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2012年度先進地視察(3)ピッキオ代表との意見交換 [2012年11月30日(Fri)]
前々回前回に引き続き、2012年度の先進地視察(ピッキオ訪問)について報告しています。
今回は最終日の11月25日(日)についてです。この日はピッキオの桑田慎也代表に、ピッキオ設立と理念、ピッキオの事業、取り組みについて紹介して頂いた上で、意見交換をさせて頂きました。


ピッキオの背景

ピッキオとは、イタリア語でキツツキのことを指します。
かつて江戸時代には宿場町として栄えた過去もありますが、軽井沢は米作りにも不向きな寒冷地でした。そんな軽井沢が避暑地として栄えたのはカナダ生まれの宣教師アレキサンダー・クロフト・ショーが避暑地として紹介したことが始まりです。その軽井沢でリゾート事業などを行う星野リゾートの1部門としてピッキオは約20年前に誕生しました。その後の約10年前に独立して現在に至ります。

ピッキオのホームページの冒頭には、「森本来の姿を経済的な価値として高く評価できれば、未来に森を残していける」というピッキオの理念が紹介されています。桑田代表はこの理念について、「もし地域の自然を経済的価値に昇華させれば、誰もゴルフ場にしたりすることはない」と例えました。この理念に基づき、ピッキオはインタープリターが案内するエコツアー事業、ツキノワグマなどの対策を通じて地域における野生動物との軋轢を減らす為の野生動物保護管理事業、エコツーリズム研修の為の講師派遣や企画開発の為のエコツーリズムサポート事業、学校向けに実施する環境教育事業、の4つの事業を展開しています。

フィールドについて

エコツアー事業の為、ピッキオが観察の場として利用している野鳥の森は、約100ヘクタールに及ぶ国有林です。野鳥の森は、誰でも自由に散策出来るように開放されています。管理は環境省によって行われていますが、全国には活用されていない国設エリアも少なくないそうです。
この野鳥の森は、そのまま歩いても「綺麗だけど何もない森」で終わってしまうと、桑田氏は仰います。今回の体験でも、生き物が豊富な奥能登の自然を見慣れている為に、同様の印象を受けたいきものマイスター受講生は少なくありませんでした。
そこで、インタープリターが見せ場を引き出すのだそうです。初日に体験させて頂いた「野鳥の森ネイチャーウォッチング」でも、私達が素通りしてしまいそうな場所にホオジロ、メジロ、オオルリなどの野鳥の巣、猪と思われる獣の通り道、熊の爪痕などがありました。
どんなに魅力的な自然であっても、その自然の持つ意味を知らなければ、どこに何があり、何が魅力であるのかを伝えることは出来ないでしょう。

野生動物保護管理事業

エコツアー実施団体として有名なピッキオですが、ピッキオはクマ対策でもよく知られています。
浅間山の麓に開けた軽井沢はツキノワグマの生息域でもあります。農作物被害、更には人身事故も懸念されます。また、別荘地の多くは森の中にあり、クマ対策が必要となります。
多くの地域ではクマの殺害による処分を行ってきましたが、ピッキオはなるべく殺害処分に頼らない、根本原因からの対策を取りました。ピッキオはツキノワグマの食性パターンや行動パターンを調査した上で、問題行動を起こす一部のクマを特定し対策を行いました。更に、捕獲したクマ(問題を起こさず、偶発的に人里を横切るだけの個体)に対する追い払い(爆竹や犬による吠えたてにより、人と距離を置くことを学習させる)を実施しました。この他にもピッキオは、クマ対策の為にベアドッグという専用の犬の導入、クマに荒らされない為の専用のゴミ箱開発、地域を対象にしたクマ対策の普及活動などを実施しています。桑田氏は、人と野生動物が共存する為の対策を事業として実施していることについて、お話して下さいました。


桑田氏によるピッキオの取り組み紹介が終了した後に、桑田氏といきものマイスター受講生らによる意見交換の場を設けて頂きました。初日に参加したピッキオの自然体験への質問も含め、受講生からは多くの質問が挙がりました。その一部について触れてみます。


・客層について:
高級リゾート地のイメージも強い軽井沢ですが、東京からのアクセスも良く、実際の軽井沢への客層は幅広いそうです。自然体験プログラムを実施するには、幅広い客層からターゲットを絞り込むことが必要となります。ピッキオではターゲットを決定した上でプログラムを作り込むということを、桑田氏は話して下さいました。
ピッキオには教育熱心な人、知的好奇心が強い人、先生的立場の人が多くお客様として訪れるそうです。

・地域との関係について:
地域でエコツアーや保全などの取り組みを行うには、地域の理解が欠かせません。ピッキオは地域に取り組みを伝え、理解して貰うようにしているとのことでした。新聞にも、よく載せて頂いているとのことです。自然体験は地域あってのものであり、私達いきものマイスターも地域との連携が求められることでしょう。

・能登でエコツアーを実施することへの意見:
能登は交通の便が悪く、気軽に訪問することは容易ではありません。しかし、遠隔地のエコツアーにも多くの成功例があります。その1つとして桑田氏は小笠原で実施されているエコツアーを例にあげ、世界でもその地域でしか提供出来ないものを提供すること、明確なターゲットを定めること、客数で勝負せずに済む取り組みが必要でないかとの意見を下さいました。
その為にも私達は能登の自然の長所に加え、他の地域の自然との違いもよく知っておく必要があるでしょう。

・団体を運営し、活動を続ける上での工夫:
今日では様々な理念の元、多くの人が自然体験や保全活動に関わっていますが、その為にも桑田氏は、まずは団体や事業を継続させるという目的を重視していると話して下さいました。
事業継続という明確な目的を持つことで、必要なプログラムや活動を絞ることが出来る、ということです。私達も、能登で継続的に活動を続ける工夫が必要となるでしょう。

桑田氏A.JPG

DSCN0596.JPG


1泊2日に及ぶ軽井沢への先進地視察はこれで終了です。お忙しい中、私達の為にお時間を割いて下さりどんな質問にも丁寧にお答え下さった桑田氏、体験プログラムの案内をして下さったスタッフの方達には、この場を借りて感謝を述べたいと思います。大変ありがとうございました。
2012年度先進地視察(2)ピッキオの自然体験:空飛ぶムササビウォッチング [2012年11月27日(Tue)]
前日の記事に引き続き、先進地視察の初日に体験したプログラムについて報告します。今回は、初日の後半に体験した「空飛ぶムササビウォッチング」について報告します。

「空飛ぶムササビウォッチング」は日没間際から直後の時間に実施されました。日没後の軽井沢の冷え込みは能登以上の厳しさです。軽井沢の気候についてはホームページでも紹介されており、当日の受付でもニット帽や手袋の貸し出しがありました。特に軽井沢の寒さに慣れていない他の地域からの観光客などにとっては、とても嬉しい気配りです。

柳原さん1.JPG

今回の案内を務めて下さった柳原さんから、参加者に実物大のぬいぐるみを使ったムササビの簡単な説明を受けた参加者は、送迎車によって観察場所まで移動します。観察場所は意外にも、道路沿いにある駐車場でした。駐車場には、野鳥の森でも見かけたような巣箱が設置されています。双眼鏡を使うと、ムササビが巣箱から顔を出したり引っ込めたりしている様子がわかります。やがて巣箱を出たムササビは猛スピードで木を駆け上りました。スタッフの説明により、ここからは参加者は双眼鏡を止めて肉眼でムササビを観察します。双眼鏡ではムササビのスピードについていくのは難しく、参加者がムササビの滑空を見逃してしまわない為の気遣いです。高いところに駆け上ったムササビは木から木へと短い滑空を2〜3回繰り返した後、駐車場の後方へと飛び去りました。この日の滑空コースは、ムササビの滑空が最も見やすい方向だったそうです。参加者からも歓声が上がり、大満足の様子でした。
明るすぎれば外敵に狙われやすく、遅すぎれば活動時間を狭めてしまう為、日没直後の活動効率が良い時間を選び、ムササビは巣箱を出て活動を開始するそうです。今回のウォッチングではムササビの行動パターンが秋から冬のパターンに移行した頃で少し読みが難しかったそうですが、ピッキオのスタッフはムササビの活動時間について綿密に把握しており、それにより各季節ごとに活動を開始する時間を正確に把握しています。ピッキオのホームページでは時期ごとにムササビウォッチングの詳細な時間が設定されているのも、その為であり、お蔭で2010年の目撃率は98.9%に及んでおり、読みの難しい野生動物の観察を高確率で成功させているのは、非常に驚きです。
観察終了後、参加者はビジターセンターへ戻り、柳原さんからムササビについてのお話を聞きました。ここでは、ムササビは滑空に適した1kgという非常に軽い体をしていること、更にその重さと構造を実感出来るように実物大のぬいぐるみやイラストを使用した説明、ムササビと混同されやすいモモンガとの違い(モモンガはムササビより更に小さい。尚、軽井沢では現在、モモンガの分布は確認されていない、とのこと)についての説明、ムササビの食性、などについてのお話をして頂きました。
ムササビ説明1.JPG
ムササビ説明2.JPG


参加者全員がムササビの滑空を見ることが出来て、更にムササビについてほんの少しだけ詳しくなれた、実に有意義なプログラムになりました。
翌日は、ピッキオの取り組みについて桑田代表にお話しして頂く場を設けて頂きました。翌日の為、この日に参加したプログラムについて受講生各自で意見を出し合い、互いに良い点や疑問点などを確認して、この日の先進地視察は終了です。
次回の記事では、桑田代表のお話の様子について報告します。
2012年度先進地視察(1)ピッキオの自然体験:野鳥の森観察 [2012年11月27日(Tue)]
11月24日(土)・25日(日)の1泊2日の行程で、いきものマイスターは先進地視察の為に、長野県軽井沢町でエコツアー事業などを行う団体、ピッキオを訪問しましたので、報告します。
尚、2011年度の先進地視察については、こちらをご覧下さい。

ピッキオは、「森本来の姿を経済的な価値として高く評価できれば、未来に森を残していける」という理念の元、軽井沢を拠点にエコツアー事業、エコツーリズムサポート事業、野生動物保護管理事業、環境教育事業の4つの事業を行う団体です。ピッキオが軽井沢で実施する各種のネイチャーツアーは、専門のインタープリター(自然と人との仲介を行い、その自然の裏側にある意味や関係を伝える人)が行う質の高い案内により、評価されています。更に、軽井沢で問題となっている野生のツキノワグマ対策を実施しているのも、ピッキオです。ゴミ集積場のゴミを荒らされない為の野生動物対策ゴミ箱や、クマに人への警戒心を学習させた上での追い払い、巡回などは、時々テレビなどで紹介されることもあり、どこかで話を聞いたことがある方も少なくないでしょう。
私達いきものマイスターは、地域資源を伝える手法と、それによる地域の自然の保全を実施する先進事例を学ぶ為、ピッキオを訪問することにしました。初日はピッキオが一般客を対象に提供しているネイチャーツアーの中から、「野鳥の森ネイチャーウォッチング」「空飛ぶムササビウォッチング」の2つのプログラムに参加させて頂きました。2日目は、ピッキオの桑田慎也代表に、ピッキオの取り組みについて紹介して頂いた上で、意見交換の場を設けさせて頂きました。

早朝に能登を出発した私達いきものマイスターは、昼頃に軽井沢に到着しました。連休中ということもあり、交通量は非常に多く、主要道路である国道18号線、特に中軽井沢駅周辺の道路は混雑し、レストランなどの商業施設も忙しそうでした。

最初のプログラム「野鳥の森ネイチャーウォッチング」では、ピッキオビジターセンターに隣接する国設の「軽井沢野鳥の森」を歩き、インタープリターの案内の元、野鳥をメインとした生き物と森の観察をします。野鳥の森には、クリやカラマツが茂り、年間約80種の野鳥、更にはニホンカモシカやツキノワグマなどの野生動物が生息しています。
受付を済み、定刻である13時30分にプログラムが開始されました。特に事前予約は不要です。いきものマイスター受講生を含め、参加者は12名でした。参加者には野鳥の森の散策コースを示した簡単な地図や見所となる野鳥の巣を作品に見立てた案内書、更には野鳥観察時に使用する野鳥図鑑(貸出)が配布されました。希望者には双眼鏡もレンタルされ、双眼鏡の使用方法についての説明がありました。普段双眼鏡を使い慣れていない多くの参加者にとっては、観察方法や道具使用についての丁寧な説明は非常にありがたいものです。
大塚さんA.JPG


野鳥の森観察では、軽井沢で野鳥観察や保護に尽力した中西悟堂(野鳥研究家・歌人・日本野鳥の会初代会長)の話、各ポイントで見られたホオジロやオオルリ、クロツグミなどの野鳥の巣、キツツキの1種であるアカゲラによるものと思われる木の穴、樹木に残された熊の爪痕などについて、案内を務める大塚さんにご説明頂きました。コース内を優占するカラマツは国内の松としては唯一落葉する種であり、紅葉も終わりほぼ完全に落葉したカラマツ林は見通しもよく、野鳥観察には適した季節とのことです。

メジロの巣A.JPG

こちらは、ホオジロの巣です。茂みの中で巣作りをする為、落葉したこの時期以降でないと見られないそうです。春から夏にかけて5〜6個の卵を産みヒナは2週間程度で育ちます。毎年、新しい巣を作る為、こうした古巣は鳥に影響を与えることなく観察が可能です。

熊の手.JPG

こちらは、本物の熊の手です。軽井沢はかつて街中へのツキノワグマの出没が問題となりました。ピッキオによる調査と対策によりツキノワグマの出没は減少しましたが、軽井沢とその周辺の森には今もツキノワグマが生息し、あちこちに熊が木を登ったりして出来た爪痕など、その痕跡を見つけることが出来ます。

ムササビA.JPG

ムササビモニター1.JPG

こちらは、ムササビの巣箱と、その中をモニターでチェックする様子です。周辺には合計12個の巣箱が設置され、更に巣箱の中はモニターに繋がっています。日没後に実施されるムササビウォッチングの為に、このモニターによる情報が活用されているようです。

ニホンザルA.JPG

コースの終わり頃には、ニホンザルの群れにも遭遇しました。少し私達を警戒しているので距離は保たれていますが、案内の大塚さんからは無用に近づかないように注意がありました。今はピッキオなど地域の取り組みにより人とサルとの距離が保たれていますが、かつては町中に出没して問題となっていたようです。

この日は、ニホンザルの他にエナガという野鳥が見られた他、コガラやゴジュウカラと思われる野鳥の鳴き声を聞くことが出来ました。毎日、そして季節ごとに見られるものは異なり、毎日異なる体験が出来ることにより、この野鳥の森観察は多様な体験を提供していることがわかりました。反面、自然の豊かな能登でも同様に多様な自然体験を提供出来るのではないか、との意見も参加者から挙がりました。
同時に、案内を務めるスタッフの方については、参加者の誰もが行き届いたサービスと気配りに感激していました。自然を案内する為の知識は勿論のこと、スタッフ間にはサービス提供に対する意識が徹底されていること、よく伝わってきます。地域の自然の案内人を目指す私達いきものマイスターも、身に着けたいスキルです。

この日の日没後に参加した、「空飛ぶムササビウォッチング」については翌日の記事で紹介します。


*写真に掲載した鳥の巣をメジロの巣としていましたが、正しくはホオジロの巣でしたので訂正致します。ピッキオの柳原様、お知らせ頂きありがとうございました。
(2012年12月2日22時)