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2012年度修了課題発表会(2) [2013年03月27日(Wed)]
前回の記事に引き続き、3月23日(土)に実施した、いきものマイスターの2012年度修了課題発表会の、後半について報告します。


【発表5】地域住民がイノシシ被害と向き合うために必要なこと

かつてイノシシはいないと考えられていた奥能登ですが、平成21年に珠洲におけるイノシシ目撃情報が寄せられて以来、イノシシの目撃情報は増え、農業被害も見過ごせないものになりつつあります。しかし対策は今も進んでいないのが現状です。発表者は農業改良普及員という業務の上で、更に地域住民として、イノシシとどう向き合うかを考察しました。

江戸時代には駆除した猪を供養する為に建てられた猪塚が津幡町に残されているように、かつては石川県にもイノシシが分布していたことがわかっていますが、近年の石川県内におけるイノシシ被害は、平成11年に旧山中町で水稲被害が確認されたのが始まりです。更に平成18年度には500万円、平成24年には3500万円に被害が増加しました。奥能登における被害は平成22年度から始まり、旧山中町から11年をかけて石川県を北上してきたことになります。
近年では鳥獣害専門員の育成の試みも始まっています。宇都宮大学では2010年から里山野生鳥獣管理技術者養成プログラムを開始して、地域鳥獣管理プランナー(大学生、大学院生)、地域鳥獣管理委員(一般人)を育成しています。長崎県は2006年から2009年までの期間にイノシシ大学というプログラムを実施しました。

次に、発表者は地域住民としての立場から、獣害対策について説明しました。発表者が住む地域は数年前までは耕作放棄地が多く広がっていましたが、近縁ではIターン移住者による農業や自然観察の活動などの活発な活動が行われるようになっています。しかし、そこにイノシシが入ってしまえば、活気づこうとしている地域を台無しにしてしまう、そんな懸念もあると言います。
そこで発表者は、農家個人の知識向上、集落環境の整備、長期的な視点を持った計画により地域ぐるみで対策に取り組む白山市の対策を参考例として挙げました。そして発表者は、イノシシ対策は地域住民が自分達の問題だという自覚を持って、地域ぐるみで対策をすることが必要だと結論付けました。餌となるものを残さない、草刈りなどをしてイノシシが侵入しにくい環境を作る、個人および自治体などによる柵の設置など、イノシシを近づけないことがより大切であり、発表者は、駆除はあくまで最後の手段と位置づけました。
最後に、イノシシという共通の問題を契機に、集落が再び結束して活性化する活動に発展させることを検討してみたいと発表者は説明しました。

プロジェクトリーダーである中村浩二教授からは、里山マイスターにも獣害対策を課題にした修了生がいるので、里山マイスター修了生や大学など多様な関係者による混生チームを作って一緒に獣害対策に取り組むのも良いだろうとの意見がありました。他に、全国でも猟師が減少していること、特に石川県は沖縄に次いで猟師が少ないこと、白山では猿害が問題になっていること、などのコメントが委員から寄せられました。


【発表6】里山の生物多様性を伝える為のハナバチ類の同定資料作り

種子植物の70~90%が受粉媒介動物に依存している(Ollerton et al. 2011)とされ、訪花昆虫(蜜や花粉を求めて花に来る昆虫)は植物の多様性を支える役割を持っています。ハナバチ類は代表的な訪花昆虫であり、花の形状やサイズに応じて口器の形や行動、植物との関係などを進化させてきました。ハナバチ類の多様性を調べることは植物の多様性を通じた地域の生物多様性の評価に繋がります。一方で種の同定は専門知識を必要とし、容易ではありません。そこで発表者は、誰にでも簡単にハナバチ類の同定を行うことで生物多様性の評価が可能な一般向けの同定資料の作成方法を検討しました。

発表者は聞き取り調査と文献調査を行いました。
聞き取り調査では石川県内の博物館などを訪問して、石川県内におけるハナバチ類の既存の同定可能な資料の有無、研究事例、展示や観察会などの現状、ハナバチ類の資料の需要の有無などを調べました。結果としては、既存の同定可能な資料はなく、展示は少なく、観察会は行われていないことがわかりました。一方、資料があれば観察会などで使用したい、との意見を聞くことが出来、資料への需要が存在することがわかりました。研究事例としては、金沢城公園での研究事例がありました。
文献調査では、資料への掲載種と対象地域を決定する為、先述の事例の論文、および金沢大学や石川県の文献から、石川県内のハナバチ類の種組成について調べました。石川県には7科194種のハナバチ類が分布し、20〜30%に相当する40〜60種が里山を利用し、120種ほどの植物を訪問することがわかりました。これらの種は頭幅から大型・中型・小型に分けられることから(根来 1999)、同定が比較的容易な大型種を中心に、更に個体数や訪問植物数が多い種20種を掲載種として選出しました。体長地域は、植物との関係についてまで調査されている金沢城公園を対象としました。
資料は野外での持ち運びに便利な、コンパクトな小冊子としました。誰にでも同定出来る簡便な検索表を掲載し、検索表ではハチと混同されやすいハナアブ類などのハエ目との見分け、更に他のハチ類とハナバチ類との見分け方法を示すことにしました。掲載種と植物との関係も説明します。この資料により、花に来る虫の多様性、種ごとに訪問する花の違いなど、生き物と生き物の繋がり触れることが可能となります。発表者は最後に、県内で実施されている親善観察会などで資料を利用して頂くこと、自ら企画する観察会などを行うこと、更に広く県内のデータを集めることで、県内のより広範囲で活用出来る資料の作成も検討したいと説明しました。

委員からは、観察会の場所や方法など具体的な計画があると良い、継続的に時間をかけて資料を完成させると良い、との意見が挙がりました。


【発表7】地域活性化に必要な若者の力と支援の在り方を考える

発表者は白山市木滑集落の地域活性化の取り組みである、木滑里山保全プロジェクトのスタッフを務めてきました。この活動を元に、地域住民と外部との関係、地域住民への影響、支援策などを検討し、持続的な地域づくりのありかた、および発表者自身が地域活性化に貢献する方法を探りました。

対象となるのは白山市木滑地区という、白山麓の過疎化が進んだ集落です。白山は1980年にユネスコのMAB(エコパーク)に認定されましたが認定後の活動実績はなく、エコパーク登録抹消への危惧もあるといいます。
そこで民間企業が平成22年に木滑での里山保全と地域活性化のプロジェクトを開始し、県の緊急雇用事業や農水省の「食と地域の交流促進事業」などを活用して地域外の若者や地域住民を雇用して、里山体験イベント「山笑い」、耕作放棄地の利用や環境配慮型農業による米作りと販売などを実施してきました。これにより地域住民も積極的に活動に参加するようになり、活動の主体は地域に移りつつあると発表者は説明します。一方で緊急雇用事業などにより期間雇用されていた外部の若者らが活動を継続することが難しくなっています。
発表者は、今後は木滑に移住して就農を目指すと共に、環境省の生物田世末井保全推進支援事業、県の白山自然保護センター、石川県ふれあい昆虫館、旧石川県林業試験場、金沢大学の地域連携推進センターなどと連携して、木滑集落を中心とした白山麓の保全活動を提案し、地域活性化の活動の継続を目指すと結論付けました。


委員からは、白山麓の集落の現状を知ることが出来たこと、現状は厳しいが地道でも具体的な活動を継続して欲しい、との意見が挙がりました。


発表終了後の委員会による審査により修了生7名の修了が決定しました。修了生各自には、今回の為の修了証書が手渡されました。更に、この日の発表を聴講しに来てくれたいきものマイスターOB・OG達と修了生達が、私達スタッフへのプレゼントを用意してくれていました。嬉しいサプライズです。最後に、修了生と委員、スタッフ全員で集合写真を撮影です。

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これで、いきものマイスターの全講義を終了しました。今年度を以て、この事業は終了です。この3年間の事業で、併せて18名のいきものマイスターを送り出すことが出来たのも、適切なアドバイスを下さった委員の方々、講師の方々、そして忙しい仕事の合間を縫って講義と課題に懸命に取り組んでくれた受講生の皆様のお蔭です。本当にありがとうございました。
事業としてのいきものマイスターはこれで終了しますが、いきものマイスターとなった皆様の活動はこれからです。
2012年度修了課題発表会(1) [2013年03月26日(Tue)]
2013年3月23日(土)、いきものマイスター2012年度の修了課題発表会を実施しました。今回は、7名の修了生が修了課題発表を行いました。今年度はいきものマイスターの事業としての最終年度ということもあり、いきものマイスター最後の修了課題発表会でもあります。


【発表1】農家が伝える能登の田んぼの生物多様性

発表者は、食の安心と安全への関心都会から能登に移り住んだ就農者です。現在、輪島市で19筆の水田で米作りを行っています。今回の発表では、発表者が耕作する水田の生物多様性を紹介して食の安全や環境配慮を伝え、農業への関心を持って貰う方法を探る為に、農家自身が田んぼの生物多様性を伝える方法と効果について研究しました。

発表者は、農家自身が田んぼの生物多様性を伝える手段として、農家自身が案内する田んぼの生き物観察会を実施しました。観察会の為の事前準備として、生き物を見分けて説明する練習を行いました。観察会当日はアンケートを実施して参加者からの反応を確認しました。アンケートでは、当日に見られたゲンゴロウを始め、様々な生き物に対する興味が見られたことから、生き物を見分けて説明する意味があることがわかりました。一方、参加者からは生き物以上に田んぼや農法に対する質問が多く寄せられました。これは、案内者が農家だからこその結果と思われました。
今回実施した観察会を通じて、今後も田んぼと生物多様性を通じて、農家としての米作りへの想いを伝えたいと語りました。

専門家には出来ない、一番田んぼに近い視点が活かされた結果と言えるでしょう。委員からは、「観察会だけではなく、アンケートの実施など今後のことも考えたやり方がとても良い」「農作業は忙しくて大変だが、普通では気付かないことにも気付くことが出来る。長い目で色々やってみて欲しい」との意見がありました。

【発表2】能登らしい染め物と染色エコツアーの提案

発表者は、能登の染物でだからこそ可能なエコツアーをテーマにしました。発表者によると、かつては各家庭で染物が行われていたそうですが、化学染料に代わってしまったことにより、かつて地域で使用されていた染料のデータもなくなってしまったといいます。
まず発表者は、染物の題材として能登で採集される材料を使用した貝染め、キノコ染めについて調べました。発表者は能登で採れるアカニシ貝が持つパープル腺による木綿染を検討した末で、魚屋と連携してアカニシ貝を確保出来れば、エコツアーの可能性に繋がると結論付けました。
次に、染色による里山保全の可能性として、外来種であるオオハンゴンソウを使った草木染のワークショップ、更に各地で増えすぎて問題になるクズを使った草木染のワークショップを実施し、駆除と染物を同時に行う方法を示しました。他に、エコツアーについての調査結果を発表しました。


委員からは、特定の種を集めるのは大変だから、キノコ狩りで集めたいらないキノコ、複数の種の貝類をまとめて使ってはどうかという意見もありましたが、キノコの場合は色が濃く出るものでないと使いにくい、貝の場合はパープル腺を持っている種が限られる、とのことでした。他に、「オオハンゴンソウ使用は外来種駆除と啓発活動になる、他の外来植物でもやって欲しい」「エコツアーについてもっと聞きたい」との意見がありました。


【発表3】食べものを通したコミュニケーションの方法を探る
〜世界とつながる「能登」で生きる私たちにとって大切なものを考えるため〜

発表者は首都圏からの移住者です。発表者は自ら得意とする料理を自己表現、人や地域とのコミュニケーションの手段であると語り、食を通じて地域間の交流や課題を考え、食を仕事としながら、食に関するイベントなどの活動を行っています。発表者は自分の活動の目的について、『みんなで食べる幸せを」(2011年「世界食料デー」世界の食料問題に取り組む団体ハンガーフリーワールドより)考えてみませんか、という投げかけの意味を込めている、と説明します。今回の発表では、自らの更なる活動の為に、様々なコミュニケーションの手法を探りました。

その方法として、発表者は「開発教育」と「ファシリテーション(ファシリテーター)」について学びました。開発教育とは地球社会をよくする為の教育活動です。ファシリテーションは、人々の話題に対して集団による相互作用を促進し、学びの場を促進させることです。ここに開発教育的な視点を持ち込むことで、ファシリテーター自身も「学びに参加する立場」ともなります。他に、発表者が今までに参加した研修、または自身が企画や主催として関わったワークショップなどの活動に触れた上で振り返りの結果として自己評価を行いました。
これまで学んだことや参加した企画から、発表者は自分が今後の活動の為に目指す姿に近いのは地域ファシリテーター(開発教育の視点を持ち、地域における学習をとおして社会変革のプロセスを促進する役割(開発教育協会機関誌『開発教育』No.59より)であり、今後は開発教育やファシリテーターとしての技術などを高め、食を通した学びの場となる活動を続けたい、と結論付けました。

発表者は既に能登で様々な活動を行っている実績と経験があり、その活動を高める為の手法を必要としているようです。委員からは、「能登ならではの開発教育を追求すべき」「開発教育という言葉の説明には時間がかかるだろう」との意見が挙がりました。


【発表4】能登の水田生態系における江の役割と江に対する地域住民の意識の地域間比較

近年では環境意識の高まりにより、水田に生息する生き物に配慮する為に「江」(水田脇に掘られた溝や深み。地域によって呼び名は様々。本来は山水の貯水、そのままでは冷たい水を温めたりする為に使用されるが、中干しなどの落水時に田んぼの生き物の避難場所にもなる。)や水田ビオトープの設置などが行われていますが、設置や維持管理の労力やコストも小さくありません。そこで、奥能登における江の設置状況、利用方法、呼び名などを調べ、江を使った生物多様性の保全手法の基礎資料としました。

1)発表者は江が持つ保全の効果を調べる為、外浦、内浦地域それぞれに江が存在する地域を1箇所ずつ選び、水田内と江における生き物の調査を行ったところ、江ではより多くの生き物が見られました、また既に落水されていた9月にも生き物が見られました。これにより、江が生き物の生息場所となっていることがわかりました。一方、周囲の環境により見られる生き物は異なること、必ずしも希少種の保全に繋がるとは限らないこと、天候などの条件により必ずしも安定した棲み場にはならないこと、江を設置するには目的や地域の状況をしっかり確認する必要がある、とのことでした。

2)江の設置状況、設置場所、呼び名、生息する生き物を調べる為にアンケートを行った結果、奥能登には多くの江が既に存在しており、新たな江を設置せずとも利用が可能であるとわかりました。呼び名は様々であり地域性の影響も強いものが含まれる為、農家への江のPRを行う為には、地域に対する考慮が必要であるとわかりました。

田んぼの生物多様性などの観点から話題に挙がる江についての現状と効果、用法についてしっかりと冷静に調べたことへの評価などが挙がりました。

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残り3名の発表については、次回の記事で報告する予定です。