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官邸斜向かい〜霞門の眼 by 石川和男

政治・経済・社会の動向から明日明後日を読むということで。


3月25日のツイートより [2011年03月25日(Fri)]

出所:http://twitter.com/#!/kazuo_ishikawa

○3月25日21:49
 被災地インフラ復旧も一定程度は大事だが、疎開先での就労対策に傾斜配分を。
 @nikkeitter: 避難24万人、復興へ「長期戦」 インフラ復旧道半ば http://t.co/7aOy1kl

○3月25日21:47
 社会保障と税財政の一体改革と、震災復興対策の財源論を混同してはダメ。あれはあれ、これはこれ。
 @nikkeitter: 税と社会保障・TPP参加、6月の結論延期も 官房長官が示唆 http://t.co/1tuIy8V

○3月25日11:13
 一般電気事業の『一時国営化』に近似。上場企業である電力会社(一般電気事業者)の権能を遥かに超えた話。
 @nikkeitter: 夏時間や電力の総量規制検討 政府緊急対策本部 http://t.co/IKacu0Z
3月22〜23日のツイートより [2011年03月23日(Wed)]

出所:http://twitter.com/#!/kazuo_ishikawa

○3月23日16:48
 ということは、最低25兆円の見込みということ。。。
 @yomiuri_online 損害額最大25兆円…巨大地震で内閣府試算 http://t.co/ivK1jXq

○3月23日07:57
 『ガス冷房』が再び脚光を浴びてきそう。エネルギー分野でも多様性はとても重要。
 @googlenews_top: 夏の電力不足 使用制限も検討

○3月23日02:17
 議論の余地なし。早く立法すべし。
 @asahi: がれき撤去、特別立法も 所有権足かせ、復旧妨げ回避へ http://t.co/OyC5b0K

○3月23日02:16
 内閣府の外局では期待できない。独立した人事体系の組織でないとダメ。財務相傘下が最善と思料。財政一本槍の復興政策では先細りとなる。
  @asahi: 「復興庁」構想が浮上 野党にも後押しの声 http://t.co/bo0Oqmp

○3月23日02:08
 十分な復興国債を発行しないと大衆増税への布石となる。すぐ出る財源は国家公務員と地方公務員の総人件費○○兆円。。 @nikkeitter: 東日本大震災、被害額15兆〜25兆円 政府試算http://t.co/5gLzmAC

○3月22日23:56
 おカネを積むのも必要だが旧態依然の法令の大修正による規制緩和を同時に進めるべき。徒な補正の叩き売りはダメ。教科書なき政策の時。
 @googlenews_top: 震災で3、4次補正も 野党は子ども手当つなぎ法案に反発

○3月22日18:31
 手続論ではあるが、来年度予算については、補正より組み替えの方がベター。
 @googlenews_top: 予算案、組み替え検討=財務相「震災復興が最優先」−参院予算委

○3月22日10:56
 カネ(予算)も必要だがルール(規制・制度)柔軟化を伴うべき。徒な規制強化はダメ。民間資金を回す仕組みを導入していくべし。
 @nikkeitter 震災補正「2回では足りない」 玄葉戦略相 http://s.nikkei.com/i5aJI8
復興予算 〜 政府 6月までに 一次、二次補正 [2011年03月22日(Tue)]

 今朝の東京新聞ネット記事によると、政府・民主党は被災者支援復興に向け6月までに第1次、第2次の補正予算を編成するとのこと。

≪記事要旨≫
・民主党安住国対委員長は「6月までの間に1次、2次の大規模な補正予算編成が避けられない」、「復興のプランを早急に立てて、仮設住宅(建設)や産業の復興をやっていく」。
・補正予算は、阪神大震災で3回編成、計3兆2千億円。
・政府で検討されているのが被災者生活再建支援法などの法改正。家が全半壊した世帯に対する最高3百万円の支給額の上積み、適用条件緩和など。
・岡田幹事長は「町ごと移転して何年間かやっていくことを国として後押ししたい」。
・移転先を確保するため国有施設や旅館の長期借上げや買上げも検討。

 ↓

 阪神大震災の時にどのような対策を講じたかを研究することは重要でないこともないが、それに拘っていては柔軟な発想が阻まれてしまう。政官民いずれの検討の場においても、前例主義が蔓延するのに時間はかからないので要注意。

 あの時はあの時で、今は今である。被災地・被災民の声を適切に反映できるかどうか、また、それを斟酌する度量が権力側にあるかどうかである。町ごとかどうかは別として、『疎開』は復興政策のキーワードの一つになると思料。

 復興には、当地での復興と当地以外での復興がある。居住の安定化策とともに、収入の安定化策を講じる必要がある。その点において、「産業の復興」は当地でもそれ以外の地でも優先順位の高い政策の一つである。
「復興庁」の創設検討 [2011年03月21日(Mon)]

 今朝の読売新聞ネット記事によると、政府・民主党は東日本被災地復興などに取り組む「復興庁」を創設する方向とのこと。

〔記事抜粋〕
・複数府省にまたがる復興事業を統括し、迅速復興を進める。
・専任担当閣僚を置き、増員を検討している閣僚1人を充てる。
・「復興庁」は、関東大震災後「帝都復興院」を念頭。
・東日本巨大地震復興予算規模が阪神大震災を大きく上回る10兆円超に及ぶとの見方も。
・内閣府外局とする案が有力だが、独立組織とする案も。

 ↓

 出戻りなしで骨を埋める覚悟を持つ人々が『強い大臣』の下で運営されるのであれば、円滑な復興行政が期待できる。ただ単に各省庁からの寄合所帯となるのであれば、迅速かつ冷静な意思決定は実現し難い。

 各省庁との権限争議が面白おかしく報じられることになる。きちんとした人事体系・処遇・権限とすることを公開しながら人材を募ることが肝要。予算規模が巨大であることを以て独立機関にする理由にはならない。

 予算獲得だけではなく、予算措置と規制制度改革を同時に進めることが必須。現行の厳しいい規制制度の中では新興勢力の復興事業参入を阻む可能性が大きい。

 寧ろ、既存省庁に増設することの方が行政運営上も効果的だと思料。その点において、内閣府特命担当相ではなく、財務相を頂くことを真剣に検討されたい。
 
復旧復興対策私案(骨子その3) [2011年03月21日(Mon)]

○3月21日12:17のツイートより (http://twitter.com/#!/kazuo_ishikawa)
 大胆な規制緩和を伴う予算措置にすべき。既存勢力以外の新興勢力の力も十分に能力を発揮できるような規制・制度改革が必須。
 @47news: 6月までに1、2次補正 震災復興予算で安住氏 http://t.co/8nEByNm

○3月21日10:04のツイートより (http://twitter.com/#!/kazuo_ishikawa)
 内閣府外局増設は既存各省との無用な権限争いを招くので意思決定は逆に遅延。「強い首相」がいれば充分。将来、「経済産業相」を『エネルギー安全保障相』に改正するのは必然。
 @yomiuri_RSS: 「復興庁」創設検討…統括組織で迅速化図る http://t.co/2IiNGxQ

○3月21日01:38のツイートより (http://twitter.com/#!/kazuo_ishikawa) 
 東電負担が国民負担に化ける刻。。
 @nikkeitter: 原発事故 政府、住民に賠償検討 東電負担を一部肩代わり http://t.co/5E8cVm5 #nikkei

○3月20日23:02のツイートより (http://twitter.com/#!/kazuo_ishikawa) 
 適用前に制度改正かも…
 http://t.co/ShLKUQk 賠償負担は東電ではなく国が肩代わりへ 福島原発、政府賠償1兆円超も 原子力損害賠償法の例外規定を初適用へ

○3月20日20:58のツイートより (http://twitter.com/#!/kazuo_ishikawa)
 投資家の立場からすれば、政府と分担するにしても、一部上場企業が賄い得る範囲を遥かに超越している。解決策は一つしかない。そのうち浮上してくるのではないか。
 @googlenews_top: 福島原発、政府賠償1兆円超も 例外規定を初適用へ
復旧復興対策私案(骨子その2) [2011年03月20日(Sun)]
○3月20日10:17のツイートより (http://twitter.com/#!/kazuo_ishikawa)
 住宅難民対策と同時に生活復興対策も大事。当初は生活保護の活用なるも、需要創出&新規起業を促進すべき。大胆な経済的規制緩和、既得権組と新規起業組の機会均等化など。目新しい手法ではない。今まで障壁が厚過ぎたものを打破するだけ。

○3月20日10:04のツイートより (http://twitter.com/#!/kazuo_ishikawa)
 福島以外の既存原発稼働を今すぐ停止させることは早計に過ぎるが、大型/分散型ともにLNG/石油/石炭火力が原子力代替にならないと賄い切れない。安定電源基盤の再構築にも、これらを強力に推進するための規制・制度改革&予算・財源確保に係る法的整備をそろそろ堂々と表で議論し始めるべし!

○3月20日09:31のツイートより (http://twitter.com/#!/kazuo_ishikawa)
 最低数年間の『政府借上げ制度』にて一人でも多くの住宅難民に!
 http://t.co/Vvuu0Uz 賃貸住宅経営者協会は被災者に通常より安い家賃で貸すことができる全国80万件空き部屋情報。

○3月19日20:27のツイートより (http://twitter.com/#!/kazuo_ishikawa)
 10割定額補助にすべき!
  http://t.co/euANvws がれき撤去費用、9割以上補助へ…政府方針

○3月19日16:59のツイートより (http://twitter.com/#!/kazuo_ishikawa)
 早計は禁物。究明される根本要因が明らかになってからでないと、徒な電力需給逼迫を招くだけ。
 http://t.co/hnGOYOr 保安院、浜岡原発の緊急停止「考えなければならないのは確か」

○3月19日16:49のツイートより (http://twitter.com/#!/kazuo_ishikawa)
 介護事業の法人格など参入要件も柔軟にすべき。社会福祉法人など既成要件だけに拘泥しては間に合わない。
 @CBnews_now: 介護事業所の人員基準など「柔軟に対応」―被災地への派遣で厚労省

○3月17日23:16のツイートより (http://twitter.com/#!/kazuo_ishikawa)
 一時的に『東電の国有化』ということ。。
 @nikkeitter: 電力の総量規制も検討 政府、大規模停電の懸念増し http://t.co/fLXlGZR
復旧復興対策私案(骨子その1) [2011年03月13日(Sun)]

○3月13日11:45のツイートより (http://twitter.com/#!/kazuo_ishikawa)
 先ずは『日本復旧復興対策予算』として子ども手当・高速無料化・農業戸別補償・法人減税・公務員総人件費一割などを復興国家事業に転用すべき。当面、国全体の緊急時。
 @oniken0024党派関係ない。国を挙げて取り組む時。
 @takeshi108この際政府与党予算を丸呑みしたらよい

○3月13日12:16のツイートより (http://twitter.com/#!/kazuo_ishikawa)
 『日本復旧復興対策』として子ども手当・高速無料化・農業戸別補償・法人減税・公務員総人件費一割を復興事業に転用すべき!
 @googlenews_top自公「国会休会を」、民主「予算成立が先」

○3月13日15:14のツイートより (http://twitter.com/#!/kazuo_ishikawa)
 現在の来年度予算案を復旧復興対策として大胆転用するための補正(便宜的には当初予算案の組替)なら大賛成。
 @googlenews_top来年度補正で震災対策=自公幹部も協力姿勢−民主・城島氏
Twitter@kazuo_ishikawa [2011年03月13日(Sun)]


 http://twitter.com/#!/kazuo_ishikawa
論風「予算案の国会修正 ねじれは与野党の見識試す」 [2011年02月04日(Fri)]

 本日のFujiSankeiBusiness i. に拙稿が掲載されましたので御参考まで。
  → http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110204/mca1102040500002-n1.htm

>>>

− 予算案の国会修正 −
■ねじれは与野党の見識試す
 ねじれ国会の影響というか効果というか、来年度予算案やその関連法案を巡っては、去る1月24日の通常国会召集の前から、与党幹部がさかんに修正の可能性について言及している。これは極めて異例のことである。自民党など野党の賛成がなければ、予算関連であるかどうかにかかわらず法案が一本も成立できない情勢だからであろう。
 野党各党が政府提出の予算案や法案に賛成できないことを表明するのは何ら異例のことではない。むしろ毎度通例のことだ。しかし、今国会に関していえば、野党の姿勢は単に反対を叫ぶだけのものとは根本的に異なる。本当に野党の意見が反映され、究極的には丸呑みされる可能性もあるのだ。
 今国会に提出される法案は、現時点で分かっているだけで60本以上ある。そのうち予算関連法案は20本以上あるが、これらも含めて主な法案について以下で考えていく。

◆法律措置と予算措置
 予算案に関しては衆議院の優越があるため、参議院で否決されても30日後に自然成立する。予算の執行を伴うものには、法律による根拠が必要のあるもの(以下「法律措置」)とそうでないもの(以下「予算措置」)がある。
 ところで、政府が行う事業を予算措置とするか法律措置とするかに関しては、明確な判断基準は見当たらない。民主党政権の目玉政策である子ども手当と高校無償化を比べると、前者は法律措置だが、後者は予算措置である。
 今年度にも来年度にもいえるが、なぜ子ども手当を高校無償化のような予算措置にしなかったのか、摩訶不思議である。施策の受益者からすれば、法律措置か予算措置かはどちらでも構わない。
 政治状況にかかわらず政策を確実に執行するのであれば、子ども手当を予算措置にしなかったことは、“民主党型政治主導”の欠陥が露呈された格好だ。税制改正法案についても同様である。法案が成立しなければ、歳出と歳入の間で大きな齟齬が生じる。

◆特例公債法案は事態深刻
 歳入を補う赤字国債を発行するための特例公債法案については、事態は深刻だ。これが成立しないと、大きな歳入欠陥が生じる。ただ、やや無理筋ではあるものの、例えば特殊法人や独立行政法人を介して資金調達することによって部分的に政策趣旨を体現することができなくもない。前例はない。
 地方自治体が自主裁量で資金使途を決められる地域自主戦略交付金に関しては、根拠法案が成立しないと使えない。極端な場合を除き、個々の補助金交付要綱の柔軟な解釈により相当部分の使途柔軟化は実現できるので、実務的にはわざわざ法律措置にする絶対的な必要はない。補助金適正化法の運用は非常に柔軟なものだ。
 この場合、予算執行後の会計検査との兼ね合いからも、補助金の運用にかかる政府方針を明確に定めておくべきであることは言うまでもない。
 予算関連法案ではないが、何かと話題になる中小企業金融円滑化法改正案については、取り扱いは相当重要だということになっている。政策の中身は本来、大手を振って賛同されるべきものではない。現行通り期限が切れたとしても、若干の後遺症を除けばあまり目くじらを立てるようなことにはならないのではなかろうか。

◆介護保険を取引材料にするな
 最後に、社会保障制度の一翼を担う介護保険法改正案はとても重要である。国会のねじれによって、場合によっては大きな修正が施される可能性もあるが、それも含めて侃侃諤諤の審議となるのであれば歓迎すべきことだ。だが、いたずらに取引材料に使うのはいけない。
 与党だけでなく、野党にとっても、ねじれ国会という状況は、彼らの政策的見識をあらわにする好機となる。
経済教室 〜 『介護産業の規制緩和急げ 人材不足が深刻に ベンチャー育成が必要』 [2011年01月25日(Tue)]

 本日の日本経済新聞・経済教室に標題の拙稿が掲載されました。

 原文は以下の通りで、御参考までに書き下します。

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「介護ベンチャー」の育成を!

 「介護」――。少子高齢社会に入ったとされる我が国においては今後、多くの人々が通る道になるであろう。自分が住んでいる市町村から要介護認定を受ければ、1割の自己負担で公的な介護サービスを受けられようになる。これが介護保険制度だ。介護保険法の第1条では、介護保険制度とは要するに、要介護状態の人が尊厳を保持し、自立した日常生活を営むことができるよう、必要な介護サービス(保健医療サービス及び福祉サービス)に係る給付を行うためのものとされている。
 介護サービスを受ける必要のない人や、介護の現場を知らない人にとっては、あまりピンとこないものかもしれない。だが、介護保険が今の我が国で最も重要な社会インフラの一つとなっていることは間違いない。政府の成長戦略においても、介護は医療と並んで成長産業として位置付けられてきている。まさに『介護産業』だ。2000年に施行され、10年目の節目を迎えている介護保険制度は、結果的に、介護を成長産業として振興していくための『介護市場』を形成する礎となっている。
 医療分野と違い、介護分野では介護保険法施行当初から民間企業の参入が認められてきた。介護をビジネス機会の到来と捉えた数多の企業が、この分野で事業を立ち上げた。ところが、07年に当時業界最大手だったコムスンが介護報酬を巡る不正事件を起こしたことで介護事業から撤退したり、それを契機として介護関係事業者に係る合従連衡が頻発したりと、最近の介護産業界は、さながら戦国絵巻の様相を呈している。
 他方で、我が国の高齢化は加速度的に推移してきている。介護保険制度に係る点で00年と09年4月を比較すると、65歳以上の被保険者数は2165万人→2838万人(32%増)で、要介護認定者数は218万人→469万人(115%増)となっている。介護保険のサービス受給者数は149万人→384万人(158%増)となっており、このうち居宅サービス受給者数は97万人→278万人(187%増)である。
 今後について見れば、08年現在において10.4%であった75歳以上高齢者の割合は、15年に13.1%、25年に18.2%、55年には26.5%にまで達するとの見込みだ。65歳以上高齢者のうち認知症高齢者が増加し、世帯主が65歳以上の世帯のうち単独世帯や夫婦のみ世帯が増加するといった傾向が見通されている。特に、首都圏を始めとする都市部では、急速に高齢化が進むことが予想されている。高齢者人口比率を05年実績と15年見込みで比較すると、埼玉県で116万人→179万人(55%増)、千葉県で106万人→160万人(50%増)、神奈川県で149万人→218万人(47%増)である。
 以上のような推移や予測を見ても、介護ニーズは日増しに高まっていくことは確実だ。介護産業を一大産業として育成し、振興していくことが、我が国の社会保障政策における最大のテーマの一つであることに疑いの余地はない。
介護を巡る政策課題というと、先ずは介護保険制度だ。今月開会の第177回通常国会では、介護保険法改正案が提出される予定となっている。3年に1度の定期的な制度見直しの一環だ。その中心は「地域包括ケアシステム」の実現である。訪問介護と訪問看護が連携し、24時間の定期巡回・臨時対応を行うサービスを新設する。現行制度では訪問看護などに制約があるため利用者が限られてしまう。また、介護と医療の複合型事業所を認めたり、介護付き高齢者住宅の整備を打ち出すなど、新たなニーズへの対応策も掲げられている。課題は、財源と人材だ。
 財源問題については、政府・与党が「税制と社会保障の一体改革」に関して既に動き始めている。消費増税を中心とした財源確保策が打ち出されるものと予想されるが、社会保障といっても介護・医療、年金、子ども、生活保護など多岐に亘る。政府・与党には、増収分を社会保障のどの分野に振り分けるのか、その優先順位をどのように付けるのか等々に関しても同時に明らかにすることを求めておきたい。
 人材問題についても課題は多く、特に深刻なのは介護労働力が非常に不足していることだ。昨年11月の介護職に係る有効求人倍率は1.53倍で、09年3月以来の高水準になった。ホームヘルパーや福祉施設介護員を始めとした介護サービス従事者には給与水準など待遇面での不満が根強く、求人が回復してきた製造業などに介護から人材が移動しつつある。介護職の有効求人倍率は金融危機後の景気後退を受けた09年以降に低下基調になったが、昨年5月の1.08倍を底に再び上昇に転じた。他産業で失業し、求人が多い介護で求職していた人が製造業に戻っているからだ。
 介護で働く人の平均勤続年数は約5年で、全産業平均の半分程度でしかない。ヘルパーで給与は月20万円と、産業全体の約32万円と比べて見劣りする。待遇面での不満はかなり大きい。
 08年時点で128万人だった介護職員数は、25年には212万〜255万人が必要になると見込まれる。団塊の世代が介護サービスを利用し始めることもあって、介護には100万人程度の増員が求められる。
 政府も介護人材不足を解消しようと対策を講じている。介護からの離職者を減らすため、09年度補正予算で1人当たり賃金を月1万5000円上げる交付金を創設した。また、職業安定所で紹介する職業訓練でヘルパー資格の取得コース数を増やしたりもしている。だが現状では、介護産業を担う人材の定着は進んでいない。
 今後一層旺盛になることが確実な介護サービス需要に適応していくには、豊富な人材を確保しつつ、健全な介護事業者が質の高い介護サービスを提供していくことが肝要だ。
 そこで、介護事業や介護職の魅力を効果的効率的に世に知らしめていくことで、熱意のある優秀な人材が介護業界に集うようなシステムが必要となる。昨年10月、特に若手を中心とした有能な介護人材を集めることを目的として、社団法人日本介護ベンチャー協会が設立された。同協会の立ち上げに深く関与した日本介護福祉グループの藤田英明会長は、「介護分野は向上心のある人材を本当に求めている」として、次の5つを基本理念として掲げる。
――@介護職の魅力を世の中に伝え、多くの若者が介護事業を起業したり、介護を生涯続ける魅力ある仕事として選べる仕組みを創ること。
――A介護の仕事は「辛く、大変だけれども、やりがいがあり、楽しい仕事」であることを示すこと。
――B介護業界を競争原理が働く健全なものへと育成し、サービスレベルの質的向上に寄与すること。
――C介護産業の発展が周辺産業にも波及し、ひいては国全体の経済活性化の起爆剤になること。
――D高齢社会を迎える世界各国に対し、我が国の介護産業インフラを輸出できるようになること。
 このように、介護分野にもベンチャー精神が育つ土壌が醸成されつつある。今後こうした『介護ベンチャー』を増やし、将来の介護産業界の牽引役としていくためには、どのような政策が必要となるだろうか。
 ここでは「介護産業」が他産業にはあまり見られない特殊性に着目して二つほど改革の方向性を提案したい。
 第一に、介護サービスに係る報酬規制についてである。介護サービス従事者の賃金は、最終的に介護保険法に基づき厚生労働大臣が社会保障審議会(介護給付費分科会)の意見を聴いて定められる。いわば公共料金と同じだ。これにより一定の賃金水準が確保される一方で、個々の介護サービス従業者のスキルや努力の結果は賃金に全く反映されていない。これでは魅力ある介護産業という職場の創出は期待できない。介護報酬は保険料や公費によるので完全自由化は難しいだろうが、少なくとも介護サービス従事者の努力が報われるような柔軟な報酬体系を目指すべきである。
 第二に、介護サービスに係る参入規制についてである。その一つに介護総量規制がある。これは、特別養護老人ホームなど介護施設の総利用者数を一定の範囲に抑えるもの。介護サービスが施設の利用に偏ることを防ぐための規制だ。他方で、増え続ける介護サービス需要に対して介護サービス供給が呼応できていないのも事実だ。厚生労働省によると、特別養護老人ホームに限ってみても、09年での入所待機者は約42万人に上る。地域ごとに入居希望者の多寡はあろうが、地域の需要に応じて地方自治体が自由に整備できるようにすべきである。
 諸々の課題はあるが、「介護」をサービスや雇用を創造する場とするための制度整備は是非とも必要だ。国を挙げて、「介護」を近い将来の一大産業に育成していかなければならない。