有り難く思うのならばありがとう [2014年12月02日(Tue)]
感謝をあらわす時に使う言葉の代表は【ありがとう】と【すみません】の2つだろうか。ありがとうは、「有り難く存じます」の存じますが略されて、ウ音便となって変化した形。すみませんは、「済まない」を丁寧にした形だ。ふだんは違いを感じずに使っているが、元の意味はたいそう違う。
【有り難い】とは字のとおり、存在が稀でありそうもない珍しいこと。そこから派生して、世にも珍しいほど優れており、立派であまた恐れ多い。だから人の好意が身にしみて嬉しいわけである。そうしたことを体験できる身の幸運を感謝するという謙虚さも表現するであろう。有り難く感じるのは自分だが、この言葉の軸足は相手方にある。 【済まない】には謙虚さもあるが、卑屈も感じる。相手にやってもらうばかりでは申し訳なくて、自分が心苦しいのだ。相手に気の毒なことをして謝りたいと思う。あるいは依頼することが重すぎて気持ちがおさまらない場合もあるだろう。軸足は自分のほうにある。そもそも「すみません」とは謝罪の言葉だ。 感謝の気持ちを伝え、相手を賞賛するつもりもあるのなら、「すみません」より「ありがとう」を使いたいものだと思う。 (鮮やかな、艶やかとも言えるハゼの紅葉。木は大きくはないが、「有り難い」ほどの味わいがある) |