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本を朗読した音声ファイルを作成しました [2016年07月23日(Sat)]
本を朗読した音声ファイルを作成しました。


 「青空朗読」で朗読を聞くことができますが、「読み手」は人間ですので朗読した音声ファイルを作成するために時間がかかります。
http://aozoraroudoku.jp/

 作成例として、「青空文庫」から「芥川龍之介」の「蜘蛛の糸」の「テキストファイル(ルビあり)」を使用しました。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/92_ruby_164.zip

 「青空文庫」の「テキストファイル(ルビあり)」では、「《》:ルビ」を、次の例のように使用しています。

(例)蓮池《はすいけ》のふち、あたりへ溢《あふ》れて居ります


 『かんたん!AITalk3』を使用して、音声ファイル(WAV)を作成しました。

 『かんたん!AITalk3』のネットページを確認すると、「※本製品は個人利用限定の製品です。業務利用、商用利用はご遠慮ください。」と書いてあります。

 話者は、「かほ」女史です。明瞭性に長けているのが特徴です。設定は初期値のままで使用しました。

 『かんたん!AITalk3』を使用して、「テキストファイル(ルビあり)」の再生声を聞き、次のように独自で設定しました。

1 名詞の場合は、漢字を削除しました。
蓮池《はすいけ》のふち
→《はすいけ》のふち

2 名詞を除く品詞の場合、漢字と「《》」を削除しました。
あたりへ溢《あふ》れて居ります
→あたりへあふれて居ります

3 再生すると発音がおかしくなる場合は、「 」(全角空白)を名詞の前に追加しました。
しかし極楽の《はすいけ》の《はす》は、少しも
→しかし極楽の《はすいけ》の《 はす》は、少しも

 「WAVファイル」のサイズは、26.6 MB (27,983,398 バイト)となりました。


 次のブログを参考にして「WAV→MP3」変換しました。

簡単!iTunesでWAVをMP3に変換する方法
https://digitalfan.jp/15148

iTunes(ver 12.4.2.4)で変換しました。
1 iTunesの設定
「編集」>「設定」から「一般」タブを開きます。
「インポート設定」をクリックします。
「インポート方法」を「MP3エンコーダ」に変更します。「設定」を適切な値にします。
※私のパソコンは、HDDの記憶容量に余裕がありますから、「設定」を「高品質(192 kbps)」にしました。
「OK」をクリックします。

2 iTunesで変換
変換したい「WAVファイル」をiTunes内にドラッグ&ドロップします。
iTunes内の「WAVファイル」を右クリックして、「ファイル」→「変換」→「MP3バージョンを作成」で作成開始です。
「MP3ファイル」を「WAVファイル」と同じフォルダーにコピペします。

 「MP3ファイル」のサイズは、7.26 MB (7,617,860 バイト)となりました。


 つまり、ファイルのサイズは次のように変化しました。

「テキストファイル」のサイズは、8.05 KB (8,250 バイト)
 ↓
「WAVファイル」のサイズは、26.6 MB (27,983,398 バイト)
※iTunesでの再生時間は、10分35秒と表示しました。
 ↓
「MP3ファイル」のサイズは、7.26 MB (7,617,860 バイト)
※iTunesでの再生時間は、10分35秒と表示しました。


**********
《くも》の糸
芥川龍之介




 ある日の事でございます。《おしゃかさま》は極楽の《はすいけ》のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。池の中に咲いている《 はす》の花は、みんな《たま》のようにまっ白で、そのまん中にある《きんいろ》の《ずい》からは、何とも云えないよい《におい》が、たえまなくあたりへあふれて居ります。極楽は丁度朝なのでございましょう。
 やがて《おしゃかさま》はその池のふちにおたたずみになって、水の《おもて》をおおっている《 はす》の葉の間から、ふと下の《ようす》を御覧になりました。この極楽の《はすいけ》の下は、丁度《じごく》の底に当って居りますから、《すいしょう》のような水をすきとおして、《さんず》の河や針の山の景色が、丁度《のぞきめがね》を見るように、はっきりと見えるのでございます。
 するとその地獄の底に、《かんだた》と云う男が一人、ほかの罪人と一しょにうごめいている姿が、御眼に止まりました。この《かんだた》と云う男は、人を殺したり家に火をつけたり、いろいろ悪事を働いた《おおどろぼう》でございますが、それでもたった一つ、善い事を致した覚えがございます。と申しますのは、ある時この男が深い林の中を通りますと、小さな《くも》が一匹、路ばたをはって行くのが見えました。そこで《かんだた》は早速足を挙げて、踏み殺そうと致しましたが、「いや、いや、これも小さいながら、命のあるものに違いない。その命をむやみにとると云う事は、いくら何でも可哀そうだ。」と、こう急に思い返して、とうとうその《くも》を殺さずに助けてやったからでございます。
 《おしゃかさま》は地獄の容子を御覧になりながら、この《かんだた》には《くも》を助けた事があるのを御思い出しになりました。そうしてそれだけの善い事をした《むくい》には、出来るなら、この男を地獄から救い出してやろうと御考えになりました。幸い、かたわらを見ますと、《ひすい》のような色をした《 はす》の葉の上に、極楽の《くも》が一匹、美しい銀色の糸をかけて居ります。《おしゃかさま》はその《くも》の糸をそっと御手に御取りになって、玉のような《しらはす》の間から、遥かしたにある地獄の底へ、まっすぐにそれを御おろしなさいました。



 こちらは地獄の底の血の池で、ほかの罪人と一しょに、浮いたり沈んだりしていた《かんだた》でございます。何しろどちらを見ても、《まっくら》で、たまにその《くらやみ》からぼんやり浮き上っているものがあると思いますと、それは恐しい針の山の針が光るのでございますから、その心細さと云ったらございません。その上あたりは墓の中のようにしんと静まり返って、たまに聞えるものと云っては、ただ罪人がつくかすかな《たんそく》ばかりでございます。これはここへ落ちて来るほどの人間は、もうさまざまな地獄の《せめく》に疲れはてて、《なきごえ》を出す力さえなくなっているのでございましょう。ですからさすが《おおどろぼう》の《かんだた》も、やはり血の池の血にむせびながら、まるで死にかかった《かわず》のように、ただもがいてばかり居りました。
 ところがある時の事でございます。なにげなく《かんだた》が頭を挙げて、血の池の空を眺めますと、そのひっそりとした《やみ》の中を、遠い遠い天上から、銀色の《くも》の糸が、まるで人目にかかるのを恐れるように、一すじ細く光りながら、するすると自分の《うえ》へ垂れて参るのではございませんか。《かんだた》はこれを見ると、思わず手をうって喜びました。この糸にすがりついて、どこまでものぼって行けば、きっと地獄からぬけ出せるのに相違ございません。いや、うまく行くと、極楽へはいる事さえも出来ましょう。そうすれば、もう針の山へ追い上げられる事もなくなれば、血の池に沈められる事もある筈はございません。
 こう思いましたから《かんだた》は、早速その《くも》の糸を両手でしっかりとつかみながら、一生懸命に上へ上へとたぐりのぼり始めました。元より《おおどろぼう》の事でございますから、こう云う事には昔から、慣れ切っているのでございます。
 しかし地獄と極楽との間は、何万里となくございますから、いくらあせって見た所で、容易に上へは出られません。ややしばらくのぼるうちに、とうとう《かんだた》もくたびれて、もうひとたぐりも上の方へはのぼれなくなってしまいました。そこで仕方がございませんから、まず一休み休むつもりで、糸の中途にぶらさがりながら、遥かに目の下を見下しました。
 すると、一生懸命にのぼった甲斐があって、さっきまで自分がいた血の池は、今ではもう《やみ》の底にいつの間にかかくれて居ります。それからあのぼんやり光っている恐しい針の山も、足の下になってしまいました。この分でのぼって行けば、地獄からぬけ出すのも、存外わけがないかも知れません。《かんだた》は両手を《くも》の糸にからみながら、ここへ来てから何年にも出した事のない声で、「しめた。しめた。」と笑いました。ところがふと気がつきますと、《くも》の糸の下の方には、かずかぎりもない罪人たちが、自分ののぼった後をつけて、まるで《あり》の行列のように、やはり上へ上へ一心によじのぼって来るではございませんか。《かんだた》はこれを見ると、驚いたのと恐しいのとで、しばらくはただ、《ばか》のように大きな口をあいたまま、眼ばかり動かして居りました。自分一人でさえきれそうな、この細い《くも》の糸が、どうしてあれだけの《にんず》の重みに堪える事が出来ましょう。もし万一途中できれたと致しましたら、折角ここへまでのぼって来たこの《かんじん》な自分までも、元の地獄へさかおとしに落ちてしまわなければなりません。そんな事があったら、大変でございます。が、そう云う中にも、罪人たちは何百となく何千となく、まっくらな血の池の底から、うようよとはいあがって、細く光っている《くも》の糸を、一列になりながら、せっせとのぼって参ります。今のうちにどうかしなければ、糸はまん中から二つにきれて、落ちてしまうのに違いありません。
 そこで《かんだた》は大きな声を出して、「こら、罪人ども。この《くも》の糸は《おれ》のものだぞ。お前たちは一体誰にきいて、のぼって来た。下りろ。下りろ。」とわめきました。
 その途端でございます。今まで何ともなかった《くも》の糸が、急に《かんだた》のぶらさがっている所から、ぷつりと音を立ててきれました。ですから《かんだた》もたまりません。あっと云うまもなく風を切って、《こま》のようにくるくるまわりながら、見る見る中に《やみ》の底へ、まっさかさまに落ちてしまいました。
 あとにはただ極楽の《くも》の糸が、きらきらと細く光りながら、月も星もない空の中途に、短く垂れているばかりでございます。



 《おしゃかさま》は極楽の《はすいけ》のふちに立って、この《いちぶしじゅう》をじっと見ていらっしゃいましたが、やがて《かんだた》が血の池の底へ石のように沈んでしまいますと、悲しそうな御顔をなさりながら、またぶらぶら御歩きになり始めました。自分ばかり地獄からぬけ出そうとする、《かんだた》の無慈悲な心が、そうしてその心相当な罰をうけて、元の地獄へ落ちてしまったのが、《おしゃかさま》の御目から見ると、浅間しく思召されたのでございましょう。
 しかし極楽の《はすいけ》の《 はす》は、少しも《そんなこと》には《とんじゃく》致しません。その玉のような白い花は、《おしゃかさま》の《おみあし》のまわりに、ゆらゆら《うてな》を動かして、そのまん中にある金色の《ずい》からは、何とも云えないよい《におい》が、たえまなくあたりへあふれて居ります。極楽ももう《ひる》に近くなったのでございましょう。
(大正七年四月十六日)



底本:「芥川龍之介全集2」ちくま文庫、筑摩書房
   1986(昭和61)年10月28日第1刷発行
   1996(平成8)年7月15日第11刷発行
親本:筑摩全集類聚版芥川龍之介全集
   1971(昭和46)年3月〜11月
入力:平山誠、野口英司
校正:もりみつじゅんじ
1997年11月10日公開
2011年1月28日修正
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Posted by 山田 雄一郎 at 22:07
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