伝統産業と文化的価値
[2007年04月30日(Mon)]
4月21日にはドクターのゼミで、また28日には、京都伝統的文化産業と都市研究会で、今度学会で発表する内容について報告した。
報告内容の概要と、それに関するコメントを記す。
京都における創造産業としての伝統的工芸品産業の可能性〜京都府、京都市における伝統的工芸品産業が有する「文化的価値」と「都市の創造性」との関係に関する一考察〜(共著)
京都の伝統的工芸品産業(以下「伝統産業」)は、業種数、年間生産額、事業所数、従事者数等において全国でもトップレベルであるが、90年代以降、それらを取り巻く環境は厳しさを増している。だが一方で、近年、特に若年層における「和文化」に関する関心が高まりや、伝統産業における新たな価値創造に向けた取組といった動きを見ることができる。また、京都府、京都市は伝統産業の振興に関する条例をそれぞれ平成17年に制定しているが、いずれも、伝統産業の持つ「文化的価値」に着目し、それを以って伝統産業が地域や社会に対して、大きな役割を果たしていくことが明示されている。そこで、本発表では、伝統産業の持つ「文化的価値」が、都市の創造性にどのように寄与できるか、また伝統産業の産地を中心とした地域が創造拠点となりうるかを、京都府、京都市でそれぞれ制定されている条例の比較と、京都における伝統産業の存在意義を歴史的事例等から明らかにする。
○ドクターゼミにおけるコメント
・論文としては概念的。もう少し実証的な内容になれば良い。
・職人の分業体制とコーディネート機能(悉皆屋等)という、京都の伝統産業の製造、流通システムについて詳細に。
・イノベーションの起こる産業連関の構造について実証的に論ぜられないか。
・京都は平安京遷都以来、常に日本のトップに位置し、それを地方が真似、全国に「小京都」が形成され、さらに京都に返ってくるという循環構造があった。
・京都は町全体が「ものづくりの大学」であり、その育成システムを(制度という形ではないが)、都市全体で築いてきたという歴史がある。
・伝統産業の技術から近代産業へのイノベーションの個別事例を実証的に証明した方が良い。
○京都伝統的文化産業と都市研究会におけるコメント
(1)条例において「文化的価値」とは何を強調したいのか?
<回答>市の条例では
・日本の文化を京都から世界へ発信
・日本の伝統産業に活力を
・豊かで活気に満ちた地域社会の形成
・京都経済の発展
が伝統産業の意義であると謳っているように、文化やまちづくりを「経済発展」と同等か、それ以上の重みで位置付けている。
(2)伝統産業の世界は「先が見えない」「物が動かない」「次が続かない」という状態のまま高齢化している。
(3)(4.について)戦後、伝統技術が先端産業に活かされ、「イノベーション」を起こしたことは事実だが、それは「技術」の分野においてのみで、そのセンスは引き継がれていない。
敗戦後、多くの都会の家が着物を手放したので、その需要が戦後高まった。
(4)(4.について)「イノベーション」で逃げていないか。確かに近代化の過程で技術は受け継いだが、センスまで受け継がれたのかどうか。近代と伝統との関係をクリアに。
伝統産業そのものの中でイノベーションはあるのか、ないのか。また必要なのか、必要ではないのか。
(3.について)「生活文化」についてはもう少し突っ込んでみたらどうか。
(全体を通じて)現実には「モノが動かない」ということがある。文化的価値と経済的は常に拮抗関係にある。どのようにして文化的価値を重視しつつ、経済的価値を担保できるのか、ここが大切である。
(5)サントリー「伊右衛門」は、老舗がサントリーにブランドを「売った」形になったが、それによってサントリーは緑茶飲料のシェアを獲得し、福寿園のお茶の知名度も上がった。これが「イノベーション」のような気がする。
(6)「文化的価値」とは、人を作る、心を作るという面もある。
(7)現在の伝統産業の世界は「納期、コスト」ばかりの仕事になっている。分業の中でのメリットは何になるのか。
(8)京都の伝統産業施策の問題は@近代化の成功へのすり替えA戦略のなさにあると思う。
(9)例えば手拭いの永楽屋のヒットは店に眠る古い図案であった。これこそがイノベーションのように思う。
書籍等の紹介
佐々木雅幸+総合研究開発機構 編著『創造都市への展望』2007年、学芸出版社
京都産業21『クリエイティブ京都M&T』2006.11
Copyright (C) SHIGENO, Hiroki. ALL Rights reserved.
報告内容の概要と、それに関するコメントを記す。
京都における創造産業としての伝統的工芸品産業の可能性〜京都府、京都市における伝統的工芸品産業が有する「文化的価値」と「都市の創造性」との関係に関する一考察〜(共著)
京都の伝統的工芸品産業(以下「伝統産業」)は、業種数、年間生産額、事業所数、従事者数等において全国でもトップレベルであるが、90年代以降、それらを取り巻く環境は厳しさを増している。だが一方で、近年、特に若年層における「和文化」に関する関心が高まりや、伝統産業における新たな価値創造に向けた取組といった動きを見ることができる。また、京都府、京都市は伝統産業の振興に関する条例をそれぞれ平成17年に制定しているが、いずれも、伝統産業の持つ「文化的価値」に着目し、それを以って伝統産業が地域や社会に対して、大きな役割を果たしていくことが明示されている。そこで、本発表では、伝統産業の持つ「文化的価値」が、都市の創造性にどのように寄与できるか、また伝統産業の産地を中心とした地域が創造拠点となりうるかを、京都府、京都市でそれぞれ制定されている条例の比較と、京都における伝統産業の存在意義を歴史的事例等から明らかにする。
○ドクターゼミにおけるコメント
・論文としては概念的。もう少し実証的な内容になれば良い。
・職人の分業体制とコーディネート機能(悉皆屋等)という、京都の伝統産業の製造、流通システムについて詳細に。
・イノベーションの起こる産業連関の構造について実証的に論ぜられないか。
・京都は平安京遷都以来、常に日本のトップに位置し、それを地方が真似、全国に「小京都」が形成され、さらに京都に返ってくるという循環構造があった。
・京都は町全体が「ものづくりの大学」であり、その育成システムを(制度という形ではないが)、都市全体で築いてきたという歴史がある。
・伝統産業の技術から近代産業へのイノベーションの個別事例を実証的に証明した方が良い。
○京都伝統的文化産業と都市研究会におけるコメント
(1)条例において「文化的価値」とは何を強調したいのか?
<回答>市の条例では
・日本の文化を京都から世界へ発信
・日本の伝統産業に活力を
・豊かで活気に満ちた地域社会の形成
・京都経済の発展
が伝統産業の意義であると謳っているように、文化やまちづくりを「経済発展」と同等か、それ以上の重みで位置付けている。
(2)伝統産業の世界は「先が見えない」「物が動かない」「次が続かない」という状態のまま高齢化している。
(3)(4.について)戦後、伝統技術が先端産業に活かされ、「イノベーション」を起こしたことは事実だが、それは「技術」の分野においてのみで、そのセンスは引き継がれていない。
敗戦後、多くの都会の家が着物を手放したので、その需要が戦後高まった。
(4)(4.について)「イノベーション」で逃げていないか。確かに近代化の過程で技術は受け継いだが、センスまで受け継がれたのかどうか。近代と伝統との関係をクリアに。
伝統産業そのものの中でイノベーションはあるのか、ないのか。また必要なのか、必要ではないのか。
(3.について)「生活文化」についてはもう少し突っ込んでみたらどうか。
(全体を通じて)現実には「モノが動かない」ということがある。文化的価値と経済的は常に拮抗関係にある。どのようにして文化的価値を重視しつつ、経済的価値を担保できるのか、ここが大切である。
(5)サントリー「伊右衛門」は、老舗がサントリーにブランドを「売った」形になったが、それによってサントリーは緑茶飲料のシェアを獲得し、福寿園のお茶の知名度も上がった。これが「イノベーション」のような気がする。
(6)「文化的価値」とは、人を作る、心を作るという面もある。
(7)現在の伝統産業の世界は「納期、コスト」ばかりの仕事になっている。分業の中でのメリットは何になるのか。
(8)京都の伝統産業施策の問題は@近代化の成功へのすり替えA戦略のなさにあると思う。
(9)例えば手拭いの永楽屋のヒットは店に眠る古い図案であった。これこそがイノベーションのように思う。
書籍等の紹介
佐々木雅幸+総合研究開発機構 編著『創造都市への展望』2007年、学芸出版社
京都産業21『クリエイティブ京都M&T』2006.11
Copyright (C) SHIGENO, Hiroki. ALL Rights reserved.




伝統的工芸品の大切さがわかりました