• もっと見る

〔後房雄のブログ〕

現実関与型の政治学者が、日本政治、自治体改革、NPOやサードセクターの動向などについて話題を提供しています。一応研究者なので、面白かった本や論文の紹介もします。


原稿書き [2011年02月21日(Mon)]
アトランタでの週末ですが、3月6日締め切りの『エコノミスト』3月22日号の原稿を書いていました。じゃまも入らず、ちょうどいいですね。

注文は、「揺らぐ二元代表制、現状と課題」ということなので、最近書いた二つの論文を総合したような内容にしました。タイトルは「首長の反乱と二元代表制の矛盾」にしようと思います。

いろいろな要因が重なっているのでしょうが、二元代表制の矛盾と制度改正の必要性という持論を正面から論じる場が提供されるようになったのはありがたいことです。1年ほど前までは本当に孤立無援という感じでしたから。

ちなみに、前志木市長の穂坂さんが理事長の日本自治創造学会の大会(5月12日、13日、日本都市センター)でも報告することになりました。橋下知事、河村市長、新しい東京都知事なども登場するようです。

書くにあたって、筆者から送ってもらって持ってきた、村上弘「『大阪都』の基礎研究―橋下知事による大阪市の廃止構想」(『立命館法学』2010年第3号)という論文が参考になりました。

橋下知事の大阪都構想を、かつての特別市制度、政令都市制度、東京都制などの歴史や国際的な都市制度の比較などを通じて批判した論文です。

府県への集権構想であり、政令市の解体構想だというのが批判のポイントで、私自身の中京都構想への批判と一致しています。

それと、そういう問題のある大阪都構想や橋下知事が大きな支持を集める理由についても分析がされており、「攻撃型ポピュリズム」と「ばらまき型ポピュリズム」の区別も面白かったです。

河村市長でいえば、議会、議員批判が攻撃型ポピュリズムのネタで、減税がばらまき型ポピュリズムのネタということになります。そういう意味でも、この二つを結合した河村台風は今後も猛威をふるいそうです。

ところで、お前にも責任があるという声をよく聞きますが、そしてそれは自覚していますが、そのうえで、私なりにできる最大限をやるしかないとも考えています。そのなかには、事態をきちんと分析して問題を明確にすることが含まれます。(これを他人事のようだというのは、たんなる情緒的な批判にすぎません。)

そもそも、河村氏にコミットしたこと自体、一市民、一研究者として決して後悔はしていません。現実政治にコミットしようとしない市民や研究者が圧倒的に多いことの方が問題だと思っています。

そして、現実政治にコミットすれば、当然、判断の間違いは起こります。ネットで気楽に他人の批判をしているような人は、果たしてコミットしたことがあるのでしょうか。そしてまた、あのひどい地方議会や議員の現状を変えるための方法を正面から考えたことがあるのでしょうか。

民主党政権や二大政党の惨状を嘲笑する人も多いようですが、自民党長期政権時代に、あの不動の体制を変える方法を真剣に考えたことがあるのでしょうか。

政治改革=小選挙区制は、その模索のなかでようやく出てきた突破口だったのです。

アメリカ政治を見ても、ヨーロッパ各国の政治を見ても、日本では小選挙区制を基礎に二大政党制を成熟させることが最も有効だという判断は揺るぎません。

ネットが普及したことで、一時の現象だけで大声で騒ぎまくる声を耳にすることが多くなったので、つい、まとめて反論みたいなことを書きたくなりました。
トラックバック
※トラックバックの受付は終了しました
コメント
 いち市民様

 ありがとうございます。こういうコメントをいただくと書いている甲斐があります。

 アメリカでは、政党に党議拘束も党員制度もないので、それぞれの市民がかってに自分はdemoctatだとかrepublicanだとか名乗っています。

 支持者というよりもう少しコミットしている感じです。選挙運動を手伝う人も多いようです。

 こういう各人がコミットしながら議論するという風土はいいと思います。

 ネットも便利ですが、書くことだけで完結する総評論家現象を加速しています。いわゆる観客民主主義というやつですね。

 その意味では、河村現象はかなりの市民を行動させたということ功績はあるでしょう。ですから、批判する側も行動することが必要ですね。

 ちなみに、ポピュリズムは民主主義の枠内での現象なので、独裁とかファッショという批判は当たりません。批判のレトリックとしては許されるかもしれませんが、的確な批判にはならないと思います。
Posted by:ウシロ  at 2011年02月22日(Tue) 22:31
同感です。後先生が河村陣営にコミットしたことに批判があること自体は無理からぬことですが、実際にコミットしてみなければわからないこともあろうかと思います。私自身は以前(国会議員時代)から河村氏に対して批判的でしたが、後先生が、ご自身が関わった河村市政の総括をきちんとされていることに対しては敬意を表します。自称民主党ブレーンで今になって他人事のように民主党批判を展開して恥じない政治学者が山ほどいる中で、後先生はご自身の経験にきちんと向き合うことで責任を果たそうとしていると感じます。
Posted by:いち市民  at 2011年02月22日(Tue) 18:05