・大曲浜獅子舞:会長・副会長含め3名死亡。道具流失。

その他、被災調査中の祭礼・郷土芸能約数団体あり。

●七ヶ浜町
被災調査中の祭礼・郷土芸能約10団体あり。

●多賀城市
被災調査中の祭礼・郷土芸能数団体あり。

●名取市
・閖上大漁唄い込み踊:死亡者数名。中断中だが復興したい。

その他、被災調査中、数団体。

●亘理町
被災調査中の祭礼・郷土芸能数団体あり。被災している模様。

●山元町
被災調査中の祭礼・郷土芸能数団体あり。被災している模様。


【福島県】

依然不明。確認中。


※被災地の郷土芸能についてご存知のこと、また上記で訂正や不明の点がありましたら下記までご連絡ください。

(社)全日本郷土芸能協会
〒107-0052東京都港区赤坂6-7-14-102 
TEL・03-3583-8290 FAX・03-3583-2089
メール:info@jfpaa.jp
東日本大震災『郷土芸能復興支援プロジェクト』担当:小岩


上記被災郷土芸能の復興のための支援金を募集しています。
東日本大震災『郷土芸能復興支援プロジェクト』 支援金口座

三菱東京UFJ銀行 赤坂見附支店(064)  普通 0126803
口座名義  郷土芸能復興支援プロジェクト

被災郷土芸能状況報告 その2 [2011年08月01日(Mon)]
昨日31日東京の新井薬師でのイベントに、岩手県大船渡市三陸町越喜来の「金津流浦浜獅子躍」の皆さんが出演しました。

奉納に先駆けて、雨が大降りになってきましたが、何故か奉納直前になっては止み、最中も降らず、終って再び降り始める…郷土芸能公演では往々にしてあることですね。


金津流浦浜獅子躍は、元々は供養の踊りです。そして礼儀に大変厳しい踊りです。
今回も、新井薬師の門をくぐる前に門を褒める唄を歌い、本堂前では慰霊の念仏唄を歌います。



心尽しの唄を歌った後は、観客の前で踊りを披露しました。



皆20代〜30代の若者たちです。
しかし、獅子躍が伝えてきたその本当の意味を十分に理解した踊りに、私には見えました。

このブログでも触れましたが、金津流浦浜獅子躍と浦浜念仏剣舞が伝承されている越喜来地区は津波被害を受け、道具類を保管していた倉庫ごと全てを流失しました。特に念仏剣舞の道具は、ほとんどが発見に至ってはいないのですが、会長の「お盆での供養奉納は何としてもやらなくてはならない」という想いのもと、準備を進めている最中です。

8月7日には越喜来地区で亡くなった方々のための「新盆供養」をする予定だそうで、実質これが甚大な被害を受けた浦浜念仏剣舞にとっての再スタートにもなるわけですが、あくまでも浦浜に住む人々による浦浜の人々のための踊り奉納であります。

この盆供養からの再出発に向けて、企業メセナ協議会『GBFund』の助成によって、念仏剣舞に踊りに必要な毛采(けざい)と扇子、笛をなんとか揃えることができそうです。




毛采は、踊手が頭に被る髪の毛様のもので、北上の鬼剣舞の踊手が被っているのを見たことのある人も多いことでしょう。

【鬼柳鬼剣舞保存会提供】


ただ、鬼剣舞の毛采は馬の尻尾毛だけで出来ているそうですが、浦浜念仏剣舞ではそこにたてがみを混ぜて作るのがこだわりだそうです。

【浦浜念仏剣舞保存会提供】


これに関して、このたてがみを探すのは一苦労でした。馬の名産地であった奥州でも今や供給量が大幅に減ってしまい、被災を受けなくても困っている団体はたくさんあることが、今回明らかになりました。

全郷芸でも色々手を尽してルートを探してみたところ、同じ全郷芸会員である北上に鬼柳鬼剣舞庭元から「京都で取り扱っているらしい」と情報をいただき、早速紹介しました。

そしてこれが縁で、すぐ側にいながら今まで交流のなかった、内陸の鬼剣舞と沿岸の念仏剣舞の剣舞同士の縁までも繋がり、以後交流を活発化していくとのこと、とても嬉しいことです。


浦浜念仏剣舞と金津流浦浜獅子躍は、8月16日越喜来港(今年は三陸公民館駐車場)で開催される「三陸港まつり」にも揃って出演されます。他地区の剣舞や太鼓団体も出演予定だそうです。

祭りや郷土芸能の多くは、8月お盆、鎮魂と復興の祈りから再活動を始めます。

被災郷土芸能状況報告 その1 [2011年06月14日(Tue)]
震災後、全郷芸はまず東北各地の会員さんたちと連絡を取ろうと試みましたが、ライフラインの断絶がそれを阻み、また、果たしてこのような大変な時期に「郷土芸能のことで」連絡を取っていいものだろうか、気兼ねさえ感じていました。

しかし、いつまでもそうもしていられない。
電気や携帯電話の回復も見えてきた頃に、思い切って連絡を取ってみました。

この全郷芸会員安否情報の詳細は、『(社)全日本郷土芸能協会会報第63号』に掲載してありますが、被災地の主な会員としては、


【岩手県】

大船渡市三陸町
浦浜念仏剣舞(うらはま・ねんぶつ・けんばい):保存会員は無事。面・衣装・道具・楽器などほぼ全てを流失。
浦浜念仏剣舞保存会 提供


金津流浦浜獅子躍(かなつりゅう・うらはま・ししおどり):保存会員は無事。装束など無事。太鼓1基流失。
金津流浦浜獅子躍保存会編『孜孜之獅子』より


田野畑村
菅窪鹿踊(すげのくぼ・ししおどり):伝承地は高台のため、全員無事。
菅窪鹿踊保存会 提供


【宮城県】
石巻市桃生町
寺崎はねこ踊り:伝承地は内陸のため、全員無事。

(社)全日本郷土芸能協会 提供




上記のように、会員の中でも大きく被災を受けたのは、浦浜念仏剣舞と金津流浦浜獅子躍さんでした。
○団体ホームページ『浦浜民俗芸能伝承の杜』

この芸能が伝わる大船渡市三陸町越喜来(おきらい)地区では、死者63名、行方不明31人、家屋の全壊231戸。基幹産業は漁業で、有名なあわびやワカメ・ホタテの養殖施設、漁船もほとんど流失してしまったと、両芸能の保存会長である古水様からご連絡をいただきました。

両芸能の保存会のメンバーは、10名が自宅や店舗などを流され、また合同詰所であった古民家も津波で全壊。そこに保管していた剣舞の太鼓や道具の多くが流失・破損してしまいました。

それでも、保存会員の皆さんは、復興に向けてそれぞれの職場や地域で連日奮闘しています。
そして、この二つの芸能の根底をなす「鎮魂」を考えた時、メンバーの皆さんは復興活動の継続を誓い、「8月16日の送り盆」で供養の踊りを踊るために、稽古や装束の準備に取りかかっています。


今日6月14日付の岩手日報と、読売新聞には、全郷芸会員でもある東京の「民族歌舞団荒馬座」と浦浜念仏剣舞との記事が出ています。

東京浅草の宮本卯之助商店の「太皷館」では、浦浜念仏剣舞と金津流浦浜獅子躍を取り上げた特別展示を開催中です。

浦浜をはじめ、被災地の郷土芸能への支援・応援の声は高まるばかりです。
とりら」の皆さんはこんな募金活動をしています→『とりら岩手三陸沿岸の民俗芸能応援募金


東北の沿岸地方は過去にも辛く苦しい状況を何度も経験してきました。
それでも、先祖たちは郷土芸能を絶やすことなく伝えてきました。
郷土芸能が精神的支柱であったからに他なりません。

そして今、こうした状況になっても、ひたむきに郷土芸能に取組む皆さんの姿。
今でも、郷土芸能が果たす役割は大きいようです。