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ドクターとポエット兼ねて雪の原 [2012年06月17日(Sun)]

__tn_20120617151659.jpg映画『ドクトル・ジバゴ』(米伊合作)を観た。ここにもおなじみの映画音楽があった―「ラーラのテーマ」。冒頭のクレジットが始まって、白樺林の変わりゆく季節が描かれたときに、民族楽器バラライカで奏でられるのを聞いて、なるほどと思う。悲哀と軽快さが同居する名曲だ。ウラルの雄大な雪原を馬ぞりで行くラーラと娘―見送るジバゴとの永遠の別れにこのテーマはふさわしい。

ラーラは主人公ジバゴの愛人。強い目が印象的で一途、男好きのするタイプだ。ソフィア・ローレン似の美女である。ユーリ・ジバゴは医師にして詩人としても知られていた。二人が知り合うのは、ブルジョアと労働者との階級闘争が始まりかけたモスクワ。二人が愛し合うようになるのは、第一次世界大戦下のウクライナ。野戦病院でジバゴは看護婦ラーラに惹かれていくが、ラーラは押しとどめ二人は別れた。

やがてロシア革命による大混乱期。偶然に再会した二人を止めるものはなく、生活面でも濃密に愛し合う。とくにジバゴはラーラの虜になった状態だった(そういえば「虜」の字は男が捕えられて数珠つなぎにされた象形)。ラーラの娘に父のように接し、本妻トーニャには二人目の子供を授かっているという二重生活を送る。トーニャもそれを受け容れているように見えたが、突然終わりがきた。赤軍の馬賊パルチザンに拉致されて医師として2年も働かされたのだ。

脱走してラーラと愛の巣を再びもうけるものの長くは続かなかった。別れのシーンがウラルの雪原だ。何年も経ってジバゴはモスクワの市街電車の中からラーラを見かけ必死に追ったが、心臓発作で死ぬ。

ジバゴが詩作する姿はあったが、詩そのものは登場しなかった。ソ連政府からは、叙情的に過ぎ個人が主の反革命的なものと非難されていた。それは原作者パステルナークの置かれていた立場を象徴している。原作小説『ドクトル・ジバゴ』はソ連で出版を許されず、イタリアで日の目を浴びてノーベル文学賞の候補ともなったそうだ(当局の指示で辞退させられたが)。

パステルナークの晩年の詩に、「わが心よ/おまえは生きながら責め殺された人々の墓地となった」とあるとのこと。ソ連も中国も他の共産国も然り。共産主義という壮大な実験の元、莫大な悲劇と無惨を招き寄せて、20世紀は戦争と対立の時代となった。本来は幸福になるために編み出した思想や宗教であったのに、人間がさらに不幸になったという重い十字架をこの映画は表現したいのかもしれない。ラーラのテーマが心に残る。