助成事業に対する成果評価の実態と助成財団に対する提言 [2015年04月21日(Tue)]
Tweet
助成事業の成果を高めるための支援を行う、Center for Effective Philanthropyが実施した調査『Assessing to Achieve High Performance: What Nonprofits are Doing and How Foundations Can Help』によると、大半のNPOが助成財団から助成事業の成果評価を求められる一方、事業の成果を測定するためにどのようにデータを活用するのかについてのアドバイスを得られていません。 調査に回答した183団体のほぼ全てが、事業の成果評価を行うためのデータを収集しています。例えば、移民の就労支援を行うNPOでは、プログラムに参加した移民の数、就職した移民の数、12ヶ月後に仕事を続けている移民の数などのデータです。 一方、半数以上(55%)のNPOでは、事業の成果評価に対する投資は、予算の2%以下にとどまっています。また、データの収集を担当するフルタイムのスタッフを最低一人以上雇用しているNPOはわずか9%で、第3者機関を活用しているのは31%となっています。 収集したデータの使途としては、83%が自団体の事業やサービスの改善、68%が事業の方向性の周知、61%が事業拡大・縮小のための意思決定に活用しています。 助成を受けるNPO側のこうした実態に対して、64%のNPOは、助成財団から事業の成果評価を行うために何の支援も得られていません。また、39%が助成財団と成果評価について満足いくような議論を行ったに過ぎません。 こうした状況の中、Mary Reynolds Babcock FoundationとAssisi Foundation of Memphisの2団体については、成果評価の支援を行う助成財団としてNPOから高い評価を得ています。例えば、Assisi Foundationでは、目標(ゴール)を定義するための12週間にわたるコース『Before You Ask』をNPOに提供しています。同団体では、成果評価にかかる費用面での問題を理解したうえで、こうしたプログラムを通じてNPOが自分たちが出来ることを現実的に把握し、成果評価を行うための計画を策定できるように支援しています。 この調査レポートでは助成財団に対する提言として、以下の4つをあげています。 (1)助成財団はNPOの成果評価とマネジメントの役割についてNPO側とより突っ込んだ議論を行うこと (2)成果評価を実施するための助成を行うこと (3)助成財団がNPOに要求する成果データが当該助成とNPOのゴールにどの程度一致しているかをしっかりと考えること (4)NPOが成果評価を通じて学んだことを他のNPOと共有するのを支援すること 企業や財団、中間支援組織含め、自分も助成組織の方々とご一緒することがありますが、支援先のNPOの成果を本当に意識しているのか疑問に思うケースもはあります。ひどい言い方をすると、“お金のバラ撒き”、“支援のやりっ放し”です。支援の先にある成果をNPOと共に議論し、支援の前に成果目標や指標を明確に定義しているような支援団体は数えるほどしかいません。 助成組織は社会的なインパクトにもっと執着しなければなりません。お金などの支援を行うことに価値があるのではなく、その先にある、支援先NPOが成果を出すことに価値があるのです。 長浜洋二 著 Tweet マネジメントの記事一覧へ≫≫≫ NPO|ファンドレイジング|ボランティア|寄付|社会的起業|CSR|ソーシャル・マーケティング|マネジメント|パートナーシップ|教育|メディア|まちづくり|公共政策 |