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宝立小学校の遠足 [2012年10月25日(Thu)]
10月24日(水)には、宝立小学校の5、6年生の児童22名が遠足に来てくれました。宝立小学校の児童は自転車で自然学校まで来てくれました。宝立小学校から自然学校までは、自転車でおよそ14kmちょっと、約1時間以上の時間がかかりますが、宝立小学校の児童は頑張りました。自然学校へ来る前にも、上戸町の倒さスギなどを見てから自然学校へ来たというので1時間以上かけて自転車に乗ってきたことになりますが、到着した児童達はとても元気です。少しの休憩の後、午前のプログラムである保全林の見学に向かいました。午前の案内をするのは、前日同様に元いきものマイスタースタッフの佐野氏です。

午後には、ビオトープで生き物の観察を行いました。ビオトープまでは、車に気を付けながら10分程歩いて移動します。ビオトープでは、児童に網と容器を持って貰い、ビオトープ内のあちこちで生き物を掬って貰いました。ビオトープではメダカ、ドジョウ、タニシ、マツモムシ、オオコオイムシ、クロスジギンヤンマ幼虫、ショウジョウトンボ幼虫、ヒメガムシ、コガシラミズムシ、ヒメゲンゴロウ、クロゲンゴロウ、コガムシなどが採集されました。クロゲンゴロウは体長2センチにも及ぶ大型のゲンゴロウです。全国各地で減少した大型ゲンゴロウであり、クロゲンゴロウも石川県では絶滅危惧U類とされていますが、自然学校周辺やこのビオトープではまだまだ沢山見られます。普段見たことのない、大型のゲンゴロウの迫力には児童も驚いた様子で、児童は先を争ってクロゲンゴロウを探していましたが、大きさが近いオオコオイムシという水生昆虫をゲンゴロウと思ってしまった児童も多かったようです。
尚、コガムシは全国的には比較的普通ですが、石川県では舳倉島という輪島市の離島以外に殆ど記録がなく、県の絶滅危惧T類とされてきた希少種でしたが、この2〜3年では珠洲市の各地で時折見つかるようになりました。しかし、何故今まで殆ど見つからなかったのか、そして近年見つかるようになったのか、その理由はよくわかっていません。
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採集を終えて貰った後は、集めた生き物について説明を行いました。更に「能登のいきもの大図鑑1 水辺の甲虫・カメムシ編」のコピー(下敷きは殆ど残っていない為、今回は配布出来ませんでした)を使って、水生昆虫の見分けもして貰いました。
みんなが混同してしまったクロゲンゴロウとオオコオイムシについても、見分け方法を説明しました。特にオオコオイムシがカメムシに共通のストロー状の刺す口を持っていることからカメムシの仲間だと説明したところ驚きの声が上がりました。もっとも、カメムシの仲間といってもオオコオイムシを臭がる人は。あまりいないようです。


これで遠足のプログラム全てを終え、宝立小学校の遠足は終了です。宝立小学校の児童は、事故に遭わないように気を付けながら、約14キロを1時間以上かけて自転車で帰ります。


2日間のうちに2つの小学校が、遠足の為に自然学校を利用してくれました。これからも、地域の児童達には楽しみながら地域の里山と人との関係について学んで貰えるように、沢山のお手伝いをしたいですね。
三崎小学校の遠足 [2012年10月25日(Thu)]
先日、珠洲市内の小学校が遠足にやってきてくれました。10月23日には三崎小学校、24日には宝立小学校でした。遠足の午後に実施した、珠洲の里山の生き物紹介について、ブログ担当の筆者案内をさせて頂きましたので、ブログで報告したいと思います。

10月23日(火)には、飯田小学校の5、6年生39名の児童が遠足に来てくれました。午前中には自然学校が管理する保全林、午後には味噌池ビオトープを案内する予定でしたが、この日は残念ながら1日中雨でした。小雨程度であれば外に出たかったのですが、当初の日程を変更し、屋内のプログラムを実施しました。
午前には赤石研究員が自然学校の活動、地域の里山の自然と人の暮らしとの関わりについて説明を行い、更に自然学校内を案内して、自然学校の活動を紹介しました。次に元いきものマイスタースタッフである佐野氏であり、現在も自然学校のお手伝いなどをしてくれている佐野さんが、樹木の種類当てクイズや薪割り体験の案内をしました。

午後からは、筆者である私、野村が能登の溜め池や水田に棲む生き物と人との関わりについてお話をさせて頂きました。まず、自然学校1階の資料室に案内します。今回来てくれた児童は施設見学という授業で自然学校に来てくれたことがあるので、今回はおさらいを兼ねてお話をしました。燃料革命や流通、産業の発達により里山が利用されなくなったことで里山が荒れてしまい、里山の雑木林が老木で一杯になりキノコも生えにくくなったこと、里山に棲んでいた身近な生き物が棲み場を失ってしまったことを説明しました。それを踏まえ、もう一度里山を整備して里山資源を利用すると共に、里山の生き物をもう一度呼び戻すことの大切さについてお話をしました。

最後に、予め周辺の溜め池でツチガエルというカエルを採集して、いきものマイスターで作成した「能登のいきもの大図鑑2 カエル編」を使用して、カエルの種類当てに挑戦して貰いました。これも班ごとに分かれて、考えて貰います。カエルが苦手な子もいましたが、頑張って全ての班が正解を出してくれました。
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雨の為に全て屋内でのプログラムとなりましたが、児童には奥能登の里山と人、生き物と人との関わりについて楽しみながら学んで貰えたと思います。
次のブログでは、翌日の10月24日に来た宝立小学校の遠足について報告します。
大野製炭工場の見学 [2012年10月16日(Tue)]
2012年10月13日(金)、いきものマイスターは講義として、珠洲市東山中にある、大野製炭工場を見学しましたので報告します。

大野製炭工場を経営する大野長一郎氏は、4基の窯を持ち炭焼きを専業(県内唯一)とする若手の炭焼き職人です。今では数少ない専業の製炭業者でもあります。
現在、燃料革命によって炭の需要が減少し単価も低い今日でも、付加価値の高いお茶炭用の生産に力を入れており、更にお茶炭用のクヌギ確保の為、休耕地でのクヌギ植林の活動を行っています。最初は個人で始めた植林活動ですが、今ではこの植林活動をNPOおらっちゃと共同で実施し、毎年多くのボランティアが参加して地域を巻き込んだ「おらっちゃのお茶炭の森づくり運動」というイベントに発展しました。
大野氏の炭焼き業、および植林活動は地域の伝統的な生業の継承と産業創出、休耕地の活用による里山の保全に繋がるものでもあり、いきものマイスターにとっても貴重な学習対象です。

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まず、大野氏に大野製炭工場の概要と取り組みについて説明して頂きました。大野氏は、説明用に用意した写真のパネルを見せながら、大野製炭の業務を説明して下さいました。大野氏は、まずは雑木を伐採してコナラが優占出来るように管理しています。木を伐る時期は通常は木の活動が休止する直前の、紅葉が始まる頃とされています。伐採した木は葉を残したまま乾燥させます。葉を残すことで葉からの蒸散により、乾燥がよく進むからです。伐採した木をサイズや樹種で分け、更にものによっては規格を揃える為に切り揃えます。木の水分を抜いた後、いよいよ窯に入れます。窯の中では、温度調節や本焚きなどの過程を経て焼いた後、1週間の冷却期間を含むおよそ16〜7日の工程を経て、炭にします。
本来は農閑期の作業とされてきた製炭業であり、本来は先述したように秋に伐採を行っていますが、専業の炭焼き職人である大野製炭では、大野氏の父である先代の頃から夏も伐採を行っています。先代が大野製炭を開いた頃には既に燃料革命により炭の値は下がり、薄利多売により多くの炭を売る必要があった為ですが、同時に過去と異なり化石燃料を使用することで、作業効率も上がったという背景もあります。
大野氏は炭の高付加価値化を図る為、クヌギによる茶道用の炭の生産し、更にそのクヌギを自分で植林することを考えました。植林にかかる費用と労力は大きいものですが、現在では大野氏はNPOおらっちゃと共同により、この植林活動をイベントにしました。これにより、個人では困難な規模の植林活動も可能となり、大野氏の製炭業と、地域の里山活用や保全が実施されるようになりました。更に植林・植樹を支援する東京のNPO法人グリーンウェーブの支援を受け、今に至っています。
大野氏による取り組み紹介を終えて、大野氏には質疑応答に応じて頂きました。受講生からは熱心な質問が相次ぎました。


次に、大野氏の案内による工場内の見学をしました。工場内では、改築中の窯2基の中や裏側を見ることが出来ました。改築中でなければ、これはなかなか見ることが出来ません。
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大野氏のお話でもお聞きした、お茶炭用の炭も見せて頂きました。形は真円に近く、放射線状に割れ目が走っています。お茶炭用の炭の基準は、こうした条件を厳しく求められるそうで、若く皮付きの良いものでなくてはならないそうです。
茶道で使われる炭は決して主役ではありませんが、茶道を支える大事な裏方であり、大野氏は世界に誇れる文化ではないかと、熱く語って下さいました。
他にも、工場内には薪割り用に改造したフォークリフト、出荷待ちの炭などがありました。

工場見学の後には、大野氏の案内の元で、コナラ2次林を見学しました。珪藻土の痩せた土地であるこの地域に生えるのはコナラやマツ程度ですが、こうした樹種は伐ってもすぐに再生します。大野氏は自身の私有地、または地域の地主から許可を得た林で、コナラを伐っています。こうした伐採地は大野製炭の周辺に、何ヶ所か存在しています。


次に見せて頂いたのが、「おらっちゃのお茶炭の森づくり運動」で植林活動を行っている現場です。元は栗の果樹園だったそうですが、既に放棄されていた場所を大野氏が栗の木を伐り、残った根も重機で抜根して整備したとのことです。
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こちらでは毎年150〜200人程のボランティアの手により植林活動が実施されており、今年度も11月11日(日)に実施が予定されています。苗を植える場所には予め重機で穴を掘り、そこに苗を植え、元肥などを入れて埋め戻した後に、根元を足で踏み固めます。初回の植林活動では穴掘りも体験して貰ったそうですが非常に大変だったことから、以後は予め重機で穴掘りをしておくことになったそうです。

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こちらは、植林活動の際に東京から来たスタッフが持ち帰ったドングリから育った、六本木育ちのクヌギの苗です。


最後に、植林して既に5年以上が経過したクヌギ林を見せて頂きました。こちらでは既にクヌギの若木が立派に成長しており、林内のあちこちにもドングリが落ちています。自分が植林したクヌギ林のドングリは、自分にとっては孫みたいな存在だと、大野氏も感慨深く語って下さいました。随分若いおじいちゃんです(笑)。受講生も大野氏も、ついついドングリ拾いに精を出してしまいました。
尚、ここは2010年に「おやこの自然学校」でいきものマイスタースタッフが昆虫採集体験を案内したクヌギ林です。他にも、いきものマイスタースタッフや大野氏がスタッフとして企画に参加した農家民宿ツアー「奥能登山菜ざんまい」の一部でも、このクヌギ林を利用しています。

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ドングリ拾いについ夢中になってしまいましたが、この日の講義はこれで終了です。最後に大野氏は2011年3月11日の東日本大震災の件に触れ、被害がなかった能登の炭の需要も高まりつつあることから、大野氏は炭作りについて強い責任感を持っていると語って下さいました。
能登の里山資源を有効活用した大野氏の取り組みは、能登の生物多様性と地域資源の価値を地域に伝える私達いきものマイスターにとって、貴重な学習の場となったのではないでしょうか。
農家自身が伝える、田んぼの生き物と地域の農業の繋がり [2012年10月09日(Tue)]
2012年10月7日(日)に、輪島市三井町市ノ坂の里山での里山歩き「まるやま組」が開催されました。いきものマイスターの受講生である新井寛さんが、いきものマイスターの課題として今回のまるやま組で、水田の生き物の観察会を実施しましたので、報告させて頂きます。

まるやま組は、いきものマイスター1期生である萩野由紀さんご家族が中心になって、輪島市三井町市ノ坂の里山、通称「円山」で月1回実施されている里山歩きです。円山は1991年から殆どの圃場が放棄されていましたが、2009年には環境モニタリングサイト1000の一般サイトとして、地域住民と植物の専門家である金沢大学の伊藤浩二氏による植物調査が開始されました。更に、新井さんはこの年に輪島市に移住して就農して稲作を始めています。2010年からはまるやま組が始まり、先述の植物調査もまるやま組に合わせて実施されるようになりました。
尚、いきものマイスターは過去にもまるやま組で講義をしていますので、こちらこちらをご覧下さい。

新井さんはまるやまで、無農薬・無施肥・不耕起による環境配慮、食の安全を重視した拘りの米作りを実施して、消費者からの評判を呼んでいます。新井さんは環境配慮や食の安全を消費者に伝える為に、自身のホームページ「無農薬玄米輪島エコ自然農園」とブログにおいて、自身の水田とそこに棲む生き物のことを発信するようになり、自分の水田の紹介の為に生き物のことをもっとしっかりと知って発信する為に、今年度のいきものマイスターを受講して下さることになりました。
新井さんは今回、農家の立場から田んぼの生き物と地域の農業との繋がりを伝える為に、いきものマイスターの課題として田んぼの生き物の観察会を実施しました。


参加者同士の簡単な自己紹介の後、最初には毎回実施されている伊藤浩二氏の案内によるまるやまの植物観察が実施されました。植物観察会では参加者が1人5種を目標として、まるやまのコース内の植物(花・種・実があるものに限定)を集めます。集められた植物は並べられて、伊藤氏が名前と生態について説明して下さいます。この日は20種ほどの植物が集まりました。伊藤氏は、秋らしい植物が集まったこと、11月以降は今回の半分くらいに植物の種数も減少するだろうと説明して下さいました。
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尚、この時説明して頂いた植物としては、アケビ、オヤマボクチ、ツリガネニンジン、シロバナイヌタデ、アキノキリンソウ、ヒヨドリバナ、オトコエシなどでした。

植物観察が終わり、いよいよ新井さんの案内による水田の生き物観察会開始です。稲刈りの為に水田の水は殆ど抜かれていますが、水田周辺の水路には水が残り、水田の生き物が多数集まっています。参加者は、今回の為に用意されたたも網や容器を持って、生き物を掬い採ります。ドジョウ、メダカなどの魚、ヒメゲンゴロウ、マツモムシ、オオコオイムシなどの水田に棲む水生昆虫が多数集まりました。更には、全国は勿論のこと、能登でも最近は少なくなったゲンゴロウガムシのような大型の水生昆虫も見つかりました。体長が4センチにも及ぶゲンゴロウは特に迫力満点です。

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集められた水田の生き物については、今回の為に用意した資料を元に新井さんが説明を行いました。新井さんは生き物が入った容器を見やすく並べて、資料の写真を見せながら、1種1種丁寧に説明をして下さいました。自分の田んぼで採れた生き物を伝えたいという熱意が籠った説明に対して、参加者からの熱心な質問や意見が相次ぎました。特に今回の観察会で顕著だったのは、生き物への関心は勿論ですが、それ以上に「消費者へのアピールには、何をしていますか?」「水田を始めたことで、生き物は増えましたか?」「米作りと水田の関係について知りたい」「生き物に対する、水田や水路の役割について知りたい」などの、新井さんの田んぼについての質問や意見が非常に多かったことです。これは従来行われてきたような、生き物の専門家による観察会では実現出来ないでしょう。今回の観察会では、課題の為にアンケートも実施しました。アンケートでも、やはり新井さんの田んぼに対する関心の高さや、新井さんの真摯な説明に対する感想が多く寄せられました。
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今回の観察会は、今まで実施されてきたどんな観察会よりも、田んぼに対して関心を持って貰えたことと思います。

尚、この日に見られた生き物はゲンゴロウ、コシマゲンゴロウ、ヒメゲンゴロウ、コツブゲンゴロウ、ガムシ、ヒメガムシ、オオコオイムシ、マツモムシ、コミズムシ類、オニヤンマ幼虫、アカハライモリ、ドジョウ、メダカなどでした。

観察会の後は、みんなが楽しみにしていた食事です。この日の食事は、コンロや机を持ち込んで、野外でとりました。食卓には、まるやま組で栽培したエンドウ豆、「ごじる」という郷土料理、更にはビールまで振舞われました。

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食事の後には、この日に参加して下さった金沢大学の鈴木克徳教授に、ご自身が専門とされているESDについて講義をして頂きました。ESDとはEducation for Sustainable Development(持続可能な開発のための教育)のことを指し、各国の政府や国連、更に日本では民間による取り組みが進められています。聞き慣れない言葉でちょっと難しそうですが、鈴木先生はESDについて身近な例を挙げて説明して下さいました。特に、私達の子供達の為に、持続可能で公正な社会を作ることの大切さを例に、(1)子供達に、身の回りの文化や自然を伝える、(2)知識の詰め込みではなく、自分で考える力をつける、(3)実践力を見につける、というごく当たり前で分かりやすい具体的な目的を挙げて下さいました。
更に、地域の人達がその価値に気付かず暮らしている能登は、東京から見れば地域同士、地域と環境との繋がりが今も生き続けている、実に贅沢な地域であると話して下さいました。
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あっという間の1日でしたが、子供にとっても大人にとっても、良く遊び良く学んだ1日になりました。水田が身近な生き物の棲み場所であることを知り、味わって地の食材の美味しさを知り、最後には大学の先生による出張授業までと、至れり尽くせりの実に贅沢な1日です。地元の農家、公務員、研究者など層を問わず多様な人が集まるまるやま組らしい、実に多彩なプログラムです。
皆様も、機会があれば是非まるやま組に参加してみて下さい。
飯田小学校の親子会 [2012年10月06日(Sat)]
2012年10月6日(土)、珠洲市の飯田小学校3年生の親子が、親子会の為に、いきものマイスターの拠点である里山里海自然学校へ来てくれました。いきものマイスタースタッフの赤石と、筆者である野村が、親子会の案内を務めさせて頂きました。

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参加してくれた親子は、全部で40人です。キノコ採り班と虫採り班の2班に分かれて、自然学校が管理する保全林を散策して貰います。キノコ班は赤石が、虫採り班は筆者が担当しました。キノコ班の赤石は、受講生の1人に作って貰ったばかりのキノコ帽子をかぶって登場しました。キノコ博士ということで、博士らしい帽子までついているという、懲りようです。尚、この帽子は正式にはモルタルボードというそうです。


虫採り班、キノコ班共に自然学校を出発し、保全林まで約10分ほどかけて歩きます。勿論、面白そうなものを見つけたら立ち止まって、みんなで観察です。
虫採り班は、保全林に隣接する溜め池で水の生き物探しをしました。自然学校周辺には大小様々な溜め池や沼地が多く、保全林への途上にも4つの小さな池がありましたが、今年の雨不足の為に水位が大変低く、そのうち1つは干上がる寸前でした。農家の人達は水の確保に敏感な為、今年の夏頃からよく水が少ないと心配そうに話していましたが、普通に生活していると、やはり雨不足を実感する機会は少ないらしく、池の水の少なさに子供達は驚いているようでした。

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目的地の溜め池も水が減少して浅瀬が露出してしまいましたが、何とか網で掬って生き物を探すことは出来そうです。しかし浅瀬は水が引いたものの泥深く、油断して入ると足を取られてしまいます。虫採り班の親子には注意して貰いながら、みんなで溜め池と、溜め池周りの水路やためますをたも網で掬ってみると、ツチカエルやメダカ、ヒメゲンゴロウ、ヒメガムシなどの生き物が沢山網に入りました。メダカは現在、日本全国で減少していますが、奥能登では溜め池や河川などでしばしば見られます。この溜め池には普通に棲んでいるようでした。
水生昆虫としては、溜め池や水田に多いヒメゲンゴロウやヒメガムシなどが多く見られました。ヒメゲンゴロウやヒメガムシは体長10〜12mm程度の水生昆虫です。カブトムシと同じコウチュウ目に属していて、背中は硬い甲羅状の翅(はね)で覆われています。夏には水田で多く見られますが、水田に水がない秋以降は、溜め池に集まっているようです。非常に多く見られました。
このヒメゲンゴロウやヒメガムシを手に乗せて暫く眺めていると、翅を開いて飛んで行きます。水生昆虫の多くはこうして、水田や溜め池などの水域間を飛んで行き来しているのです。水の生き物が飛べることを知らない児童も多く、子供達は自分も飛ばせてみたいと興味津々の様子でした。

虫採りを終えた児童からは、時期によって見られる生き物の違いなど、水の生き物について色々と質問がありました。子供達には、とても楽しんで貰えたようです。

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キノコ班は、保全林で沢山のキノコを持ち帰りました。殆どは食べられないキノコだったようですが、持ち帰ったキノコのうち食用になるオオクロニガイグチ、ヌメリイグチ、ヤマドリタケモドキ、セイタカイグチの4種は参加者で食べてみました。お昼には、お母さん達が腕を奮ってくれた昼食をみんなで美味しく頂き、解散です。参加してくれた児童には、今日見たカエルについておさらいして貰う為に、いきものマイスターが制作した「能登のいきもの大図鑑2 能登のカエル編」を持ち帰って貰いました。

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最後に、お母さん達が腕を奮った昼食を美味しく頂いて、解散です。3時間程度の短いスケジュールでしたが、親子で一緒に自然に親しんで貰うことで、能登の里山に棲む身近な生き物と里山との関わりを実感して貰えたのではないでしょうか。飯田小学校の児童達には、また遊びに来て貰いたいと思います。
9月29日たこすかし体験 [2012年10月03日(Wed)]
2012年9月29日(土)、いきものマイスターの講義として、能登の伝統漁法「たこすかし」体験を行いました。「すかす」とは能登の方言で騙すことを意味します。竿の先につけた疑似餌で誘い出したタコを鉤爪で引っ掻けて採る方法にちなんで、「たこすかし」と呼ばれています。能登ではタコが産卵や餌採りの為に海岸近くに出現するようになる、9月から10月にかけて行われており、それに合わせていきものマイスターでもたこすかし体験を行ってきました。今年度で3回目になります。尚、過去の講義についてはこちらこちらをご覧下さい。

今回の講義を案内して下さったのは、いきものマイスター1期生の大瀧信男さんです。大瀧さんは幼い頃に地元で能登の伝統漁法である「タコすかし」による体験観光を通じて、能登の海についてもっと伝えたいと考え、平成5年からこの体験案内を開始しました。その後たこすかしは、漫画「釣りキチ三平」で取り上げられ、またテレビでも紹介されるようになり、現在では県外からも多くの観光客がたこすかしを楽しむようになりました。

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大瀧さんは最初にたこすかしの概要を説明し、更に大瀧さんがいきものマイスターの課題として取り組んだ、能登半島で実施されているたこすかしについての調査結果を紹介して下さいました。
大瀧さんの調査によると、同様のタコ漁は奥能登を中心に広く行われていますが、珠洲市では「タコとり」、輪島市東部では「タコさすり」、輪島市西部や志賀町では「タコさそり」などと、その呼び名は地域によって微妙に異なっていました。岩場が多くマダコが棲む珠洲市、能登町、輪島市、志賀町では呼び名や疑似餌など微妙な違いがあるものの、これらの地域ではたこすかしと同様に疑似餌と鉤爪でタコを採る漁法が行われています。一方で砂浜が多い能登町や七尾市ではイイダコが多く、疑似餌と釣り糸でイイダコを狙う漁法が実施されていることがわかりました。他には、使用する竿の本数や疑似餌の種類(赤い布、カニの形をした疑似餌、よもぎ、ホオズキ、笹の葉、タコの内臓、イカゲソなど)が地域によって異なることも、大瀧さんの調査で判明しました。こうした地域ごとに違いについては、意外に知られていないものです。
他、大瀧さんがNHKのニュース番組に出演した映像を拝見させて貰いました。

講義を終わり、いよいよ実習に入ります。受講生、スタッフ共に胴長を履き、タコ採り道具の竿2本(疑似餌用と、鉤爪用)を持って、自然学校そばの海岸でたこすかしを体験します。
写真は、タコが疑似餌に食い付いた時のことを大瀧さんが説明して下さっている場面です。タコが餌に食い付く力は非常に強く、油断すると竿を取られてしまいそうです。
自然学校そばの海岸は岩場になっています。タコは朝と夕方に、餌を求めてこうした海岸の岩場に現れます。たこすかし体験者は大瀧さんの指導を受けながら、疑似餌を使ってタコを探します。タコは狭く僅かな岩場の隙間に潜むこともあります。こうした隙間や海藻など、タコが潜みそうな場所を疑似餌でなぞるようにして、タコを誘い出すのです。

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残念ながらこの日は条件が良くなかった為か、成果は大瀧さんが採った1頭のみでした。過去の実習のようにはいきませんでしたがタコが全く採れないこともあるそうで、自然相手の難しさとも言えるでしょう。


代わりに、私達の講義を見ていた地元のおばあちゃんにタコ、更にサザエ、アワビまで頂いてしまいました。サザエは地元のおばあちゃんのお勧めに沿って、その場で殻を割って、生で食べてみました。新鮮なサザエだからこそ可能な食べ方です。おばあちゃんには、大変感謝です。

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この日に頂いたタコは、自然学校の厨房で捌きます。タコの内臓を取り、塩揉みして吸盤に付着した異物を取り除き、その場で茹でます。茹でる際には、茶葉や緑茶のティーバックを使用します。これは、臭みを取り除く為です。
茹でたタコは切り身にして、受講生とスタッフみんなで頂きました。更にこの日は大瀧さんが、能登の郷土料理である芋ダコを持参して下さいました。


大瀧さんはたこすかし体験を通じて能登の海の現状について伝え、更に体験観光として能登に多くの観光客を呼び込みたいと考えています。大瀧さんが始めた頃に比べ、能登の海は少しずつ変化しているそうです。以前に比べて海水の濁りが増え、更に岩にはコケなどの付着物が増えてしまいました。これは大瀧さんがたこすかし案内に取り組んできたから、わかったことです。大瀧さんに見せて頂いた過去のニュース映像と比較すると、尚その事実がわかります。
受講生の皆さんには体験観光を通じて、楽しんで貰いながら能登の自然を伝える方法を学んで頂けたのではないでしょうか。