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福島第一原発 潜水 4[2017年09月17日(Sun)]
2017年 03月 07日
0307 福島 4 編集 | 削除

 2月20日 
 剣だしは、福島第一原子力発電所の沖、およそ6キロにある天然礁である。かつて、スガ・マリン・メカニックで福島県水産試験場の依頼で調査したことがある。残念なことに実際に潜水したのは自分ではなかった。チーフダイバーだった河合が調査した。その報告書を垣間見たことがある。岩が入り組んでいて隙間がある。魚が隠れる、集まりやすい良い磯なのだ。そして、河合が言っていた、福島らしからぬきれいな磯だと。その場所の平面図だけが、なぜか残っている。僕が行きたいと思って残しておいたのだろうか。
 桶田プロデューサーと最初に会った時に見せたのもこの剣出しの図だった。なお、この磯根の名称は、各組合によってちがうらしい。剣だしとは、あくまでも僕の持っていた図に書かれた名称である。手にしている図にも、イシキネとも書いてある。
 2011年に福島県水産試験場におじゃましたとき、スガ・マリン・メカニックで調査した報告書が書庫にあり見せてもらった。写真が入った報告書で、その中に、この磯ねの報告書もあって、見たような記憶がある。今回訪ねた時は見せてもらえなかった。テレビ局の取材も兼ねていて、カメラが入っていたからだろうと思う。
 終わりに、結論として剣だしのことはもう一度のべるが、僕の調査手法の基本は定点連続観測である。この根は定点になる。
 20日朝、早朝の出発だった。聞いていなかった。すでに述べたように今回の自分は、潜水計画、段取りの中枢ではない。出演者という役割だ。
 午前中だけがかろうじて潜れる海況だろうとは、僕も予想していた。たたき起こされる形になった。一緒の部屋の久保さんは、規律正しく、朝もきちっとしている。もう出発できる状態になっている。僕は朝が弱い。10時頃にならなければ、人として機能しない。
 車に乗せられて、久ノ浜に向かう。10分ぐらいで到着してしまう。せめて1時間かかれば、眠れるのに。潜水機材はすでに船に積んである。撮影調査機材を用意して、潜水機材は確認すれば良い。
 僕の撮影機材は大げさなものではない。昔使っていたsea&seaのシンプルなハウジングにフィッシュアイのライトをつけた。深さ40mでも大丈夫だし、いざというときに手放して捨てても良い。
 中川はお道具といえるプロの撮影機材を持つ。軽量のカメラを用意してきているがそれでも大きい。山本君は、ガンマ線分析機を持つ。久保さんは大きいDPVを持っている。僕が流されたとき、ゴムボートに到着出来なかった時に曳航してくれるという。そんなことは無いが、スーパバイザ―である。
 久ノ浜から第一の前までは、40分ぐらいだろうか。剣出しのGPS位置は、漁師に正確な数字をきいている。

福嶋第一.JPG
 沖合、6キロ沖といっても、第一はかなり近くに見える。
第一をバックにチームの記念写真を撮る。
 
 潜水準備をする。いつも何か重要なものを忘れる。マスクを取り違えている。ウエアラブルカメラが取り付けられないマスクを持ってきてしまっている。これは、痛恨と言っていい。僕の見た目の映像が撮れないのだ。このため、このポイントの水中写真がない。
 泣いているわけには行かない。
 凪とはいえないまでも、ゴムボートが出せる。
 及川丸は、停止して、その周辺を小回りする。GPSの位置なのだ。小高く盛り上がっている上に来ている。位置決め、潜降の錘、ブイを入れる。船から飛び込んで、ブイまで泳ぐのがいつも不安である。泳ぐトレーニングは欠かしていないが、不安である。恐怖心、不安を大事にする。安全は恐怖というカードの裏側だ。などと書いているが、本当に不安だ。
 上回り、潜らない世話役の国方君がタンクを背負わせてくれる。みんなが入り、スタンバイした状態で、船を近づけて貰って、サイドロールで飛び込む。
     飛び込み.JPG    

 泳ぐと、少し流れがある。流れというほどの流れではないのだが、下半身が浮いているような感じがする。インナーの浮力に慣れていないだけだと言い聞かせて泳ぐ。潜降索につかまってたぐるとすこし緩い。余分があるということだ。山本さんと一緒である。僕は、水底でγ線分析器を操作する。それを中川が撮影する。このカットを押さえれば、あとは、その場の生物を撮れば、この撮影は成立する。
 潜降索をたぐるが、下を向いているので暗い。人間の目はカメラの目に比べて暗い。
 潜降.JPG
 海底に着く。泥岩という感じ、所々にオレンジのホヤが着いている。γ線分析器を手に取る。驚いた。
 分析器は上面のCRT表示、テレビモニター画面を上からウエアラブルカメラで撮影記録するようになっている。そのウエアラブルカメラが飛ばされてしまってない。取り付け部が衝撃を予想した強度がなかった。これがこの日二回目の痛恨、もう一つ痛恨が続くのだが、それは後からわかること。
 分析器を持って少し泳ぐ。岩ノ下に隙間がある2mほどの高さの磯に接近する。魚、多分メバルの類が、右手下に見えた。それをゆっくり見る余裕がない。視界が狭窄している。岩ノ下に分析器のヘッドを差し込んでみる。
 自分の潜水時間は無減圧で、8から9分時計画していた。後ろでカバーしてくれている久保さんに浮上の合図をする。潜降索の位置までは10mも離れていない。
 ロープをたぐるのは長くかかるという感覚がある。むかし、福島の魚礁に潜水したころとは、浮上の速度が2倍以上遅くなっている。
 波が出てきているのでセフティストップは5mでする。新しいダイブコンピューターi300 は、セフティストップの表示がわかりにくい。
 頭を抑えるように上に見ていてくれる久保さんが上がったので、僕も上がる。波がかなり高くなって来ている。BCとウエイトを脱ぐのに手助けを受けてしまう。本船にもどり、船縁から手を降ろしてもらって、よじ登る。それほど息は切れていない。
 潜水開始 9時42分 最大水深27.2m、潜水時間14分 水温11度
 波が高くなってきて、山本さん、中川が機材をあげてよじ登り、ゴムボートの引き揚げを見ると、このくらいがゴムボートを使う潜水の限界かと思う。
 中川の撮影プレビューを見ると、カレイ、そして黄色いアイナメもいる。カレイは手乗りのように接近出来たという。海底はオレンジのホヤで美しい。
 とにかく想像していたよりもきれいだ。これが、福島第一の目前なのか、福島の海は生きている。
 
 明日21日は風が強くなる予想で、潜水は中止、中川と大西は、東京に戻った。
 僕は、気圧配置は冬型だから、明日も早朝は潜れるのではと未練を残しているが、とにかく、福島第一の前に潜水でき、撮影もできた。自分については痛恨がいくつかあるが仕方ない。
 温泉に入って身体をやすめよう。
 
 2月21日
 宿の夕食は相当に豪華であり、朝食のバイキングもとても良いのだが、あまり食欲がない。と言って食べないわけではない。
 分析器のカメラはゴムボートの上で外れて飛んでしまった。外れないように取り付ける工夫、工作をしなければならない。みんなでドイトに行った。取り付けはうまく出来たのだが、いわきのドイトは大きい、何でもある。東京人のくせに田舎にきて感心している逆おのぼりさんだ。僕はサングラスを買ってしまったが、一括して久保さんが払ってくれてしまった、テレビ局に請求すると言って、僕が出そうとするのだが、聞いてくれない。ありがたくいただいて、久保さんに買って貰ったサングラスということで、大事に使おう。
 宿に戻り、国方君は富岡町の同級生にと会いに行く。久保さんは温泉でゆっくりする。山本さんはアクアマリン福島に行くという。
 僕は疲労が大きいので、常識的には温泉を選択するべきだ。僕は迷ったが、「えい!」っとばかりに、アクアマリンを選択した。アクアマリンとは因縁があり、書くことがたくさんあるが、それは別の話だ。


Posted by 須賀次郎 at 17:05 | 活動 | この記事のURL | コメント(0)

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