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国際GIAHSセミナーを聴講しました [2013年01月15日(Tue)]
2013年1月14日(日)、能登キャンパス構想推進協議会、および能登「里山里海マイスター」育成プログラム主催により、能登の世界発信プロジェクト「国際GIAHSセミナー」が開催されました。いきものマイスターは、講義としてこのセミナーを聴講しましたので、ここで報告致します。
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能登の里山里海は、生物多様性に根差した農業と伝統を伝える存在であることを認められたことにより、2011年6月に国連食糧農業機関(FAO)により、GIAHS(世界農業遺産、Globally Important Agricultural Heritage Systems)に認定を受けました。一方、能登の過疎高齢化と人口減少は今も進行しており、現実は厳しいものです。
今回のセミナーではこうした現状を踏まえた上で、GIAHS認定を活用した能登の里山里海の活用および発展について議論を行う為に、国内外の研究者や専門家を招き、開催されたものです。初日である1月14日は金沢市文化ホールでのセミナーを開き、2日目と3日目には能登各地の先進事例を視察して回る能登エクスカーションとなっています。いきものマイスターは、初日のセミナーを聴講しました。

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セミナーでは、里山里海マイスター育成プログラムや、いきものマイスターなどの「金沢大学里山里海プロジェクト」の研究代表を務める金沢大学の中村浩二教授による挨拶の後、研究者や専門家による発表がありました。フィリピン大学のInocencio Buot教授、Sylvano Mahiwo教授はフィリピンのルソン島北部の山岳地帯に広がるGIAHS登録地、イフガオの棚田の事例について紹介されました。
イフガオの棚田は海抜1000mの高地の見事な景観を利用して形成され、世界遺産にも登録されている場所です。イフガオの棚田は農業のみならず、神話や儀式、伝統技術、共同体など、地域の文化を長らく2000年近く支えてきました。多くの世界遺産や文化遺産と異なり為政者や有力者ではなく、民衆が自らの為に作り上げた世界遺産であるとしてSylvano Mahiwo教授は説明されました。その一方で若い担い手の不足、行事や伝統の衰退など、今日のイフガオにおける問題について説明を行われました。
他には、能登と同時にGIAHSに認定された佐渡市の前市長の高野宏一郎氏、ハンバーグレストラン「びっくりドンキー」を経営する、株式会社アレフの橋部佳紀氏、国連大学サステナビリティと平和研究所の永田明氏などによる発表がありました。高野氏は、1601年頃に金山が発見されて以来、金山と共に町や農村が発展したことにより山地に至るまでの農地が形成された佐渡市の背景などに触れ、トキと共存する佐渡の里山についてのお話をしました。アレフの橋部佳紀氏は、アレフが行う「ふゆみずたんぼプロジェクト」による食の安全、全店舗における省農薬米と呼ばれる農薬使用を控えた米の使用、ふゆみずたんぼでの生き物調査などについての取り組みを紹介されると共に、ふゆみずたんぼプロジェクトを伝える為に製作された、ふゆみずたんぼのうた「ふゆみずタンゴ」の映像を披露して下さいました。ふゆみずタンゴは、いきものマイスターの受講生からも、親しみやすいと好評でした。

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最後に、中村浩二教授、Inocencio Buot教授(フィリピン大学)、Sylvano Mahiwo教授(フィリピン大学)、Anke Höltermann氏(ドイツ連邦環境省自然保護庁森林担当官)、香坂玲准教授(金沢)、高野宏一郎氏(前佐渡市長)によるパネルディスカッションが行われました。パネルディスカッションでは、GIAHS推進の為のイニシアティブ担い手について、過疎高齢化と米の需要減少という現状について、大学が果たす役割について、様々な討論が行われました。

パネルディスカッションを終え、この日のセミナーは終了です。受講生の皆様にも、世界的に取り組まれている生物多様性の保全と活用事例について、考える機会となったことと思います。能登からかけつけたスタッフおよび受講生は、片道2時間以上をかけて帰宅です。参加された皆様、朝早くから夕方までの聴講、大変お疲れ様でした。
保全林の生物多様性 [2012年05月25日(Fri)]
能登いきものマイスター養成事業の母体の1つである、「NPO法人能登半島おらっちゃの里山里海」は、保全林と呼ばれる雑木林を管理しています。この保全林は、いきものマイスターの野外実習でも、利用しています。3期生の皆さんにも、実習で保全林を見て貰いたいと思います。
雑木林の樹木や落ち葉は、かつては貴重な燃料や材木として利用されていました。適度な伐採は樹木の世代交代による林の若返りを促進します。地掻きにより適度に片づけられた地面には、食用となるキノコも生えます。しかし里山資源に依存しない今日では、こうした雑木林が放置されています。放置された雑木林では、伐採されず老木化した樹木が過密にひしめき合って光も差さない為、動植物にとって棲み辛い環境になります。
NPOおらっちゃが管理する保全林も、かつては放置されて荒れていましたが、今ではNPOおらっちゃのボランティア「里山里海メイト」らと共に保全活動に取り組み、間伐や地掻きに励んだ結果、生き物豊かな雑木林として再生されました。保全だけではなく、資源としての利用も行われています。伐採した樹木の薪としての利用や、椎茸の原木栽培など、かつての里山でごく普通に行われていた取り組みも行われています。
保全作業20120414_188_01_01.JPG


実習の為、またお客様を案内する為に私達は何度も保全林を訪れていますが、今でも訪れるたびに、新たな発見に驚かされています。保全林にはアカマツを始め、ヒサカキ、ヒノキアスナロ(石川県の県木。能登では、アテと呼ばれる。)、コシアブラ、スダジイ、カシワ、ウワミズザクラ、ネズ(別名、ネズミサシ)、アケビなどの樹木が見られます。野草ではタチツボスミレ、シュンラン、ノミノフスマ、ミソハギ、オオバノトンボソウ、ニガナ、エゾタンポポなどに加え、山菜として利用されるタラノキ(タラノメ)、オオバギボウシ、ワラビ、ゼンマイ、イタドリ、フキなどが見られます。勿論、こうした植物はほんの一部にすぎません。先日、保全林で植物の調査を行ったところ、約120種の植物が確認されました。これから季節ごとに調査を行えば、更に多くの種の植物が観察されるのではないかと、期待も高まります。
エノキタケ保全林20111112_724.JPG

キノコとしては、珍しいソライロタケを始め、地域ではホウキタケ、ヌメリイグチ、ホコリタケ、トキイロラッパタケ、テングタケ、シロオニタケ、アカヤマドリ、エノキタケなどが見られます。野生のエノキタケはスーパーで販売されるものとは全く異なる姿をしており、初めて見る人はよく驚いています。

保全林の水溜り20120512_137_01_01.JPG

豊富なのは植物だけではありません。魚を主食とする猛禽類であるミサゴを始め、シジュウカラ、メジロなど野鳥が時折見られます。保全林の内側には窪んだ箇所があり、小さな水溜りになっています。この水溜りは周囲に降り注いだ雨水だけが頼りの不安定な水溜りであり、その水位は非常に不安定です。一見、生き物の利用に向いていないような水溜りですが、成体が林内で生活する両生類や、暗く小規模な水溜りを好む水生昆虫などにとっては、そうでもないようです。春先にはクロサンショウウオ、ヤマアカガエル、アズマヒキガエルなどが産卵に訪れます。これらの種の成体は水場を離れて生活しており、ヤマアカガエル成体は保全林の林内で、クロサンショウウオ成体は保全林の土の中から見つかっています。保全林はこうした両生類の、格好の棲み場所となっているようです。
水生昆虫としては、クロズマメゲンゴロウ、コセアカアメンボ、マツモムシ、サラサヤンマなどが見られます。コセアカアメンボは溜め池などの開放的な水環境にも出現しますが薄暗い環境を好むとも言われています。この水溜りばかりではなく、保全林内の轍に出来た水溜りにまで棲みついています。サラサヤンマ幼虫は、一見しただけでは水があるかどうかすらわからないような、極めて不安定な湿地や水溜りで生活しているとされていますが、未だにその生態は不明であり、幼虫の発見は極めて困難です。サラサヤンマ成虫は保全林周辺や味噌池ビオトープなど、珠洲市内では成虫が確認されていましたが、その幼虫が保全林で生育していたことが判明したのは、非常に興味深いことです。
こうした両生類は繁殖期に水域に集まり、水生昆虫は水域間を飛んで移動しています。こうした小動物が、林の奥に出来た、こんな小さな水溜りをどうやって見つけているのか、不思議なものです。一見なんでもない水溜りでも、保全林の生き物にとっては大切な棲み場所になっているようです。

クロサンショウウオ卵 上野ビオ120301_00_01.JPG

クロサンショウウオの卵嚢です。石川県には広く生息しており、春先にはあちこちの溜め池や沼地で親と卵嚢が見られます。

サラサ抜け殻 保全林_20120517_169_01.JPG

サラサヤンマの抜け殻です。一度見つけたものを撮影しやすい場所に置いたものですので、実際の羽化の仕方とは違うことをご注意下さい。

保全林は農業用の溜め池に隣接しています。その溜め池ではサンショウモやイヌタヌキモなどの水生植物、更にクサガメやゲンゴロウ類、ギンヤンマ、キイトトンボなどが見られます。保全林の周囲には他にも多くの溜め池が広がり、水生昆虫を始めとした貴重な里山の生き物が多く見られます。その一方で荒れた里山も少なくありません。
能登の里山によって育まれた生物多様性が地域の生活を支えてきたことを通じて、里山の生き物と私達の関係、そして能登の里山の大切さを是非、いきものマイスターの皆さんには学んで頂きたいと考えています。まだ始まったばかりの2012年度ですが、どうか宜しくお願いします。
1月21日の講義:生物多様性について、など [2012年01月24日(Tue)]
1月21日(土)に、2012年最初の講義を行いました。今回の講義は、以下の通りです。

1. いきものマイスターが地域の生物多様性を理解し、それを伝える意義と、その方法
2. 「能登のいきもの大図鑑」を使った実習
3. いきものマイスター写真展についてのディスカッション
4. 修了課題指導

1. いきものマイスターが地域の生物多様性を理解し、それを伝える意義と、その方法
最初の講義では、生物多様性についての説明を行い、その上で生物多様性の活用方法とその実例、生物多様性の調査とそのフィードバックについての説明を行いました。
1) 生物多様性とは?
生物多様性とは多種多様な生き物がそこにいることを示す言葉ですが、一口に「多種多様な生き物」といっても、その意味は様々です。この講義の始めにまず、生物多様性国家戦略で挙げられる「種の多様性」「生態系の多様性」「遺伝子の多様性」についての説明を行いました。
2) 生物多様性を巡る現状
今日、生物多様性は大きな危機を迎えています。現在知られているだけでも過去5億年ほどの間に5回の大きな大量絶滅が起きたことが知られていますが、現在起きている絶滅は過去の絶滅を上回るペースで進行しており、現在では1年に約4万種が地球上で絶滅しているとも言われています。過去の絶滅は自然現象に起因するものですが、現在進行している絶滅は人間活動に起因するものと考えられています(鷲谷 2010)。
こうした生物多様性への危機は、新・生物多様性国家戦略により「日本における生物多様性3つの危機」として、「人間活動や開発による危機」「人間活動の縮小による危機」(里山の荒廃など)「人間により持ち込まれたものによる危機」(外来種など)の3つに纏められています。一方、私達の生活は生態系サービス(生態系や生物多様性に由来する、人類の利益となる機能)に支えられています。この生物多様性を保全する動きは世界的には「生物の多様性に関する条約」として、日本国内では「生物多様性国家戦略」「生物多様性基本法」、地域的には「生物多様性地域戦略」として纏められています。
3) 地域における生物多様性と、保全や活用の取り組み
「生物多様性地域戦略」では各地方自治体による保全への取り組みが言及されています。また、各地では市民や自治体による地域の生物多様性調査や保全、環境教育、農産物ブランド化の為の生物多様性利用の取り組みが行われています。こうした流れを説明した上で、いきものマイスターが地域の生物多様性を理解してそれを伝える意味を説明しました。
4) 生物多様性を調べる方法
地域の生物多様性を伝えるには、まずそれを調べる必要があります。この項目では、生き物の調べ方(何を目的に、いつ、どのような方法で、どの生き物を対象にするか?)について触れた上で、どのような資料をどう使うかを説明しました。
5) 調べた結果からわかること
先の項目で述べた生き物の調べ方から判明した情報をいかに活用するかについて、説明を行いました。2011年11月に日本自然保護協会の高川氏を招いた講義でもあったように、この過程では「知る(保全状態の確認、データ蓄積)」「アクション(結果から保全計画を立て、実施)」「体制作り」「根本原因への対応」という流れを説明しました。
6) まとめ
1)では3段階の生物多様性についての説明を行いました。2)では「3つの危機」を元に今日の生物多様性が抱える危機と保全の為の動きを説明しました。3)では市民が生物多様性を保全してそれを地域の為に活用する方法について触れました。4)では地域の生き物の調べ方を説明しました。5)ではその調査結果を地域にフィードバックする方法を説明し、6)でまとめを行いました。

2. 「能登のいきもの大図鑑」を使った実習
最初の講義では、いきものマイスターが生物多様性を理解して伝えることの意義と、その為にも生き物の見分けをして説明することの必要性を説明しました。この講義ではそれを踏まえた上で、能登いきものマイスター養成事業が今年度に作成した「能登のいきもの大図鑑2カエル編」の使用方法についての講義を行いました。
季節的には実物のカエルを準備出来ませんので、代わりに受講生にはカエルの写真を見て貰いながら、実際に「能登のいきもの大図鑑」を見て種類を判別して貰いました。更に、昨年度に作成したゲンゴロウ編も使って、ゲンゴロウの判別をして貰いました。こちらは自然学校で飼育中のゲンゴロウを使っての講義です。初めてゲンゴロウを見る受講生もいて、その大きさや姿に驚きの様子でした。

3. いきものマイスター写真展についてのディスカッション
いきものマイスターは昨年の3月に、能登の自然を伝えることをテーマに写真展を実施しました。今年度も同様の写真展を3月に予定しています。今回は事前に、受講生が今までに撮り貯めてきた写真の中から写真展に使ってみたい写真を準備して貰いました。また、写真選出の参考にする為に、昨年度の写真展で使用した写真の一部を見て貰いました。
受講生の1人は主に近所で見つけた生き物の写真や風景の写真を用意しました。特に身近な小鳥が多く、ご本人の自然に対する視線が伝わってきます。
もう1人の受講生は、ご自身が強く興味を持っている農業に関する写真を用意しました。特に羽咋市で見られる自然栽培という環境配慮型農業を行っている水田と、その水田周辺で見られた生き物の写真を選んでいました。生き物の写真としては、水田で見られたカエル類、トンボ類、クモ類、ササキリの仲間などがありました。中には、水田で偶然撮影した病気の稲など、農業の大変さを伝える写真も混じっていました。こうした写真の価値は、本人だけではなく、何人かで見て色んな意見が出て初めてわかるものです。



4. 修了課題指導
いきものマイスターは、各自が作成した修了課題論文を提出し、それを発表会で発表して修了となります。受講生の1人は漆器に見る生物多様性をテーマにしています。もう1人の受講生は羽咋で実施される環境配慮型農業「自然栽培」水田の生物多様性を一般人が調べて伝える課題について相談をしました。

今後はいきものマイスターの写真展、更に年度末には修了課題提出と報告会があります。今年度のいきものマイスターも残り僅かとなりましたが、最後まで気を抜かずに頑張りましょう。
映画「降りてゆく生き方」上映会が羽咋でありました [2011年10月25日(Tue)]
10月22日(土)、石川県羽咋市で映画「降りてゆく生き方」の上映会がありました。この映画は、「奇跡のリンゴ」や自然栽培の提唱で知られる木村秋則氏、「醗酵道」で注目を集める「寺田本家」の寺田啓佐氏など200人に及ぶインダビューを通じ、現代的で物質的な生き方とは異なった、出世や栄誉、経済的成功といった物差しでは測れない生き方をテーマにした映画です。この作品は通常の映画とは異なり各地での自主的な上映会でのみ公開されています。2009年に制作されて以来、口コミのみで特別な宣伝もなく上映会という形のみで地道に上映が行われてきましたが、その内容とメッセージが話題を呼び、既に全国300会場以上で上映会が行われています。今後も一般の映画館での上映、テレビ化、DVD化の予定はない、貴重な映画です。



今回の上映会は、羽咋市とJAはくいが共同で実施する「自然栽培実践塾」塾生らにより企画されました。映画の中では架空の地方都市と田園地帯を舞台に、主人公(武田鉄矢氏)が、そこで出会う人々を通じ、物質的な成功とは異なる生き方に出会います。里山と地域が抱える問題、更には人里と野生動物の問題、農業や酒造りの描写を通じたメッセージなど、自然栽培塾がテーマとする「土中微生物から昆虫・魚類・鳥類に至るまで本来在るべき姿へ取り戻すこと」による農業の活性化に通じるものがあるのでしょう。
尚、今回の塾生にはいきものマイスター2期生の1人が参加しています。その受講生の研究課題である、自然栽培(木村秋則氏が提唱する環境配慮型農法)による水田の生物多様性の評価方法の一環として、アンケートを行いました。


上映会にはおよそ200人が来場しました。殆どは石川県内からの来場者ですが、中には福井、愛知、東京から駆け付けた来場者もいました。映画の冒頭では、映画製作のプロデューサーらからの舞台挨拶、更にはこの映画の製作経緯について、メイキングを交えて説明を行いました。今回のような小規模な上映会にも製作者が駆けつけ、舞台挨拶や解説までこなす辺りは、非常に小回りの利く作品と言えるでしょう。


映画終了後も、製作者らは会場の片づけをしながら、来場者らとお話をしていました。この後、映画製作者らから製作にまつわるエピソードなどを幾つかお聞きすることが出来ました。多くのスタッフには映画製作の経験が殆どなかったことや、会場にDVDだけを送付すれば簡単なところを、手間暇かけて来場者と直にお話を出来る上映会というスタイルを取っていること、製作に当たって新潟に2年ほど住み込んだ話などを聞くことが出来ました。
自然栽培を含む今日の環境配慮型農業には、環境配慮や無農薬栽培などと共に、生産者の顔が見えることに対する安心感や親近感も生まれます。今回の「降りてゆく生き方」も、製作者の顔が見え、直接お話が出来るという意味では、共通するものがあります。
理念を重んじ、製作者と来場者の距離感を意識した上映会を行う「降りてゆく生き方」の手法は、娯楽性や商業的成功に重きを置いた従来の映画製作とは異なる、新たな映画作りの可能性を秘めているのではないでしょうか?
河川の生き物調査体験 [2011年10月14日(Fri)]
10月11日(火)、珠洲市立上戸小学校の自然体験授業の講師をしました。

今回の体験授業は、環境省と国土交通省が発行する「川のいきものを調べよう」という資料に基づき、川で採集された生き物から川の水質を調べ、川の水質を調べる体験です。この資料及び調査方法は、環境省及び国土交通省のホームページでも公開されており、この方法によって全国の小学校などによる河川の調査が行われています。


同じ河川でも、環境が異なればそこに棲む生き物も異なります。流れの速さや水温、深さや周囲からの流入物によって環境は変わり、水質も影響を受けるでしょう。水が滞っていたり、汚染物質が流れ込む川では水の汚れに敏感な生き物は棲めず、汚染に強い生き物だけが棲むようになります。そこで、河川に棲む生き物を水質の指標にしようというのが、この「川の生きものを調べよう」の趣旨というわけです。

ちなみにこの「川の生きものを調べよう」で指標とされているのは、カワゲラ幼虫、カゲロウ幼虫、サワガニ、エビ類、タニシなどの水生昆虫や節足動物、巻貝などです。魚のような動きが早く捕まえるのが難しい生き物ではなく、石の下や川底から簡単に採れる生き物を指標にしているので、小学校の授業にも適しています。
生きものの見分けには、こちらの下敷きを使います。下敷きには「きれいな水」「少しきたない水」「きたない水」「大変きたない水」の4つのグループがあり、そこに各種の生き物が振り分けられています。たとえば、水の汚れに敏感な為に「きれいな水」にグループ分けされたサワガニやヘビトンボ幼虫が採れれば、その川の水質は良いということになります。水の汚れに強い子為に「大変きたない水」にグループ分けされたアメリカザリガニやサカマキガイなどが採れれば、その川の水質は悪い、ということになります。

今回参加してくれたのは、上戸小学校の5・6年生27人と先生4人です。上戸小学校は珠洲市の中心街である飯田に隣接する上戸町の、海沿いの住宅地の中にあります。海岸沿いは住宅地と市街地に占められていますが、町はずれには田園地帯が広がります。


竹中川は3km程の小さな川です。調査ポイントは、河口から少し登った林道の脇の流域を設定しました。早速、川に降りてみんなで生き物を探します。
探す場所によって、採れる生き物も違います。石の下からはカゲロウ幼虫やカワゲラ幼虫、砂の中や草の根元からはトンボ幼虫などが採集されました。


これは、コオニヤンマ幼虫です。判別用の下敷きでは「すこしきたない水」に分類されています。砂の中や石の下によく潜り込んでいます。オニヤンマと混同されやすいのですが、実はサナエトンボ科といって、オニヤンマとは別の仲間のトンボです。
成虫はオニヤンマを1回り小さくしたくらいのトンボですが、体調のわりに顔が小さめです。



これはヒラタカゲロウ類の幼虫です。判別用の下敷きでは「きれいな水」に分類されています。この仲間は似た種類が多く、判別はちょっと難しいです。



一通り採集を行った後は、生きもの判別用の下敷きを使い、採集された生き物を照合してみます。「きれいな水」の指標種として、カワゲラ幼虫、ヘビトンボ幼虫などが採集された他、「少しきたない水」の指標種であるカワニナ、コオニヤンマ幼虫などが採集されました。尚、今回の調査地点というのは河口から2km程度の地点です。通常の河川であれば下流域であることが多いのですが、珠洲は高い山が存在しないことに加え、すぐに海に到達します。その為に珠洲の河川は他の地域に比べて小規模な河川が多く、河口付近であっても通常の河川の中流や上流のように流れが速い清流が多く見られます。更にこの日には、校長先生がウグイとヤマメを釣り上げて、見せてくれました。
他にも、今回の調査体験では資料には掲載されていないコヤマトンボ幼虫、オニヤンマ幼虫、コシボソヤンマ幼虫、シマアメンボ、オナガミズスマシが見られた他、本来なら水田や溜め池で見られるオオコオイムシ、オオヒメゲンゴロウ、ヒメゲンゴロウなどが見られました。オオコオイムシは川の淀みで、ヒメゲンゴロウとオオヒメゲンゴロウは川の脇に水路に溜まった水から採集されました。この時期は水田の水が抜かれることにより、水田で過ごした水生昆虫は周囲の水域に分散します。オオコオイムシは、落水した水田から別の水域を求めて移動した際に、川に迷い込んだのかもしれません。


今回の体験授業では主に、「きれいな水」と「少しきたない水」の指標となる生き物が採れました。これだけで川の水質を完全に判定することは出来ませんが、比較的市街地に近い河口付近でも、水の汚れに敏感な生き物が棲む河川が残されているというのは、地域にとって非常に良い結果です。最近では珠洲のような里山の豊富な地域の子供も野山で遊ばなくなり、生き物に触れることも少なくなったと言います。これを機に、もっと自然と触れ合い、能登の自然の豊かさに気付いて貰えれば、と思います。
いしかわ環境フェア2011/いしかわの里山里海展 [2011年08月24日(Wed)]
8月20日(土)

8月20日(土)、21日(日)の2日間にわたり、金沢市の産業展示館4号館で、いしかわ環境フェア2011/いしかわの里山里海展が開催されました。詳しくは、こちらのパンフレットをご覧下さい。

いきものマイスターの実施母体であるNPO法人能登半島おらっちゃの里山里海も、県内のNPO団体やボランティア団体のブース「NPOフェスタ出会いの広場2011」に出展しましたのでここで報告します。


私達は、NPOおらっちゃが珠洲を中心とした奥能登の里山で取り組む保全や自然体験、研究活動についての紹介を行いました。更に私達の活動を伝える為、昨年度の写真展で展示したパネルやNPOおらっちゃの絵葉書などを持ち込んだ他、生きたゲンゴロウの水槽展示を行いました。本物のゲンゴロウのインパクトは強かったようです。特に親子連れがよく足を止めて、珍しそうにゲンゴロウを眺めていきます。見学者の殆どはゲンゴロウを見たことがないと言います。現代人の生活がいかに里山の暮らしから遠のいていることを実感させられます。
私達の活動で、少しでも里山の営みとその保全のことを伝えていきたいものです。

私達の活動紹介の合間を縫って、他団体のブースも見学してきましたので、ここで紹介します。
穴水町、羽咋市、輪島市、珠洲市など各市町は、地域の特産品の紹介と販売を行っていました。輪島市はサザエやアワビといった地域の海産物を水槽で展示し、更に地物のワカメやカボチャなどを販売していました。


珠洲市は外浦にある奥能登塩田村で今も行われている、揚げ浜塩田による伝統的な製塩方法を紹介すると共に、塩田村の名産品であるしおサイダーや揚げ浜塩田製の塩を販売していました。


体験コーナーではいしかわ自然学校のインストラクターによる指導の元、竹笛作りや蜜蝋による蝋燭作りなどが行われました。いずれも大盛況です、常に子供の姿が絶えません。子供達にとってはこうやって体を動かすのが一番のようです。


白山自然保護センターは、白山で見られる動物の紹介をしていました。骨格標本による生き物当てクイズが、好評のようです。更には、白山で見られるニホンザルやテン、アナグマなどの剥製を展示していました。


こちらは、津幡高校が取り組む朱鷺サポート隊の展示です。河北潟や水田で採れた生き物を、泥や植物ごと持ち込み、会場に田んぼの生き物の世界を再現してしまう高校生達のパワーには脱帽です。ここでは朱鷺サポート隊による生き物リストが配られ、このミニ水田で生き物探し体験が出来ます。会場では親子連れが網を振るい、普段見ない生き物に興味津々の様子でした。

企業ブースでは最新技術によるエコへの取り組みが紹介されていましたが、時流を反映してか、節電に関する発表が多かったのも、特徴でした。3月に起きた震災現場への救援の様子を展示したブースもありました。東北の震災がいかに私達の自然災害に対する意識を一変させたかを伺わせる展示だったと言えましょう。


スケジュールの都合もあり、私達は初日のみの参加となり、2日目は展示のみを残していきました。今回の里山フェアでは、石川県内での保全活動や環境対策の集大成ともいえる展示内容になりました。私達も自分達の活動をPRするだけではなく、他団体の活動に触れることは大変良い刺激となりました。
次の土曜日、8月27日は白山で山笑いの見学です。奥能登を離れ、他団体の活動を直に眺めることは、私達にとっても大変良い勉強になることでしょう。実に楽しみですね。
国際生物多様性年クロージングイベント [2010年12月24日(Fri)]

この2010年は、国連の定めた生物多様性年です。今年10月には名古屋で開催されたCOP10が注目を集め、今までになく「生物多様性」という言葉が飛び交う1年となりました。
その2010年もあと数日で終わりです。国際生物多様性年の締めを務めるクロージングイベントが12月18日・19日、金沢で行われました。
18日は各国代表や国連機関関係者らの参加による記念式典など公式の行事でしたが、19日には一般公開の「地球いきもの広場」が同時開催されました。
会場では金沢大学、JICA北陸、いしかわ自然学校、春蘭の里実行委員会など県内での保全や地域問題に取り組む団体が、展示を行いました。

地球いきもの広場



私達は体験・展示ブースで、奥能登での保全活動を紹介する資料を持参して参加しました。今回、私達が紹介したのは奥能登でのビオトープによる保全活動です。

石川県は、県土の6割を里山が占める自然豊かな地域です。ゲンゴロウ・トンボ・カエルなど身近なものとして、日本人に親しまれてきた生き物の多くは、里山に棲んでいます。一方で、今日の過疎高齢化による里山の放棄は相次ぎ、またエネルギー事情や食料事情の変化は人々の暮らしを一変させ、里山は荒廃の一途を辿りました。
こうした里山と保全の問題に取り組む為に、私達は奥能登の耕作放棄地からビオトープ水田を創出しました。


創出したビオトープにはゲンゴロウ・トンボ・カエル、水生植物など貴重な里山の生き物が多数定着し、ビオトープは一定の効果を挙げました。一方で、多くのビオトープはボランティアを中心に運営されており、このビオトープも例外ではありません。この効果を持続させる為には、ボランティアだけでは限界があります。

そこで私達は、ボランティアだけに頼らずビオトープによる保全活動を継続する為の取り組みを考えました。その取り組みの一環として、今年はビオトープの一部にクワイを植えつけ、12月に収穫を行いました。
クワイ

クワイは水田雑草であるオモダカの栽培品種です。「芽が出る」ことから茎塊が縁起物としておせち料理の煮物などに利用されることから、特に11〜12月に市場に出回ります。全国的には広島県福山市、埼玉県越谷市などが有名です。石川県では羽咋市神子原が産地として知られ、更に加賀野菜15品目の1つともされています。
クワイやオモダカなど、内部がスポンジ状の茎は大型ゲンゴロウ類の産卵場所として利用されます。そこで、クワイの栽培による大型ゲンゴロウの保全と作物収穫による一石二鳥効果が、今回のクワイ栽培の狙いです。
クワイによる保全を視覚的に訴える意味も込め、会場には水槽を置いて生きたゲンゴロウを展示し、更に前日に収穫したばかりのクワイを用意しました。今では滅多に見ることのないゲンゴロウに足を止めて下さる方も大勢いました。更に、私達の保全の取り組みへの寄付を募り、応じて下さった方には袋詰めにしたクワイをお持ち帰りして頂きました。お陰様で寄付は16170円集まり、クワイも全て配ることが出来ました。
試行錯誤しながら初の試みということもあり、今回のクワイの収穫量は100個程度と決して多いものではありませんが、今後も私達は更にクワイの栽培を続け、更に放牧の場として、または地域住民らによる観察会の場として、ビオトープの積極的な活用を推進しています。今後はクワイを始めとしたビオトープの保全と持続的利用を軌道に乗せ、地域に貢献することが私達の目指すところです。


「国際生物多様性年」と定められた2010年は間もなく終わります。
しかし保全と環境問題に対する取り組みは未だ発展途上であり、まだ何も終わっていません。私達は2011年も更に里山保全の問題に取り組んでいきたいと願っております。

では皆様もどうか、良いお年を。
本の紹介(1)田んぼの生き物図鑑(内山りゅう) [2010年11月19日(Fri)]
私達「いきものマイスター」が活動する石川県は、県土の6割を里山が占める緑豊かな土地であり、同時に伝統的な里山の文化が育まれてきた土地です。
里山の文化と共に、里山の生き物について私達は、より良く知る必要があるでしょう。
間もなくフィールドワークの難しい冬を迎えます。手に取って自然を体験するには向きませんが、暖を取りながら読書に親しみ、次の春に向けて生き物の知識を蓄えるのもいいかもしれません。まずは最も身近な里山の1つである田んぼの生き物について、参考資料を紹介したいと思います。

「田んぼの生き物図鑑」(内山りゅう著、山と渓谷社)

米は日本人の食卓に最も欠かせないものであり、田んぼは最も馴染み深い里山の景観です。本書は導入部分で、人の働きかけにより維持される田んぼの特性について詳しく解説しています。1年の耕作スケジュールの中で、田んぼでは様々な作業が行われます。「田起こし」や「代掻き」により田んぼの表面は掘り返され、水管理によって水の増減が繰り返されます。秋に水を落とした後は、翌春まで陸域となります。変化の少ない環境では競争力の強い生き物(優先種)ばかりが生き残りますが、田んぼのような不安定で変化の多い環境では、競争力に関わらず多くの生き物が共存出来ます。
田んぼの生き物の多くがこうした耕作スケジュールに上手く適応し、その結果として田んぼで里山生物の多様性が保たれてきた背景があります。本書はこのような「手つかずの自然」とは大きく異なる田んぼの本質をわかりやすく説明しています。

水田は多様な里山景観に支えられています。多くの水を使う為に、水田は川や溜め池と水路で繋がれており、水田の生き物と、河川や溜め池の生き物は深い関わりを持っています。水田で育ったカエルは陸に上がった後に、水田周辺の森林で過ごす種類も少なくありません。水田を餌場として利用する鳥は、餌取りや子育て、越冬などの為に水田周辺の陸域も利用します。
このように、「水田の生き物」について考えると、その背後には水田を含む里山の広い生態系が見え隠れしており、更にそこには人の暮らしが大きく関わっています。

本書は図鑑と銘打っていますが、読者を飽きさせない写真中心の構成となっています。記述も魚類、爬虫類、両生類、水生昆虫、植物までに至り、入門者から上級者まで楽しみながら学ぶことが出来ます。各生き物については写真と共に詳細な生態解説がなされており、オタマジャクシや魚の見分け方など、野外で役立つ知識も得られるでしょう。ゲンゴロウを撮影する為に足しげく溜め池に通った苦労談など、撮影のエピソードも興味深く、生き物を追うことの大変さや楽しさも伝わってきます。
また暖かくなったら、本書を持って野外に出てみると面白くなるかもしれません。


尚、著者の内山りゅう氏は、「水」に関わる生き物とその環境の撮影をライフワークとする写真家です。

内山りゅう氏ホームページ

本書以外にも、多くの生き物ガイド本に関わっています。これをきっかけに、更なる生き物の世界に入ってみてはいかがでしょうか?
秋のビオトープ [2010年10月22日(Fri)]
「NPO法人おらっちゃの里山里海」が保全活動を行う味噌池ビオトープは休耕田を利用して作られました。僅か5筆程度の面積から始まったビオトープ水田も、その後追加創出を重ね今では5ヘクタールに及ぶ一大湿地にまで成長しました。
http://www.toyama.hokkoku.co.jp/subpage/H20091210103.htm
https://blog.canpan.info/sec/EntryEdit.blog?entryId=12

先日、里山メイト(おらっちゃの保全活動への一般参加者)らとビオトープを観察してきました。2009年度冬に追加創出した箇所は草も生えず丸裸同然でしたが、僅か数ヶ月でこの盛況ぶりです。



ちょっと油断するとビオトープが草で埋もれてしまう始末です。慣れるまでは、調査に来るたびに迷子になったものです(笑)。
ビオトープのあちこちをトンボが飛び交います。これも秋のトンボが目立つようになりました。この日、ネキトンボやリスアカネを目撃しました。画像は、上がネキトンボ♀、下が♂です。






この味噌池ビオトープとその周辺では他にも、シオカラトンボ、ハラビロトンボ、ヨツボシトンボ、ショウジョウトンボ、ギンヤンマ、サラサヤンマ、エゾトンボ、クロイトトンボ、オオイトトンボ、ホソミオツネントンボ、キイトトンボ、モノサシトンボなど多くのトンボが棲んでいます。


ビオトープ内には、コナギ、イボクサ、カンガレイ、サンカクイ、ヘラオモダカ、オモダカなどの湿地性の草が広がります。水田では厄介者とされがちですが、ここではビオトープを豊かにしてくれる大切な立役者です。多くの水生昆虫は植生豊かな場所に集まるからです。その利用方法は様々ですが、ヤゴやゲンゴロウは足場として、また隠れ場所として積極的に水草を利用します。また大型ゲンゴロウ類は水草の柔らかい部分に卵を産み付けます。オモダカ、ヘラオモダカ、カンガレイなどの抽水植物は、水場周辺を飛び交うトンボにとっては大切な休息場所です。(
水中には、キクモやヤナギスブタが豊富に見られます。キクモは石川県(準絶滅危惧)を始め、9つの都道府県で絶滅危惧種に指定されています。ヤナギスブタは石川県では絶滅危惧に入っていませんが、36都道府県で絶滅危惧種に指定される貴重な水草です。
http://www.pref.ishikawa.jp/sizen/reddata/RDB_2010/data/kikumo537.pdf


訪れるたびに新発見の連続で、私達も大変に満足のいく生き物の豊富なビオトープに成長してくれたことは、何よりも嬉しいものです。今後は環境教育や自然体験の場として地域の方達に積極的に提供出来ればと考えています。
奥能登にお越しの際は、是非私達のビオトープにお立ち寄り下さい。











3.パネルディスカッション/4.【報告】石川県生物多様性戦略ビジョンについて [2010年10月14日(Thu)]
3.パネルディスカッション:水と土が育む生きもののつながり 豊かな里山里海を未来へ
鷲谷いづみ
中村浩二(金沢大学学長補佐、環日本海域環境研究センター長、教授)
高橋強(石川県立大学教授)
北風八紘(NPO法人おらっちゃの里山里海理事長・農業法人(有)すえひろ会長)
北村幸一郎(リコージャパン(株)石川支社長室副室長)
コーディネーター:進士五十八(東京農業大学名誉教授)


東京農業大学の進士五十八先生の司会進行によるパネルセッションには、いきものマイスターの運営委員長でもある金沢大学の中村浩二教授、同じく運営委員も務める北風八紘氏(NPO法人おらっちゃの里山里海理事長)らが参加しました。
多様な農業形態が今日の近代化による経済効率重視偏重により失われつつありますが、進士先生は「生物多様性」とは本来農村では知られていたものであり、それに今日の私達の知識がようやく追いついただけだと語ります。
リコーの北村氏は2006年より環境ボランティア活動の一環として里山保全活動に取り組んでいます。ボランティア活動は、最初はバーベキューなど遊びの企画に「少しボランティアもあり」という形で始めたそうですが、今では多くの社員が参加する一大活動にまで成長しました。楽しみ合ってのボランティアということです。この事例での焦点は農村であり、生物多様性は農家・社員・リコーの活動が組み合っての結果というわけです。
「NPO法人おらっちゃの里山里海」会長・いきものマイスター運営委員の北風八紘氏は、珠洲市三崎町に創出した味噌池ビオトープでの取り組みを紹介しました。味噌池ビオトープは休耕田約5ヘクタールをビオトープ化したものです。今までも約2ヘクタールのビオトープ水田を創出することで水生昆虫類を呼び込むことに成功しましたが、今年は更にこのビオトープの一部で牛の放牧による雑草管理の試み、蕎麦栽培の試みなどを行いました。ビオトープというのは庭の片隅サイズの小ぶりなものから、味噌池ビオトープのような大きな公園サイズのもの、更に大規模なものまで大きさは様々です。主に希少水生生物保全の為に機能してきた味噌池ビオトープですが、こうした新たな試みは、広く開放的な圃場から奥まった細い谷戸地など多様な景観を含む味噌池ならではの、多彩な試みといえるでしょう。
尚、味噌池ビオトープについては本ブログでも取り上げていますので、御覧下さい。
進士先生は、生物多様性は決して生き物だけの為ではなく、新たな企業活動や新技術・農法開発という人の為の取り組みであることもまた強調しました。私達のビオトープ活動も有志らの手により運営されていますが、蕎麦の栽培や放牧は農産物生産という休耕地の積極活用の試みでもあります。私達のビオトープが自然観察の場のみならず、持続的土地利用のモデルとなれば、これに勝る喜びはないでしょう。


4.【報告】石川県生物多様性戦略ビジョンについて
丸山利輔(石川県立大学名誉教授・石川県立大学参与・石川県生物多様性戦略ビジョン策定委員会会長)
最後に丸山利輔先生より、石川県生物多様性戦略ビジョンについての話がありました。石川県は県面積の6割を里山エリアが占め、南北両系の生物相を持ち、国内でも最長クラスの海岸線を持つ、生物学的にも貴重な県です。一方でエネルギー革命や産業構造の変化、更に過疎高齢化が地域を圧迫しており、また里山の荒廃が保水能力や災害防止機能の低下を招いている現実もあります。
こうした問題に対し、金沢大学を始めとした学術機関や多くの民間団体が里山保全に取り組んでいます。県内からは7地域を「先駆的里山保全地区」に選出されました。
http://www.biodic.go.jp/biodiversity/roundtable/03/pdf/ishikawa6.pdf
http://www.biodic.go.jp/biodiversity/roundtable/03/pdf/ishikawa7.pdf
石川県らしさを大事にした生物多様性戦略をイメージする為に、石川県では里山里海の景観と生活の保全、農業振興など、里山の利用促進に繋がる方針を打ち出しています。

尚、こちらのリンク先では各県における生物多様性戦略作りについての紹介があり、石川県の事例も紹介されています。
http://www.eic.or.jp/library/pickup/pu080919.html


今回のシンポジウムは著名な先生に加え、多彩な人選によるユニークなディスカッションを聴くことが出来ました。既に生物多様性や環境問題が学者だけの問題ではないことを知る機会であり、生物多様性の最も身近な現場である里山についてを考える良いきっかけになったと思います。反面、私達の周囲では、今回のシンポジウムに関して、目新しさに欠けるとの感想もありました。著名な先生方を迎えての公開ディスカッションという手法にも限界があるのかもしれませんが、こうしたシンポジウムで違いを出すことは難しいでしょう。いきものマイスターならば、今回のような生物多様性、里山についていかに伝えていくべきか?私達にとっても、重要な課題になるでしょう。
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