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〔後房雄のブログ〕

現実関与型の政治学者が、日本政治、自治体改革、NPOやサードセクターの動向などについて話題を提供しています。一応研究者なので、面白かった本や論文の紹介もします。


攻防、マニフェスト予算 [2009年12月26日(Sat)]
昨日、2010年度予算の政府案が決定されました。NHKスペシャル「鳩山政権100日の攻防」で、決定までのプロセスを見ました。

過去最大の92・3兆円の予算案についてはいろいろな評価があるようですが、徹頭徹尾、政治主導で編成した点については高く評価すべきだと思います。

党税制調査会を廃止して、政治家だけの政府税制調査会で来年度税制を決めたこと、各省と財務省との予算折衝を官僚間ではなく、政務官、副大臣、大臣などの政治家同士で行なったこと、財務省原案を作らず政府予算案を一発で決めたこと、などです。

各省大臣が「査定大臣」から「要求大臣」に逆戻りしたともいわれていますが、大臣として各省事業のなかで維持、要求すべきものがあると判断することは当然のことです。財務省の政務三役が「財政規律」を主張するのも当然のことです。

しんどい仕事を官僚に丸投げすることで決定権も丸投げして、陳情を通すことを政治家の役割にしてきた自民党時代と違って、折衝と決定の全責任を政府のポストに就いた政治家が担ったということ自体が画期的なことです。

これは、国民が直接にコントロールできない官僚から、国民が選挙でコントロールできる政治家に予算案の決定権が移ったということです。いつものことですが、このことの意義をきちんと報道できないマスコミにも困ったものです。

内容では、公共事業18・3%減、社会保障9・8%増、子ども手当、農家の個別所得補償、高校の実質無償化などのマニフェスト項目の実現、地方交付税交付金の9044億円増額などが盛り込まれています。

税収の大幅落ち込み、各省予算項目の削減の不徹底などのため、44兆円余りの国債発行となったことは大きな課題を残しました。

乱暴な事業仕訳けに頼ることなく、各省において、成果目標に対する有効性を基準にした事業の精査の仕組みを導入することが不可欠だと思います。

国家戦略局や閣僚委員会による政治主導は過渡期としては大きな一歩前進ですが、次は各省ごとの枠予算の設定を前提にして、各大臣に査定権を委譲するシステムに移行すべきです。
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