中公新書 大阪 [2012年11月30日(Fri)]
この中公新書の発行日は、2012年11月25日。
出たばかりというか、 この時期にあえてという本です。 砂原庸介 著 「大阪―大都市は国家を超えるか」定価882円 停滞が続く日本。 従来の「国土の均衡ある発展」は限界となり、 経済成長の"エンジン"として 大都市が注目を集めている。 特に東京に比べ衰退著しい大阪は、 橋下徹の登場、 「大阪都構想」を中心に国政を巻き込んだ変革が行われ、 脚光を浴びた。 大都市は、日本の新たな成長の起爆剤になり得るのか――。 本書は、近代以降、国家に抑圧された大阪の軌跡を追い、 橋下と大阪維新の会が、なぜ強い支持を得るのかを探る。 本文からの引用です。 本書では、「大阪」というフィルターを通して、日本における大都市の問題を議論していく。同じような議論は、「名古屋」をはじめその他の地域の大都市でも当てはまるところがある。重要なことは、従来の「国土の均衡ある発展」という理想の実現が難しくなる中で、経済成長のエンジンとなる大都市をどのように扱うべきかを考えることである。それは、本質的に特定の地名に回収されるべき問題ではないのだ。 本書を執筆することになった直接のきっかけは、言うまでもなく橋下徹と大阪維新の会が掲げる「大阪都構想」と、それに連なる政治的な変動である。2011年4月の統一地方選挙に続き、11月の大阪府・大阪市の「ダブル選挙」で勝利した大阪維新の会は、その後の国政進出を表明して日本政治の台風の目となり、その中心にいる橋下徹について毀誉褒貶の様々な評価がなされている。 しばしば目につく評価は、大きくふたつに割れている。ひとつは、橋下こそが「改革者」であり、停滞した日本政治に対して刺激を与えるとともに、将来には国政でのリーダーシップを期待するようなものである。他方で批判的な論者は、橋下が「ポピュリスト」であり、問題の多い政策を掲げながら有権者を扇動してきたとする。このような議論では、橋下徹という個人について論評し、その人格や思想をもとにして「大阪都構想」のような政策への評価を行う傾向が強い。 もちろん、政治家個人について考えることは重要である。橋下についても、その著書を読めば極めて有能な一面を持つ政治家であることは分かるし、実際にこれまでに政治に参加してこなかった層をも動員して多くの支持を取り付けることに成功していることを見れば、それを可能にした個人の人格や思想に注目して議論するのは不自然ではない。しかし、個人に注目し過ぎることは、反対にそこで提案される政策への評価を歪めることにならないだろうか。 「大阪都構想」は、その最たるものである。核となる政策であると位置づけられている以上、その主張者の意図と切り離して考えることは難しい。そして、観察する周囲の人間は、主張者である橋下の人格や思想から意図を想像し、そこから「大阪都構想」がどのようなものかを評価することになる。「大阪都構想」の内容が、必ずしも常に一貫したものとして説明されていないために、観察者側の想像で補うことができない部分には、「具体性に欠ける」という批判がつきまとうことになる。 本書では、主張者の意図を離れて、「大阪」という大都市をめぐる歴史の中で「大阪都構想」がどのように位置づけられるかを明らかにしていく。それは同時に、2011年に行われた一連の選挙で勝利した橋下徹と大阪維新の会が、なぜこれほどまでに支持を得ることができたのかについての推論を行う作業にもなっている。そのようなねらいのもとで、大都市という存在が現れた明治期にさかのぼり、日本全体と「大阪」――国家と大都市――を行きつ戻りつしながら論を展開していく。 読みたくなりましたか。【KB】 |
Posted by
大阪手をつなぐ育成会
at 00:31