「湯治場と被災地を結ぶライフカフェプロジェクト」に参加してきました。ライフカフェプロジェクトとは…津波被害が大きかった南三陸町でオープンするカフェ。手作りのお菓子と淹れたてのコーヒー用意してゆっくりとお話しする…。東鳴子のお湯をはった足湯に浸かりながら肩や手のマッサージを。温かい言葉と肌の温もりで支援するプロジェクト。主催するエコツーリズム・ネットワークは都市と農山漁村の往来・交流や環境保全型スポーツイベント企画するエコを専門とした旅行会社です。
〈体験レポート〉女子タビ?!新宿駅西口を約20人乗りのマイクロバスで出発。参加者は総勢21名。うち女性20名で男性は1名…。それにはツアーの内容が関係しているよう。「体力的にガレキ撤去は出来ないけれどカフェなら出来るかと思って…」という40代らしき女性会社員。「テントを貼って自炊するのは親が許してくれなくて。旅館に泊まるのだったら…と説得しました」という女子学生。そうした女子の悩みをうまく受け止めてくれるツアーだったのでしょう。
天ぷらのいい臭い?!このツアーバスの燃料はナント天ぷら油!家庭で使った油などを回収して精製して再利用している。同じくCO2を排出するがCO2を吸収して成長する植物から作られたため、プラスマイナス0と見なされているらしい。排気筒の近くに鼻を近づけてみた。「いい臭い!」という訳にはいかないが確かにあのガソリン臭さは全くしない。まさに走るエコ。
温泉三昧?!他のツアーの行程だと、夜中に出発して車中泊。翌日は朝から作業をしてその日の夕方に帰路につく。という強行軍らしいがこのツアーはチョット違う。
旅館に着いたら抹茶と干菓子でお出迎え。一息ついたら大豆畑へレッツゴー!これは全国で地大豆を植える活動をしているNPO法人トージバが行う「大豆レボリューション」の一環。宿に戻ると今度は温泉タイムが待っていた。まさに極楽気分。夕食は一汁一菜と予告されていたものの岩魚に牛肉。「これって普通の温泉旅行だよね〜。」という疑問の声もチラホラ。どういうことなのでしょう?
からっぽにしていくここ鳴子温泉は11種類の泉質が湧き出す日本屈指の温泉場。周辺の農家さんたちは田植えの後、稲刈り取りの後などの節目で鳴子を訪れては温泉に入り仕事の疲れを癒してきた。湯治を楽しんだのは沿岸部の漁師さんも同じ。お気に入りの湯や宿を見つけては長逗留してきたといいます。
以下は宿主大沼さんの話から。
「被災地の方のお話をお聞きすることになると思います。人のココロも湯のみ茶碗と同じ。新しい湯を入れるには古い湯を捨てなくてはならない。今晩は温泉に入ってゆっくり休んで自分自身をからっぽにして明日に備えてください。」
女川へツアー会社からは「カフェでお渡しするスイーツ(手作りやご当地ものなど)」を持参するようにと言われていましたがスイーツばかりではありませんでした。子供たち用に風船、手品。気分転換になってほしいとアロマオイルなど。テーブルが華やぐようにとフラワーアレンジメントを。本当に「被災者ことを考えて」という想いが反映されているものばかり。女川の街に入ると窓の外の光景が一変し生々しい爪痕に言葉を失ってしまう。
会場の女川第一保育園に到着すると会場設営を開始。キャンプ用の椅子とテーブルで作るカフェスペースと旅館から汲んできた源泉の足湯とマッサージスペース。あえて明確な役割あえて与えられないので、周りを見ながら出来ることを自発的にやっていく。絵が得意な人はメニューを書いたり、力自慢の人は椅子やテーブルを運んだり…。あっという間に準備は整った。
女ごごろ私は自然な流れで足湯スペースの担当に。その中で印象に残る女性がいた。白い肌に赤い口紅、爪に塗られた薄いピンクのマニュキュアと真っ赤なペディキュアが他の女性と違っていたので(ゴメンナサイ!)、「爪きれいにされているんですね。」と話しかけてみる。「地震があってから何日も化粧は一切できなかったわ。そんなこと何十年ぶりかしらね。他人にスッピンを見せるなんて…」と少しずつ言葉が出るようになった。「でも、いつから化粧をするかは本当に迷ったわ。でも一度し始めたら化粧をするのが楽しくてね…」とうっすらと浮かべた涙は今でも私の脳裏から離れない。最後には向けられたカメラに「何だが親子みたいね。」と笑顔を見せてくれました。
誰かと初めて話す時の心地良い緊張感。分かりあえた時の喜び。そんな人との触れ合いの原点に戻れた瞬間でした。
エシカルに過ごすこのライフカフェプロジェクトは月に一度のペースで開催されていますが、仕事をしながら多くのツアーに参加することは難しい面もあります。
でも、あの惨状を目の当たりにして何とかチカラになりたいと願うのも確か。そこで目指したいのは「エシカル(=倫理的、道徳的」な生活」。現地へ行って無償性を伴う直接的なボランティアだけが支援ではない。とにかく長期的支援が必要な状況です。節電もしかり。東北の食材を食べる。お酒を呑む。東北へ旅に出る。何でも構わない。カタチは様々でもいい。無理なく長く出来ることが大切。
次回被災地に行くことがあれば持って行くものを決めた。女性が綺麗になれるもの!メイクやネイル、ヘアケア用品など…。それは3月11日の以前に戻れる「マジック」のようなもの。「そうだ!私ってこうだったよね!」とかつての自分を思い出し自信を取り戻していくことが、明日に向かうエネルギーなるのだと感じてなりません。 (山田祐子)
活動の様子はエコツーリズム・ネットワークのホームページをご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/ecotour/