柔術が道を究めて王者なり [2012年08月04日(Sat)]
オリンピック柔道の競技が昨夜終わった。男子は金メダルなしに終わり、女子もメダル総数が3個で過去最少であったと反省の弁が多い。世界ランキング制により出場機会を絞って大事な大会に備えることができなくなったこともあるが、お家芸柔道が過渡期を迎えたことは間違いないだろう。
柔道は1964年東京オリンピックから男子の正式種目となった。1968年メキシコでいったん中断したが、ミュンヘン大会で復活。60kg級(超軽量級)と66kg級(軽軽量級)は1980年モスクワ大会から開始。81kg級(軽中量級)と100kg級(軽重量級)は1972年ミュンヘンから開始。無差別級は1984年ロサンゼルス大会をもって終了。東西冷戦のあおりでモスクワ大会とロサンゼルス大会は棄権多数という不規則開催となった。女子は1992年バルセロナ大会から正式種目となっている。 私は思うのである。昨日書いたように、柔道はフェンシング、ボクシング、テコンドーといった【対決型】の一角を占めている。そのなかでも防具なし、グローブなし、攻撃の手段は生身の肉体のみで、取っ組み合いくんずほぐれつの格闘をし、叩きつけ投げるという狩猟民族的な闘争本能をくすぐるのではないだろうか。レスリングより攻撃手段は多彩でもある。だから世界各国の競技者数が増えているのだと思う。 東京オリンピックから男女別に、メダル獲得国数、日本のメダル占有率、日本の金メダル獲得数を調べてみた。 1964年東京 【男】9カ国 25% 3個 1968年メキシコ 柔道競技なし 1972年ミュンヘン 【男】11カ国 17% 3個 1976年モントリオール【男】13カ国 21% 3個 1980年モスクワ 【男】15カ国 棄権のためゼロ 1984年ロサンゼルス【男】13カ国 16% 4個 1988年ソウル 【男】13カ国 14% 1個 1992年バルセロナ 【男】14カ国 18% 2個 【女】13カ国 18% 0個 1996年アトランタ 【男】15カ国 14% 2個 【女】12カ国 14% 1個 2000年シドニー 【男】17カ国 14% 3個 【女】13カ国 14% 1個 2004年アテネ 【男】17カ国 14% 3個 【女】12カ国 21% 5個 2008年北京 【男】19カ国 7% 2個 【女】14カ国 18% 2個 2012年ロンドン 【男】14カ国 14% 0個 【女】16カ国 11% 1個 過去の合計 【男】47カ国 14% 26個 【女】27カ国 16% 10個 (注)分離独立した国、統一した国は別々にカウント メダル獲得国数は増える傾向にある。それに反比例して日本のメダル数が減るのはある面仕方がない。農耕民族は狩猟民族や牧畜民族に比べれば、一般的に骨格筋肉は弱く、性格的には穏やかで決闘的な戦いには向かないのだから。 フランスの柔道人口は日本の何倍もあるという。中学校での武道の必修化が話題になっているが、そこで議論されるのは柔道の競技人口を増やすということではなく、柔道は事故率が高いということが中心である。競技人口が増えないと裾野は広がらない。となると、少子高齢化の現日本にあってロンドン・柔道競技でメダルを7個を獲ったというのは、破格な成果といえるだろう。 日本選手は敗れても相手と行う一礼と握手、競技場の畳から出る際に一礼する様子は美しい。日々の練習という修行によって確立した型、柔道原理を体現している。嘉納治五郎が柔術に理論と技術体系を加えた上で目指した「自他共栄」を立派に実現していっているとは言えまいか。彼が国内外で柔道の普及に努めてきたことが、今こうして実っている。このことは日本の国際貢献として世界に誇ることができる。 今国際柔道連盟に加盟する国と地域は200近く。柔道は日本発の国際スポーツとして王者の地位を占める。日本の競技者は卑屈になることはない。お家芸として勝って当然の立場ではなく、挑戦者として世界柔道に挑めばいいのである。 |