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〔後房雄のブログ〕

現実関与型の政治学者が、日本政治、自治体改革、NPOやサードセクターの動向などについて話題を提供しています。一応研究者なので、面白かった本や論文の紹介もします。


なでしこ、再び [2012年07月25日(Wed)]
なでしこジャパンのオリンピック初戦がもうすぐ始まります。

日本中で高まっているこの期待は、Wカップのあの奇跡がもう一度みたいということでしょう。ただの奇跡というだけでなく、想像を絶する努力の歴史と、試合に臨んだ志の高さという裏打ちのある奇跡です。

女子サッカーの認知、という明確な共通目標があることが決定的に重要だったと思います。国内でははるかにメジャーになった男子サッカーでは、これだけの感動はかえって生まれなかったでしょう。個々のスター選手はヒーローになったでしょうが。

日本の女子サッカーは、Wカップ優勝でもまだメジャー化の途上です。選手たちも、その行方はオリンピックの成績にかかっていることを明確に意識しているでしょう。

本番でのなでしこの勝利を期待させる最大の要素は、その意識です。

個々の選手のアピールやファインプレーは、それなりにスポーツの面白さですが、それを超える何かを目指しているという迫力がないと、やはり薄っぺらいです。

小説「もしドラ」で、みなみちゃんが高校野球部のミッションを、「人々を感動させる組織」と表現しました。

サッカーファンはともかく、一般の日本人が男子サッカーよりも女子サッカーに引きつけられるのは「感動」が味わえそうな匂いがするからでしょう。
TPPが軸? [2012年07月11日(Wed)]
10日に、小沢新党の政策が報道され、TPPに反対することが明らかになりました。

そのとたん、翌日に橋下氏がTPP賛成が軸だと言い出しました。

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大阪維新の会を率いる橋下徹大阪市長は11日、小沢一郎元民主党代表が旗揚げする新党と連携する条件について「環太平洋連携協定(TPP)をどうするかが軸。維新の会はTPPに賛成だ。価値観が一致するかどうかが重要で、誰と組むかはどうでもいい話だ」と指摘した。(北海道新聞)
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誰と組むかはどうでもいい話だ、などと言いながら小沢氏と組むのはいやだということですね。

突然、野田総理を絶賛したり、自民党にもいい人がいると言ったり。

そうすると、どういう勢力編成を考えていることになるのでしょう。プロのアドバイザーがかなりついているので、なかなか興味深いことになりそうです。
維新八策 [2012年07月09日(Mon)]
7月5日に、大阪維新の会が次期衆院選に向けた政策集「維新八策」改訂版を発表しました。

私もいくつかの選挙用マニフェストづくりに関与してきましたが、現在考えうる限りのインパクトのある項目を網羅的にあげていると思います。私の趣味でつまみ食いで紹介してみます。

給付型公約から改革型公約へ
リンゴではなく、リンゴのなる木の土を耕し直します。

自立する個人、地域、国家

決定でき、責任を負う民主主義、統治機構

@統治機構
地方分権型国家
自治体の自立・責任・切磋琢磨
国は国防・外交・通貨・マクロ経済政策などに集中し、内政は地方・都市の自立的経営に任せる
国の仕事は国の財布で、地方の仕事は地方の財布で
国と地方の融合型行政から分離型行政へ

参議院廃止を視野に入れた衆議院優位の強化
条例の上書き権
消費税の地方税化
都市間競争に対応できる多様な大都市制度=大阪都構想
(プロの専門知識も踏まえた的確な分権論です)

A財政・行政改革
首相が年に100日は海外に行ける国会運営
外郭団体、特別会計の徹底見直し
行政のNPO化

B公務員制度改革
公務員を身分から職業を

内閣による人事権の一元化
内閣による公務員の一括採用。社会人中途採用を基本
任期付を原則とする等官民の人材流動化を強化

C教育改革

教育委員会制度の廃止

大学も含めた教育バウチャー(クーポン)制度の導入=教育機関の切磋琢磨を促す
精と・保護者による公公間、公私間学校選択の保障

公立学校教員の非公務員化

D社会保障制度改革

個人のチャレンジを促進し、切磋琢磨をサポートする社会保障
若年層を含む現役世代を活性化させる社会保障
負の所得税・ベーシックインカム(最低生活保障)的な考え方を導入

供給サイドへの税投入よりも受益サイドへの直接の税投入を重視(社会保障のバウチャー化)
供給サイドを切磋琢磨させ社会保障の充実を通じて新規事業・雇用を創出

失業対策、生活保障、年金等の社会保障を一元化
努力に応じた、現物支給中心の、最低生活保障制度を創設

(生活保護)現役世代は就労支援を含む自立支援策の実践の義務化
(医療)公的保険の範囲を見直し混合診療を完全解禁

E経済政策・雇用政策・税制
競争力を重視する自由経済
イノベーション促進のための徹底した規制改革
TPP参加、FTA拡大

先進国をリードする脱原発依存体制の構築

民民、官民人材流動化の強化
徹底した就労支援と解雇規制の緩和を含む労働市場の流動化(衰退産業から成長産業への人材移動を支援)

正規雇用、非正規雇用の格差是正(同一労働同一賃金の実現)

国民総確定申告制
行政を切磋琢磨させるための寄付税制の拡大
国民総背番号制で所得・資産を完全把握

F外交・防衛


G憲法改正
憲法改正発議要件を3分の2から2分の1へ
首相公選制

憲法9条を変えるか否かの国民投票

書き写していて気づいたことですが、一番お気に入りの言葉は「切磋琢磨」のようです。
全体として、新自由主義を踏まえた「第三の道」、「市場主義3.0」そのものです。
教育でも福祉でもバウチャー制度を徹底して活用するという点も特徴です。
ルグラン『準市場』の訳者としてもうれしいです。

もちろん、以上の政策はほとんどの点で賛成です。

唯一反対の点は、「首相公選」です。
地方自治体の二元代表制の矛盾を批判し、「議会内閣制」を提起したのは誰だったのでしょうか。

衆議院と参議院の二院制の矛盾を正面からテーマとして取り上げたのは大賛成ですが、そのうえで、公選首相と衆議院の多数派がねじれる可能性のある制度をわざわざ入れるというのはどういう意図なのか理解できません。

一院制の小選挙区制型の議院内閣制こそが、決められる民主主義の王道です。

いずれにしても、これらの政策の基調は本来は民主党が掲げるべきだった「第三の道」そのものです。はるかに洗練されて体系性がありますが。

問題は、これを実行できる勢力形成と統治能力ですね。

「オリーブの木」の行方とも絡みますが、さて、橋下氏の政権戦略はどうなるのでしょうか(橋下、松井は市長と知事にとどまるというのは確実なので、そのうえで総選挙において政策を軸に事前に政権連合をどのように構築するかということです)。
「オリーブの木」、リバイバル? [2012年07月05日(Thu)]
2、3日前から、小沢一郎氏が、次の衆院選では「オリーブの木のような形でやればいい」、「いろんな連携が必要だ」と述べたという報道があり、私のところにも2,3のメディアから取材が入ったりしています。

日本版「オリーブの木」の全盛期は1997,8年なので、知っている人は政治部記者でもかなりのベテランになると思います。さすがに、当時からの民主党関係者は覚えている人が多いようですが。

96年のイタリア総選挙は、93年に小選挙区比例代表連用制(小選挙区制が75%)が導入されてから2回目の総選挙でしたが、そこで中道左派連合が僅差で勝利し、イタリアで初めての本格的な中道左派政権ができました。その連合の名前が、オリーブの木(L'Ulivo)だったので、こうした選挙連合の方式が日本でも一躍注目され、旧民主党の菅代表などが旗を振ったりしたわけです。

私も、『「オリーブの木」政権連合』(大村書店、1998年)などという本を出したりして、紹介者の役割を務めました。(もう少し中に入りましたが)

ところで、イタリアの96年総選挙では、中道右派も「自由の極」という選挙連合で戦いました。そもそも、小選挙区制第一回の94年総選挙以来現在まで、イタリアでは右も左も、10以上の政党でそれぞれ選挙連合を組んで戦っているのです。

各小選挙区で1議席を争い、勝てばほぼ確実に政権が取れるのですから、みすみす味方同士共倒れにならないように、候補者を統一して戦った方がいいというのは、ゲームができる小学生でもわかることです。(ところが、日本では政治家たちがそれを理解しないまま、民主党は何度も共倒れで、総選挙に連続4回も負け続けたわけですが・・・)

しかし、「オリーブの木」、より正確にはイタリア型の政権連合のポイントは、ただ政党間の連合を組むということではありません。

総選挙における政権選択肢として、共通マニフェスト(4年間の政権期間は遵守するものとして)、統一首相候補を掲げ、すべての小選挙区で候補者を統一するということが要件です。総選挙の後ではなく前に、有権者にとっての政権選択肢として提示し、選挙で勝って初めて正当性をもって政権を担うということが核心です。

「みんなの党」や自民党の長老たちが考えているような、選挙後の無原則な離合集散とはまったく異質なものです。

ところで、現在の政治状況で総選挙をやるとすれば、三党合意で国会を仕切っている民主党、自民党、公明党が正式に連合を組んで一つの選択肢を提示するのが筋です。

だとすれば、それに対抗する選択肢を提示しようとする勢力が、小選挙区で勝てるように、もう一つの政権連合を結成するのは当然です。

もちろん、両者はそれぞれ、マニフェスト(今度は4年間ちゃんと守ってね!)、首相候補(4年間続けてね!)を提示する責務があります。

都知事の石原さんや大阪維新の会の松井幹事長、みんなの党の渡辺さんや江田さんなどが、小沢とは絶対組まないと言っています。もちろん、組まないという戦略もありですが、それでも三党連合に勝てるという見通しが必要です。負けても小沢とは組まない、というのは政治家ではありません。

これだけ嫌われている小沢氏が、「オリーブの木」に言及するのは、どれだけ分かっておられるか知りませんが、政策だけを基準に連合を組むべきだという筋の通ったメッセージを出すということを意味します。

小選挙区制原理主義者の小沢氏ですから、分かって言っている可能性が高いです。

さて、ほかの反三党連合の諸勢力はどういう反応をするでしょうか。

いずれにしても、政党というものの成熟度が強度に低いことが証明されてしまった日本では、せめて4年間はマニフェストを基礎に共同歩調をとるという訓練からはじめる方がいいかもしれません。選挙直後ではなく選挙の直前にやるのなら、日本の政治家たちが大好きな離合集散、政界再編も何の問題もありません。

とりあえず、4年の任期中は一つの勢力として活動してくれさえすれば、有権者にとっての政権選択は意味を持ちます。民主党のように、形は一つの政党でも、4年間すらマニフェスト実現のために歩調を合わせられないのに比べれば、百倍もましです。

民主主義は暴走する [2012年07月04日(Wed)]
朝日新聞の3日付け15面に、鹿児島県阿久根市の竹原信一前市長を支援し、出直し市議選で市議になった牛之浜由美さんのインタビューが載っています。

竹原氏にコミットしたことの功罪を語っていますが、コミットした者同士、同感する点も多いです。
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竹原さんの暴走を予測できなかったのは、「人間性を読めなかった自分の底の浅さ」と反省しています。でも、最初竹原さんを支持したことに後悔はありません。あの人が市長になったおかげで、議会も四民も政治に目覚めたと思います。

市民の厳しい監視の目のおかげで、議会にも役所にも「しっかり仕事をしなければ」という意識が生じたのが、一番大きな変化だと思います。

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安全圏にいて評論だけしている人たちには理解できないと思います。間違いを犯さないことを最優先したら、どんなコミットもできないでしょうから。

偶然ですが、ちょうど読んでいる土屋恵一郎『怪物ベンサム』(講談社学術文庫)という18世紀末の急進改革派であったベンサムの評伝に次のような一節があります。歴史は繰り返してきたのでしょう。
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シェルバーン、ベンサム、小ピットの眼から見れば、ホイッグの門閥政治は、ただ党派的利害のためのものでしかなかった。たとえ国王と結びついても真の改革を進めることができるのであるならば、それを選ぶ。それがシェルバーンとベンサムに共通する心情である。

改革の効率を権力のうちに求めるのは危険である。だがその危険を冒してでも前進しようとするのが、いつの時代でも変わることのない「改革者」という気質をもった人間の行動の仕方である。(168ページ)

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良い悪いというより、気質の問題なのでしょう。
それにしても、「改革の効率を権力に求める」というのは光と影の両面を含意する的確な表現ですね。
サードセクターのシンポジウム [2012年07月02日(Mon)]
経済産業研究所でやったサードセクター調査の結果発表を兼ねて、下記のようなシンポジウムを開きます。

関心のある方はお早めにお申し込みください。

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RIETI政策シンポジウム「『新しい公共』の担い手としてのサードセクター:各法人形態の現状とサードセクター構築への課題」開催のご案内

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<<お申込みはこちらから>>
https://secure.rieti.go.jp/jp/events/12073101/regist.html?id=d3Ap5YzR
7月24日(火)以降に参加証をメールで発送いたします。

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日 時 :2012年7月31日(火)13:30-17:45(受付開始13:00)
会 場 :全社協灘尾ホール(東京都千代田区霞が関3丁目3番2号 新霞ヶ関ビル)
http://www.shakyo.or.jp/jncsw/access.html
開催言語:日本語(同時通訳なし)
参加費 :1,000円(学生証提示の場合は500円)[公印を捺印した領収書を発行いたします。]
主 催 :独立行政法人経済産業研究所
後 援 :公益社団法人日本サードセクター経営者協会(JACEVO)、公益財団法人公益法人協会(JACO)(予定)、公益財団法人生協総合研究所(CCIJ)(予定)、特定非営利活動法人市民フォーラム21・NPOセンター
お問合せ:RIETI 松倉 多恵子(mailto:conf-120731@rieti.go.jp )
Tel: 03-3501-8398 Fax: 03-3501-8416
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<<開催のご案内>>
社会的、公共的課題に取り組む主体として、政府、企業と並んでNPOへの注目が高まってきたのがこの十数年であった。その延長線上で「新しい公共」の構築という理念が掲げられ、政府、企業、NPOの新しい役割分担構造が探究され始めている。そのなかで、まさにそのNPOをどの範囲で捉えるべきかという問題が浮上しているのが現在の状況である。

一方で、従来NPOの中心的存在として期待されてきた特定非営利活動法人(通称NPO法人)の組織基盤や経営力の脆弱性が指摘されるようになっている。そして他方では、社会的企業、社会起業家、ソーシャルビジネスなどへの注目が高まっている。また、社団法人、財団法人の制度が大きく変化し、一般社団、一般財団が特定非営利活動法人以上のスピードで増加している。さらに、社会福祉法人、学校法人、医療法人なども公共サービス改革の進展のなかで経営力や公益性の強化を迫られている。

こうした動向を踏まえれば、「新しい公共」の担い手として最狭義のNPOである特定非営利活動法人だけを想定するのでは不十分と言わざるをえない。大きな存在感を維持している生活協同組合や農業協同組合などの協同組合も含め、上記のような広義のNPO(民間非営利組織)、町内会・自治会などの地縁組織、公益的活動を主な目的とする企業などを広く包括するサードセクターをこそ「新しい公共」の担い手として設定すべきである。

RIETIでは、2011年初めに、日本において初めてと思われるサードセクター諸組織のほとんどを対象としたアンケート調査を実施した。本シンポジウムでは、このアンケート調査によって明らかになったサードセクター諸組織の法人形態ごとの経営実態、収入構造の現状を紹介したうえで、それぞれの法人形態の実情に詳しい専門家などによるパネルディスカッションを行うことによって、日本のサードセクター諸組織が著しく分断的になってきた経緯や理由、包括的なサードセクターを構築していくうえでの課題、そうして構築されていくサードセクターが政府や企業と並ぶ「新しい公共」の担い手としてどのような役割を果たすべきか、などについて参加者とともに考えていきたい。


<<プログラム>>
下記↓サイトをご覧下さい。
http://www.rieti.go.jp/jp/events/12073101/info.html

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13:30 - 13:40 開会挨拶
中島 厚志 (RIETI理事長)

13:40 - 15:00 総論「日本におけるサードセクターの現状と経営課題」
後 房雄 (RIETIファカルティフェロー/日本サードセクター経営者協会代表理事/名古屋大学教授)
参照:「日本におけるサードセクター組織の現状と課題―法人形態ごとの組織、ガバナンス、財政の比較―」
http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/12j012.pdf

15:00 - 15:20 コーヒーブレイク

15:20 - 17:45 パネル・ディスカッション
モデレータ
 後 房雄 (RIETIファカルティフェロー/日本サードセクター経営者協会代表理事/名古屋大学教授)

パネリスト:五十音順
 青木 信之 (内閣府大臣官房審議官)
 太田 達男 (公益法人協会理事長)
 栗本 昭 (生協総研理事・主任研究員)
 田島 誠一 (社会事業大学教授/財団法人日本老人福祉財団理事長)
 藤岡 喜美子 (市民フォーラム21・NPOセンター理事・事務局長)

17:45 - 交流会
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*上記プログラムの講演内容および講演者は状況により変更することがありますのでご了承下さい。

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