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ある男むかしむかしのことなれば [2013年03月07日(Thu)]

__tn_20130307221357.jpgむかしむかしのこと。それはそれはたいそう商売上手な男がいた。とてもとてもいい男で、困った人がおればよしよしと腕まくりをしてお世話をしたそうだ。いやいやとか泣く泣くではない。心からタンタンと喜んで動いたから誰もが感謝して、男の店はいつも繁盛していた。男はますます豊かになった。男には美しい娘と賢い息子がいた。二人とも親孝行で男はうれしくて、いよいよ働いてどんどんお金を儲けたそうだ。お金があるからといってぐすぐすとケチになることはない。立派な男だった。そうだ、連れ合いのことを忘れていた。これがまたしずしずと落ち着いた女房で、男はいつも楽しげであった。いつもるんるんと商売をして何をあつかってもトントン拍子に軌道にのっていた。どんなにドタドタと忙しくしてもバタバタと余裕がないときがあっても、男は女房のゆるゆると穏やかに笑う顔を見るだけで、ふらふらした気持ちも落ち着いたものだ。末の娘が病にふせったときには男はおろおろと心を乱したものだ。この薬がいいと聞けばはるばる遠くへ買いにでかけ、評判のいい医者がいれば娘をその頃珍しかったハイヤーに乗せて遠くまで行ったものだ。運転手を長長と待たせてさぞ高い料金を払ったことだろうが、娘のためなら金など惜しまない使いっぷりだった。娘の病気も幸い完治し親子四人は仲よく暮らした。男はいつもいつも家にいたわけではない。旅が好きだった。商売の仕入れに各地を旅行することはもちろん多かったが、フラフラッと出ていって一晩も二晩も帰らないことがあった。携帯電話もないころだから家のものたちはたいそう心配したものだが、数日後には店の引き戸ががらがら開いてなに食わぬ顔で男はいつもの生活に戻った。ズルズル行方不明になるよりはいいかと女房もカリカリせずに黙って耐えた。男は酒癖がわるいわけではなかったが、不機嫌になるとピリピリと緊張がただよった。おずおずと小さくなるのは家族のほうであったから、女房は今のままならまずまずよと折り合いをつけたものだ。息子に嫁がきていい家庭を築いてくれてかわいい孫も大きくなった。娘も幸せな結婚をしていきいきと暮らしていた。男はニコニコと笑顔が絶えなくて幸せを満喫していた。商売も息子にまかせて男は悠悠自適の毎日だった。ある夜に猫がギャンギャン鳴く夜に、男はぞくぞくと寒気を感じて倒れこんだ。その日から男は入退院を繰り返すようになり、だんだんと体が衰えていった。男を慕って多くの友や知り合いが見舞いにやってきた。男は、だんだんだんだんとベッドの上から感謝のあいさつをしていたものだ。いまも男は平均寿命をはるかに越えて生きている。介護をされているから元気ではないが、ゆるゆるとささやかに生きている。ときおり男は考える。幸せな人生だったなあと。ときおり男は祈る。大震災、大事故、殺人事件で死んだり大ケガをした人にむけて祈りを捧げる。一人でも多くの人が平和に暮らして一生を終わってくれるように。そして男は感謝する。自分の人生に。