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〔後房雄のブログ〕

現実関与型の政治学者が、日本政治、自治体改革、NPOやサードセクターの動向などについて話題を提供しています。一応研究者なので、面白かった本や論文の紹介もします。


竹中平蔵VS榊原英資 [2010年06月30日(Wed)]
田原総一朗責任編集の、榊原英資・竹中平蔵『絶対こうなる!日本経済』アスコム、2010年、を読みました。

田原氏は「はじめに」で次のように書いています。

かたや小泉内閣における経済・金融責任者の竹中平蔵氏、こなた民主党の最高経済ブレーンの榊原英資氏に、本当の日本経済について、とことん議論してもらった。(中略)

二人が一致して批判する問題は、日本が解決しなければならない緊急の課題である。二人が断固対立する問題は、これこそ日本の真の論点である。


たしかにその通りで、日本経済や経済政策のポイントがよくわかる本でした。

日本経済や財政の現状認識については、二人の間には大きな見解の違いはありません。

今後のビジョンについても、榊原氏が近著『フレンチ・パラドックス』(文芸春秋社)で提案したフランス型の大きな政府を主張するのに対して、竹中氏もそれを選択肢の一つとして認める発言をしています。

榊原さんの「フランス型の大きな政府」という考え方は、コンシステントな(首尾一貫した)一つの考え方。民主党はそう堂々と主張すべきだと思います。堂々と言わないところが問題なんですよ。(126ページ)

当面の経済対策についても根本的な違いはないようです。

榊原 僕は国債を60兆円くらい発行しても問題ないと考えています。カネ余りだから吸収する能力がマーケットに十分ある。国債トレーダーたちと話したら、70兆円発行しても10年債の金利は2%を超えず、1・3%前後で推移するだろうと。だから国債を発行し大型予算を組んで、成長への舵取りをすべきです。子ども手当ても、満額つけるべきですよ。

竹中 ・・・私も賛成です。財政のあり方は、短期と中長期をきちんと分けて考えなければいけない。いま財政健全化が重要だと言う一般論だけで財政を締めると、大変なことになってしまう。(中略)
 同時に民主党政権に必要なのは、「いまは仕方なく出すが、その後の成長戦略と歳出削減で10年後の姿はこうなると、打ち出すことです。


大きな政府型のビジョンと小さな政府型のビジョンを、それぞれ鮮明に掲げる政党が政権を担当して試してみるなかで日本の国民全体で結論を出せばよいということでしょう。

問題は、それぞれのビジョンが二大政党によって鮮明に掲げられず、明確な試行錯誤ができないということだと思います。

民主党政権が「政治主導」という名の「素人主導」だという点でも二人の意見は一致しています。

榊原 官僚を使っていないこと、経済人を使っていないこと。経済の専門家が、政権内にあまりいないわけです。素人たちが、よってたかって事業仕分けだなんだと、バカなことをやっている。いまだって優秀な官僚は、結構いますよ。官僚機構をもっと使わなきゃいけないんだけどね。あるいは自民党がかつて竹中さんを使ったように、民間の人を使わなきゃいけないんです。ところが、そういうことがまったくできていない。だから成長戦略もへったくれもないし、ようするに、経済政策そのものがない。ほとんどないんだ。(156ページ)

田原 竹中さん、僕は官僚はプロだと思っているんです。学者も一部の学者はプロだと思います。ほとんどの学者はプロじゃないけどね。

竹中 いや、実にいいことをおっしゃる。
 「政治主導」という名の「素人主導」になっている。これに尽きると思います。(159ページ)


ニ大政党による政権選択型の政治というのは私も持論ですが、それに加えて、それぞれの政党が官僚や民間の専門家をうまく使いこなす方法を身に付けることが不可欠だということでしょう。それに伴い、民間の専門家(官民の専門家の流動化も起こる)も、二大政党のラインにそって立場が分かれることになるでしょう。

そうすれば、専門家を活用したある程度高い水準の選択肢での試行錯誤が可能になるでしょう。(従来型の官僚の隠れ蓑的審議会を使わないという民主党の方針は正しいと思いますが、それに代わる実質的な専門家活用の仕組みが必要だということでしょう。)

この点では、自民党は官僚に頼りながらもそれなりに専門家を使う力をもっていたとすれば、民主党が専門家を活用できるようになるかどうかが、民主党政権にとっても日本の二大政党制にとっても重要だということになりますね。

田原氏のいうように、(実務を担える)専門家の名に値する学者も増える必要がありますが。
もし高校野球の女子マネージャーが・・・ [2010年06月28日(Mon)]
岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』ダイヤモンド社、2009年、を読みました。

すごかったです。文句無くお薦めです。

ちゃちなドラッカー解説本ではなく、きちんとした作品、感動的な小説になっています。そして、それと同時に、著者が理解したドラッカーの真髄を見事に「高校野球の女子マネージャー」に託して表現しているところがすごいです。

高校野球の女子マネージャーですから、もちろん、名前は「みなみちゃん」です。

各章のタイトルもよくできています。

第1章 みなみは『マネジメント』と出会った
第2章 みなみは野球部のマネジメントに取り組んだ
第3章 みなみはマーケティングに取り組んだ
第4章 みなみは専門家の通訳になろうとした
第5章 みなみは人の強みを生かそうとした
第6章 みなみはイノベーションに取り組んだ
第7章 みなみは人事の問題に取り組んだ
第8章 みなみは真摯さとは何かを考えた

みなみちゃんは、「われわれの事業は何か。何であるべきか」を定義することが不可欠であるというドラッカーの言葉に基づいて、「野球部とは何か」を考え、高校の野球部とは「顧客に感動を与えるための組織」という結論に至ります。すごいですね。著者が、ですが。さすが、AKB48のプロデュースをした人です。

もう一つ、すばらしいのは、ドラッカーの『マネジメント』から著者が核心として選んだのが、「真摯さ」という言葉だったということです。これが最終章のタイトルにもなっています。

マネジャーの仕事は、体系的な分析の対象となる。マネジャーにできなければならないことは、そのほとんどが教わらなくとも学ぶことができる。しかし、学ぶことのできない資質、後天的に獲得することのできない資質、始めから身につけていなければならない資質が、一つだけある。才能ではない。真摯さである。
価値観の多様化 [2010年06月27日(Sun)]

京都新聞6月16日付けで、多党制と二大政党制についての紙上討論の企画があり、私はもちろん二大政党制支持派として登場しました。

国民の価値観が多様化しているので、多党制がよいといういつもの議論がなされていますが、そもそも政治には多様な価値観への対応が難しいという根本問題が認識されていないと思います。

先日、学部ゼミのテキストでフリードマン『資本主義と自由』を再読しましたが、市場メカニズムは比例代表制だという指摘はあらためて新鮮に響きました。Aという商品が欲しい人、Bという商品が欲しい人、C、D、E・・・。市場なら、それぞれ欲しい人の数だけ商品が提供されます。

しかし、そもそも政府行政という仕組みでは、過半数が同意した公共サービスだけが提供されるので、賛成、反対の二分法になります。

ですから、多様な価値観を重視するなら、なるべく政府行政の役割を縮小して、市場やNPOの活動範囲を拡大するのが基本的な解決策のはずです。菅さんの言う「最小不幸社会」を政府がめざすという方針は、政府の役割を限定することになるというのはそういう意味です。

逆にいうと、政府行政という仕組みは、賛成、反対の二分法で動くしかないわけで、その意味で二大政党制で二つの選択肢が提示されることで十分です。

比例代表制で議会には多様な政党が議席を持ったとしても、そうした多様な価値観をそのまま反映したような決定は不可能で、結局は多数が賛成するような案を妥協で形成するしかありません。

それなら、ありうる妥協案を二大政党がそれぞれ提示し、そのなかから国民が直接選択できる方が、政党に白紙委任したうえで一方的に決定を知らされるよりはわかりやすいでしょう。

また、多様な価値観を反映する妥協案の形成は、二大政党の内部討論を通じて行うことも可能です。

国民の価値観が多様化しているから多党制がいいなどという俗論はそろそろ勘弁してもらいたいと思います。

政治は政治で必要最小限の事柄について国民の政権選択に基づいて展開され、その他の事柄は市場やNPOに委ねるというのが国民の価値観の多様化に対応する正攻法だと考えます。

でも、国民の価値観の多様化から多党制を主張する人には、大きな政府を支持する人が多いような気がします。気のせいでしょうか。
秋田さきがけ [2010年06月22日(Tue)]
先日、秋田さきがけ新報社のお招きで講演をしてきましたが、その内容が記事として掲載されました。

最近、どのような日本政治論をやっているか、というご参考までに見ていただければ幸いです。

ポリシーウォッチ [2010年06月21日(Mon)]
東京に行ったついでに、六本木ヒルズで開かれたセミナー「参院選マニフェストを斬る〜正しい経済運営のあり方を問う」をのぞいてきました。

竹中平蔵さんたちのチーム・ポリシーウォッチによるセミナーで、司会竹中さんのほか、加藤寛、ロバート・フェルドマン、松原聡、野村修也というメンバーでした。

2、3年のデフレ脱却期間を設定したうえで、金融政策、財政出動、規制緩和などでデフレ脱却に集中したうえで、最低限の増税に踏み切るべきだ、という経済路線がメンバーの共通認識でした。素人なりに説得力があると思います。

その立場から、民主党と自民党のマニフェストをばっさり斬り、唯一みんなの党の政策(アジェンダ)を評価していました。

ただ、そうした「正しい経済運営」が実現する政治的シナリオはまったく描けず、政治的にはどうしようもないという感じでした。なんとか民主党の過半数確保だけは阻止し、そのあとに衆参ねじれのなかで何か政界再編でも起こらないか、というような希望も出ていました。

経済政策論ということでは、別の立場の人がいて論争すると面白いと思ったと同時に、政治的シナリオと合わせて議論するべきだという感想を持ちました。

政治学者としていえば、経済政策からみて最悪の展開になるとしても、参議院選挙ではネジレが再現するよりも、あと3年間の民主党政権が実現した方がいいと考えます。政権交代のある民主主義の確立のために、そうした時間が二大政党双方にとって必要だという理由です。

有権者の多くも民主党にもう一度チャンスを与えようというスタンスを示したことにも、自民党以外に政権を担える政党をもう一つ確保したいという願望が基礎にあると思います。

他方では、現状では自民党がもう一つの政権選択肢として復活する兆しが見えないという問題があります。以前から主張しているように、徹底した自由主義論路線を軸にした新党結成くらいの大胆な自己刷新が不可欠です。

そのためには、自民党自体はもう一度惨敗した方がいいでしょうし、みんなの党がある程度の発言力を確保し、自民党内の自由主義グループと一緒に3年後をめざした「自由党」の構築に着手するべきでしょう。

民主党が過半数にかなり足りないという結果になると、こうした本筋の二大政党化が混乱する危険が高まります。そうした政界再編からはまともな構図は生まれないというのが私の持論です。(政策軸による結集ではなく、勝ちそうな側にみんなが殺到するでしょうから。)

民主党がみんなの党と連携する方向で過半数を確保するというのは、経済政策や行政改革の観点からはより望ましいと思いますが、そうなると野党の側の再構築の核がなくなるので、自民党の再生がかなり困難になるでしょう(たとえば10年以上)。

こうして考えると、今回の参議院選挙は民主党が過半数を確保し、良くも悪くも民主党らしい政策を3年間実行したうえで3年後の衆参同日選挙で審判を受けるというのが一番すっきりした展開ではないかと考えます。

竹中さんたちが主張するような経済政策が体系的に実行される政権を確立するうえでも、まずは二大政党化を確かなものにした方が中長期的にはよいと思います。

第3の道 [2010年06月10日(Thu)]
菅新政権のキーワードとして、「第3の道」が注目されているようです。私のところにもいくつか取材がきています。

調べてみたところ、菅さんの公式サイトの2009年11月22日「今日の一言」で、最近、経済における「第3の道」を考えていると書いたのが最初のようです。

第1の道にあたるのは、「80年代以降、投資効果に低い公共事業に巨額の財政をつぎこんだのが経済の低迷の原因」。

第2の道にあたるのが、「小泉・竹中路線は、リストラなどによる各企業の競争力の強化が社会全体の生産性向上になると考えたが失業を増加させ、社会全体としての経済成長につながらなかったのが失敗の原因」。

それでは過去の失敗を繰り返さない経済運営における「第三の道」は何か。現在、深く考慮中。


2009年12月16日のmsn産経ニュースに掲載された「菅VS竹中論争」でも、第1、第2の道を批判しながら第3の道を主張しています。

ですから、そういう第一の道は破綻(はたん)したと。次に率直に申し上げて小泉・竹中路線といわれているのは、今言われたように、例えばカルロス・ゴーンが来て、日産、正確な数字は別として1万人の労働者をですね、半分ほどリストラすると。確かに5000人の日産は高い生産性になったかもしれないけど、リストラされた5000人が新たな、完全雇用で新たなところで同じような効率高いところで仕事ができればいいんですが、結果として失業状態になり、低賃金であえぐようなことになれば、マクロとしては成長はしていないわけです。ですから私は一企業の日産はリストラできても、国は国民をリストラできないんだから、必ずしも個別の企業が競争力を高めることが、それを全部やったら、イコール、マクロ的な成長になるとはかぎらない。それは完全雇用の下ではなるかもしれません。

そこで第三の道ということで今、この間の経済政策とか雇用政策で常に打ち出しているのは、雇用が新しい需要を生む。例えば介護などは雇用が増えることでイコール、サービスを増やすことになる。あるいは同じ費用でも1兆円で1兆円しか効果がないというのが今の経済財政の官僚のみなさんの計算なんですが、おかしいではないかと。1兆円でやっぱり11兆円ぐらい生み出すような知恵があるはずだ。それから規制について、抑圧されたと言われましたけど、私の言い方で言えば、社会ルールを変えることによって、規制を弱くする場合もあるし、強くする場合もありますが、それによって新しい需要なり、そういうものが特に環境分野で生まれてくる。ですから私はどうも竹中さんが言われるですね、供給サイドを強めればそれでマクロ的にもよくなるという考えは第二の道として失敗したというのが私の見方ですが、いかがですか。
出所

経済政策論としては、ケインジアンの小野善康阪大教授の理論が基礎にあることは明らかです。小野善康『不況のメカニズム』中公新書、など。

しかし、90年代にイギリスのブレア首相からヨーロッパ各国の中道左派、さらにアメリカのクリントン大統領にまで広がった本来の第3の道(提唱者は社会学者のギデンス)は、経済政策だけでなく政策全体の基本的理念でした。

菅さんも、財政、経済に加えて社会保障を一体として考えると言っているので、是非、包括的な政策理念まで展開させてほしいと思います。

そこで問題になるのは、ヨーロッパの第3の道は、伝統的社会民主主義の大きな政府の考え方を、新自由主義の考え方を受け入れて根本的に再構築したものだったということです。ブレアなど、サッチャーの息子とまで呼ばれました。

私自身は、第3の道を、サッチャーやレーガンらの「粗野な新自由主義」に対比して「成熟した新自由主義」と呼んでいます。

菅さんの第3の道が、社会民主主義的なものになるのか、新自由主義の考え方を大胆に取り入れた本来の第3の道になるのかが注目点です。日本の政治的文脈では、小泉路線を正面から再評価することはできないとしても、ヨーロッパ的な第一の道である社会民主主義に戻るのでは、竹中さんの批判ないし危惧が的中してしまうことになります。

この点で、ギデンス、渡辺聡子『日本の新たな「第三の道」』ダイヤモンド社、2009年、が必読文献です。副題が、「市場主義改革と福祉改革の同時推進」となっているように、依然として「日本には自由競争を制限するさまざまなシステムが存在し、市場原理が機能していない領域が多い」という認識が前提にあります。

私自身も、日本はさらに自由主義的改革を推進すべきだと考えています。

一つ期待できる兆候は、菅さんのもう一つのキーワードが「最小不幸社会」だということです。つまり、政府がやるべきことは共通の不幸(貧困、病気、戦争など)を最小にすることであり、より積極的に幸福を追求する局面では、政府は介入せずに個々人が自分の価値観で自由に追求するのがいい、という考え方です。

その意味で、単なる大きな政府とは一味違いそうです。

菅政権が本格政権になるためにも、政権の基本理念が必要だと思います。明日の所信表明演説でその兆しがみられるかどうか注目したいと思います。

奇兵隊内閣 [2010年06月08日(Tue)]
菅新政権と民主党執行部の顔ぶれが決まりました。

菅新総理は、内閣の呼び名を聞かれて、「奇兵隊内閣」と答えました。自分もそうだが、普通のサラリーマンや自営業者の息子たち(娘たちがあまりいないのが弱いところですが)が志さえあれば政治の世界でも活躍できるということを示している、ということをかなりの力を込めて言いました。ここには菅さんの感慨が強くこもっていたと思います。ちょっとこみ上げるものを抑えているような感じすらしました。

幸か不幸か、鳩山さんと小沢さんの系統の人には元自民党や二世議員が多かったので、二人の辞任でそういう人たちが減って、民主党オリジナルメンバーが主体となった、もっとも民主党らしい内閣ができることになりました。菅さんはたしかに、その象徴です。官房長官を仙谷さんにし、幹事長を枝野さんにし、政調を復活させて政調会長を玄葉さんにしたことには、菅さんの覚悟が伺えます。

日曜日の朝に菅さんにお祝いの電話をしたときには、(脱小沢で)それほど事を構えようとしたわけではないと言ってましたが、脱小沢という以上に、民主党として本来の勝負をかけるうえで覚悟の人事だったということだと思います。

昨年8月30日の総選挙による政権交代から8か月で首相が替わってしまいましたが、民主党に投票した有権者が期待したものは、実は今回の菅新政権のようなものだったと思います。

もちろん、だからと言って菅新政権が機能するかどうかは別問題です。

仙谷さんの言葉によれば、「仕事好き」が集まった内閣だということなので、良くも悪くも民主党の本当の実力が出ることになります。

それがきちんとした成果を上げられれば、日本における二大政党制は完全に軌道に乗るでしょう。自民党も、民主党批判だけで政権に復帰できるという甘い期待を捨てざるをえなくなるでしょう(標的のツートップが辞職してしまって、本当に残念そうですね)。

菅新政権が、7月の参議院選挙で過半数を大きく割るようだと、また小沢さんが復活して政界再編というような筋の悪い話が浮上してしまいます。

政界再編ごっこ自体が飯より好きという人たちの出番はもうそろそろ終わりにして、政権としてきちんとした活動をして成果を上げることで競うような政治へとバージョンアップさせたいものだと思います。

その意味で、菅新政権の成否、当面は参議院選挙の結果には民主党だけでなく、政治改革以来の日本政治の命運がかかっているといっても過言ではありません。

21世紀型統治システム [2010年06月07日(Mon)]

日曜日は、学習院大学の佐々木毅先生が代表の科研費研究会「21世紀型統治システム」に行って来ました。ほかに、成田憲彦氏(写真、駿河台大学学長、細川首相秘書官、小説『官邸』の著者)、飯尾潤氏、野中尚人氏など錚々たるメンバーのほか、新進気鋭の研究者も加わって楽しい議論の場になっています。

菅新内閣の組閣中という時期だっただけに、いろいろ興味深い議論が交わされました。

イギリス総選挙の報告では、ついに連立で与党に加わることになった自由民主党が、実は第三極という自己認識には立っておらず、あくまでも二大政党に復帰する基本方針であるという点は興味深かったです。比例代表制や多党制はイギリスではありえないというのがよくわかりました。

せっかくの機会だったので、懇親会では成田さんから、細川政権時代のことをいろいろ伺いました。日記の刊行についてもいろいろ関与されたようです。在任中から、各秘書官が、それぞれ分担して日記の材料を毎日提出していたそうです。細川さんには記録を残そうという意図が明確にあったわけですね。

それに引き換え、鳩山政権は・・・という話もかなりでました。やはりマキャべりが重要だというのが成田さんの持論です。

その点では、菅さんはかなり期待できるのではないか、というのが佐々木先生や成田さんの評価でした。

*研究会の前に、六本木のテレビ朝日で、来週のスーパーモーニングでやる菅首相特集の取材を受けてきました。どの程度使われるかわかりませんが、時間の合う人は見てください。
菅さんの大勝負 [2010年06月05日(Sat)]
昨日4日に菅さんが新首相に指名されましたが、その後の動きを見ると、予想以上に腹をくくって勝負に出ていると思います。

小沢執行部が残した4日に即組閣という無理なスケジュールを蹴飛ばし、週明けまで人事を延ばしたのが象徴的です。もちろん、その前に、「小沢氏にはしばらく静かにしていてもらうのがいい」という発言があったわけですが。

2003年の民主党と自由党との合併から最近までは、小沢氏と意識的に友好関係を演出してきていただけに、首相になってからも徐々に独自色を出していくのかと思っていましたが、旧民主党のオリジナル・メンバー(仙石さん、枝野さん、玄葉さん、など)で中核を固めて正面から勝負するという決断をしたようですね。

小沢さんも、小沢グループも9月までの選挙管理内閣だという突き放し方をして怒りを露わにしているようですが、この方が菅さんらしいし、国民にも理解されやすいと思います。

ただ、この戦略が正しいかどうかは、当面の政権運営と参議院選挙の結果次第ということになります。

与党で何とか56議席以上確保できれば、非改選66議席と合わせて122の過半数を確保することになります。少なくとも、社民党の数議席を足して過半数なら、政権は安定すると思います。

大きく過半数を割った場合には、衆議院でさらに8議席の勢力と連携して3分の2の再議決を可能にするか、参議院でさらに連携相手を確保するかしないと、法案をすべて潰されるという危機に直面します。

自民党以外の諸党は、一致団結して民主党政権を追い込み、解散総選挙で一挙に政界再編に持ち込むか、単独で民主党と組んで与党に入るかの両にらみだと思います。

その帰趨も、大きくは、菅新政権への支持と参議院選挙での民主党の結果によって左右されるでしょう。

結局は参議院選挙に勝負をかけるしか活路はないわけで、それだけに、民主党のオリジナル・メンバーで心置きなく勝負をかけるというのはいい選択だと思います。それでダメなら悔いも残らないでしょう。投票日も、首相交代があったわけですから、2週間くらい延ばして、十分国民に訴える時間を確保すればいいと思います。

ところで、小沢さん自身は、9月の代表選挙に直系の候補(と言っても田中真紀子氏や原口氏くらいしかいないですが)を立てるか、それで負ければ、一新会を引きつれて離党してちゃぶ台をひっくりかえす、などということが語られています。

この辺になると、小沢さんという人の発想は予想できません。意外と、感情的な行き違いから無謀な決断をしてしまうところがあるようですし、側近を名乗る人たちが自分たちの利害でそれを煽るところもあるので。

参考までに、先日紹介した細川元総理の日記から、小沢氏の行動パターンを紹介しておきましょう。1993年12月16日の日記で、小沢氏が武村官房長官を辞めさせろと迫ってきた時のことを細川さんは次のように書いています。

(小沢氏が)腹を立てるのもわからぬではないが、(武村氏の)更迭にYESかNOか、心中を悩ませて申し訳ないが、その返事があるまで自分は休ませて貰うと、いかにも小沢氏らしきもの言いなり。

小沢氏につきては予て、今日の政界の中で傑出した戦略を持ち、それを実行する力量を持ち合わせたる人物と評価しおるも、本日は別人の感あり。人間誰しも感情の起伏あるものなれど、この天下の非常の時に誰が当面の敵かもわからぬようでは困りものなり。(中略)

その後、電話で羽田氏と話すも、小沢氏の言動に驚き且つ持て余したる趣なり。いずれにしても、羽田氏からも小沢氏に通じてみるとのことなり。武村、園田、田中(秀征)氏を公邸に招き、事の経緯を説明。確かロマン・ローランは「人間の感情の4分の3は子供っぽいものだ」と言いしが、3者の感想は、我が儘な子供が押入れに入りて出てこぬが如き話なりというものなり。(230-231ページ)


さて、菅さんは細川さんのように、小沢氏を捌いていけるのでしょうか。細川さんの場合は、政治改革法案を通すまでは辛抱して捌いたけれども、それが終わったらもう辟易して辞任したということのようですが。

ツートップの辞任 [2010年06月02日(Wed)]
ようやく、鳩山首相と小沢幹事長のツートップが辞任を決意しました。ほぼあきらめていただけに、まずはよかったと思います。やはり最後は、民主党全体のことを考えた小沢氏の決断だったのでしょう。

次は菅直人氏のようですが、一時的に人気を上げることを考えず、着実な政権運営を始めてほしいものです。特に、鳩山政権の失敗の原因をきちんと踏まえるべきです。

まずは、司令塔として機能する官邸体制の構築です。

党の方も、政務調査会を復活させて、幹事長が無任所大臣として閣内に入る形で政府与党の一元化の本来の構想に立ち戻るべきです。

こうした体制だけでなく、数人でよいので、政権としての基本戦略を考え実行するグループを形成することが不可欠です。政治学でも、core executive が注目されています。

そろそろ官僚排除から官僚活用に転換することも不可欠でしょう。

政権交代以前には、当然これくらいのことは考えていると思っていましたが、鳩山政権をみるとそれとは程遠い実態だったようです。今度はこうした政権としての最低限の核が形成されることを期待します。

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