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〔後房雄のブログ〕

現実関与型の政治学者が、日本政治、自治体改革、NPOやサードセクターの動向などについて話題を提供しています。一応研究者なので、面白かった本や論文の紹介もします。


リクルート事件 [2010年01月15日(Fri)]
小沢一郎氏の元秘書の石川議員が逮捕されたそうです。

小沢氏の収賄が本当に立証されるのか、検察の独走が政治を混乱させたという結果になるのか、重大な局面に入ったようです。

最近出版された江副浩正『リクルート事件・江副浩正の真実』中央公論新社、2009年、を読みました。リクルート事件については何冊か読んだ記憶がありますが、当事者本人の20年ぶりの総括を読んで、リクルート事件の理解が一変しました。

事件が政治を大きく変えただけに(政治改革に火をつけたわけです)、当時は大きな関心を持ちましたが、その後の経過はよく知りませんでした。2003年3月4日に東京地裁の判決(懲役3年、執行猶予5年)が出て確定したそうです。

事件は贈収賄ですが、たとえば、労働次官も逮捕された労働省ルートについて、「本件各贈賄行為により、収賄側が違法不当な職務行為に及んだという事情もなく、職務の公正が現実に害されたり、政治、行政などがゆがめられたりはしなかった」と判決は述べているというのです。

要するに、江副氏は、膨大な政治家、官僚、経営者、学者、ジャーナリストなどの友人、知人にコスモス株を譲渡したわけですが、何か特定の依頼をしたわけではないようです。信じられないほど広範、多額にわたったことは異例だとしても、上場する経営者の間ではよくあることだそうです。江副氏の好意からの譲渡だったというのは事実だと私には思われます。

衝撃だったのは、ともかく有罪にするという方針で、検察がいかにすさまじい取調べをしたかということです。一旦有罪という検察の判断がなされると、絶対に有罪にされるということがよくわかりました。マスコミへのリークの仕方も、現在進行中の小沢問題と同じです。検察がリークでマスコミを使い、そのマスコミや世論に検察が影響されるという展開です。

江副氏の本は、こうした壮大なでっち上げへの告発ですが、自らの運命として正面から受け止め、ほとんど怒りを表面化させていないことは見事だと思います。しかし、不当に人生を一変させられた彼の深い憤りは、『取調べの全面可視化をめざして』という本を別途出版していることから伺えます。

ホリエモンの裁判、村上世彰氏の裁判は控訴中で、今また、小沢事件が大問題になりそうです。

この本から浮かび上がる検察の実体を踏まえると、とても検察頑張れと言う気になれないのが残念です。突然基準を変えてでも、結論ありきの取調べを強行するのをどうしたらチェックできるのでしょうか。
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