「郵政民営化 事業の姿を早く示せ」
[2007年02月12日(月)]
朝日新聞(07/2/12朝刊・社説)「郵政民営化 事業の姿を早く示せ」は、郵政民営化に関する諸問題点を再認識させるものである。これを参照しながら、郵政民営化について今一度考えてみたい。
―――国営として136年続いた郵政事業が10月に民営化。日本郵政公社は、持株会社の日
本郵政と、その傘下の郵便事業、銀行、生命保険、郵便局経営という4つの子会社に衣
替え。どんな企業グループになるのか、内外の関心は高い。お目付け役の郵政民営化
委員会は、銀行と保険に認められる新規業務の基本ルールを提示。「市場原理」に沿っ
て民間と対等に競える分野への進出は許す方向。
郵政民営化は郵政公社の4分割・民営化であり、組織改編はしばしば最大の関心事になるが、組織の姿は結果論に過ぎない。郵政民営化の最大の政策的焦点は、郵政資金の流れを『官から民へ』と移行することによる経済社会の変革と活性化である。
―――銀行と保険を合わせた資産規模は300兆円余り。200兆円ほどを国債で運用。国債残
高の3割近く。郵貯や簡保にあった「政府保証」が民営化後も残るのかどうかが問題。
民営化されても株式上場するまでは全株を政府が持つ。「政府が大株主であれば暗黙
の政府保証があり、民業よりも有利になる」と金融界は反発。これを民営化委は「誤解
だ」。だが、国の信用という後ろ盾を当然と考えてきた利用者がすんなりと納得するか。
政府や新会社は、国の特別扱いはない点を周知させるべき。金融商品を販売する際に
説明を義務づけるぐらいの姿勢で徹底させてもらいたい。
財政再建が進めば国債発行額は漸減していくだろうが、郵政マネーによる国債保有額も市場に衝撃を与えないような形で減らしていくべきである。国債消化機関であり続けることは、郵政民営化の趣旨に反するばかりか、日本の経済社会の変革を促すことにはつながらないだろう。明示でも暗黙でも政府保証は制度上はないが、市場がそう見なければ政府や民営化委がいくら叫んでも無駄だ。市場即ち投資家がどう感じるかで決まる。金融機関の反発は、反発のための反発だとの指摘があるが、そうであったとしても、暗黙の政府保証への批判は完全民営化までは続くだろう。その後も続く可能性がある。それが現行郵政民営化法の限界であり、将来見直さなければならない要素の一つだ。
―――民間のリスク管理手法を徹底すれば、保有国債を減らして資金を他の運用先に回すこと
になる。だが、国債の売却を急げば債券価格が下がり、長期金利は跳ね上がる。損が出
る上、経済全体に大きな影響も。減量は計画的に進めるべき。メガバンクが理想なの
か、証券市場に強い農林中央金庫のようになるのか、あるいは別の道を歩むのか。
日本郵政は、民営化から4年以内としてきた金融2社の上場を1年前倒ししたいと意欲
的だが、その前に具体的な事業計画を固め、その実現に向けた戦略を示さなければな
らない。
上場時期の前倒しは望ましい話。投資家や貯金者の興味はまちまちだが、メガバンクをもう一つ作ることが望まれているとは思えない。集金能力はあるが運用能力のない超巨大銀行が誕生する。巨大な資金塊の運用者として日本経済社会のために活躍していくには、どのような資金運用が適当なのだろうか。融資銀行か投資銀行か。富を少しずつ蓄積させたいなら『融資銀行』を、富を積極的に生み出したいなら『投資銀行』を、それぞれ目指すべきだ。今後当面の日本の経済社会情勢を見据えると、積極的に貯金者へ富を配分していくことが求められるのではないだろうか。そうなれば、投資銀行への脱皮が必要となる。


