• もっと見る

«夏は上秋は下からやってきて | Main | 象徴よハルカ遠くにノッポビル»
<< 2024年04月 >>
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
検索
検索語句
月別アーカイブ
カテゴリアーカイブ
最新コメント
ふみハウス
よき冬日空輝いて玉磨く (03/30) 男子寮でお世話になりました
よき冬日空輝いて玉磨く (01/20) ふみハウス
年月日いつのことやら過去記す (06/10) 小笠原 由紀子
年月日いつのことやら過去記す (05/09) YM
崩れてく正しく着けてもマスクなり (04/21) 錦織 孝
箱根まで100キロつなぐ襷なり (01/03) ふみハウス
心地よし父の胸にて寝入る子よ (02/05)
心地よし父の胸にて寝入る子よ (01/27) ふみハウス
冷たくて濡れそぼる雨陽気待つ (01/26)
冷たくて濡れそぼる雨陽気待つ (01/23)
https://blog.canpan.info/fumihouse/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/fumihouse/index2_0.xml
最新トラックバック
ロスへ行く困難越えるは何のため [2012年09月02日(Sun)]

__tn_20120902125959.jpg『ロス、きみを送る旅』(キース・グレイ著野沢佳織訳,徳間書店,2012年)を読んだ。15歳の少年四人が友情をかけてイングランドからスコットランドまではるばる旅をする冒険小説である。ただし、そのうち1人は骨壺に入った状態ではあったが。

「ぼく」ことブレイクとシム、ケニー、そしてロスの親友四人組は大の仲良しだった。ところがロスは交通事故で死んでしまった。残された三人はロスの死を未だに信じがたい。ロスの葬式は彼のことをよく知らない人たちによってされた形だけの心のこもらないものに思えて仕方がない。ブレイクの提案で、ロスが生前行きたがっていたスコットランドのロスという小さな街に行こう決める。三人だけで、本当のロスの葬式をやるというもくろみである。それは秘密理に執り行われなければならない。しかも骨になったロスを連れて。ロスの骨壺を盗みだした三人は列車でロスへ向かう。ケータイの電源は切った。ロスの家族や警察の目、自分の家族のことも気になる。しかし、三人は意気揚々と旅立った。

≪この旅はどうやら、思いどおりにはいかない運命らしい。巨大なヘビの背中に乗ってるようなものだ。ヘビはくねくねとのたうち、こっちの思うようには進んでくれない。予測不能だし、あぶなくてしょうがない。ぼくにできるのは、そいつにしっかりしがみつき、人指し指と中指をクロスさせて、無事に目的地に着いて、そのあと家まで帰れますように、と祈ることだけだ。≫

予期せぬアクシデントが、これでもかこれでもかと三人を襲う。悪いことばかりではないが、運と才覚の限りを尽くすようにして三人は進む。

だが、困難に晒されるうちに心には変化が起こる。あれだけ強固だと思っていた互いの信頼感がバラけ、ロスとの関係性についても互いにスレ違う部分があることがわかり、ロスの死に自分たちの行いが関連していたであろうことが判明した。さらに第三者との関わりのなかで、友情にヒビが入っていく。微妙な気持ちや対立感情空腹、金欠、が彼らをむしばむ。なんとか三人をつなぎ止めていたロスと本当の葬式をするという目的まで忘れそうになってしまう。シムは言った。

≪おれたちがやっていることには、どんな意味があるんだ?≫
≪そもそもあいつが生きていた意味ってなんだ? 死んだら何も残らないっていうなら、生きている意味がどこにあるんだよ?≫

と、根源的な心が分裂しそうな問いを発するところがクライマックスだ。四人の友情は終わった(少なくとも形は変わる)。しかしわずか二日間の旅でもって彼らは、それぞれの思いを何度でも反芻し、互いを思いやり、自己の人生の意味を考えた。新しい出会いを生んだ。そして、何が起こるかわからないこれからの人生に覚悟を固め、ある面楽しみにしながら少年たちは物語を終えたことであろう。三人は次のステージ、青年期の物語を書くためのスタートラインに立ったのである。
トラックバック
ご利用前に必ずご利用規約(別ウィンドウで開きます)をお読みください。
CanpanBlogにトラックバックした時点で本規約を承諾したものとみなします。
この記事へのトラックバックURL
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
トラックバックの受付は終了しました

コメントする
コメント