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いきものマイスター講義:能登の野鳥 [2012年04月06日(Fri)]
ようやく4月に入りましたが、ここ奥能登では寒暖差が激しく天候も荒れやすい日が続いています。稀にみぞれ混じりの雨も降ります。この冬は雪が多かっただけではなく、寒さが長引いているようです。

3月24日(土)に、いきものマイスター2011年度最後の講義がありました。今回の講義では日本鳥類保護連盟石川支部の時国公政支部長にお越し頂き、能登の野鳥についての講義をして頂きました。

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時国氏は石川県内で鳥類の保全や観察、調査などをしている他、七尾市七尾市野生動植物生息等調査委員会の委員長も務めています。北陸の自然を紹介や文化を紹介する「自然人」や、能登の地産地消文化情報誌「能登」でも、能登の野鳥を伝えるコーナーへの寄稿などを行っています。

時国氏はミサゴ(環境省・石川県準絶滅危惧)、オオタカ(環境省準絶滅危惧・石川県絶滅危惧T類)、サシバ(環境省・石川県絶滅危惧U類)、ハヤブサ(環境省・石川県準絶滅危惧)、コウノトリ、オオヒシクイ(ヒシクイの亜種、環境省準絶滅危惧)、ハチクマ(環境省・石川県準絶滅危惧)などの能登で見られる野鳥について、写真を示しながら生態について、詳しく説明を行いました。

ミサゴは主に海岸沿いに生息し、海で魚を採る、白みがかった外観が特徴的な猛禽類です。ミサゴは留鳥(季節による渡りをしない鳥)とされていますが、時国氏によると、能登では夏鳥だそうです。

ハチクマはスズメバチやアシナガバチを襲うことで有名な猛禽類です。時国氏によればハチクマは糞を巣の下に溜めないことから、巣を見つけるのが非常に困難な鳥とのことです。ハチクマの巣を見つけることが出来るようになれば、野鳥観察者としては一人前だと、時国氏は話しました。


時国氏は能登半島の各地で野鳥の観察を行っており、それ故に、本だけでは得ることが出来ない、体験に基づいた野鳥の興味深い話をしてくれました。

時国氏は、自然学校のある珠洲市でも、野鳥観察などを行っています。珠洲市では2004年と2008年にタンチョウが目撃されています。時国氏は、(普通は北海道の鳥である)タンチョウが杉をバックにした写真は、他の地域では撮れないと語っていました。
時国氏は、珠洲市三崎町にある雁の池という溜め池が、コハクチョウやオオヒシクイなど貴重な野鳥のスポットとして重要であると話しました。尚、雁の池は環境省の「日本の重要湿地500」に選定されています。この雁の池ではマガン、マガモ、コハクチョウ、オオヒシクイ、アオサギなどの野鳥が見られる他、フナやメダカ、オオヤマトンボ、コフキトンボ、リスアカネ、オオアオイトトンボなどの水生動物、キクモなどの水生植物を含めた様々な生き物が見られます。

時国氏の話によれば、講義を行った3月24日頃には通常であれば既にツバメの初飛来やハチクマなどが見られる時期だそうですが、この時点ではまだ確認されていなかったそうです。寒さが厳しかった為か、春の野鳥の活動が少し遅れていたのかもしれません。尚、野鳥に限らず人間以外の生き物は、こうした気温の変化に敏感です。冬の終わりから春にかけてはニホンアカガエルヤマアカガエルが産卵を開始しますが、自然学校周辺では産卵開始が少し遅れたようです。

他にも時国氏は、とある地域で白鳥を誘致する為に白鳥の模型を浮かべる試みを行ったところ、100羽以上もの白鳥がやって来た話など、貴重なお話をしてくれました。

最後に時国氏は、野鳥の他にも、ニホンカモシカ、ニホンザル、イタチ、テン、ハクビシン、タヌキ、キツネ、ウサギなどの哺乳類についても説明を行いました。

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いきものマイスターとして能登の自然を紹介する上で、能登の野生動植物について学ぶことは非常に重要です。当日は野外観察も予定していましたが、天候が悪く、野鳥の観察も期待出来なかった為に残念ながら中止となりましたが、今回学んだことを活かして、能登における野鳥と自然の関わりについても考えていきたいものです。
日本生態学会第59回大会 [2012年04月04日(Wed)]
2012年3月17日から21日の5日間、滋賀県大津市にある龍谷大学瀬田キャンパス日本生態学会第59回大会 (ESJ59)が開催されました。ブログ担当の私、野村は、いきものマイスターの取り組みを発表して来ましたので、報告します。

生態学会全国大会は、日本生態学会が主催する催しです。生態学会全国大会には全国から生態学の研究者が集まり、研究発表などが行われます。尚、今回の生態学会では、第5回東アジア生態学会連合大会 (EAFES5)も同時開催されました。

いきものマイスターの発表は3月20日(火)に行いました。発表方法はポスター発表です。ポスター発表は、A0サイズの用紙に研究や発表の内容をまとめたものを、発表日に会場内のポスター発表コーナーに貼って行います。見学者はポスター発表コーナーのポスターを自由に見て回ります。発表者は、コアタイムと呼ばれる時間帯には必ずポスターの前に待機し、見学者への説明を行います。

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いきものマイスターは、「石川県能登地域における里山を伝える人材の育成と生物多様性を理解する教材の開発」という発表を行いました。この発表ではまず背景として、過疎高齢化などにより地域の里山が荒廃して地域の生物多様性が失われつつある、地域の生物多様性に根差した生活を理解して伝える人材育成のプログラムであることを説明しました。次に、いきものマイスターの組織図、講義内容、カリキュラム概要、修了生の修了課題などについて触れました。成果として、修了生の活動を伝え、更に修了生らがいきものマイスターとして地域の生き物を見分けて伝える為の教材「能登のいきもの大図鑑」について説明を行いました。これらを踏まえた上で大学とNPOが人材育成に関わる意義についても触れました。たとえば、能登半島は2011年度に、国際連合食糧農業機関によりGIAHS(世界農業遺産)に認定されています。世界農業遺産は、生物多様性に根差した地域固有の伝統的な農業を評価するものであり、いきものマイスターが能登の自然を伝える上でも大切なことではありますが、GIAHSにより認められた能登の農業と自然を地域に知って貰うには大学が持つ知的資源が欠かせません。また、大学と地域を繋ぐ為にも、現場で地域住民らと活動を共にするNPOの役割は大切です。最後に、いきものマイスターの今後の課題である、地域におけるいきものマイスターの活躍の場の拡大、里山の生物多様性について学んだスキルによる生業への付加価値などについて、説明を行いました。

この日のポスター発表には、大学生や研究者ら10数名が、いきものマイスターの発表を見学してくれました。見学者からは、地域の自治体や企業との連携の有無、対象となる人々の職業や年齢層、資格や修了後の受け入れ先の有無、「能登のいきもの大図鑑」を使用しての成果などについて、様々な質問が飛び交いました。

この日には取り組み紹介の為、いきものマイスターの資料と「能登のいきもの大図鑑」を配布しました。特に「能登のいきもの大図鑑」は好評で、発表終了前にはなくなってしまいました。「能登のいきもの大図鑑」に関する成果への質問もあったことから、今後は利用者からの意見(見分けやすさ、説明しやすさ、持ち運びなど)を集めることも必要でしょう。

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尚、18日にはいきものマイスタースタッフの赤石が、能登の水田の生き物について野村と共同で研究した結果について、「Conparison of insect fauna in paddy field between a conventional farming method and new labor-seving method in a hotspot of diving beetle in Ishikawa Prefecture.」というポスター発表を行いました。この研究では、奥能登が全国的に希少なゲンゴロウ類が分布する生物多様性のホットスポットであることを踏まえ、こうした希少ゲンゴロウ類がどんな棲み場所をどのように利用するかを探る為、従来の農法(慣行農法:従来から行われる農法の総称。調査した水田では、中干しと呼ばれる水抜き作業を6~7月頃に行う為、湛水期間は短く水量は不安定)と作業省力化の為の新農法(直播農法:育苗をせず直接の播種による農法。湛水開始は慣行水田より遅いが、中干しを行わない為に水量は安定し、湛水期間も長い。)の2つの異なる農法を行う水田における水生昆虫相を比較しました。結果として6目16科38種の水生昆虫が確認され、ゲンゴロウ科、ガムシ科、コガシラミズムシ科が優占していました。種数は直播水田で多くなりました。一方、ニホンアマガエルのように繁殖時期を6月までの期間に殆ど済ませてしまう生き物は、慣行水田(湛水期間は短いが、水入れ開始が早い)で採集された個体数が多くなりました。このことにより、水田の水管理がこれらの水生昆虫の種数や個体数に影響したものと考えられたことを発表しました。


当日は全国から生態学の研究者が集まりました。2011年度11月の講義で「市民による生き物調査の意義」についての講義をしてくれた、日本自然保護協会(NACS−J)の高川氏は、3月19日に「市民調査のデータを生物多様性の評価・政策決定につなげ!研究者の果たす役割とは」という自由集会を開いていました。3月12日・13日に実施したいきものマイスターの視察旅行でも触れた愛媛大学の日鷹一雅准教授、農村工学研究所の嶺田拓也氏による自由集会や企画集会もありました。他にも、「社会的な意思決定における生態学の役割「持続可能な社会づくりに向けた生態系ネットワークの再生を目指す」など、いきものマイスターの活動にとって重要と思われる発表は他にも多くありました。今回の大会は第5回東アジア生態学会連合大会 (EAFES5)との同時開催である為、会場には外国の研究者も見られ、英語による発表も多く見られました。

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生態学会の全国大会は最新の研究発表に触れる機会でもあり、また研究者同士の交流の場でもあります。あっという間の5日間でした。



*現在、いきものマイスターは2012年度の受講生(3期生)の募集を行っています。詳しくは、こちらの募集概要をご覧下さい。
Posted by 野村進也 at 18:41 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)