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〔後房雄のブログ〕

現実関与型の政治学者が、日本政治、自治体改革、NPOやサードセクターの動向などについて話題を提供しています。一応研究者なので、面白かった本や論文の紹介もします。


『ひとりで死んでも孤独じゃない』 [2012年03月24日(Sat)]
矢部武『ひとりで死んでも孤独じゃない 「自立死」先進国アメリカ』新潮新書、2012年2月。

無縁死とか孤独死とかが騒がれています。

それを防ぐために、家族の絆を復活、強化することが必要だと叫ばれています。

なんとなく違和感がぬぐえませんでしたが、一人で死ぬこと自体が悲惨だという考え方に異論を出し、むしろ「自立死」があるべき姿ではないかという問題提起は新鮮でした。もともと人間は、生まれてくる時も死ぬ時も一人なのですから。

絆が好きな人は復活させればいいと思いますが、一人でも愉しく安全に暮らし、「自立死」ができる環境を整えるという方が私にはぴったりきます。

唯一、死後かなりたってから発見されるというのはさすがに悲惨だし、周りにかなり迷惑をかけるので、アメリカではそれを防ぐツールやシステムを整備することに努力しているようです。

日本でも、老後、無理に家族と暮らすよりも、環境さえ整っているなら一人で暮らしたい人も多いのではないでしょうか。家族での無理な同居は家族関係も傷つける恐れが高いでしょうから。

家族と同居せず、一人で暮らしながら、ときどき家族と会うというスタイルの方が両方にとってのストレスが軽いように思います。

孤独死の悲惨さを煽って、また懲りずに旧い家族介護、同居への復帰を誘導するのではなく(非現実的だし)、「自立死」のための条件整備に目を向ける時期だと思います。
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