立教大学院 21世紀社会デザイン研究科 主催 ソーシャル・オープンゼミ「ソーシャルデザインの研究テーマを発見する〜素朴な疑問と違和感から〜」。8月27日のゲストは、ヤフー株式会社 復興支援室 復興デパートメント担当マネージャー 長谷川琢也さんと、石巻の漁師で一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン 共同代表理事の阿部勝太さんによる講演。
■フィッシャーマンズプロジェクトフィッシャーマンズプロジェクト(
http://fishermanjapan.com/#/top)は、漁業を世界で再びたたかえる産業にしようと立ち上がった20代の漁師さん達と、ITの力でビジネスモデルをサポートするために一緒に立ち上がったヤフーの取り組み。「真にカッコよくて稼げるフィッシャーマン」になり、これからの若者世代が憧れる水産業をデザインしていくという画期的な取メッセージ。
ヤフーでは、2012年に経営陣が変わったことをきっかけに、「課題解決エンジン」という
【世の中の問題を解決するサービス】を提供しよういう取り組みを開始。その中で東北の課題を解決する部署を立ち上げたそうです。そこで、石巻に支社をつくり、長谷川さんが出向というかたちで家族で移住し、現地でこのプロジェクトを立ち上げたとのこと。
■日本の漁業の課題日本の漁業は、比較的最近まで世界一だったんですね(平成に入るくらいまでの生産量)。そこから、右肩下がり。世界では、漁業は右肩上がりなのに、日本ではどんどん魚を食べなくなってきている。一方、日本人の気持ちとしては、「魚食を増やしたい」「母親が子供に食べさせたい食材」「国産品だったら割高でも買う」という、
日本人がDNAとして、本当は魚を食べたいという気持ちを持っている人が多いという調査結果も出ているそうです。
一方、日本の漁業の課題は様々ですが、一番危機的だと思われるのが、
日本の漁業者数(漁師)が、この20年間に約半分になっており、さらに20代の漁師が3〜4%しかいないという現実。この背景には、「稼げない」「きつい(労働時間が長く、休みがない)」という問題があります。そこで、阿部さんは、震災を機に会社を立ち上げ、今までの漁師の世界では考えられない
「固定給制度」「シフト制」の導入に挑戦。また、「漁師」という職業に限定せず、「石巻」という地域にも限定せず、シーズンオフの時期に、東北で人手不足の地域のヘルプ、水産業の他の仕事とのマッチングなどを行っています(漁師以外の仕事ができるようにスキル育成)。また、当初は、長時間働くことが美徳のようになっている漁業の世界にいる父親たちからの大反発があったようですが、このやり方では若者は漁師になりたがらないと、変革を実現。今は、ご両親もシフト休に合わせて温泉旅行など楽しまれているそうです。そこには、ご両親世代の「きついと言いたくない」というプライドと潜在的な声がきっと奥にあったんだろうとおっしゃっていました。
■ITの力で100%直販にまた、ヤフーのITのチカラで、今は
100%直販となり、
価格決定権を自分たちで持てるようになったということと、
消費者の声を直接聞けるようになったことで、ブレがなくなってきたとのこと。何よりも、価格決定権をもてたことにより、精神的に楽にあったそうです。(それまでは、価格の不安定さと自然の不安定さとダブルのリスクがあった)
本当に、素晴らしい取り組みで感動しました!想いだけじゃなく、リアリティもあり、日本の漁業が本当に変わるんじゃないかって、ワクワク感をもらいました。これからも、応援させていただきます。
写真は、左から長谷川さん、阿部さん、コーディネーターの長坂教授。