エンペラー演じたジョンの情緒かな [2015年12月08日(Tue)]
映画『ラストエンペラー』は、かつて封切られた時に見たのに、内容はすっかり忘れていた。溥儀が皇帝だったころの回想シーンと、中華人民共和国の一人民となった後のシーンが交互に描かれる。そして1967年に彼が死ぬとき、相容れなかった二つの溥儀の人生は結びついて昇華する。壮大な映像美に包まれて深い感慨にふけった。
青年期以降の溥儀を演じたジョン・ローンが印象深い。日本の成宮寛貴に似て、東洋人でありながらどこかエキゾチックな情緒があり、妖気さえも感じる。美しい顔立ちが老人になっても高貴さをにじませる所作に魅力がある。 キーワードは「儀式」と「牢獄」と言えようか。即位のその瞬間から、朝起きて夜寝る、食べることから排泄するまで、慣習と儀典の決まりにがんじがらめにされている不自由さ。儀式というものは時々であれば改まった気分になってよいものだが、四六時中だと疲れる。彼らは生まれたときから貴い血筋だから平気なんだろうか。そうではあるまい。ましてや、事実上の皇帝として君臨した西太后が死ぬ間際に指名した皇帝であり、帝王教育を受けられなかった溥儀は可哀想だったと思う。 家の主として国の頂点に立っていながら、何ひとつ自分では決められず、家の玄関から外へすら出ることができない。こんな不自由があるだろうか。即位の瞬間から牢獄に入れられたのに等しい。しかも時代が悪い。西欧列強や大日本帝国に国土を蚕食され、皇帝としての実権力などない。辛い日々だったと思う。皇后が阿片に溺れたのもわかる。 中国史上おそらく最強の帝国・清朝最後の皇帝。そして日本が傀儡として形だけの皇帝とした満州国の最初で最後の皇帝。毛沢東という事実上の皇帝はいたものの、形としては中国史最後の皇帝。ラストエンペラーとともに、中国の歴史と現在からは目が離せない。 (インターコンチネンタル東京ベイのロビーにある照明。混沌とした中国の雰囲気を思わせる) |