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〔後房雄のブログ〕

現実関与型の政治学者が、日本政治、自治体改革、NPOやサードセクターの動向などについて話題を提供しています。一応研究者なので、面白かった本や論文の紹介もします。


政治のボランティア化 [2009年11月14日(Sat)]
名古屋市の河村たかし市長が「政治ボランティア条例」の案を発表しました。住民が主体となった市政の実現を図るための次の3つの改革を実施するとしています。
「地域委員会制度の創設」、「市民税の減税」、「議会の改革」

議会の改革の内容は以下の通りです。

市民を代表する職として、またパブリックサーバントとして政治ボランティア化を実現するため、以下の改革に取り組む。
・議員定数 概ね半減(現在は75)
・連続3期を超えた在職の自粛
・議員報酬 概ね半減(現在は、報酬、政務調査費、費用弁償を合計して約2200万円)
・政務調査費 廃止
・費用弁償 実費支給
・市民による本会議場における意見表明機会の創設
・議員の自由な意思に基づく議会活動の実現
・議員年金制度の廃止に向けた活動


市長による趣旨説明は以下の通りです。

 私が、11月市会にこの条例を上程することとした理由は、議員が政治を職業化することによる集権化の進展によって市民が政治や行政に参加する意欲や機会が阻まれている現在の状況を打破し、市民を主体とする真の住民自治の形成を図るためである。

 本来議員とは、自発的で見返りを求めない、つまり「ボランティア」の精神に基づき、自らの信条によって、いわゆるパブリックサーバントとして市民に奉仕する存在である。しかしながら、終戦直後の復興期に政治に携わる者が政治に専念することができるよう厚遇された日本の議員は、現在においては本来の趣旨を忘れ、政治を職業とする意識が進行してしまっており、その弊害が随所に現われている。

 このことから、政治のボランティア化を進め、市民への分権を推進し、市民が主体となった市政の実現を図るための改革を実施していきたい。
 具体的には、「地域委員会制度の創設」、「市民税の減税」、「議会の改革」を3本の柱とする。

 まず、地域委員会制度の創設によって、市民が自ら地域課題を解決することができるよう、市民から選ばれた委員が地域に関する施策の決定に参画する新しい自治の仕組みづくりをする。
 次に、市民税の減税を実施する。減税とは、従来税金として徴収されていたお金の使い途を市民自らが決められるようにすることであり、住民分権の現われである。


実情を知っている人ならほとんどの人が認識している自治体の真の病巣に、直接にメスを入れようとする日本で始めての画期的な試みです。4月の名古屋市長選挙に続いて、河村劇場の第二幕が始まります。見ているだけでなく、賛同する人は誰でも当事者として参加できます。

現在の名古屋市議会はこれを否決することは確実です。市長はすでに、地方自治法76条に基づく、議会解散直接請求(名古屋市において必要な署名数は約36万5千)の可能性に言及しています。議会解散、再選挙の場合には、市長を辞職して、同時に民意を問うことも明らかにしています。
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