1月26日(日)NHKテレビ朝7時からの「おはよう日本」の中で「グループホーム反対運動」の特集が組まれます。これは、昨年、12月4日にNHKテレビ「首都圏ネットワーク」で放送された水戸放送局の番組を再構成したもので、大阪でも担当記者の電話取材を受けました。
12月の放送内容は次のようなものです。
NHK水戸 井上 登志子
障害者を取り巻く現状と課題について伝えるシリーズ、3回目は、障害者と地域社会の関係についてです。
国は施設で暮らす障害者に地域のグループホームなどに移って生活してもらう「地域生活移行」を進めています。
障害者に自立した生活を送ってもらうことが目的です。
グループホームやケアホームの建物は普通の住宅と変わりありません。
入所施設の障害者が、決められたスケジュールで行動し自由な外出などもできないのに対して、ホームでは自分の意志で行動し、支援を受けながら家事を行うなど、一般の家庭のように暮らしています。
ところが、こうしたグループホームなどの建設に対して各地で反対運動が起き、計画断念に追い込まれるケースも相次いでいます。
どうすれば、障害のある人とない人が地域で共に暮らしていけるのか考えます。
東京・文京区にある障害者のグループホームの建設予定地です。
2年前に計画が持ち上がってから一部の住民が反対運動を続けています。
この場所には文京区出身の障害者10人が暮らすグループホームと通所施設が建設される予定です。
ホームを建設する社会福祉法人、江澤嘉男施設長は
「障害のある方たちが地域の住民の方々と普通に交わって、地域の中の一市民として認めてもらえるためにもこのグループホームが是が非でもできあがることが我々にとっても悲願です」。
しかし、文京区が開いた説明会では、建設に反対する住民から障害者への不安や嫌悪感を示す発言が相次ぎました。
「女性の後をつけ回したりしないか」。
「ギャーとか動物的な声が聞こえる」。
「地価など資産価値が下がる」。
今、各地でこうしたグループホームへの反対運動が起きています。
対話を重ねても双方が折り合えないケースもあります。
文京区でも説明会を重ねましたが、反対派の住民たちは、計画の白紙撤回を求め続けています。
NHKの取材に対して、周辺の道路が狭いことなどを反対の理由に挙げ、「住民説明会は単に形を繕うだけのものだ」としています。
住民と施設側の間に立って調整してきた文京区も解決の糸口を見いだせないでいます。
文京区障害福祉課の渡邊了課長は
「やはりまだまだ障害者への理解が進んでいません。
地域において十分浸透していないということを痛感します。
今後も個別的にご説明にあがるなどしながら、一人一人ご理解を促していきたい」。
茨城県牛久市に激しい反対運動を乗り越え、2年前に建設されたケアホームがあります。
このホームでは、知的障害のある20代から40代までの男性4人が暮らしています。
ケアホームを運営するのはNPOの秦靖枝さんです。
反対運動が続くなか、周辺住民との交渉に中心となって当たってきました。
当時、ホームの建設に反対した人のほとんどが、障害者と身近に接したことがない人たちだったといいます。
秦靖枝さんは「インターネットですごくいろいろ出るんですね。突然に突き飛ばすとか、叩くとか、噛みつくとか、不安感とか、分からないことに対する恐怖心、それが絶対にどんどん悪い方にエスカレートしていくんだと思うんです」と分析しています。
不安を取り除くには知ってもらうしかないと、説明会を繰り返すとともに、入居予定者1人1人のプロフィールを紹介する書類を作り、本人と一緒に近所を回りました。
そのうちに反対する人は減っていき、最後は数人だけになりました。
「反対してる人って数はそんなに多くないんです、声が大きい。だからとにかく説明をして分かっていただいて、反対している人と戦うのでなく、賛成している人を増やそうとしました」と秦さんは振り返ります。
今では回覧板を届けるなど、入居者と近所の人の間に自然なつきあいが生まれています。
近所の人は「障害者というと見た目もだらしないとかいう目で見てたんじゃないかと思うんです。
それが、普通の人と変わらないでしょ。
お隣の人が来てくれた、あーご苦労さまというのと同じですよね」と話しています。
入居者の1人、今野寛也さん(25)です。ここに住むようになって初めて料理を覚え、仲間とともに自立した生活を送っています。
生活が軌道に乗り、この地域で暮らす住民としての自覚も芽生えてきました。
今野さんは「みんなと仲よくするのが一番だと思ってます。普通に暮らしたいなあと思っています」。
この日、今野さんはホームを代表して地域の避難訓練に参加しました。
災害の時には高齢化が進むこの地域の助けになりたいと考えています。
地区の代表者は「地域の一員という気持ちだから、参加してくれてるんじゃないかなと思っているんです。
ただ、僕らは障害者とか何とかそういう思いはないんでね、普通にふだんどおりにつきあってるつもりです」と語っていました。
障害のある人とない人が共に暮らす地域をどうすれば実現できるのか。
私たち一人一人が問われています。
反対理由として多く聞かれるのが、「障害者は犯罪を起こしかねない」という声ですが、警察庁によりますと、「障害者による犯罪の発生率が障害がない人の発生率より高いというデータはない」ということです。
知らないことに対する不安やおそれは誰もが持つものですが、それを乗り越えるには、近道はなく、ただ、「知る」ことしかないと、先ほどのNPOの秦さんは話していました。
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