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一心にタイプの響き鎮魂に [2013年08月15日(Thu)]

__tn_20130815074509.jpg今やワープロにとって代わられたタイプライター。タイプはミスすると修正液で白く塗りつぶさなければならないし、行の追加はできないから書き直しが面倒だ。ところが印字に表情がでる。強いタッチで紙を叩けば強い感情が現れ、弱くなでれば優しさが表現されておもしろい。英文タイプが効果的に演出された映画だった。映画『終戦のエンペラー』はハリウッドがつくった昭和天皇もので、テーマは天皇に戦争責任があるやなしやであった。

マッカーサー元帥との対面で天皇(歌舞伎の片岡孝太郎)は開口一番、「戦争遂行の全責任は自分にある」と言い切り、国民に罪はないと嘆願した。その潔さに応えマッカーサー(トミー・リー・ジョーンズ)は、「あなたの力を借りたい、日本の再建のために」と心を許しあう。片岡の所作に話し方、昭和天皇そのものになりきった名演だった。ジョーンズは豪快さに大統領を狙う欲得も混じり合わせながら、ヒーロー独裁者マッカーサーを表現した。「場の空気」という言葉は出てこなかったが、白黒つけずに物事が進む日本という国の不思議さを、観客にわからせる重要なシーンでもある。

その場面に至るまで、スクリーンでは主役のフェラーズ准将が何度も打ちかたタイプの紙を丸めて捨てる。わずか10日で、天皇の戦争責任の有無を立証すべしという任務を遂行しなければならなかったからである。米本国の思惑どおり天皇を処刑すべきか、一部の証言に従ってお飾りの天皇に権限はなかったとして訴追すべきでないと報告するか。行ったり来たり呻吟するなかに、開戦前まで恋人同士だった島田あや(フィクションだが、初音映莉子の気品ある姿が魅力的だ)との思い出がリフレインされ、彼女の消息が少しずつ明らかになるうち彼の思いと交錯していく。

開戦の決定という国家の存亡を賭けた決定にあっても、空気が支配した。原爆投下以降、国民を塗炭の苦しみ陥れた原因を取り去ろうという段になってまで、国民がすべて玉砕してでも戦い切ろうという空気を天皇は破った。権威しかもたない最高権力者として、最初で最後の英断をなした。同時にそれは「神」としての存在をかなぐり捨てることであり、暴走する「個人」とみなされることとなる。犯さざるべき統帥権を乱す元凶として、天皇失格の烙印をおされる可能性もあった。事実、玉音放送の15日未明に皇居は一部軍部によって占拠されかかったのである。

日本は敗者となって裁かれた。植民地支配は西欧列強の模範に従ったまでである、戦争の勝者が同類の罪を犯した敗者を開戦時にまで遡って裁く道理はない、アメリカが無差別に一般住民を爆撃し原爆まで投下したことは人間の道を外れていることは明らかだ。そんな意味のことを近衛文麿に主張させる。日本軍は中国戦線で、また捕虜の扱いにおいて残虐行為があったことは確かである。この映画ではそのことに言及がなくて不公平だとする批判は一面正しい。

のちに戦争犯罪人は検挙され、A級B級C級に分けて裁かれた。天皇には戦争犯罪がなかったとの立証はされなかったが、国家の象徴としての役割を果たして戦後の復興は果たされた。

この映画の主役はフェラーズ准将のタイプライターの音だったような気がする。開戦以前に恋人あやとともに日本人の本質を論文にまとめて共にタイプを叩いた。終戦後は天皇の戦争責任をめぐって悩みつつ紙を送った。そのたびにある時はリズミカルに、またある時は途切れつつタイプの音が響いた。

今日は68回目の敗戦の日、終戦記念日である。自衛の戦いを逸脱する集団的自衛権を求める思惑、戦前回帰の良からぬ動きも併せ、騒がしい鎮魂の一日となる。