ヒオウギの種(その2) [2011年10月04日(Tue)]
ヒオウギ(あやめ科)の種の写真と万葉歌は、9/16にも掲載しています。万葉歌に詠まれている、ぬばたまは、このヒオウギの種と考えられています。全て、黒・夜・暗・夢などにかかる枕詞として用いられています。9/16には、「黒」と「夜」にかかる例を示しましたが、ここでは、夜との連想から「夢(いめ)」にかかる例を取り上げます。 【歌】 相思はず 君はあるらし ぬばたまの 夢にも見えず うけひて寝れど (J-2589) 【口語訳】 あなたは私のことを思って下さってはいないようですね 夜の夢にもあなたはお姿を見せません 神様にお願いしているのですが (『萬葉集全歌講義』より) 当時は、夢に恋しい人が見えるのは、その人がこちらを思っているしるしと考えられていました。夢に君の姿が見えないのは、相手がこちらを思っていないしるしと思い、嘆いている女の歌です。 次は、相手が夢に見えた場合です。湯原王と娘子との贈答歌の中の娘子の歌です。 【歌】 我が背子が かく恋ふれこそ ぬばたまの 夢に見えつつ 寝ねらえずけれ (4-639) 【口語訳】 あなたが こんなにまで思ってくださるからこそ (ぬばたまの) 夢にずっと見えて 眠れなかったのですね |
Posted by
katakago
at 21:28