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177山梨県・清里・・・・・・・・・・・寒くとも高原を行く小海線 [2008年11月20日(Thu)]

「休みが取れたから、のんびり秋の景色を眺めに出かけたいわ」と言い出した伴侶のお供をして、小海線を旅して来た。山梨県小淵沢と長野県小諸を結ぶ小海(こうみ)線は、八ヶ岳山麓を縫うように走る高原列車で、日本一の標高を行く鉄道として知られている。遠く富士山は冠雪を完了しており、周囲はすっかり晩秋。終日、好天に恵まれたものの、時おり吹き降りて来る風は肌を刺して痛い。寒くて、しかし爽快な日帰り旅行だった。
こんな時期に列車で訪れる行楽客はわずかな中高年だろうと察した通り、われわれ自身がその「わずかな中高年」だった。まずギャルの聖地・清里で降りてみる。休業の店が多く静まり返っている。オフシーズンだからか、それともブームは去ってしまったのか。出発間際の「ピクニック・バス」に飛び乗って高原を一周する。

しかしこのバス、やたらとスピードを出すものだから、乗り心地は悪いしのんびり旅の気分が味わえない。バスの運行会社は何か勘違いしているのではないか。数少ない営業中の蕎麦屋さんを見つけ、お昼に「天然キノコそば」をいただく。アミタケ、ナメコ、シメジなどが入っていて美味しかったけれど、1300円は高すぎる。ビールの突き出しに出た鹿肉の煮付けは珍味だった。

清里での滞在は2時間で切り上げ、やって来た列車に乗り継いだ。標高1345.67メートルとの「JR線最高駅」の標柱が建つ野辺山駅を通過、列車はすでに長野県に入っている。車窓のカラマツは黄錆び色で葉を落とす寸前の風情。そうした林の中に別荘が点在していて、天体観測用のドームや無線のアンテナなども見える。

私は別荘を持っていないから、別荘のある生活がどのようなものか実感が湧かないのだけれど、ここは星を観測したりハム交信を楽しむ人にはうってつけの高原なのだろう。そうした趣味を持つ人には、凍えるような寒さがむしろ心地よいのかもしれない。突然、巨大なパラボラが出現した。国立天文台の野辺山宇宙観測所だ。

八千穂駅で降りて駅前の奥村土牛記念美術館に行く。画家がこの里に疎開していた縁で美術館建設となったのだそうで、土牛の素描を集めた美術館である。先日、土牛の代表作「門」の現場を見たさに姫路城まで出かけて来たので、立ち寄ってみたい美術館だった。「門」はなかったけれど、そのスケッチが展示してあった。案の定、私が姫路で「ここかな?」と思った門だった。

列車は1時間に1本程度。逃さないように乗り継がねばならない。高原の畑は今年の役割りを終えたのだろう、緑は無い。渋柿なのだろうか、たわわに実を付けた柿の木が、人にも鳥にも見向きもされない様子で畑の隅に立っている。その周囲に小さな墓石が傾いていたりする。

付かず離れず、列車に添って流れ下る川があることに気づいた。千曲川だ。ということは、流れは終着駅・小諸で「古城のほとり」を蛇行し、善光寺平に入って川中島を過ぎ、やがて越後に流れ下って信濃川となるわけだ。その千曲川が、小海線に沿って下って行くとは知らなかった。信濃川の源流は甲州、信州、それに武州の国境にそびえる甲武信岳に発する。信濃川の河口の街で育った者としては、いささかの感慨を覚えたのだった。
(2008.11.19)
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