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企業の社会性とまちづくりに関する備忘録

事業者のまちづくりへのかかわりに関する研究用備忘録ブログです。
企業・経営に関すること、まちづくりに関すること、地域経済に関すること、またそれらに関する著書の書評などをつづっていきます。


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備忘録「シュンペーター 経済発展の理論」 [2007年01月15日(Mon)]
日経新聞「やさしい経済学」で2007年1月15日まで連載されていた今井賢一氏の記事「シュンペーター経済発展の理論」について雑感。
まず、整理。
・「新結合」…イノベーションには「新結合」が必要である。新結合は単に技術の結合だけではなく、新市場や新産業組織との結合が重視される。
・新結合を遂行する経済主体としての「企業家」の機能を明確にし、かつそれが指導者機能(リーダーシップ)と結びついたときに創造的破壊とも言うべき変革が起こる。
・時代の将来を見通した企業家が、新しい技術の結合、新しい組織などを持ち込み、その将来性を評価する銀行家が信用創造によって投資資金を提供し、それらが既存の構造を揺り動かす「創造」の過程から始まる。そしてその後に新結合が旧結合を破壊する経済的転換の過程が続く。

その例として鉄道を上げている。
:駅馬車や運河による水運という交通網に蒸気機関と市場が新統合し、鉄道が生まれた。

続いて、書かれていた記述について。
9日付の(4)では、「鉄道の場合でいえば、舞台が広大なアメリカ大陸に移動するのに伴い、そこには膨大な投資機会が生まれ、ネットワークが形成された。
それを基盤に、産業・流通分野において、チャンドラーが分析的・歴史的に解明した垂直統合の大量生産システムが生まれた。都市としては、ジェーン・ジェイコブスの名著に書かれているアメリカ都市の『生と死』の歴史が始まったのである。
ノーベル経済学賞を受賞した経済史家のロバート・フォーゲルのように、鉄道の経済的インパクトを大きくとららえていることを(数量経済史的に見て)疑問視する向きもあるが、シュンペーターが注目したのは、産業・流通、都市、生活様式から文化様式にいたるまでの相対的影響だったのである。
(中略)
ある実証研究によれば、有史以来『汎用目的技術』と定義しうるものは、二十四存在し、産業革命の実質は、蒸気機関、工場システム、及び鉄道の3つが重合して成立したとされている。そして最後の鉄道の普及が、工場の立地を変え、企業の原料調達、在庫の処理などを通じて、設備投資の内容を変化させ、従業員の通勤形態と住宅の配置を動かして、実質的にシュンペーターのいう創造的破壊の「嵐」として形容される現実を生み出したのである。
そのような相対的・多面的な捉え方に『シュンペーター的志向(塩野谷)』の特色があり、それは、われわれが現代の問題を考えるにあたっても引き継ぐべき視点である。というのも、われわれは現在、いわゆる情報通信革命のなかで、同じような経験をしているからである。
情報通信革命は、単なる技術革命ではない。鉄道もネットワーク効果をもったが、その効果だけをとってみても、情報通信のもたらすグローバルなインパクトは、はるかに大きい。経済の領域を越えて、政治や文化や生活様式にも及ぼす影響よりも複雑である。」

一方で12日付の(7)ではこんなことが書かれている。
資本主義は、社会の前資本主義的な枠組を打ち壊す前に、自らの進歩を阻む障害物だけでなく、本来共生すべき自分たちのパートナー(例えば職人)をも立ち退かせてしまった、ということを述べ、そのような層との共生を認めていきたいと言っている点である。
(中略)
アメリカ以外のほとんどの国では、新興のビジネス階級は、社会的存在の先行的形態を破壊するのではなく、それを変形するにとどまったが、「この社会状態の中でこそ、企業家階級は比例のない経済的成功を収め」、また科学の発展やその実用的な応用に貢献したと評価した。

また最終回15日付(8)では、シュンペーターが1931年に来日した際に、弟子だった故都留重人教授によれば、彼はそのときの印象を「われわれは芸術というものをわれわれから疎外して考える。日本人は生活のすみずみにまで芸術を生かしている」と語っていたという。
とある。わが国において、すでに「生活の芸術化」が進んでいたことを示すものであるといえる。


最後に雑感。
シュンペーターの「創造的破壊」ということで今日を考えると、グローバリゼーションと情報通信革命にさらされた今日の都市の課題についてもこの文脈で語れないか。まちづくりの新たな方向性も見えてくるはずである。
そして、日本人の感性として、生活の中にまで芸術文化を取り入れる点を再評価し、資本主義の発展の中で、いかにそれを手がけるという仕事を担う職人との共生するか(その過程では先端技術と職人仕事の「新結合」といったこともありえると思う)といった課題を解決することも可能かと思う。

シュンペーターの『経済発展の理論』と、ジェイコブスの『アメリカ大都市の「生と死」』は必読。
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コメント
なにより重要なのは、滋野さんの場合、研究者としてよりも、まず第一にまちづくりの担い手として活動を開始され、いまもそれを続けられていることだとおもいます。その点は、わたしなどはとうてい及ばないところです。

月に1回ぐらいは、いまも関西に出かけていますので、いずれの機会かにお会いできれば幸いです。
Posted by:塩沢由典(4)最後  at 2010年05月24日(Mon) 02:28
これは大阪が関西の中心だという意味ではなく、わたしが長く大阪市立大学にいて、大阪のことを考えてきた結果でしかないのですが、上記のような都市の機能が十分発揮されるためには、やはり規模も重要で、あわせて1800万人いる京阪神大都市圏を生かす工夫も必要という思いです。

それは京阪神や堺や奈良などが、それぞれ個性ある都市であり続けることとは両立させられることと思っていますが、誤解されやすいことは事実です。宮本憲一先生に本をお送りしたときの最初の反応はそうしたものでした。

滋野さんのブログを読んで、また博士論文の構成の見させてもらい、山科や東山という具体的な地域に根を下ろして活動されていることに共感します。伝統産業についてはも、いろいろ考えられていますね。今度の本では、大阪市北区の「職人の見える町」には、つい批判を書いてしまいましたが、伝統産業の振興にも、地域における多様性が必要と思うからです。

「創造都市」に関する滋野さんの<違和感>にも、共感するものがあります。創造都市が結局は輸入概念になっていまっていては、ほんとうの意味の創造都市にはならないだろうと考えます。

3条あかり景色は、結局、京都の政策で、別の形で展開されていますね。小原啓人さんは、いま大阪で「チケット」という構想を展開されていますが、うまく成功してくれればと思っています。

地域商業とか、清水焼き団地の話は、大阪に移る前に、わたしが北沢恒彦さん(元京都市中小企業指導所職員)に指示されて、あちこち商店街を歩いていた時代を思いだし、懐かしくなりました。北沢さんは、市を定年退職したあと、京都精華大の非常勤講師などをしていたのですが、ちょうど10年前になくなられました。その前の数年のことなどは、森嶋通夫先生の自伝的作品『終わりよければすべてよし』に出てきます。

北沢さんは、個別商店街の診断をしたほか、京都市の各区の広域診断もまとめました。また清水の藤平さんと意気投合して共著の『五条坂陶工物語』も出していられます。
Posted by:塩沢由典(3)  at 2010年05月24日(Mon) 02:27
2000字以内という条件で、はねられてしまいました。せっかくろいろいろ書いたのに。悲しいで、あつかましくも、何回かに分けて、コメントします。これが2本目です。笑顔

寄附講座の成果としてなにか形にしなければと考え、『関西経済論 原理と議題』
http://shiozawa.net/chosho/index.html#kansaikeizairon
という本を4月に出しました。このベースにしたのが、ジェイコブズです。ジェイコブズの経済発展の単位は都市/都市地域であるという説をまじめに受けて、関西経済を考えてみました。

内編第1章では、現在までの経済発展論の簡単な批判と現時点での考え方、第2章では経済発展の2大要件としての生産性の上昇と新需要の創造を取り上げ、それが都市とどのような関係にあるか(あるいはありうるか)について議論しました。そのため、関西経済論といいながら、固有に関西の議論をしているのは第三章からです。といっても、関西全部をくまなく取り上げることはとうてい不可能で、ほとんどの内容は大阪を中心とする議論になっています。

これは大阪が関西の中心だという意味ではなく、わたしが長く大阪市立大学にいて、大阪のことを考えてきた結果でしかないのですが、上記のような都市の機能が十分発揮されるためには、やはり規模も重要で、あわせて1800万人いる京阪神大都市圏を生かす工夫も必要という思いです。

それは京阪神や堺や奈良などが、それぞれ個性ある都市であり続けることとは両立させられることと思っていますが、誤解されやすいことは事実です。宮本憲一先生に本をお送りしたときの最初の反応はそうしたものでした。
Posted by:塩沢由典(2)  at 2010年05月24日(Mon) 02:26
3年以上前のブログ記事へのコメント、お許しください。googleに「経済発展」と「ジェイコブズ」という2つのキーワードを入れてみて、この記事を見つけました。それで他の記事も読んでみたら、滋野さんとわたしとは、研究の(方法というより)思想がひじょうに近いのではないかと感じ、コメントを書かせてもらうことにしました。

記事は、今井賢一先生の「やさしい経済学」の紹介でしたが、今井先生もジェイコブズに関心をもっていることがわかり、うれしくなりました。ジェイコブズの影響を受けた経済学者は、日本では多いのですね。

もうひとつ、滋野さんが必読に挙げているジェイコブズの『アメリカ大都市の死と生』は、この4月に山形浩生さんの翻訳で全訳がでました。この解説も大変なものです。

ジェイコブズの晩年の何作かが力の弱いものであっことはわたしも認めますが、『都市の経済学』(Cities and the Wealth of Nations)と『都市の原理』(The Economy of Cities)に対する山形さんの評価には賛成できません。地域経済を考える上で、やはり基本的な文献ではないかと考えます。

じつはこの3月まで京大の経営管理大学院の客員教授をしていて、関西経済論を担当していました。3年有期の寄附講座ですので、もう終わってしまい、いまは東京住まいですが、もっと前に滋野さんのことを知っていれば、いろいろ話すべきことがあったのにと残念です。たぶん近くですれ違っていたのに違いないのですが。笑顔
Posted by:塩沢由典  at 2010年05月24日(Mon) 02:22
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