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海のいきものマイスター(3) [2010年10月29日(Fri)]
受講生の大瀧さん指導により、午後の講義「タコすかし」が始まりました。いきものマイスターの拠点である里山里海自然学校から歩いて2〜3分の海岸には浅い岩礁地帯が広がっており、タコすかしの講義にはうってつけです。胴長を用意して海に入ります。波に揺られながらの慣れない岩礁歩きですので、一歩一歩注意深く歩きます。

タコすかしには、先に疑似餌をつけた竿と、タコを引っ掛けて採る為の針をつけた竿を使います。疑似餌つきの竿で岩礁を探り、誘い出したタコを針つきの竿でひっかけて採ります。



浅さに関係なく、潜むのに十分な岩場ならどこにでもタコはいるといいます。一見変哲もない岩場も、タコが潜んでいるかもしれません。タコを見逃さない為にも、岩の隙間1つ1つを竿の先の疑似餌でなぞり、タコを誘い出しにかかります。

大瀧さんの指導により、遂に受講生の1人がタコを採りました。採った本人は大喜び…ですが、指導した大瀧さんがもっと喜んでいます(笑)。海の楽しさと大切さを体験して欲しいと願う、大瀧さんの気持ちが籠もっているからでしょう。
この日はタコの出が悪かったのか、最初の1時間はタコがなかなか見つかりません。自然の相手は難しいものです。1頭もタコが採れない日も決して珍しくはないらしく、まずはタコが採れたことに一安心です。
本格的にタコが採れ始めたのは、タコすかし実習終了間際の30分〜1時間でした。開始時間が早すぎたのかもしれませんが、最後にはあちこちでタコが採れて、大盛り上がりです。


午前中の講師、浜本さんにもタコすかしに参加して貰いました。目の前のタコに逃げられてしまったのが悔しかったのか、「次こそは絶対採りたい」と再挑戦を誓っていました。折角なので、能登土産にタコと記念撮影です。講師の顔から、もはや1観光客の顔になってしまいました(笑)。


講義を忘れてタコすかしを満喫してしまい、終わった頃にはすっかりみんな笑顔です。仕切り役のスタッフ赤石も、タコを採ってすっかり上機嫌です。
能登半島は至るところが海に囲まれた地域ですが、こんな身近な海の面白さを改めて知りました。今では海を知らない子供が能登でも増えているといいますが、海の魅力をしっかりと伝えていきたいものです。大瀧さん、本当にありがとうございました。

海のいきものマイスター(2) [2010年10月29日(Fri)]
午前の講義の後半では、浜本氏を中心に「いきものマイスターに参加したきっかけ・目的」について、受講生とのディスカッションを行いました。

(大瀧)
大瀧さんは、能登の海でタコすかしという伝統漁法を観光客に指導している人です。タコすかしとは、竹竿の先にカニなどの疑似餌をつけてタコを誘い出す漁法であり、この日の午後の大瀧さんによるタコすかし体験です。
http://notobito.jp/notobito/2007/03/post_11.html
大瀧さんがタコすかしを始めたきっかけとして、「見る観光は終わった」と考え、もっと地域の魅力を体感して貰う観光について考えていました。そこで子供の頃に誰もがやったタコすかしを思い出し、観光体験に採り入れたそうです。漁場を荒らされるとの誤解から当初は地元の反発を受けましたが、めげずに続けた今では地元の理解も得られ、子供からは「タコ採りのおっちゃん」と呼ばれるまでになりました。体験型観光としてもう有名になり、テレビや雑誌、ネットの旅行案内でもたびたび取り上げられるまでになりました。
何故そこまでして、大瀧さんはタコすかしを続けたのでしょうか?大瀧さんは、タコを採ること自体は目的ではないと言います。大瀧さんがタコすかしで案内する海は一見綺麗ですが、実際は汚れています。一見透明で綺麗に見える海も岩肌は濁り、底を歩けば沈殿物が舞い上がり、ゴミも増えてしまいました。今では採れる魚も減った上に体長までも小さくなったといいます。タコすかしを楽しめる海であり続けるには、海の魅力と現状を知って貰う必要があります。タコすかしは、楽しみながら能登の海を体感して貰える、最高のインタープリテーションといえるでしょう。
大瀧さんはタコすかしを地元の人達にもして貰いたいと考えています。現金収入、更に地域の海の問題に取り組んで貰えることになれば、大瀧さんの目指す地域に根差した自然体験は大きな意義を持つことになります。
今後、大瀧さんはタコの生態学的知識や生態系に関する知識を身につけ、更にデータに基づくタコすかし案内をしたいと考え、それをいきものマイスターで学びたいと考えています。


(A)
Aさんは夫婦で東京から移住してきました。御主人と共に一時期アメリカで生活して、アメリカの生活が面白かったと言います。その頃の興味は外にばかり向いていましたが、帰国後に縁あって能登に住む機会を得ました。そこではアメリカ以上の異文化が日本にあることを知り、能登を強く意識するようになったと言います。
Aさんの地域では、横浜からの児童への地域案内をしたことがあります。その時Aさんは地域のお年寄りにガイドをお願いしましたが、地域の方々はAさんから教わるまでは地元の魅力に気付いていなかったといいます。しかし実際にガイドを始めて貰うと、地域のお年寄り達がとても活き活きしていたのをAさんは目の当たりにしました。外の人々を惹きつける魅力を備えた能登の里山ですが、同時に地域住民が地元の里山を理解する必要があると、Aさんは言います。いきものマイスターでは、地域で行う観察会などの活動の発展の為に学んでいきたいとのことでした。


(B)
Bさんは兵庫から能登の漁師の家に嫁ぎました。漁業資源の枯渇を目の当たりにしたBさんは、持続可能な漁業を目指す為に里山・里海や生き物の繋がりについて学びたいと、いきものマイスターに参加しました。実は海も虫も好きではなかったBさんですが、いきものマイスターの講義を通じて、自然や生き物に対する「まなざし」という言葉を知って以来は虫に対するいたわりの気持ちも持つようになったといいます。
漁業をテーマにと考えていたBさんですが、ここ最近では山への興味に気付きました。自分のテーマに悩んでいるBさんですが、浜本氏は「嫌い」を知っていることはインタープリテーションをする上ではとても大切だとBさんを評しました。観光客の中にも虫が嫌いな人もいるかもしれません。自然に対する思い入れに温度差があるかもしれません。「好き」をインタープリテーションの出発点にすることは大切ですが、「嫌い」な人の感覚に気付くことも時に必要でしょう。


(スタッフの赤石)
現状の能登ではアクションを起こしていかないと、地域は衰退する一方だが自分達だけでは力が足りないと言います。だからこそ、この講座で育ったいきものマイスターを能登に配置し、能登全域にいきものマイスターのネットワークを確立したいと考えています。その活動の1つとして、能登全体をエコミュージアム化するということを考えていますが、本来の地域活性化という目的がズレないようにしたいと語っていました。


浜本氏自身、大学での研究では自身が意識する「地域への還元」を実現するには物足りないとの強い想いが、自身のNPO法人での活動に影響していると言います。
浜本氏は受講生1人1人の発言に対し、地域に利益を還元することと地域が地元の魅力に気付くこと、更にそれを持続させることが大切だと助言をしてくれました。浜本氏は従来のガイドでは伝え切れない地域の自然環境の魅力と大切さを語る、「自然通訳者」としてのインタープリターの役割を大事だと話しました。
(3に続く)
海のいきものマイスター講義(1) [2010年10月29日(Fri)]
10月23日、海をテーマにいきものマイスターの講義を行いました。午前中はNPO法人「くすの木自然館」研究員の浜本麦氏による講義、午後は受講生の大瀧さん指導によるタコすかしの実習を行いました。



【浜本麦氏講義:干潟の生態系と重要性を地域と共に守り伝えるには】
くすの木自然館は、鹿児島県姶良町の鹿児島湾(錦江湾)周辺域で、地域に根差した自然体験や環境教育、保全や研究を行い、更に「重富干潟小さな博物館」を運営するNPO法人です。地域に根差すという意味では、いきものマイスター養成講座の拠点である里山里海自然学校と似た活動を行っていますが、海を専門としているのが特色です。
大隅半島と薩摩半島に挟まれた鹿児島湾は急峻な擂り鉢状の形状を持ち、内湾としては珍しく200メートル以上の深い海です。その固有の地形と環境による多様な生物相が形成され、世界中から研究者が訪れる貴重な海となっています。特に、重富干潟は日本の重要湿地500に選定される貴重な干潟です。
今でこそ、くすの木自然館や地域の努力により景観が保たれている鹿児島湾の干潟ですが、かつて海は汚れ、過去に豊富だった生き物も減少していました。併設される海水浴場の管理は杜撰で、ゴミは放置されるままだったといいます。当然、地元からの評判は散々なものでした。清掃してもすぐ汚れるからと、既に見離される始末です。いつの間にか暴走族の溜まり場となり、海岸利用者のマナーも悪くなる一方です。地域住民らは「昔は良かったのに」と諦め、悪循環は続く一方でした。これでは、多様な海の生物相も、貴重な景観も全て台無しです。

そこで立ちあがったのが、くすの木自然館のスタッフです。出来ることから始めようと、まず始めたのがゴミ拾いです。当初はゴミ拾いをしたその日のうちに新たなゴミで溢れてしまいましたが、弁当容器が多かったことに気付いてからは、ゴミ拾いを昼頃に行う工夫をしました。昼時に海岸で昼食を取る利用者の目の前でゴミ拾いをしたことによる管理努力を示した効果は大きく、利用者のマナー意識も向上しました。スタッフの取り組みに触発された地域住民らも、やがて自発的にゴミ拾いやパトロールを行うに至りました。ゴミ拾いを始めた2005年と比べ、現在では1日のゴミの量は3分の1に減少し、海岸利用者の数は10倍に増加しました。かつて諦めの対象だった地域の海が、いつしか地域の誇りになっていました。
利用もかつての散歩や昼食程度だったのが、今では行楽に加え祭り、研修、写真撮影、学校利用など幅広い用途に使われています。かつて暴走族の溜まり場だった海岸は、車椅子や松葉杖使用の利用者も安心出来る海岸になりました。まさに正の連鎖反応といえるでしょう。


現在、産・学・官・民・NPOらと手を取り合い、地域の環境問題に取り組むNPO法人くすの木自然館ですが、常に地域への視線を忘れません。ゴミ問題から地域活性化という正の連鎖反応を導き出すことに成功しましたが、次に干潟生物減少の理由解明に乗り出しました。2000年に干潟生物の観察会を行ったところスコップ1杯で20種・約50個体の生き物が採れていたのが、翌年には半減するという多様性減少が起こっており、当初は原因を海の汚れと考えていました。しかし鹿児島大学との共同研究を行った結果、水質の悪化はさほど進んでおらず、むしろ流入土砂の変化により干潟の地質が砂利から砂に変わったことで、元からの生物相が減少したということが判明しました。通常なら海の汚れのせいにしてしまうところですが、研究機関が調査もせず無責任な結論を出せば、誤った対策を導きかねません。地域に根差したNPO法人として、保全対策の提言を行う上ではこれも大切なことです。研究機関としても、必ず地域との共有を意識した姿勢がここに伺えます。

環境意識の高まりと共に、今日では各地で保全や環境問題に取り組む団体が活動を行っています。地域に根差した保全活動を目指す団体は少なくありませんが、それを実現するのは決して容易ではありません。NPO法人くすの木自然館は、その難問を見事クリアしました。ゴミ問題という目に見える問題に挑んだことで、地域の意識までを変えたその実例は、保全や環境問題に取り組む全ての人に、そして私達いきものマイスターにとって大きな手本となることでしょう。
(2に続く)
アメリカザリガニ捕獲 [2010年10月22日(Fri)]


10月11日より、名古屋でCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)が開催されます。COP10の開催、そして近年の環境意識の高まりにより「生物多様性」という言葉が注目されています。特に日本では里山が生物多様性を支えてきました。里山は、持続的な自然の資源を利用する為に人が管理してきた環境です。しかし近年では、開発や管理放棄による里山の減少が相次ぎ、里山の貴重な生物多様性が損なわれています。加えて、外来種の問題は深刻です。今やブラックバスやアメリカザリガニ、ウシガエルなどの外来種が入っていない地域の方が珍しくなってしまいました。
ここ奥能登地域は、全国でも稀な外来種の少ない地域ですが、それでも局所的にはブラックバス、ウシガエル、アメリカザリガニの分布が確認されています。特に珠洲では、希少水生昆虫の棲む一部の水系にアメリカザリガニが入ってしまいました。アメリカザリガニは捕食や餌の取り合いで在来の生き物を減少させてしまう他、水草を食い荒らすことで水域の植生を荒らしてしまいます。ここ数年間、小学生を始めとした地域住民らと大がかりな捕獲作戦をたびたび行ってきましたが、アメリカザリガニが減少する気配はなさそうです。

大がかりな作戦でも問題解決は困難ですが、それでもアメリカザリガニ問題について正しく理解して貰うことは大切です。特に奥能登ではアメリカザリガニの分布自体が珍しく、ザリガニを見たことのない人が圧倒的多数です。そこで10月17日、地元の高校生2人、高校の先生2人、里山里海自然学校スタッフ3人の計7人によるアメリカザリガニ捕獲を兼ねた生き物観察を行いました。

場所は市街地近くに位置する、大規模圃場内の水路です。前日の夜に仕掛けたもんどりトラップ(中に煮干しなどの餌を入れて生き物を誘引する、籠網状のトラップ。『おさかなキラー』などの名前で商品化されています)を引き上げると、早速アメリカザリガニが入っていました。地元の高校生は、滅多に見ないアメリカザリガニに驚きの模様です。



水路に沿って進みつつ、網を入れていきます。多数のシオカラトンボの仲間の幼虫に混じり、アメリカザリガニの幼生が網に入りました。



写真は、圃場整備の際に生き物が避難出来るようにと作った水溜りです。ここでは一番多くのアメリカザリガニが採れました。掬うたびに網に入る、といったところです。ザリガニばかりではなく、とにかく生き物が多く網に入ります。クロスジギンヤンマ幼虫、ヒメゲンゴロウ、オオミズスマシ、ツチガエル幼生(オタマジャクシ)、更にはクロゲンゴロウという大型ゲンゴロウも採れました。今や、こうした大型ゲンゴロウ類は貴重な生き物です。



実は造成直後の昨年には植生は非常に豊富でオモダカが茂り、大型ゲンゴロウ類もここで多く見られていました。しかし今年はカンガレイという抽水植物を除くと、殆ど水草が見られません。ザリガニに荒らされたのかもしれない…確証はありませんが、やはり不安になります。今後の推移が気になるところです。


おまけ:
観察コース途中でムカゴを見つけてしまいました。
ザリガニ捕獲作戦を一時中断して、ムカゴ採りに夢中です。
ザリガニ捕獲より熱心だったかも…(笑)。

秋のビオトープ [2010年10月22日(Fri)]
「NPO法人おらっちゃの里山里海」が保全活動を行う味噌池ビオトープは休耕田を利用して作られました。僅か5筆程度の面積から始まったビオトープ水田も、その後追加創出を重ね今では5ヘクタールに及ぶ一大湿地にまで成長しました。
http://www.toyama.hokkoku.co.jp/subpage/H20091210103.htm
https://blog.canpan.info/sec/EntryEdit.blog?entryId=12

先日、里山メイト(おらっちゃの保全活動への一般参加者)らとビオトープを観察してきました。2009年度冬に追加創出した箇所は草も生えず丸裸同然でしたが、僅か数ヶ月でこの盛況ぶりです。



ちょっと油断するとビオトープが草で埋もれてしまう始末です。慣れるまでは、調査に来るたびに迷子になったものです(笑)。
ビオトープのあちこちをトンボが飛び交います。これも秋のトンボが目立つようになりました。この日、ネキトンボやリスアカネを目撃しました。画像は、上がネキトンボ♀、下が♂です。






この味噌池ビオトープとその周辺では他にも、シオカラトンボ、ハラビロトンボ、ヨツボシトンボ、ショウジョウトンボ、ギンヤンマ、サラサヤンマ、エゾトンボ、クロイトトンボ、オオイトトンボ、ホソミオツネントンボ、キイトトンボ、モノサシトンボなど多くのトンボが棲んでいます。


ビオトープ内には、コナギ、イボクサ、カンガレイ、サンカクイ、ヘラオモダカ、オモダカなどの湿地性の草が広がります。水田では厄介者とされがちですが、ここではビオトープを豊かにしてくれる大切な立役者です。多くの水生昆虫は植生豊かな場所に集まるからです。その利用方法は様々ですが、ヤゴやゲンゴロウは足場として、また隠れ場所として積極的に水草を利用します。また大型ゲンゴロウ類は水草の柔らかい部分に卵を産み付けます。オモダカ、ヘラオモダカ、カンガレイなどの抽水植物は、水場周辺を飛び交うトンボにとっては大切な休息場所です。(
水中には、キクモやヤナギスブタが豊富に見られます。キクモは石川県(準絶滅危惧)を始め、9つの都道府県で絶滅危惧種に指定されています。ヤナギスブタは石川県では絶滅危惧に入っていませんが、36都道府県で絶滅危惧種に指定される貴重な水草です。
http://www.pref.ishikawa.jp/sizen/reddata/RDB_2010/data/kikumo537.pdf


訪れるたびに新発見の連続で、私達も大変に満足のいく生き物の豊富なビオトープに成長してくれたことは、何よりも嬉しいものです。今後は環境教育や自然体験の場として地域の方達に積極的に提供出来ればと考えています。
奥能登にお越しの際は、是非私達のビオトープにお立ち寄り下さい。











3.パネルディスカッション/4.【報告】石川県生物多様性戦略ビジョンについて [2010年10月14日(Thu)]
3.パネルディスカッション:水と土が育む生きもののつながり 豊かな里山里海を未来へ
鷲谷いづみ
中村浩二(金沢大学学長補佐、環日本海域環境研究センター長、教授)
高橋強(石川県立大学教授)
北風八紘(NPO法人おらっちゃの里山里海理事長・農業法人(有)すえひろ会長)
北村幸一郎(リコージャパン(株)石川支社長室副室長)
コーディネーター:進士五十八(東京農業大学名誉教授)


東京農業大学の進士五十八先生の司会進行によるパネルセッションには、いきものマイスターの運営委員長でもある金沢大学の中村浩二教授、同じく運営委員も務める北風八紘氏(NPO法人おらっちゃの里山里海理事長)らが参加しました。
多様な農業形態が今日の近代化による経済効率重視偏重により失われつつありますが、進士先生は「生物多様性」とは本来農村では知られていたものであり、それに今日の私達の知識がようやく追いついただけだと語ります。
リコーの北村氏は2006年より環境ボランティア活動の一環として里山保全活動に取り組んでいます。ボランティア活動は、最初はバーベキューなど遊びの企画に「少しボランティアもあり」という形で始めたそうですが、今では多くの社員が参加する一大活動にまで成長しました。楽しみ合ってのボランティアということです。この事例での焦点は農村であり、生物多様性は農家・社員・リコーの活動が組み合っての結果というわけです。
「NPO法人おらっちゃの里山里海」会長・いきものマイスター運営委員の北風八紘氏は、珠洲市三崎町に創出した味噌池ビオトープでの取り組みを紹介しました。味噌池ビオトープは休耕田約5ヘクタールをビオトープ化したものです。今までも約2ヘクタールのビオトープ水田を創出することで水生昆虫類を呼び込むことに成功しましたが、今年は更にこのビオトープの一部で牛の放牧による雑草管理の試み、蕎麦栽培の試みなどを行いました。ビオトープというのは庭の片隅サイズの小ぶりなものから、味噌池ビオトープのような大きな公園サイズのもの、更に大規模なものまで大きさは様々です。主に希少水生生物保全の為に機能してきた味噌池ビオトープですが、こうした新たな試みは、広く開放的な圃場から奥まった細い谷戸地など多様な景観を含む味噌池ならではの、多彩な試みといえるでしょう。
尚、味噌池ビオトープについては本ブログでも取り上げていますので、御覧下さい。
進士先生は、生物多様性は決して生き物だけの為ではなく、新たな企業活動や新技術・農法開発という人の為の取り組みであることもまた強調しました。私達のビオトープ活動も有志らの手により運営されていますが、蕎麦の栽培や放牧は農産物生産という休耕地の積極活用の試みでもあります。私達のビオトープが自然観察の場のみならず、持続的土地利用のモデルとなれば、これに勝る喜びはないでしょう。


4.【報告】石川県生物多様性戦略ビジョンについて
丸山利輔(石川県立大学名誉教授・石川県立大学参与・石川県生物多様性戦略ビジョン策定委員会会長)
最後に丸山利輔先生より、石川県生物多様性戦略ビジョンについての話がありました。石川県は県面積の6割を里山エリアが占め、南北両系の生物相を持ち、国内でも最長クラスの海岸線を持つ、生物学的にも貴重な県です。一方でエネルギー革命や産業構造の変化、更に過疎高齢化が地域を圧迫しており、また里山の荒廃が保水能力や災害防止機能の低下を招いている現実もあります。
こうした問題に対し、金沢大学を始めとした学術機関や多くの民間団体が里山保全に取り組んでいます。県内からは7地域を「先駆的里山保全地区」に選出されました。
http://www.biodic.go.jp/biodiversity/roundtable/03/pdf/ishikawa6.pdf
http://www.biodic.go.jp/biodiversity/roundtable/03/pdf/ishikawa7.pdf
石川県らしさを大事にした生物多様性戦略をイメージする為に、石川県では里山里海の景観と生活の保全、農業振興など、里山の利用促進に繋がる方針を打ち出しています。

尚、こちらのリンク先では各県における生物多様性戦略作りについての紹介があり、石川県の事例も紹介されています。
http://www.eic.or.jp/library/pickup/pu080919.html


今回のシンポジウムは著名な先生に加え、多彩な人選によるユニークなディスカッションを聴くことが出来ました。既に生物多様性や環境問題が学者だけの問題ではないことを知る機会であり、生物多様性の最も身近な現場である里山についてを考える良いきっかけになったと思います。反面、私達の周囲では、今回のシンポジウムに関して、目新しさに欠けるとの感想もありました。著名な先生方を迎えての公開ディスカッションという手法にも限界があるのかもしれませんが、こうしたシンポジウムで違いを出すことは難しいでしょう。いきものマイスターならば、今回のような生物多様性、里山についていかに伝えていくべきか?私達にとっても、重要な課題になるでしょう。
2.トークセッション:私が感じる生きものとのつながり [2010年10月09日(Sat)]
2.トークセッション:私が感じる生きものとのつながり
日鷹一雅(愛媛大学准教授)農学系生態学者
大桃美代子(タレント)地球いきもの応援団(環境省)
林浩陽((株)林農産代表)23世紀型お笑い系百姓

タレント、農業経営者、農生態学者という異色の組み合わせによるトークセッションです。
新潟県魚沼市出身であり実家も農業をしているという大桃美代子さんですが、長らく農業と無縁の生活を送ってきました。しかし2004年、実家滞在中に遭遇した中越地震の惨禍を目の当たりにしたことから、農業や自然について意識するようになりました。自身でも無農薬水田を作り、子供達と生き物観察会を行うことで、自然との接し方や食育について取り組んでいます。

野々市町で農業経営に取り組む林さんは、元デザイナーからUターン就農を果たした異色の農業経営者です。「農業を通じて、豊かな生活を想像する」「食と命の大切さを伝える」との理念を掲げる林さんですが、決して堅苦しいものではありません。自身を「23世紀型お笑い系百姓」と称するように、遊び心を大切にする人でもあります。この日も、作業服にヘルメット、更にヘルメットには鏡餅をあしらった飾りというユニークないでたちで登場しました。これは林さん流の「掴み」だそうです。食育授業や田んぼの体験学習にも取り組む林さんですが、特に子供達には受けがいいそうです。「23世紀お笑い系百姓」の面目躍如といったところでしょう。

日鷹一雅先生は愛媛大学の農場の先生であり、水田生物の第一人者です。タガメやゲンゴロウを始め、多くの水田に棲む水生昆虫について、日鷹先生は研究してきました。漠然と「水生昆虫」とされてきたゲンゴロウやタガメを始めとした多くの水生昆虫が、溜め池や水田といった里山内の水環境を上手く使い分けていることが今少しずつ明らかになりつつありますが、日鷹先生の研究なくして水生昆虫を含む水田生物による里山利用については何も語れなかったでしょう。
農場の先生らしく、自身の授業でも農場近辺の草地・水田・鎮守の森といった多様な景観で生き物の種数探しをさせ、学生に多様性を体感させるそうです。この時には、学生にも虫の苦手な学生もいれば虫に詳しい学生、草に詳しい学生、探すのが上手な学生が混じることから、人の多様性すら意識するといいます。
シンポジウムに先立って日鷹先生は林さんの圃場を見学したそうですが、作業で水田内に出来た足跡サイズの水溜りから水生昆虫を探し出した日鷹先生に、林さんはとても驚いたそうです。農家なら目もくれない僅かな溜まり水すら水田生物の多様性を構成していることを示せるのは、やはり生物学者、それも日鷹先生ならではです。
益虫・害虫の範疇で語られがちな水田生物ですが、日鷹先生は水田生物の大半がそのどちらでもない「ただの虫・ただの草」であることを伝えます。こうした「ただの虫」とて密かに重要な役目を持つのかもしれません。何より生態系や生物多様性を支えるのは、これら「ただの虫」です。有益な生き物も、餌資源などの形でこれら「ただの虫」を多く利用していることでしょう。

食育という大切なテーマを、ユーモアを通じて伝えようとしている林さん。華やかな芸能活動をしているからこそ、水田に立った時には自身を1人の人間として意識するという大桃さん。身近な生物から人にまで多様性が溢れていることを体感させ、驚きを伝えるsense of wonderを大切にする日鷹先生。ユニークかつ異色の組み合わせによるトークセッションは、三者三様ながら生き物の繋がりを強く意識するものとなりました。

(3に続きます)


1.基調講演:いきものはつながりの中に [2010年10月08日(Fri)]
10月1日、「いしかわの里山里海 生物多様性シンポジウム」が金沢で開催されました。シンポジウムには「生きものはつながりの中に」の著者である中村桂子先生による基調講演、タレント・農家・生物学者という異色の組み合わせによるトークセッション、そして多様性に関するパネルディスカッションなどがありました。シンポジウムには「NPO法人おらっちゃの里山里海」の理事長であり、いきものマイスター養成講座運営委員も務める北風八紘氏、同じく運営委員の日鷹一雅先生(愛媛大学准教授)、更にいきものマイスター養成講座の運営委員長である中村浩二先生(金沢大学教授)も参加しており、いきものマイスターにとっても関係の深いシンポジウムです。
今回より3回に分けて、各プログラムについて触れていきたいと思います。


1.基調講演:いきものはつながりの中に
中村桂子(JT生命誌研究館館長)
シンポジウムの副題「生きものはつながりの中に」とは、中村桂子先生が小学6年生の教科書(光村図書)の為に執筆した文章のタイトルです。この「つながり」という言葉は、シンポジウム共通のキーワードでもあります。
中村先生はこの「つながり」について、以下の3つに喩えました。

・外とのつながり
生命は生態系に属しています。いかなる生命も生態系のつながりを逸脱することは出来ません。今日の研究では、生物群集(異なる種同士の集まりを指す、生態学用語。)内の異なる生物同士が食物連鎖や共生関係などにより緻密な相互作用と繋がりを持ち、生態系における重要な役割を担っていることが明らかになっています。人類もまた、この生態系の繋がりによって生かされています。私達が生物多様性を重んじる理由も、ここにあります。
私達の取り組む里山の自然というのは、「外とのつながり」を体感出来る絶好の場となるでしょう。

・過去や未来とのつながり
これは生命史、そして進化史を通した生命のつながりについてです。現在の生物多様性とは、原始的な生命から人類に至る全ての生命が38億年(現在知られている最古の生命痕跡は、38億年前のものとされています)の年月をかけて現在の姿を獲得した結果であり、等しく38億年の歴史を持っています。


中村先生は扇状のイラストを用いて説明されました。38億年前に小さな1点(共通祖先)から始まった生命は、その後の進化と滅亡・適応放散を繰り返して今日の生物多様性(命名済みだけで200万種、推定で1000万種以上)に到達しました。今日の生命は扇状に多様な広がりを見せていますが、人類はその頂点ではなく、広がりの一部にすぎません。
つながりの一部である私達人類が、各々の生命が持つ38億年分のつながりを断つことのないよう心掛ける必要があります。

・自分自身のつながり
人を含めた全ての生命にとって、誕生から歳を重ねるということは変化と成長の連続です。人は常に新陳代謝を繰り返しますが、これは食物を通して新たな養分を自身に同化させ、不要物を排出するサイクルです。同じ人ですら、昨日と今日ではその人を構成する物質は同じではありません。全ての生命が38億年分の歴史と繋がりを持つように、1人1人にもまた年齢分の繋がりがあるのです。


中村先生は「つながり」の説明として、熱帯雨林におけるイチジク類とイチジクコバチという蜂の繋がりを引き合いにしました。イチジクの花は実の中で咲く為に、独特の受粉プロセスを持ちます。イチジクコバチは実の中に産卵を行い、その成長過程と産卵家庭でイチジクコバチは受粉を助けます。イチジクコバチは産卵と幼虫養育の場を得ますが、イチジクはイチジクコバチというポリネーター(花粉媒介者。蜂などの訪花昆虫が担う)の助けによって受粉を行います。両者が互いに利益を得ていることから、これは共生(相利共生)です。

一方、イチジクは多様な種に分かれていますが、そのイチジクと共生を行うイチジクコバチもまたイチジクの多様性に呼応するように種分化(種が分かれ、新たな種になること)しています。これはイチジクの種が分かれたことに呼応してイチジクコバチもまた多様な種に分かれたこと(もしくはイチジクコバチの種分化に合わせてイチジクもまた種が分かれた)を意味するものであり、対応するイチジクとイチジクコバチでは種分化した時期も重なります。
このように、2種以上の生き物が呼応し合って同時に進化することを共進化(coevolution)と言いますが、この共進化という現象は多くの生物に見られます。多様に分かれたイチジクが森を形成し、森が多様な生物相を育んでいます。コバチの仲間は体長が数ミリから1ミリ以下という極めて微小な昆虫です。その小さな繋がりが森を作り、多様な生態系と生物相を支えているというのですから、生き物同士の繋がりは実に不思議なものです。
私達いきものマイスターは、一見小さく見過ごされがちな、こうした生き物の繋がりの奥深さをもっとよく知る必要があるでしょう。

(2に続きます)

保全林でのキノコ観察 [2010年10月07日(Thu)]
残暑の厳しい9月でしたが、この1週間ほどで急に涼しくなりました。8月には少なかった雨も、9月には急増しました。低温(寒暖差)と雨を必要とするマツタケを始め、キノコにとっては理想の環境が整いつつあります。

9月25日(土)は、「NPO法人おらっちゃの里山里海」の保全活動日です。里山メイト数人らと保全林内の草刈りをしながら、林内のキノコを探して歩きます。



テングタケの仲間、卵みたいなキノコです。


アカヤマドリ、炒めて食べるととても美味しいです。


ヒイロタケ


・シロオニタケ、つい触ってみたくなります。



他にも、以下のキノコが採れました。
・イグチの仲間
・オオクロニガイグチ
・ショウロ
・キイロイグチ






流石にマツタケとまではいきませんでしたが、この保全林もかつてはマツタケの産地でした。しかし奥能登では荒れた里山が増え、かつてに比べマツタケの生産量は落ち込んでいます。マツタケが生育するには秋の低温・雨に加え、里山の管理が欠かせません。定期的な草刈りに加え、林内に溜まった堆積物を除去する下草刈りが必要です。




マツタケはまだ先かもしれませんが、キノコいっぱいの魅力ある里山を守り伝えたいものです。
いしかわの里山里海 生物多様性シンポジウム [2010年10月02日(Sat)]
「生きものはつながりの中に〜豊かかな里山里海を未来へ〜」
いしかわの里山里海 生物多様性シンポジウムへ参加して来ました。
平日の開催でしたが、いきものマイスター受講生も2名参加しました。

日時 平成22年10月1日(金)13:30〜17:00  場所 石川県立音楽堂邦楽ホール 

基調講演「生きものはつながりの中に」
中村 桂子(JT生命誌研究館 館長)
東京都出身。理学博士。小学6年生の国語の教科書(光村図書)「生き物はつながりの中に」の著者。

トークセッション「私が感じる生きものとのつながり」
日鷹 一雅(愛媛大学農学部・大学院農学研究科 農生態学研究室 准教授)
東京都出身。学術博士。農学博士。共著に「減農薬のための田の虫図鑑 害虫・益虫・ただの虫」「自然と結ぶ「農」にみる多様性」など。いきものマイスター養成講座、講師。

大桃 美代子(地球いきもの応援団(環境省)、タレント)
新潟県魚沼市出身。’04年、魚沼市の実家に帰省中、「中越地震」遭う。’0511月に「魚沼大使」に任命され、震災からの復興のための活動をおこなっている。

林 浩陽((株)林農産代表取締役)
石川県野々市町出身。’83年Uターン就農。’92年天皇杯を受賞。’97年から小学校において田んぼの体験学習をはじめる。以来、食育授業にも力を注いでいる。

パネルディスカッション
「水と土が育む生きもののつながり〜豊かな里山里海を未来へ〜」

コーディネーター
進士 五十八(東京農業大学名誉教授、(財)水と緑の惑星保全機構理事長)
京都市出身。農学博士。環境学、造園学、景観政策が専門。「グリーンエコライフ」「ボランティア時代の緑のまちづくり」など著書多数。

パネリスト
鷲谷 いづみ(東京大学大学院農学生命科学研究科 保全生態学研究室 教授)
東京都出身。理学博士。専門は生態学、保全生態学、生物多様性と自然再生に係わる幅広いテーマの研究に従事。「コウノトリの贈り物」など著書多数。

中村 浩二(金沢大学学長補佐、環日本海域環境研究センター長、教授)
兵庫県出身。農学博士。専門は生態学。金沢大学の里山里海の保全・活用、地域再生を目指した様々な取り組みの代表を務める。金沢大学「能登里山マイスター」養成プログラム「能登いきものマイスター」養成事業、代表。

高橋 強(石川県立大学教授)
福井県出身。農学博士。専門は農業土木学、農村計画学。農林水産省の中山間地域等直接支払制度等に関する第三者委員会委員長。農地・水・環境保全向上対策の第三者委員会委員長。

北風 八紘
(特定農業法人(有)すえひろ会長、NPO法人能登半島おらっちゃの里山里海理事長)
石川県珠洲市出身。条件不利地域での大規模農業経営を確立したことが認められ、’04年天皇杯受賞。’06年NPO法人能登半島おらっちゃの里山里海理事長に就任。

北村 幸一郎(リコージャパン樺部営業本部 石川支社支社長室副室長)
金沢市出身。’06年7月から環境ボランティア活動の一環として里山保全活動に取り組みを開始。以来、全活動に参加している。昨年は石川支社社員の参加率100%を達成。

報告「石川県生物多様性戦略ビジョンについて」
丸山 利輔(石川県立大学名誉教授、石川県立大学参与)
岐阜県出身。農学博士。専門は農業工学(灌漑排水学)。「水利環境工学」、「地域環境水文学」など著書多数。


休憩時間には「棚田の新米食べくらべ」がおこなわれていました。
すえひろ舞  珠洲市若山町
黒神棚田米 輪島市門前町 日向浦地区
鉈打棚田米 七尾市中島町 鉈打地区
林さんちのお米 石川郡野々市町藤平
参加者が多く、私の口には入りませんでした。