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猪鹿庁への先進地視察(2) [2013年01月31日(Thu)]
前回に引き続き、1月28日・29日の「猪鹿庁」(岐阜県郡上市)への先進地視察について報告します。

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初日の体験ツアーを終えた私達は、この日の宿に到着しました。宿泊先の農家ペンション「リトルパイン」は地元の農家によるペンションです。アマゴやニジマスなどの川魚の養殖、米、唐辛子、夏野菜や冬野菜、地鶏、たまり醤油なども自家製造しています。
この日の夕食でも、猪鹿肉によるすき焼きの他、アマゴ料理など、地域や自家製の食材による料理が並びました。宿のおかみさんが、それらを1つ1つ丁寧に説明して下さりました。
夕食には猪鹿庁の豊田氏、永吉氏も同席して下さりました。この日の体験ツアーの感想から、団体としての背景や質問に至るまで、話は尽きませんでした。他に、リトルパインさんと猪鹿庁による児童を対象にした稲作体験や水田アートの話、有名な郡上八幡のお祭りの魅力、地域のお祭り、集落のことなど、色々なお話を聞かせて頂きました。

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2日目には、「ジビエ料理教室」と、猪鹿庁の活動についての講演をして頂きました。ジビエ料理教室では、ジビエ課の辻本実由季氏に指導して頂きました。
ジビエとは、食材として捕獲された野生の鳥獣を示す、フランス料理などの用語です。猪鹿庁では、狩猟によって捕獲された鹿や猪の肉を使用して、このジビエ料理教室を開いています。この日のジビエ料理では、鹿肉のハーブリエットという料理を作りました。微塵切りにした玉葱と細かく切った肉にハーブなどを加えて鍋で炒めてペースト状にしたものを、クラッカーやパンなどに乗せて頂いたところ、受講生には大変好評でした。この時期の鹿肉は厳しい冬の生活に応じて脂がなく赤身ですが、最も美味しいとされる9月には脂が乗って白身が多いそうです。均一的に生産される家畜の肉と異なり、季節の変化を実感出来るのも、ジビエ料理の魅力だと思います。
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ジビエ教室が一段落した頃に、広報課の豊田氏により、「若者猟師発!新しい里山づくりへ―中山間地域で山とどう付き合っていくか―」という講演をして頂きました。
猪鹿庁の事業背景には、中山間地における鳥獣害の現状と、猟師の高齢化・減少などの事情があるといいます。こうした問題は全国で起きており、郡上市でも例外ではありません。特に山間部でありながら人口が多く、また面積が広い郡上市では岐阜県内の農林業に対する鳥獣害の多くを占める結果となっているようです。肉の価格や生産性においても家畜に比べて非効率的であること、かつては解体技術が未発達で良い肉が出回らなかった為に年配者ほど良いイメージがないこと、などにより、猪や鹿の肉は商売として成立しにくいという背景もあり、猟師の高齢化と担い手減少は現在も進んでいます。猪鹿庁が実施する「猟師の6次産業化による里山保全」(第1次産業:若手猟師の育成、第2次産業:獣肉の販路構築、第3次産業:ジビエ商品開発・ジビエ料理教室、猟師エコツアー)には、こうした背景があるといいます。
猪鹿庁のスタッフの殆どは、県外からの若い移住者です。猟師の経験もなく、また狩猟について学ぶ方法も少なかったそうですが、スタッフ自らが猟銃や罠の資格を取得して猟師となり、狩猟から解体、獣肉の料理や商品開発、猟師エコツアーなどを実施してきた結果、今では狩猟に興味を持つ人からの問い合わせや取材を受けるまでになったそうです。
いきものマイスターの受講生からは、若いスタッフが一般人と同じ目線で里山保全と狩猟について手探りで、尚且つユニークに面白おかしく発信しているからこそ猟師と一般人との間の敷居もなく、好感が持てるとの意見も挙がりました。

様々な質問に最後まで丁寧に答えて頂き、今回の先進地視察は終了です。最後には、鹿肉のリエットのお土産まで頂いてしまいました。若くてユニークな猪鹿庁のパワーを能登に持ち帰りたいと思います。猪鹿庁スタッフの皆様、本当にありがとうございました。
猪鹿庁への先進地視察(1) [2013年01月30日(Wed)]
1月28日、29日に猪鹿庁(岐阜県郡上市)へ、いきものマイスターの先進地視察を実施しましたので報告します。

いきものマイスターは今年度の先進地視察として2012年11月24日・25日の日程で、長野県軽井沢町を拠点にエコツアー事業などに取り組む団体「ピッキオ」を訪問しましたが、前回の先進地視察に参加出来なかった受講生を対象に、2013年1月28日・29日の日程で、再度の先進地視察を実施しました。今回の訪問先は、岐阜県郡上市の里山保全団体「猪鹿庁」です。
猟師不足などによる農林業への獣害増加は全国各地で問題になっています。猪鹿庁は、郡上市でキャンプなどの自然体験案内を行うNPO団体「メタセコイアの森の仲間たち」の事業の1つとして、「猟師の6次産業化」(第1次産業:若手猟師の育成、第2次産業:獣肉の販路構築、第3次産業:ジビエ商品開発、ジビエ料理教室、猟師エコツアー)などを掲げ、若者猟師による里山保全を目指す機関です。警視庁をイメージしたという「猪鹿庁」という名前の元、各部門についても活動内容に応じて「捜査一課」「衛生管理課」「山育課」「ジビエ課」などの名がついており、里山保全を楽しく伝えようという遊び心が伺えます。
尚、奥能登はかつてはキツネなどを除く大型野生哺乳類が殆ど分布しないことから獣害の少ない地域でしたが、近年では猪の北上による獣害の増加が危惧されています。今後の奥能登の獣害問題を考える上でも、非常に興味深い団体です。

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まず、いきものマイスターの視察者と猪鹿庁スタッフの方と互いに自己紹介を行った上で、猪鹿庁の活動についての簡単な説明を受けました。対応して下さったのは、猪鹿庁捜査一課の永吉剛氏です。
簡単な説明を受けた後は、早速この日の体験ツアーです。この日は「若者猟師と山歩き&猪鹿肉ランチ」と解体施設の見学です。御昼時の時間に合わせ、まずは猪鹿肉ランチを頂きました。猪鹿肉ランチでは、後述する解体施設を所有する地元猟師宅をお借りして、猪肉や鹿肉の鍋、鹿肉のソーセージ、猪肉とラーメンの鍋などを頂きました。
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猪鹿肉ランチを頂いた後は、永吉氏にご案内頂き、「若者猟師と山歩き」です。かんじきを履いて、雪山を歩きます。かんじきなしでは足がすっぽり雪に嵌まってしまう程の雪に覆われ、大変な雪の量です。奥能登も冬は積雪しますが、郡上は更に雪深いようです。しかし写真ではとてもそうは見えないのですが、実はこの雪山は道路です。雪の下からは時折ガードレールが見えます。
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雪山では、獣の足跡が時折見つかります。ここで見られる獣はニホンザル、イノシシ、シカ、タヌキ、テンなどです。獣の足跡からは種類や移動方向が判明する他、ベテランともなると何日前の足跡かも判別出来るそうです。冬山の猟においては、この足跡から獣の位置を読み取ることが非常に重要とのことでした。
その他、永吉氏は、猪などを獲る為の罠も見せて下さいました。通りかかった獣の足を挟んで絡めて獲る罠になります。永吉氏は現在、約30個の罠を仕掛けており、こまめにチェックしているそうです。

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山歩きを終え、猪鹿肉ランチを頂いた猟師宅に戻り、一服した後にこの日最後のプログラムとして、解体教室を見学しました。ここは地域で猟師の方が個人で整えた解体所です。専用の解体所での作業が法的に定められている家畜と異なり野生獣の解体作業については法的な整備があまり進んでいませんが、ここは衛生管理者を配置した、食肉加工施設としての認可を受けた専用の解体所となっています。野生獣解体を猟師の重要な事業として位置付ける猪鹿庁の意識の高さが伝わる施設でもあります。
この日はたまたま3頭の鹿が確保出来た為、解体作業を見ることが出来ました。持ち主の猟師の方、永吉氏に加え、スタッフの豊田氏が、慣れた手つきで解体作業を披露して下さいました。予め血抜きされ内臓を処理された鹿の毛皮を剥ぎ、見る見るうちに解体されていきます。機械化された家畜の解体作業と異なり、ここでの作業は全て手作業です。私達も、実際に包丁を持って簡単な作業を体験させて頂きました。
野生獣がタイミング良く揃わない限り、この解体作業を体験することは出来ません。ちょっと残酷な光景かもしれませんが、私達が食べる食肉を作る為に行われている作業を見て、触れて、命を頂くことの意味を考える意味でも、非常に貴重な機会になりました。
血が苦手な人には大変な作業で、グループ参加者の中にはどうしても無理、という人もいるようですが、いきものマイスター受講生は殆ど抵抗もなく積極的に作業に参加し、猪鹿庁のスタッフへの質問をしていました。いきものマイスターの場合、好奇心が打ち勝ったようです(笑)。

初日の体験プログラムを終え、猪鹿庁の豊田氏に案内して頂き、この日の宿「リトルパイン」に到着しました。宿でも猪鹿庁スタッフに御同席頂き談笑しながら、猪鹿肉を使った料理を頂きました。いきものマイスタースタッフからは、団体の結成背景、活動の現状とコツなど、色々なことを教えて頂き、大満足の1日でした。

次回以降の記事では、リトルパインさんでの宿泊の様子と、2日目に体験させて頂いた「ジビエ料理教室」、猪鹿庁の活動についての講演(猪鹿庁の活動背景、目的と成果など)などを紹介させて頂きます。
国際GIAHSセミナーを聴講しました [2013年01月15日(Tue)]
2013年1月14日(日)、能登キャンパス構想推進協議会、および能登「里山里海マイスター」育成プログラム主催により、能登の世界発信プロジェクト「国際GIAHSセミナー」が開催されました。いきものマイスターは、講義としてこのセミナーを聴講しましたので、ここで報告致します。
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能登の里山里海は、生物多様性に根差した農業と伝統を伝える存在であることを認められたことにより、2011年6月に国連食糧農業機関(FAO)により、GIAHS(世界農業遺産、Globally Important Agricultural Heritage Systems)に認定を受けました。一方、能登の過疎高齢化と人口減少は今も進行しており、現実は厳しいものです。
今回のセミナーではこうした現状を踏まえた上で、GIAHS認定を活用した能登の里山里海の活用および発展について議論を行う為に、国内外の研究者や専門家を招き、開催されたものです。初日である1月14日は金沢市文化ホールでのセミナーを開き、2日目と3日目には能登各地の先進事例を視察して回る能登エクスカーションとなっています。いきものマイスターは、初日のセミナーを聴講しました。

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セミナーでは、里山里海マイスター育成プログラムや、いきものマイスターなどの「金沢大学里山里海プロジェクト」の研究代表を務める金沢大学の中村浩二教授による挨拶の後、研究者や専門家による発表がありました。フィリピン大学のInocencio Buot教授、Sylvano Mahiwo教授はフィリピンのルソン島北部の山岳地帯に広がるGIAHS登録地、イフガオの棚田の事例について紹介されました。
イフガオの棚田は海抜1000mの高地の見事な景観を利用して形成され、世界遺産にも登録されている場所です。イフガオの棚田は農業のみならず、神話や儀式、伝統技術、共同体など、地域の文化を長らく2000年近く支えてきました。多くの世界遺産や文化遺産と異なり為政者や有力者ではなく、民衆が自らの為に作り上げた世界遺産であるとしてSylvano Mahiwo教授は説明されました。その一方で若い担い手の不足、行事や伝統の衰退など、今日のイフガオにおける問題について説明を行われました。
他には、能登と同時にGIAHSに認定された佐渡市の前市長の高野宏一郎氏、ハンバーグレストラン「びっくりドンキー」を経営する、株式会社アレフの橋部佳紀氏、国連大学サステナビリティと平和研究所の永田明氏などによる発表がありました。高野氏は、1601年頃に金山が発見されて以来、金山と共に町や農村が発展したことにより山地に至るまでの農地が形成された佐渡市の背景などに触れ、トキと共存する佐渡の里山についてのお話をしました。アレフの橋部佳紀氏は、アレフが行う「ふゆみずたんぼプロジェクト」による食の安全、全店舗における省農薬米と呼ばれる農薬使用を控えた米の使用、ふゆみずたんぼでの生き物調査などについての取り組みを紹介されると共に、ふゆみずたんぼプロジェクトを伝える為に製作された、ふゆみずたんぼのうた「ふゆみずタンゴ」の映像を披露して下さいました。ふゆみずタンゴは、いきものマイスターの受講生からも、親しみやすいと好評でした。

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最後に、中村浩二教授、Inocencio Buot教授(フィリピン大学)、Sylvano Mahiwo教授(フィリピン大学)、Anke Höltermann氏(ドイツ連邦環境省自然保護庁森林担当官)、香坂玲准教授(金沢)、高野宏一郎氏(前佐渡市長)によるパネルディスカッションが行われました。パネルディスカッションでは、GIAHS推進の為のイニシアティブ担い手について、過疎高齢化と米の需要減少という現状について、大学が果たす役割について、様々な討論が行われました。

パネルディスカッションを終え、この日のセミナーは終了です。受講生の皆様にも、世界的に取り組まれている生物多様性の保全と活用事例について、考える機会となったことと思います。能登からかけつけたスタッフおよび受講生は、片道2時間以上をかけて帰宅です。参加された皆様、朝早くから夕方までの聴講、大変お疲れ様でした。