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シャヴァンヌの幻影をみた仏絵画 [2014年04月18日(Fri)]

__tn_20140418214933.jpg宍道湖の南東岸にある宍道湖を形象した曲線美の建物。松江の街の静かなたたずまい。その彼方には青くてなだらかな北山が続いている。島根県立美術館は開館15周年を迎えた。それを記念して『水辺のアルカディア〜ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの神話世界』が開催中だ。フランスの壁画装飾画家・シャヴァンヌの体系だった展覧会は本邦初とのこと。シャヴァンヌの世界は幻影。春の暖かいひとときを過ごすのにふさわしい空間である。

人間の精神が羽ばたき気持ちが自由になればなるほど、衣服は不要になるのかもしれない。ジャヴァンヌの絵画や壁画を見るとそんな気がしてくる。第一の印象である。西洋絵画の原初は地中海にある。西洋文明がギリシャに起こり、ローマで爆発的に拡大し、世界へ覇権が広がった。地中海性気候の暖かい地域では衣服は厚くない。映画や文献で見る限り、当時の衣類は脱ぎ着は簡単そうに見える。穏やかな天気に気持ちが自由自在に飛び跳ねるとき、恋人どおしが自然の発露として愛し合うとき、服を脱いで生まれたままの姿になりたいと思うのも、むべなるかな。アルカディアとは理想郷。西洋人の理想たるギリシャ・ローマの神話を静かにイメージしている。

中世暗黒時代の反動でルネサンス期を迎えた西洋人たちは、絵画に自由の象徴・裸体を求めた。近代文明が開花したヨーロッパ中北部に住む人にとって、太陽に満たされた暖かい気候はあこがれだったのだと思う。そこに美しいものの代名詞たる裸婦を描く。明るい色彩を放つ幻想 の世界を描く…。芸術家にとって衣服をまとわぬ女神たちはあこがれの象徴となるものなのだろう。

『諸芸術とミューズたちの集う聖なる森』は130年ほど前の作品でシャヴァンヌの代表作のひとつ。原版はリヨン美術館の大階段を飾り、その縮小品のカンバス油彩画が展示されている。ポリュヒュムニアは修辞の女神で、同じく女神のクレイオは歴史を司るという。壁画の中で英雄たちの歴史物語を雄渾な修辞で語り合っているシーンなのだろうか。縮小品と実物の壁画の写真(本物の半分以下)を比べると光沢や照り輝き、肌の質感は相当違う。エロスの神ヴィーナスは壁画に宿ったものとみえる。

学芸員がインスピレーションを抱いたという、神々の国島根にある宍道湖岸に美のミュー ズが集まっている構図というこじつけもまんざら悪くない。確かに湖の南東岸に女神が集まり、木々の向こうには北山に相当する山並みが見える。牧歌的な山岳風景、柔らかな自然に育まれる人々。幻影か、真実の物語か。それらをぼんやり想像しながらうとうとするのも悪くない。

(幻想的なアジサイ…万華鏡の季節がやってきた)