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〔後房雄のブログ〕

現実関与型の政治学者が、日本政治、自治体改革、NPOやサードセクターの動向などについて話題を提供しています。一応研究者なので、面白かった本や論文の紹介もします。


守屋武昌 [2010年07月29日(Thu)]
守屋武昌『「普天間」交渉秘録』新潮社、2010年。

元防衛事務次官で、その後収賄で逮捕された人ですが、防衛庁の役人の目から見た普天間問題の経緯が非常にリアルに描かれています。3年以上も次官を務めたのは、やはり非常に仕事の出来る人だったということなのでしょう。

そのなかで浮かび上がるのは、沖縄側のタフな揺さぶり、駆け引きに政府や国会議員が翻弄されてきた歴史です。利権もあり、基地を押し付けてきた本土への反感もあり、その動機も一筋縄ではいきません。

これに、利権のおこぼれを狙ったり、功名を狙ったりする議員たちの動きが重なって、官邸や大臣、防衛庁の役人たちはへとへとになります。外務省の防衛庁への対抗意識もあります。

アメリカなど、沖縄側が納得して決まるなら何でもいいというような感じです。

こうしたなかでともかくもまとまった政府案を鳩山首相は白紙に戻してしまったわけで、ここからもう一度沖縄側の合意を得るというのは気が遠くなりそうです。しかも、沖縄側の対応の背景にある本土への反感には歴史的正当性があります。

こうした利権、功名の渦の中で、まともに問題を解決しようとする人を見出して交渉を進めていくのは並大抵の仕事ではありません。

これほど絶望的に複雑な問題はほかに見当たらないほどです。

続けて、森本敏『普天間の謎』海竜社、2010年、を読みはじめました。
手詰まり [2010年07月16日(Fri)]
参議院選挙は民主党の惨敗、自民党の予想外の健闘(改選第一党)、みんなの党の躍進という衝撃の結果でした。

しかし、その割りに、その後の動きは見えてきません。要するに、民主党が衆議院で308議席を確保している以上、ほかの政党にはまったく打開の手がないということです。(冷静に考えれば当然のことで、だからこそ、私も参議院選挙は中間選挙にすぎないと書いてきたわけですが。)

お祭り後の虚脱感をみんなが感じることになるでしょう。

必要なことは、民主党が民意の厳しい批判を受け止めて再スタートの方針を出し、いくら叩かれようと着実に実行していくこと以外にありません。

参議院で過半数がないと言う事実は、厳然たる事実ですが、しかし、3年間は民主党が政権を担当するしかないというのも厳然たる事実で、その両者を踏まえて民主党としてやれることをやるしかないわけです。逆に言えば、野党がすべての法案を参議院で否決することも世論から厳しい批判を受けることは確実です。

民主党内部の権力闘争も、小沢氏が検察審査会の二度目の「起訴相当」判断で強制起訴になるリスクを抱えている以上(9月の代表選挙以降になると予想されているようですが)、小沢派の権力奪回は無理です。

与野党を巻き込んだ大政界再編を期待する向きもありますが、小沢グループが大挙して離党しない限りありえません。しかし、そうした単なる権力闘争を目的にした動きが世論から支持されることは考えられません。(そういうことを期待していると、自民党の自己改革が遅れるだけのことです)

結局、泰山鳴動、ねずみ一匹ということになると思います。

政界再編論などに惑わされず、いくら遅々とした歩みであろうとも、民主党政権が統治能力を付けていくのを待つかないというのが私のスタンスです。

我ながら気が長くなったもんだと思いますが。

民主党の敗因 [2010年07月13日(Tue)]
7月11日の参院選挙は、民主党の第一党も維持できない惨敗に終わりました。菅首相への交代で一気にV字回復した6月初めには予想もしなかった結果です。

敗因はかなりハッキリしていると思います。要するに、消費税引き上げを主要争点にした戦略の間違いです。

昨年8月30日総選挙において、民主党は、政治主導によって自民党時代の政治行政の大掃除をしてくれそうだという大きな期待によって政権を与えられました。

鳩山政権の9か月は見事に失敗に終わりましたが、菅政権への交代によって、国民は民主党にもう一度チャンスを与えようと気持ちを切り替えようとしました。

しかし、菅首相は、鳩山政権の反省に立って政治主導の改革への新しい方針と決意を示すのではなく、消費税増税という、改革を不徹底に放置したまま増税によって財政再建をめざすかのような方針を示したわけです。

これでは、「消費税増税の前にやるべきことがある」というみんなの党の絶好のターゲットになるのも当然です。V字回復で打撃を受けて落ち込んだみんなの党は、民主党に期待していた無党派層を再びひきつけ、都市部で第3党へと躍進しました。

農村部でも、3年前に22勝6敗だった1人区において、8勝21敗と大敗し、自民党勝利の決定的要因を作りました。3年前や昨年に民主党へとあえて投票してみた自民党支持者たちが戻ってしまったのでしょう。無理もありません。

こうした民主党の改革色の希薄化に加えて、消費税増税をあえて唐突に持ち出した意図がみすかされたということが大きかったと思います。ツートップの辞任、首相交代の効果が大きかったことに味をしめ、消費税増税という新しい争点(しかも自民党も提案しているので致命傷にはならない)を打ち出すことで政治とカネの問題や普天間問題(全体としての鳩山政権の失敗)から注意をそらせることができると読んだのでしょう。

菅さんに期待されていたことは、鳩山政権の失敗を正面から認め、今後どのように再出発しようとするのかを真摯に語ることだったと思います。

不人気な消費税増税を打ち出すことで真面目さをアピールしようとしたのでしょうが、結果としては多寡を括った感じを与えてしまったということでしょう。

敗北の理由がこうだとすれば、今後やるべきことは、あくまでも原点に立ち戻って、総選挙で掲げたマニフェストを必要な修正をしながら真摯に実行することで実績を認めてもらうということに尽きると思います。

私自身は、その際、一時の便法にすぎない事業仕分けを超えて、本格的な行政改革、公務員制度改革に踏み込むことが核心だと思います。特に、外郭団体、随意契約、天下りの三位一体構造を解体することが本丸です。

連携相手として、みんなの党、公明党、自民党がありえます(それ以外では足りない)が、公明党や自民党との連携で改革が進むとは思えません。

三位一体構造の解体に取り組むのであればみんなの党との連携しかないでしょう。そのためには、みんなの党が信頼できるほどの(あるいは拒否できないほどの)改革方針を打ち出すことが不可欠です。しかし、菅さんが首相就任直後に目指した本来の民主党の復活はそういうことのはずです。

消費税増税の議論を始めることはいいとしても、まずは今回のように唐突に持ち出したことの誤りを正面から認め、民主党の初心に戻ることから始めるべきです。

最後に、老婆心ながら、政界再編などという筋の悪い話にだけは手を出さないでほしいと思います。

ホリエモンの小説 [2010年07月05日(Mon)]
堀江貴文『拝金』(徳間書店、2010年)を読みました。ライブドア事件を題材にしたホリエモン初の小説です。

前に紹介した『もし高校野球の女子マネージャーが・・・』とは一見、まったく別の世界ですが、お金を稼ぐことにのめり込む人たちの「真実」(ある種の真摯さ)がよく描かれているように思いました。小説としても面白かったです。

以下、「あとがき」からの抜粋です。

「やりたいことがないんだよ・・・」
六本木ヒルズの会員制バーで、村上ファンドの村上世彰氏が、そうつぶやいたことがあった。いわゆる「村上ファンド事件」や「ライブドア事件」の前で、当時、世間から「ヒルズ族」と呼ばれていたころの話だ。

それまでガムシャラに働いていた人が、ある日燃え尽きて、何をしていいのか分からなくなる。

人の欲望は尽きないと言うけど、意外に人の欲望は簡単に尽きる。ある程度のお金を手に入れると、たいていの人が満足してしまうのだ。(中略)

当時、ライブドアの資産は5000億円あった。その意味で、僕も満足して燃え尽きても不思議はなかった。

でも、そうはならなかった。逆にやりたいことがあり過ぎて困っていた。当時の僕は宇宙ビジネスを軌道に乗せたくて、毎日、毎日、そればかりを考えていた。

たぶん、僕はものすごく欲望が強いのだ。
ライブドアが成功したからといってまったく満足していなかった。それはそれとして、それで得た金で次は何をしようと思考が働くのだ。

お金がないときはやれることに限界があるけど、お金があればやれることがどんどん広がる。つまり、お金を持てば持つほど、お金から解き放たれて自由に発想できるようになr。もっといえば、あらゆる欲望、金、女、酒、美食、何でもいいけど、徹底的に浸り切り、欲にまみれればまみれるほど、ある瞬間、その欲の世界を突き抜ける、そんな感覚になっていく。

突き抜ける。そうとしか表現しようがない。

それがムチャクチャ気持ちいいというか、物凄い快感を与えてくれるのだ。突き抜けた結果、聖人君主のようになるという意味でもなく、なんというか、欲から解放されて、欲そのものと一体になれるというか、うーん、やっぱり言葉にするのは難しい。

でも僕は自分の感じた気持ちをできるだけ多くの人と共感したかった。

だから小説を書いてみることにした。


堺屋太一『巨富への道 創業の極意を探る』PHP、2010年、では、創業に成功して巨富をなすことができるために必要な5つの要素の一つとして、「お金儲けが好きなこと」があげられています。

これは、お金を儲ければ贅沢な暮らしができるから嬉しいというのとは違うそうです。それはお金儲けが好きなのではなく、贅沢な暮らしが好きだということなのです。

あくまでもお金儲けそのものが好きでなければ、本当の巨富は得られない。(32ページ)

ホリエモンは、堺屋太一の挙げる5つの要素を見事に備えていると思うので、きっともう一度巨富を築くだろうと思います。

それにしても、ソフトバンクの孫氏と楽天の三木谷氏が球団を持つための作戦にホリエモンが見事に利用されたという真相が書かれていたのには驚きました。世の中、上には上がいるもんですね。
参院選挙予想 [2010年07月01日(Thu)]
参院選の予想がいくつか出ています。月曜日には各紙の土日の調査結果が出るのを待つべきでしょうが、鳩山政権末期の民主党惨敗、新党躍進という予想は、民主党、自民党ともに現状維持前後、新党伸び悩み、というような感じになっています。

週刊文春7月8日号では、民主52、自民40、みんなの党7。
サンデー毎日7月11日号では、民主53、自民43、みんなの党6。

結局、あまり変動なしということのようですが、私はそれでいいと思います。昨年、政権選択選挙をしたばかりなのに、また大変動が起きたり、それが政界再編につながったりするのは、百害あって一利なしだからです。政策よりも政局好きの政治家たちが張り切るような状況はろくなものではありません。

そもそも二院制が日本政治の障害だという点を措くとしても、参議院選挙はあくまでも衆議院の政権選択選挙の中間選挙と位置づけるべきで、与党が今後の政権運営について有権者からのメッセージを受け止めることが重要で、政権が変動したり政界再編が起こったりするというのは邪道です。各政党もマスコミも、そういう期待を煽るのはもうやめてほしいですが、またもや新党はそうした期待を膨らませているようです(首相交代によってしぼんだのはよかったですが)。

日本政治の焦点は、民主党政権の「素人主導」が本来の「政治主導」に脱皮できるかどうかだと思います。
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