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田んぼの生き物調査報告会(1) [2011年03月02日(Wed)]

【2011年2月27日:田んぼの生き物調査報告会】
2月のいきものマイスター講義は、『田んぼの生き物調査報告会』です。2010年度に金沢大学が奥能登で行った生き物調査を、地域住民らに説明することが目的です。

発表のプログラムは、以下の通りです。



・中干しなどの水管理及び農薬の使用が与える田んぼの生き物への影響 :野村進也(能登いきものマイスター).
・水田における諸環境の多様性と水生昆虫群集の動態との関係性:渡部晃平(愛媛大学大学院).
・農法および苗箱剤使用が稲株上の昆虫群集に及ぼす影響 〜調査のねらいと現況について〜:宇都宮大輔(金沢大学)
・管理方法が異なる水田間での雑草群落比較〜野々江町・正院町の事例:伊藤浩二 (金沢大学).

スタッフの赤石が報告会について説明を行いました。今回の生き物調査により能登の農地の生物多様性の評価と環境配慮型農業の構築を行い、その結果を地域と共有することで新しい農業の取り組みを議論することが、本報告会の趣旨です。


ブログ担当の私、野村と愛媛大学大学院生の渡部君は、中干し(根ぐされや過剰分けつを防ぐ為、6月後半から水田を落水させること)や農薬の有無による、水生昆虫への影響について、報告を行いました。中干しを行う一般的な水田と、中干しを行わない直播水田(田植えをせず、種を直接水田に播く新農法。専用の機械を必要とするが、田植えや育苗の手間を省力化出来る)を比較したところ、一般的な水田が中干しを始め水生昆虫が殆どいなくなった時期にも、直播水田では水生昆虫が多く、繁殖も行われたことから、直播水田が保全に役立つことが示されました。また、苗箱剤(田植え前の幼苗に使用する農薬)という農薬については、影響を受ける生き物と受けない生き物がいて、箱剤の影響は一概には言えないことが示されました。
一方、8月半ば頃に行われた農薬の空中散布後に多数の水生昆虫が死んだことを写真を合わせて説明しました。全ての水田で空中散布が行われた為に比較実験は出来なかったので空中散布の影響を明確に判断することは出来ませんでしたが、参加者には強いインパクトを与えたようです。
今日の過疎高齢化に伴う耕作地放棄により里山生物の棲み場所が失われる一方で、環境意識と食の安全意識が高まる今日です。コウノトリで有名な豊岡のコウノトリ米を始めとした無農薬・減農薬米が注目を集めるように、生き物の豊富な田んぼは食の安全を示す付加価値に繋がります。
生物多様性による農業への付加価値は、里山の豊富な能登の個性と魅力を生かす1つの手立てになります。以上の結果を踏まえ、持続可能な農業を目指す上での生物多様性の保全の大切さと、それを行う為の農薬使用や水管理への配慮についての提言を行いました。



今回の水田調査では、水生昆虫と共に稲株上の生き物や雑草の調査も行われました。いずれも防除の上で重要な研究です。
『農法および苗箱剤使用が稲株上の昆虫群集に及ぼす影響 〜調査のねらいと現況について〜:宇都宮大輔(金沢大学)』
宇都宮氏は水田生物多様性の概要と害虫の歴史に触れながら、研究の概要を説明しました。宇都宮氏は水管理(ユスリカなど水で育つ昆虫類)と農薬による陸上昆虫類への影響を調べました。幼苗に用いる苗箱剤はイネミズゾウムシ、イネドロオイムシ、ウンカ類、ニカメイチュウなど幅広い害虫を対象にすることから、多様な陸上昆虫類への影響が考えられることから、農薬の影響を調べることは重要です。同時に、中干しの有無が陸上の害虫や天敵の発生(ユスリカは幼虫が水で育った後、陸上で成虫になる)にどう影響するかを調べました。結果はまだ出ておらず今回は現況報告ですが、水田の陸上昆虫には重要な害虫が含まれることから、農家の方々にとって興味深い研究報告となりました。


『管理方法が異なる水田間での雑草群落比較〜野々江町・正院町の事例:伊藤浩二 (金沢大学)』
最後に、水田雑草の専門家、伊藤氏による水田雑草の調査報告です。伊藤氏は水田雑草と稲の関係(競合関係など)、また水田雑草と他の生き物の関係(越冬場所、餌、産卵場所、餌場、斑点米カメムシの誘引)について説明した上で、水田雑草を調査する意味について以下のように説明しました。

・イネの収量・品質に影響を与えるものもあるから
・(自然湿地が少なくなった今)、水田を貴重な生育地としている植物がいる
・餌や産卵場所として、生態系を支える基盤となっている反面、その実態は未解明

伊藤氏の調査により、調査水田からは以下のような絶滅危惧種が発見されました。

・ミズオオバコ(石川県絶滅危惧U類)
・ミズワラビ(石川県絶滅危惧種)
・キクモ(石川県絶滅危惧T類)
・イチョウウキゴケ(環境省準絶滅危惧)
・マルバノサワトウガラシ(環境省絶滅危惧U類)
・ミゾハコベ(石川県絶滅危惧U類)
・シャジクモ(環境省絶滅危惧U類)


これらを踏まえ、伊藤氏は水管理や耕起方法の違いによる水田雑草の種組成の特徴を調べました。調査によると水田内側より周辺部で種数・被度共に高くなったことから、伊藤氏は周辺部では除草剤の影響が小さい可能性に言及しました。また、農法や水田同士の種組成を比較しながら、除草剤や農法の差だけではなく土地の履歴も調べる必要性を説明しました。

尚、直播水田では雑草の多様性が低かったが、中干しをせず水位が安定することから、一般の水田とは異なる雑草の種組成(水草など)が成立する可能性に触れ、それを調べる為には調査地点を増やしての検討が必要とまとめました。



私達の調査は稲作の期間に合わせ5月から9月まで行われました。現場では農作業の方と会う機会も多く、炎天下での大変な調査を労って下さる方もいました。今回は、協力して下さった地域の方への報告と共に、お礼の意味もあります。
調査水田を提供して下さった農家の方々は、今回の報告を聴いて自分達の田んぼがいかに生き物の豊かな田んぼであるかを知り、これからも自信を持って田んぼを守っていきたいと話してくれました。農業を続けることが大変な時代ですが、私達も勇気づけられそうです。良い結果報告が出来たのではないかと思います。
私達いきものマイスターは、地域の自然を伝えることが一番の役目です。地域住民らを交えた意見交換の現場に参加して貰うことは、受講生にとっても学ぶことが多かったのではないでしょうか。