児童虐待防止法10年 [2010年06月06日(Sun)]
6月に入り毎日新聞に5回シリーズで連載された
「児童虐待防止法10年」。 最終回の昨日(6/5)の記事はとてもショッキングな内容でした。 虐待の増加による障害児施設、特に重症心身障害児施設や 肢体不自由児施設の変容ぶりです。そのまま転載します。【KB】 増える、保護目的入所 ◇障害児施設、対応追われ 昼下がりのおやつの時間。木のいすにベルトで体を固定された小学生の男児がクレープをかんでいた。虐待で負った障害のため、固定なしでは座っていることができない。肩をなでると顔を上げ、伸びきらない左手で記者の指を握り返した。 男児が首都圏の障害児施設に来たのは2年前だった。未熟児で生まれ、病院の新生児集中治療室から無事に親元へ戻って2カ月後、けいれんを起こして再び受診。急性硬膜下血腫や脳浮腫が見つかり、乳幼児揺さぶられ症候群と診断された。家庭内での虐待が疑われたため病院が児童相談所に通告し、乳児院に保護された。今も親元から離れたまま施設で暮らす。 男児は女性職員に高く抱き上げられると笑い、好きな食べ物は口いっぱいほおばる。だが、重い知的障害で言葉が出ず、手足のまひで立てない。将来も歩くのは難しいという。 別の3歳男児は昼食後、クッションチェアにうつぶせになって寝息を立てていた。早産で生まれ、集中治療室から親元へ戻ったが、2週間後に激しく嘔吐(おうと)。病院で乳幼児揺さぶられ症候群と診断された。虐待が疑われ、乳児院を経て今年、施設に来た。両親は面会に来ないままだ。 入所の際、医師らは3歳児の脳のCT(コンピューター断層撮影)画像に絶句した。揺さぶられによるとみられる衝撃で極端に萎縮(いしゅく)していたからだ。男児は首が据わらず、全身の介助が必要で、視覚の反応がない。施設の職員は「恐らくずっと寝たきり。18歳を過ぎたら重症心身障害者施設の空きを待つことになるでしょう」と話す。 厚生労働省研究班の調査では07年度、全国の児相と児童福祉施設が把握した乳幼児揺さぶられ症候群の子供は疑いも含め118人。うち8人が死亡し、34人に後遺症があった。重症心身障害児者施設や肢体不自由児施設でも、本来の役割と違う虐待からの保護目的での入所が増え、対応に追われる。心身障害児総合医療療育センター(東京都)の米山明医師は「虐待の後遺障害で移動や自力呼吸もできず、言葉も出ず、受けた傷や痛みを表現できない子も少なくない」と指摘する。 各地の施設では、先天的な障害があることで虐待を受けたとみられる入所児も増えている。別の同省研究班の調査によると、障害児が虐待を受ける割合は健常児の4〜10倍と推計されるという。 米山医師は「努力して施設から自立する子もいるが、社会でつまずいても家庭に頼れず、独り立ちには何倍ものハンディを抱える。心理面のケア充実が不可欠」と話す。養育放棄されて施設から普通校に通い、卒業後に大手企業に就職したものの職場でいじめに遭い、薬の依存症と格闘する施設出身者もいる。 首都圏の施設に20年以上勤めるベテラン職員は言う。「虐待を受けた子供たちは、親が自分の人生をうまく生きられなかった痛みや苦しみを心と体で引き受けている。傷つきながら、全身で背負い続けている」 |
Posted by
大阪手をつなぐ育成会
at 16:44