• もっと見る

2012年10月28日

「指揮者のひとりごと」 第30話 − 新しい医療技術の普及が必要なわけ −

R0010352.JPG 2003年の事であったと思うが,前述の内視鏡的肺容量縮小術の研究で有名なシアトルのSpringmyerから紹介された,嚢胞性肺疾患を持つMさんの全快祝いが東京で行われた折に,日本フィルハーモニー常任指揮者の(炎の)コバケンこと,Kご夫妻に出会うことが出来た.お恥ずかしい事にベートーヴェンの第九交響曲を世界一多く演奏しておられるマエストロという程度の理解しかなかった私は,著書「指揮者のひとりごと」を興味深く読ませて頂いてお祝いの会に臨んだ.Mさんとマエストロの関係は,1974年第一回ブダペスト国際指揮者コンクールで第一位となられた後国内外で活躍中であったマエストロを1988年,日本フィルハーモニー交響楽団の首席指揮者実現の夢を成就させたのがMさんであった.
 Kとの初対面で,第九のスコアにサインをお願いした私に,マエストロは「今日が出会いの始まりですのでサインはよしましょう.」とおっしゃられ,会が終わる頃に「渡辺洋一先生との出会いに感謝して.」と“第九の楽譜の一部”と一緒に書いて下さった.その後,2008年の大晦日に東京文化会館で開催される,ベートーヴェンの全交響曲を全て一人で指揮する「ベートーヴェンは凄い!全交響曲連続演奏会」の主治医役を務めさせて頂いたり,2011年岡山でマエストロの指揮のもと第九を歌わせて頂いたりのお付き合いをして頂いている.
 炎のコバケンとして,情熱的かつ厳しい指揮者,怖い指揮者として音楽の世界では認識されているように思うが,私が個人的にお付き合いさせて頂いている限りでは,音楽に対しても,人間的にも本当に純粋な方であり,マエストロほど優しい方は稀であると感じている.
 そんな優しさの現れの一つとして,2010年には「コバケンとその仲間たちオーケストラ」に,傷がいがある31人を加えた素晴らしいコンサートを指揮され皇后陛下も拝聴された.誰もが自分らしく生き生きと命を輝かせて暮らすことの出来る,INCLUSION社会を目指した活動は現在も継続されており,映画「天心の譜」でその活動を知ることが出来る.
 音楽だけでなく,全ての人に対する優しい心,純粋な心に魅了された北野たけし監督が,マエストロの追っかけになっていることは皆様御存知のとおりである.            
(30稿,2012. 10. 28 一般版)
この記事へのコメント
コメントを書く
トラックバックの受付は終了しました

この記事へのトラックバック