鳥取砂丘にある砂の美術館で『砂で世界旅行〜イギリス/語り継がれる大英帝国の繁栄と王室の誇り』を見てきた。この四月半ばに恒久的な展示施設としてオープンしたところだが、青空展示から始まってすでに丸6年。今回5期目の展示となって多くの人がリピーターとなっていることと思う。
正面奥上には壮麗なウェストミンスター宮殿。ビッグベンや国会議事堂が堂々とそびえている。すぐ下にはエリザベス一世。16世紀に絶対王政を確立し世界の覇権をスペインから奪取。パックス・ブリタニカの基礎を築いた。その周囲の家来たちがその性格まで表現するように描かれており感心した。
大航海時代の帆船や街のにぎわい。軍事力をバックに世界を股にかけて商人たちは活躍し儲けた。シェークスピアの文学、特に戯曲は全世界に広まり、ロミオやジュリエット、ハムレットを今や知らない者はいない。
万有引力の法則と進化論でもって、ニュートンとダーウィンは革命的に科学を進歩させた。19世紀の産業革命はエネルギー革命であり、人が働くということの革命であった。一方で児童の虐待的過重労働といった負の歴史もある。
建物類ではウィンザー城、大英博物館、バッキンガム宮殿、タワーブリッジ、ロンドン塔などがあり、精緻な砂使い(砂削り?)に驚く。雨の多いロンドンで傘を片手にタクシーを待つ群像の中にさりげなくハリーポッターを潜ませていたのは驚きだった。その隣はハーマイーニーだろう。ロンはどこへ? バッキンガムで警備を行う衛兵のパレードも旗や毛皮帽の質感がなんともすばらしい。
≪その姿を/永遠に留める事が/出来ない、/そんな儚さが/砂像の大きな/魅力なのです。≫
入口にある案内掲示板にはこうに書いてあった。そのとおりだと思う。砂像と同様に人間にも永遠はない。何事も限りがあり全ては転変する。刻々と変わり限りがあるからこそ、輝いていく。終わりがあるからこそ、今を得難い時として大切に慈しむことができる。