白茶飲み旅に出たよと初夏の候 [2013年05月15日(Wed)]
今日は初夏そのもの。至福のお茶で喉をうるおし気分を癒した。松江市殿町の一角にある『Timeコレクション』。古い蔵を改造したモダンな空間。器を中心にバッグや小物を展示販売している。店の空間で「時を収集するように」見定めて、家に帰っても豊潤な時間を過ごしてほしいという発想だそうだ。室内には香の品ある匂いが広がっている。
二階にはTimeコレクションに附属する紅茶コーナー『パンジェンシー』。強い刺激や辛辣な皮肉を意味するpungency。紅茶の世界では、「ほどよい渋みで美味しい紅茶」という意味に転じるということだ。これも英国一流のウィットとユーモアから転じたものだろうか。 木の床にはペルシャ絨毯が敷いてあり、 天井の梁や柱も洗練されてミニゴージャス。白壁には品のいいリトグラフなどの絵や小物がかけてあり安らぐ空間だ。試飲担当は紅茶コーディネーターの若い彼。痩身のオシャレなイケメンだ。彼が優しい口調で蘊蓄を説くとすべてに納得してしまう。芳醇な空間に浸りながら、お茶だけでなく大遷宮や島根の観光地の話題で会話が弾んだ。外の緑や空気の装いのせいだろうか、室内にはどことなく初夏の季節が漂っている。 本格紅茶を目の前でいれて試飲を楽しませてくださった。お茶はリリーミュゲーテブランという高級な「白茶」。摘み立ての鈴蘭のような華やかな香りを白茶に封じ込めたという謳い文句である。ティーポットに勢いよく湯を注ぐ。沸騰直前の湯が最もよく淹れられると。ポットが冷めにくいように布の帽子を被せて美味しくなるのを待つ。急かさず落ち着いた気持ちでお茶を淹れると「妖精が褒美として美味しくしてくれる」と師匠が教えてくれたと。白茶は旨い日本酒のように淡い金色をしている。軽やかで柔らかい甘味がある。飲むと口中に美味しいお茶のフレーバーが広がった。残り香がある。冷えてくると少し渋みは出るが、これがほどよい渋み。決してえぐさを感じないのが素晴らしい。 茶を淹れる、味を楽しむ、匂いにひたる、会話やムードを楽しむ・・・そうした茶がもたらす一連の流れを「旅」だとイメージしていると、彼は爽やかに確信を持って語ってくれた。飲み終わってからも種々の会話を楽しみ店を出た。1時間たっても口中が爽やかで馥郁とした甘さを感じたのは、私の舌や鼻、体全体が茶とともに「旅」を楽しんだからだろう。 家に帰ってからダージリン紅茶を飲む。ファスト・フラッシュ・ダージリン。つまり一番詰みのダージリン。ふだん飲むファミレスのダージリンとは違う。色が違い、香りが違い、口に広がる。時間の経過につれてどこか味わいが変わるように感じた。チョコがさらに甘く美味しく感じた。贅沢な時間だった。 |