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日本初!高校内図書室での居場所カフェ事業「ぴっかりカフェ」のボランティアに参加してきました [2015年11月23日(Mon)]
11月17日に、NPO法人パノラマの取り組みである、日本初の高等学校図書館内での居場所カフェ事業「ぴっかりカフェ」のボランティアに参加してきました。

この居場所カフェ事業「ぴっかりカフェ」は、若者支援の専門家であるNPO法人パノラマ代表石井氏と神奈川県立 田奈高校の連携による、高校の図書館をカフェにし、そこに支援者が常駐するという交流相談事業です。(2014年12月からの取り組み)

石井氏の問題意識は、今までの相談事業は、「相談する」という本人の意思がないと支援に結びつかないことであったそうです。このぴっかりカフェの特徴は、オープンで出入り自由な図書館という場所で、子どもたちが、相談するという意識なく相談員と出会うことができ、自然な関係性が構築できます。(石井氏は信頼貯金を貯めるという表現を使っています)。そこから、普段、なんとなく感じている(漠然とした)不安を、雑談の延長で話すことができるということが特徴です。

子どもからの直接のニーズがないと(本人も自分が困っている状況に置かれていることに気づいていないケースもある)、支援が遅れがちになりますが、そこをカバーする取り組みです。

<実施場所>
神奈川県立 田奈高校 図書館内
田奈高校は、生活困窮など、様々な課題を抱えた生徒が多く在籍している、クリエイティブスクールです。

<実績 (2015年10月末現在)>
・ぴっかりカフェ実施回数 35回
・ぴっかりカフェに来た高校生の延べ人数  3,699人
・ボランティアの数 66人 
2015年10月末現在、計35回の開催をし、延べ3699人の生徒が参加。
ボランティアは、延べ66人が毎回の運営を手伝っている。


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一番奥にいる男性が、NPO法人パノラマ代表の石井氏。私の周りの女性は、ボランティアさんで、支援者や子供向けシェルターで働いている方。

■そもそも「居場所」とは何か

居場所とは、もともと、「いどころ」「人が居るところ」などの物理的な概念でしたが、1980年代以降、子どもの不登校問題などから、「心の居場所」という、心理的側面を含んだ概念へ転じていきました。また、「子どもの居場所」への注目は、1980年代から登場したフリースクールであると言われています。

経済的環境、家庭・地域社会の変化により、子どもたちを取り巻く環境は、より一層厳しい状況になってきています。いじめ、不登校、引きこもり、自殺など、問題は深刻になる一方です。こうした中で、子どもたちの居場所というのは、物理的な場所の提供や、親が一方的に連れていく習い事などの場ではなく、子どもたちが【(親に頼らなくても)自らの力で、自らの居場所を見つけることができるような環境をつくること】、とりわけ学校において、安心していられる環境をつくることが必要になってきていると、私は考えます。しかし、現状、そのような居場所はほとんど存在していません。

■高校内の居場所事業「ぴっかりカフェ」とは

そういった問題意識を持っていた中で、このぴっかりカフェを知り、今回ボランティアに参加させていただきました。私は、このぴっかりカフェで、高校生が、若者支援の専門家の石井氏や、地域のボランティアと触れ合うことで、大きく分けて、3つの効果があると感じました。


@ 自分の悩みに気づくことができる
A 他者の経験を知る、他者との経験を増やす(=人の考えを知る=自分の考えを増やす)
B 自己肯定感が高まる(家族・先生以外の大人から認められる)


@については、以下にて臨床心理士の鈴木晶子氏が、大変わかりやすく書かれているため、こちらをご紹介したいと思います。

(2) ぴっかりカフェの二次予防効果
二次予防は早期発見です。早期に発見して、困難が大きくならないように働きかけていく機能
http://akikosuzuki.net/2015/07/08/%e3%81%b4%e3%81%a3%e3%81%8b%e3%82%8a%e3%82%ab%e3%83%95%e3%82%a7%e3%81%ae%e4%ba%88%e9%98%b2%e5%8a%b9%e6%9e%9c%e3%81%ab%e9%96%a2%e3%81%99%e3%82%8b%e4%bb%ae%e8%aa%ac%ef%bc%88%e5%be%8c%e7%b7%a8%ef%bc%89/


10代の若者は、自分の抱えている困難さが明確になっていなかったり、何に困っているかもわからないため、「自らの悩みに気付き相談する」という行動に、なかなかつながらないということです。

これは、私たち大人でもそうだと思います。少しズレますが、たとえば、「介護離職」という潜在的な問題を抱えている人はたくさんいます。でも、具体的に、それを相談したり行動に出す人はほとんどいないと思います。多くの人が、実際に介護が必要になってから気付き、事前準備もなく会社を離職していき、困難な状況に陥ってしまっています。

ぴっかりカフェは、石井氏とおしゃべりをしながら、自分がそういう状況に置かれていることを知り、少しづつ対策を考えいくことにつながるため、困難が大きくならないような二次予防効果があるのだと思います。

A他者の経験を知ることで、自分の可能性が広がるというのがあると思います。普段一緒に居る家族や友人との関係からは、なかなか、自分の新しい一面というのは見出しづらいものです。ですが、ぴっかりカフェのボランティアは、多様な社会人・卒業生で構成されているため、自分の新しい発見=希望が生まれる可能性があるのではないかと思いました。今、困難な状況だからこそ、いろいろな価値観をもった大人と出逢うことが重要なのではないでしょうか。

Bについては、子どもの好きなことや得意なことは、案外、親や先生以外の、利害関係の無い人の方が見つけられるものだったりすると思います。親や先生は「責任」があるため、マイナスの部分に目が行きがちですが、例えば、私のような第三者は「責任」がないため、子どもたちの良いところを見つけることに注力できたりします。

また、自己肯定感が高まるのは、子どもたちだけでなく、場合によっては、ボランティア(卒業生・地域の人)も当てはまるかもしれません。仕事や家庭で何か疲れてしまっていたとき、このぴっかりカフェで、子どもたちや石井氏と触れ合うことで、心が癒される効果もあるのではないでしょうか。どちらかが一方的に何かをするのではなく、一緒に「場」をつくっている雰囲気が、子どもたちから受け入られ、信頼に繋がっているのではないでしょうか。

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お昼休みに、図書室でくつろぐ高校生たち。お昼を食べながら、カフェのお菓子とドリンクを楽しむ子も


■「ぴっかりカフェ」にあって「地域主体の居場所」に無いもの

子どもの居場所が叫ばれている中で、最近では、「地域食堂」など地域の取り組みが出来始めています。しかし、現状、地域で運営されている居場所には、石井氏のような、専門家がいることはほとんど聞いたことがありません。また、対象も小(中)学生が中心となっており、思春期の子どもたちの地域の居場所というのは、あまり耳にしないように思います。今回のぴっかりカフェを見ていて、やはり、思春期の子どもたちと信頼関係を築くには、専門家のテクニックが効果を発揮するということ、また、子どもたちの「見えづらいSOS」を見過ごさない=支援に結び付けられる、というのが地域主体の居場所との大きな違いではないかと感じました。地域の居場所づくりなどの取り組みと専門家の連携という発展も、今後必要なのかもしれません。

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ぴっかりカフェでドリンクをつくるボランティアさん

■地域も受益者となる

最後に、この取り組みの魅力は、受益者がたくさんいるということだと思いました。一番は、言うまでもなく、在学中の高校生です。そのほかに、前述した卒業生や地域のボランティアへの効果、また、このような素敵な高校がある地域も、地域活性化の拠点となる可能性があると思います。

残念ながら、現在は、地域からは、田奈高校への偏見(過去の学校イメージや頭髪などの見た目)があり、厳しい状況だそうです。しかし、私が出会った田奈高校の子どもたちは、とても人なつっこく、ドリンクを渡すときも「ありがとう!」や「どうもね!」と一言いってくれたり、廊下で迷っていたら、向こうから挨拶をしてくれる子たちでした。

今の偏見がなくなり、地域から誇りに思われる学校になる日がきっとくるはず!そう思いましたし、そのお手伝いをさせていただきたいなと思います。

12219441_959907407421400_2257442656111918710_n[1].jpgぴっかりカフェを運営している図書室のエントランス

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ぴっかりカフェのメニューを書くボランティアさん
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