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2012年度いきものマイスター修了課題発表(2) [2012年05月10日(Thu)]
前回のブログでは、4月28日(土)に実施した、いきものマイスター2期生の修了課題発表会の前半についてお伝えしました。今回は、後半の残り3名の発表についてお伝えします。前半の2名に負けず劣らずの、素晴らしい発表でした。


【発表3】「自然栽培を生物多様性保全の視点からみるためのアプローチ」
発表者は、口能登(能登の入り口とされる、南部)の羽咋市に住んでいます。羽咋市を含む能登の里山里海は2011年に世界農業遺産(GIAHS)に認定された一方で発表者は、地域による農業遺産登録への実感の薄さ、現在も進む過疎高齢化による農業人口の減少、更に安全性に不安を抱えつつ原発に頼らざるを得ない疲弊した羽咋市の現状などに対する危機感、食物の生産現場を描いたドキュメンタリー映画「いのちの食べかた」を観て、食の安全を含めた地域の将来に不安を持っていました。現在では、青森県の農家、木村秋則氏が提唱する無農薬・無施肥の農法「自然栽培」に強い関心を持ち、羽咋を含む能登の地域活性化に繋げたいと考えています。
自然栽培は、無農薬・無施肥を前提とし、植物の特性を活かして管理を行い、収量増加を目指す栽培方法として、現在注目を集めています。羽咋市とJAはくいは2011年に、提唱者の木村秋則氏を塾長に招いた「木村秋則自然栽培実践塾」を開始しました。羽咋市は地域活性化の自然栽培の普及により、安心・安全の国産無施肥・無農薬の販売競争力の強い農産物生産を推進して農業による地域活性化を図っています。また、羽咋市はこの自然栽培を世界農業遺産のアクションプランに盛り込みました。市民の自然栽培に対する認知度も高まっています。自然栽培実践塾生らが実施した映画「降りてゆく生き方」上映会自然栽培に関するアンケートを実施したところ、多くの市民が自然栽培を知っており、農業の現状に対する危機感を持っていることがわかりました。この上映会には食や農業の問題に関心の強い市民が集まった為、一般市民の関心とするには偏っている可能性を挙げつつ、市民の間で自然栽培に対する期待が高まっていることもわかりました。
自然栽培は生物多様性を利用する栽培方法でもありますが、一方で生物多様性との関わりについて科学的な調査はあまり行われていません。そこで発表者は自然栽培を行う水田において、トンボ類、クモ類、カエル類の種数や個体数について調査を行いましたが、調査可能な自然栽培水田の数が少なかったことから、明確な結果は得られませんでした。発表者はこれを踏まえつつ、一般市民である発表者が水田の生き物とその同定技術を獲得する意義を知ったこと、今回の結果を予備調査として今後も自然栽培水田における生物多様性を明らかにする方法と意義を考え、伝えていきたいと今後の展開に言及しました。更に、今後は自然栽培塾生らと結成した任意団体で能登の里山里海保全に繋がる活動をしたいと言及しました。

水田生物調査の結果については、「凄く正直な結果」とのコメントがありました。現在、各地で専門家・非専門家を問わずこうした水田の生き物調査は多く実施されていますが、農法による影響や水田による保全効果を実証するのは容易ではないことから、結果から「何も明らかに出来なかった」ことを明言するのは非常に正直で、意味のあることだと述べました。更に日鷹准教授は自然栽培について、「自然は正直、農薬などを使って病害虫を抑えてしまうと、その圃場で起こっている問題まで見えなくなる」として、自然栽培に取り組む発表者を評価しました。また、調査の続行を勧める助言がありました。

無施肥・無農薬の農業は一般的に自然に優しいとのイメージがありますが、それを証明するのは専門家でも容易ではありません。難しいテーマに挑んだ発表者の姿勢は素晴らしく、今後も自然栽培と水田生物との関係を広く伝えて欲しいものです。


【発表4】能登の雑穀の利用と可能性について
発表者はアースデイの主催や、フェアトレード製品の販売などの取り組みを奥能登で行っています。2011年に能登の里山里海は世界農業遺産に認定されましたが過疎高齢化や農地の荒廃など、課題は少なくありませんが、発表者はアースデイやフェアトレードの取り組みの中で、自身が住む珠洲市の地域の課題、特に里山の荒廃を意識するようになったことから、以前から興味を持っていた雑穀の栽培や利用を発展させる方法を検討しました。
尚、雑穀とは、白米以外で日本人が主食以外に利用している穀物をさします。雑穀はビタミンB群、特にナイアシン、B17、B6、葉酸、カルシウム、鉄分、カリウム、マグネシウム、亜鉛が豊富とされ、近年では健康食品としても注目される他、食物アレルギーの代替食品としても利用されています。
このテーマに取り組む為に発表者は、文献調査、聞き取り調査を行いました。石川県内の雑穀利用やニーズを調査する為、金沢市と珠洲市で雑穀の販売店や雑穀レストランを回り、聞き取り調査を行いました。調査した結果、国内の雑穀栽培の9割は岩手県であり、県内の商店で扱われる雑穀も殆どが岩手県産ですが、2011年3月の震災以降は、石川県内産の雑穀へのニーズも出てきているとのことでした。他に、客層は健康に意識の高い女性が中心ですが客層は固定気味であること、能登ではタカキビなどが栽培されているが殆どが自家消費であり若い世代が雑穀に触れる機会は少ないことがわかりました。
今後の展開としては、発表者が現在主催しているイベントなどでアマランサス(南米産穀物の1種)の栽培体験、発表者の実家の商店での珠洲産雑穀の販売や生産の拡大、雑穀を広める活動(食育活動や料理教室などを通じて)を行うとしました。

審査員からは、雑穀があまり売れていないということに対し、栄養価など情報を伝える努力をすれば売れるようになるのでは、との意見がありました。特定農業法人を経営する審査員は、雑穀はなかなか主役にはならないが、これから商機が増えるのでは、とコメントしました。他に、まず自分の周囲に食べて貰って、雑穀について理解を広めては、との助言や、雑穀というのは地域の風土などの違いの為、地域が異なると栽培方法が通用しない、雑穀栽培の難しさに関するコメントがありました。

雑穀は近年では健康食品として見直されつつありますが、その知名度は決して高くありません。若年層が雑穀に触れる機会は減少している、と発表者が述べているように、ブログ担当の私、野村も今回の発表がなければ、雑穀の現状について知ることはありませんでした。発表者の実家の商店に雑穀コーナーが出来るのが、楽しみです。


【発表5】漆器から見る生物多様性
発表者は、かつて輪島塗関係の事務をしていたことから、輪島塗をテーマに選びました。
輪島塗は全国的にも有名な輪島市の伝統工芸であり、能登の世界農業遺産の1つにも挙げられています。輪島塗の素材や加工に用いられる道具など、多くの過程で生物資源が利用されています。例えば、発表者の調査では、輪島塗製作の過程では利用される生物資源は、動物30種、植物42種に相当することも明らかになりました。輪島塗の木地にはケヤキ、ホウノキ、アテ(ヒノキアスナロ)、キリ、クワ、クリ、イタヤカエデ、ヒノキなど16種の植物が利用されています。他の過程でもマダケ、牛や豚の皮なども利用されます。輪島塗の蒔絵の為に使用される筆の素材には、琵琶湖湖畔産のクマネズミの毛が最適とされていますが、一方で近年はクマネズミの個体数減少、供給者の高齢化などにより素材獲得が困難になっており、輪島塗もまた生物多様性に支えられる伝統工芸であるとも言えます。
これまでに生物多様性の観点から輪島塗を評価した例は少ないことから、発表者は輪島塗を支える生物多様性、生態系サービスを紹介し、輪島塗により生まれた地域の景観や生態系など、人間と自然との相互関係について考察を行いました。更に発表者は、本テーマの研究によって得られた結果を地域の児童や、輪島塗に関わる人々らと共有することで輪島塗の価値向上に繋がると考え、その為に教育機関での教材としての活用や広報について提言を行いました。

審査員からは、中国産漆に押されてしまった背景や、国産の良質な漆の生産など自給の可能性について知りたいとの意見がありました。また、今回のテーマの為に調査にご協力頂いた漆器業者からは、漆が縄文時代から既に人に利用されていたという漆の歴史、更に琵琶湖湖畔産のクマネズミが筆の素材に選ばれた理由などについて解説をして頂きました。

生物多様性が支える地域資源には、地域の農林水産業の他に、こうした伝統工芸や文化も多く含まれます。輪島漆器もまた生物多様性に支えられる事実を伝えることもまた、いきものマイスターにとって重要なテーマといえるでしょう。

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全員の修了課題発表の後、いきものマイスター運営委員会による審査が行われ、無事に全員の修了が決定しました。いよいよ、修了式です。修了式では1期生と同様に、修了証書と共に受講生各自の名前入りベストが贈呈されました。修了生全員でベストを着て、記念撮影です。
2期生の皆さん、大変お疲れ様でした。これからの、皆さんのいきものマイスターとしての活躍に期待大です。3期生の皆さんのこれからも、楽しみです。
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