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音楽とダンスで反戦米国人 [2013年09月15日(Sun)]

__tn_20130915230326.jpg映画『ウエストサイド物語』には、ジェームス・ディーンが出演しているとばかり思い込んでいた。あれだけ有名なのに観ていなかったので、いつの間にかそう思い込んでいた。「新・午前十時の映画祭」で観たこの映画。すごい映画だった。

音楽や効果音がすごい。レナード・バーンスタイン作曲で冒頭から緊張感漂う金管楽で期待感を高めてくれる。ジャズやクラシック、サンバなど織り交ぜながら、対決前の緊張感も恋の芽生えも恋の高まりも失望も終わりも、力強くあるときは甘く、歌い手兼踊り手の若い役者たちからよさを引き出した。有名な音楽がたくさんあった。特に愛しあう頂点に立った二人が睦み合い歌う「トゥナイト」がすばらしい。

 Tonight,tonight. It all began tonight
 I saw you and the world went away tonight,tonight.
 There's only you tonight.
 What you are,what you do,what you say.......

「ロミオとジュリエット」のオマージュであることを知らなかった。マリアはジュリエット、トニーはロミオに相当する。ロミオとジュリエットは、すれ違いの末に死出の旅に立ち、モンタギュー家とキャピュレット家相互の血で血を洗う争いに終止符を打った。ウエストサイドは、トニーが銃で撃たれて死に、マリアは憎しみ合いの無益さを説き、ジェット団とシャーク団の両グループの争いを終わらせた。

ジェットはイタリア系で移民としては古株だ。一方でシャークはプエルトリコ系で新参者となる。古株が新顔を差別し領分を守ろうとする意地の張り合いがあった。粋がった不良少年たちはリーゼントに髪を固め、当時のファッションに身を固めつつ、けんかに 明け暮れていた。すごいダンスだ。計算され尽くしたフォーメーション。表情はもちろん手指の先まで神経が行き届いている。楽しさも緊張感もすべて踊りから伝わってくる。色もすごくいい。色あせたニューヨークの下町からパーティでは一転。着飾った若者たちの色鮮やかなこと。観ていて気分が高揚した。

1961年の映画であるから、アメリカでは人種差別は激しく公民権運動が盛んに行われている頃だ。反戦映画でもあろうかと想像する。ケネディ大統領は東西冷戦の代理戦争として戦端を拡大し多くの若者をベトナムに送り出していた頃だ。トニーの雇い主が血気にはやる若者に「まだお前たちは戦争を続ける気か」と吐き捨てるように言う。ウエストサイドには、反戦の思いが強く漂っている。

ちょうど昨日はDVDで『プラトーン』を観たばかりだ。先月ヒロシマ原爆の日に式典に参列したオリバー・ストーン監督の映画。理不尽な戦争、貧富の差が貧しい若者を従軍に追いやる戦争、ジャングルに隠れた敵がいつ攻めてくるかわからない恐怖の戦争、民間人も敵とみなして虐殺してしまう戦争。そうしたベトナム戦争の不可解さをエグく描いた映画だった。『ウエストサイド物語』は軽快なダンスに憎み合い殺し合う戦争の愚かさを表現している。