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萬葉学会一日旅行ー明日香を巡る [2016年05月08日(Sun)]
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 昨日は、萬葉学会主催の一日旅行があり出かけて来ました。上の写真は、集合場所(橿原神宮前駅東口広場)で挨拶される学会代表の坂本信幸先生。その右は学会誌『萬葉』編輯委員長の上野誠先生。
 講師陣には萬葉学会編輯委員の著名な先生方が同行され、学生(東大、奈良女子大、皇学館大、関西大)の参加もあり総勢80名程でした。萬葉学会は研究者だけではなく万葉愛好家なら誰でも入会できる開かれた学会で、特に若い方の参加が期待されています(10月には奈良大学で第69回全国大会が開催予定)。

 この日のコースは、橿原神宮前駅 → 剣池 → 甘樫丘 → 雷岳 → 飛鳥寺 → 伝板蓋宮跡 → 石舞台古墳 → 酒船石 → 万葉文化館で、各場所毎に同行の講師の先生から解説して頂きました(資料も配布)。

 剣池では、垣見修司先生の解説を聴きました。剣池が詠まれた万葉歌は、
【歌】 み佩かしを 剣の池の 蓮葉に 溜まれる水の 行くへなみ 我がする時に 逢ふべしと 逢ひたる君を な寝ねそと 母聞こせども 我が心 清隅の池の 池の底 我は忘れじ 直に逢ふまでに (L-3289)
【口語訳】 (み佩かしを) 剣の池の 蓮の葉に溜まっている水玉が どこへも流れて行けないように 私がどうしていいか分からないでいる時に 逢うのが定めだと逢ったあなたなのに 一緒に寝てはいけないと お母さんはおっしゃるけれど (我が心) 清隅の池の 池の底のように清らかに澄んだ深い思いなの 決して私は忘れないわ あなたにじかに逢うまでは
 剣池は、橿原市石川町の「石川池」(孝元天皇剣池島上陵の周囲の池)で、北堤には辰巳利文揮毫の万葉歌碑があります。
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【歌】 軽の池の 浦廻行き廻る 鴨すらに 玉藻の上に ひとり寝なくに (B-390 紀皇女)
【歌】 軽の池の 岸辺を泳ぎ廻る 鴨でさえ 藻の上で ひとり寝しないのに

 甘樫丘へは、村田右富実先生の解説・小休止の後登りました。
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 甘樫丘の上では大和三山や飛鳥の地を眺望しながら上野先生の解説を聴きました。
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 犬養先生揮毫の最初の歌碑(先生の還暦記念に昭和42年に建立された)
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【歌】 婇女乃 袖吹反 明日香風 京都乎遠見 無用尓布久 (@-52 志貴皇子)
【読み下し文】 采女の 袖吹き返す 明日香風 京を遠み いたづらに吹く
【口語訳】 采女(うねめ)らの 袖を吹き返していた 明日香風は 都が遠のいたので むなしく吹いている
 歌碑の前で歌われる坂本先生と岡本三千代さん(作曲は黛敏郎、譜面は次に載せる)
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 犬養先生の還暦記念に黛敏郎により作曲された「萬葉歌碑のうた」(志貴皇子のうたによる)の譜面(黛敏郎は犬養先生の、神奈川県立横浜第一中学時代の教え子)
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 雷岳(いかずちのおか)では鉄野昌弘先生の解説を聴きました(東大教授でお話を聴くのは今回初めて)。次の写真に示した歌碑の歌は、持統天皇が雷の岡に出遊なさった時の人麻呂の作で、「大君は神にしませば」という表現は、壬申の乱以後に生まれてきた天皇神格表現。
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 明日香村雷の万葉歌碑(揮毫は犬養先生)
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【歌】 皇者 神二四座者 天雲之 雷之上尓 廬為流鴨 (B-235 柿本朝臣人麻呂)
【読み下し文】 大君は 神にしませば 天雲の 雷の上に 廬りせるかも
【口語訳】 わが大君は 神でいらっしゃるので 天雲の 雷(いかずち)の上に 仮宮を造っていらっしゃる

 飛鳥寺に到着(蘇我入鹿の首塚前)。ここでは乾 善彦先生の解説を聴きました。
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 飛鳥寺境内にある山部赤人の万葉歌碑(佐佐木信綱揮毫)
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【長歌】 みもろの 神奈備山に 五百枝さし しじに生ひたる つがの木の いや継ぎ継ぎに 玉葛 絶ゆることなく ありつつも 止まず通はむ 明日香の 古き都は 山高み 川とほしろし 春の日は 山し見が欲し 秋の夜は 川しさやけし 朝雲に 鶴は乱れ 夕霧に かはづは騒く 見るごとに 音のみし泣かゆ 古思へば (B-324)
【反歌】 明日香川 川淀去らず 立つ霧の 思ひ過ぐべき 恋にあらなくに (B-325)
【口語訳】 明日香川の 川淀を離れず 立つ霧のように すぐ消えうせるような わたしの恋ではないのだ

 伝飛鳥板蓋宮跡に到着し、ここでは村田右富実先生による解説
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 明日香村岡の万葉歌碑(揮毫は犬養先生)
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【歌】 大口能 真神之原尓 零雪者 甚莫零 家母不有国 (G-1636 舎人娘子)
【読み下し文】 大口の 真神の原に 降る雪は いたくな降りそ 家もあらなくに
【口語訳】 (大口の) 真神の原に 降る雪よ ひどくは降らないでおくれ 誰もいないのに 

  奈良県立万葉文化館に到着し、毛利正守先生(今回で編輯委員を退任される)の話
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 解散後に、岡本三千代さんが館長をされている犬養万葉記念館に立ち寄り、咲き始めたアサザの花を見て帰りました。

Posted by katakago at 14:25
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