以下は、IFLA(国際図書館連盟)のマニュアルから、災害発生時のマニュアル部分を抽出しました。
水損資料の応急処置については、現在様々な団体のHPで見ることができますが、こちらはより専門家向けに、初動から一段進んだ段階までの対応方法を記してあります。
@@は、特に重要な部分、(@@)は、筆者の注記です。
(文責:谷村 Hilgeman 博美)
反応と対応(災害発生時)
― いかなる緊急時においても、常に、人命の安全が最も優先されるということを忘れないこと。
― 組織は常に、安全の問題に関わる場合、救急サービスに従わなければならないことを忘れないこと。
― 対応の種類は、災害の影響がある機関に限ったものであるか、または、災害の影響が地域全体/国全体にわたるものであるか(例えばハリケーンや地震)による。
必要なら、可能な限り、「独力で対応する」ことができるよう準備すること。
1. 最初の対応
― 警報を発して、職員の中のしかるべきメンバー及び適当な救急サービスと連絡を取ること。
その機関の通常の開館時間外に起きる災害は、おそらく、警備員かメンテナンスの作業員によって発見されるということを忘れず、彼らに対し、必ず、通知の手順について適切に周知しておくこと。
― 建物から避難すること。適切で安全であれば、部分的な救済活動を行うこと(例えば、水道を止める、消火器を使うなど)。
2. 主要な災害対応
災害対応チームのリーダーは、救急サービスと協力して、適切なレベルの対応を決定するために、状況を評価すべきである。
そして、リーダーとチームの他のメンバーは必要に応じて、以下の人たちと連絡をとるべきである。
― 他のスタッフ
― ボランティアになり得る可能性のある要員
― 外部機関
― 保険業者
― 専門家
最初の評価は、災害の性質により、建物の外部からしかできない可能性がある。
そして、敷地内に再び入ることを救急サービスが許可した時に、その次の段階の評価を行う必要があるかもしれない。
3. 救出
「急がば回れ」(急ぐほど遅くなる)を忘れないこと。
損傷を受けた資料はできるだけ早く移動させなければという心理的プレッシャーがあるだろうが、状況を的確に評価して、救出を始める前に場所が安全な状態になることが肝心である。
特に、その場所から移動した資料は必ず、すべて適切にリスト化し、資料を入れたコンテナにはラベルを貼ることがとても大切である。
それによって、後で、その資料がどこに行ったか容易にわかるからである。
建物が修繕されるよりずっと前に、「極めて重要な記録」にアクセスする必要が生じる機関もあるだろう。
救急サービスから、その場所に再び入ることが許可された時は、様々な手段が採られるべきである。
a 状況とニーズに関して、再評価する
b すべての活動と支出を記録しておく
行動を起こす前に、保険と後から行う分析のために、被災場所と被災資料を写真かビデオ撮影すること。
救出の全過程を通じ、継続して写真により記録しておくこと。
余分の支出が生じた場合はすべての請求書を取っておくこと。
c 環境を安定的な状態にする
― 電気はすべて、必ず主電源を切ること。
― 被害を受けていない資料は、例えばビニールシートで覆うなどして、風雨から保護すること。
(くれぐれも、資料、その資料のある場所、シートが良く乾いていることを確認してください。
床に直接置いてビニールシートをかけると、往々にして床の湿度が高く、カビの原因になります。)
― (被災)場所は必ず窃盗や略奪から守ること(柵を作る、警備員による警護など)。
― 必ず水をくみ出すこと。
― 許容できる環境レベルを作り、維持していくために、必要に応じて扇風機、除湿機、ヒーターなどを使うこと。
(乾燥のためのヒーターの使用は、温度を上げ、ひいてはカビの発生を促すので注意を要する。)
可能なら、温度と相対湿度を定期観察する装置を設置して必ず環境をチェックすること。
d 水損資料の移動の準備
― リーダーの監督の下に、移動要員を動員し、簡潔に指示すること。
(救出優先順位を頭に入れておく。)
― 復旧チームには潜在的な危険が多々あることを注意させること(例えば、不安定な建物、ぐらぐらする棚、滑りやすくでこぼこな床面、汚染された水など)
― 全員が必ず適切な服装をすること。
必要なら、長靴、手袋(現場が泥や下水等に汚染されているかもしれないので)、マスクをすること。
― 何を一番先に救出すべきかについて、決められた優先順位に従うこと。
e メディアとの関係
「広報渉外担当者」を任命し、定期的に報道・放送関係者への発表を行うこと。
― 広くコミュニティ全体や、修復、再建プロジェクト等に対して寄付をしてくれる可能性のある人たちから、同情や支援を引き出すため。
― その機関の利用者に、資料の被害状況やサービス再開への進捗状況について知らせるため。
― 公表する情報は、専門分野のウェブサイト(例えば、図書館、文書館関連のメーリング・リスト)にも搭載すべきである。
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